プレイバック2015

SVODが「じわり」と変える我が家の映像生活 by 西田宗千佳

「衛星放送」、「録画」に引導を渡す?

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 今年の筆者の仕事といえば、Netflixに代表されるSVOD(定額制映像配信)の日本での状況を書くことだった、といっても過言ではなかろう。昨年のまとめでも書いたのだが、その傾向は別にNetflixが来たからどう、ということではなく、日本でもすでに1年以上前から始まっていたことなのだ。

 だから、そこが「黒船だ」「大変化だ」というつもりはない。むしろ変化の本番は、オリジナルコンテンツが揃う来年春以降だろうし、まだまだ世間一般では、「Netflixなにそれおいしいの」という時期だ。勘違いしてはいけない。

iPad Proで仕事しながらSVOD

 とはいうものの、自分が見る映像の中で、SVODの比率は間違いなく高くなった。自分の場合、生で放送を見ている時間より、多分、長い。

 SVODはテレビで見ることが多い。我が家の場合には、結局PlayStation 4で見るのがほとんどだ。dTV以外のクライアントアプリが揃っていること、テレビ録画はtorneで見ていることなどが理由だ。また、気がついたら「ながら」見も多くなっている。私はドラマや映画を見ながらでも原稿がかける。だから、仕事しながら見れる映像が多いとありがたい。

 意外な事に、ながら見で便利なのがiPad Proだ。映像専用に使うわけじゃない。iPad Proで書きながら見るのだ。

iPad ProでながらSVOD

 全画面でアプリを使うのが基本のiPadだが、iOS9から「ピクチャー・イン・ピクチャー(PinP)」の機能が搭載されている。これを使うと、どんな作業をしている時でも、画面の一番上に映像を出しっぱなしにしておける。邪魔だったら上下左右に位置を動かしたり、音だけ出して隠したり、も出来る。ウインドウを自由に配置できるPCでもできそうに思えるが、これを「ワンタッチ」でできるのがポイント。PinPだと置く位置は四隅におおむね固定で、自由度ではウインドウシステムにかなわない。が、何にも考えなくても、調整しなくても使えるという点で、「ながら」には最適だ。

つい先日の仕事中のスクリーンショット。こんな風に、ドラマを見ながら原稿を書いていたりする。邪魔になったら場所を指で「ひょい」っと移動してやる

 ただこの機能、残念ながら動画配信アプリではHuluくらいしか対応しているものがない。OSの新機能をアプリ側が積極対応しないと使えないのが、iOSの弱点とも感じる。ただし、Webブラウザ上で見る動画配信の場合には、問題なく使える。だから、バンダイチャンネルなどはOKだ。

SVODは「衛星放送」「録画」に引導を渡すのか

 だが、今年の我が家において、SVODが変えたことはより大きなものだった、と、今になって思う。2年前なら「録画をどう見るか」「衛星のあのチャンネルでいつアレをやるのか」をどこかで意識していたのに、もはやその辺がスコーンと抜けつつある。

 いや、録画はまだしているし、見る。でもついに、我が家の録画予約一覧から、WOWOW以外の衛星放送がなくなっていた。ついでに、「ザ! 鉄腕! DASH!!」以外の日テレ番組の姿もなくなっていた。前者と後者では、その理由が全然違うことが面白い。

 まず後者から話そう。

 別に日テレの番組を見なくなったのではないのだ。ある日、ふと、録画したままたまってた「掟上今日子の備忘録」を見ようと思った時、気がついてしまったのだ。

「あれ、ドラマばっかり録画してるけど、日テレはHuluにあるからいらないじゃないの
」と。

 結果、録画リストからは日テレが消えた。鉄腕! DASH!!が残ったのは、配信されていないからである。この番組までSVODもしくは見逃し配信で済む時期がきたら、ビジネスモデル転換も最終段階になっていることだろう。

 衛星放送系は、結局ドラマや映画のチェックの場合、もうSVODで追いかけられないくらいある、という部分が大きい。実際11月から、我が家では衛星放送系の契約をかなり絞り込んだ。オリジナル作品でのテコ入れや変化が見えてくるまでは、おそらくこのままだろう。

 これはすなわちどういうことかというと、「放送の録画から配信へは、意外とさっくり移れてしまう」ということだ。もちろん、録画のもつ「一期一会」性は配信では代替できない。自分のこだわりである「吹き替え映画とドラマ」の世界では、そういうものもたくさんある。だから、特定の番組は撮り続けている。それに、「おそ松さん」も録画しておいて本当に良かったと思っている。

 でも、そこまでのこだわりがない部分、もともと「見て消し」だった世界では、配信でも録画でも良くて、むしろ配信の方が楽なくらいだ。テレビ局としても、「録画と違って収益につながる」というレトリックが、テレビ局内でもゆるやかに「配信への推進剤」になっている。録画機は売れにくくなっているが、今後はより厳しくなっていくだろう。だからといって、放送に「ネバーコピー(録画不可)導入」というのはもちろん反対だ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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