プレイバック2015

海外/国内イベント取材から1年を振り返る by 編集部:中林

 「CES」や「IFA」といった大きな海外イベントを取材することが、筆者は毎年の恒例となっている。それ以外にも多くのイベントが開催されており、今年は個人的に初参加となったものや、複数年に1回開催されるイベントの取材もあったことから、今年のレポート記事を通じて、象徴的だった'15年の動きや、記事では書ききれなかったことなどを振り返りたい。

2015 International CES

CESで4K/HDRに本格的な動き。初参加のNABで感じたこと

 世界最大級のイベントであり、1年の最初に様々な製品や技術が披露される「CES」。4KやHDR(ハイダイナミックレンジ)といったテレビの最新技術が“次世代”ではなく、実際の製品としていよいよ本格的に展開され始めた。11月にはパナソニックから4K/HDR対応の「Ultra HD Blu-ray(UHD BD)」再生対応レコーダ「DMR-UBZ1」が発売されたが、UHD-BD対応の試作機が初登場したのは今回のCESだった。その他にも、シャープからは“8K相当”AQUOS、ソニーはAndroid TV搭載BRAVIA、パナソニックがFirefox OS搭載VIERAを披露し、それらは後に今年の新モデルとして製品化/発売された。

パナソニックが「UHD BD」プレーヤー試作機で、4K/HDRの高画質をアピールしていた

 テレビ以外では、ウェアラブル関連がIoTの盛り上がりに合わせてさらに活発化。メガネ型や腕時計型のデバイスは、高機能化だけでなく小型化やデザインの洗練も進み、より多くの人の目に留まりやすいものが登場し始めた。

 CESと同じくラスベガスで毎年行なわれている放送/映像制作向けイベント「NAB」にも、今年は初めて参加した。会場へ入る前は、コンシューマ向け媒体で記事にできる内容は少ないだろうと予想していたが、ブースを回ってみると、4K/8KやHDR対応のカメラやモニターといった製品が多く登場しただけでなく、コンテンツや映像技術、配信技術など、コンシューマ目線からも興味深い技術展示が充実。これらの機材や技術を用いて、より高度な放送や便利な配信サービスなどのコンテンツが届けられるという意味で、コンシューマ向けのトレンドとの共通点も多かった。ドルビーの「Dolby Cinema」や「AC-4」、DTSによる「DTS:X」など、今後の製品やサービスへ直接つながっていくデモも数多く行なわれていた。

NAB 2015

 プロ向けイベントであるNAB会場内は、一見するとCESなどのイベントほど派手な雰囲気ではないが、日本国内のBtoB向け展示会とも違い、各所で行なわれているブース内イベントは、参加者の熱気や一体感など、“お祭り感”が強かったのも印象的。業界の有名人が集まるという理由もあると思うが、イベントステージではまるで音楽ライブ会場のようなコール&レスポンスも見られるなど、想像していた“お堅い”イメージとは大きく異なる。中には「本当に仕事しに来ているのか?」と疑ってしまうほど、会場内でのミニイベントなどを満喫している出展者や参加者も少なくないというギャップに驚いた。

 一方で、出展/来場者の減少が課題とされる日本の展示会にも、こうした遊び心がもっとあって良いのではと感じている。メインである新技術などの展示をおろそかにしては、我々の取材する対象が無くなるので困るが、例えば週末にはイメージを大きく変えて、普段は興味を持っていない人も訪れたくなる取り組みや、他イベントとのコラボ、地域との連携なども、もっとあっていいと思う。“まじめ”なイベントは取材もしやすいのは確かだが、全体を通じて「今年はココが違う」といったテーマ/メッセージの打ち出しが少なく、せっかく高い技術を持っているのにもったいない。開催時期や場所など基本的なことを含め、今のままで本当に大丈夫なのかと問い直したい。もちろん、我々の伝え方も、毎年同じで満足してはいけないと思っている。

盛り上がっていたAdobeのセッション
INTELSATのブースで、アニメ「きんいろモザイク」が紹介されていた

IFAではポータブルにも盛り上がり。各社プライベートショーも

 もう一つの大きな国際展示会/トレードショーである「IFA」では、テレビを中心とした4K/HDR関連の動きがさらに本格化して、HDRとSDR(スタンダードダイナミックレンジ)の違いを比較するデモが目立った。

 テレビ関連では、パナソニックが有機ELテレビを欧州向けに展開したことも話題となった。1月のCESでは、Samsungが有機ELテレビから手を引き「S-UHD」と呼ぶ広色域液晶に一本化する姿勢を見せていたただけに、パナソニックが“ポスト・プラズマ”として有機ELテレビを投入することはグローバルで見ても大きな動きと言える。日本での有機ELテレビ展開は未定だが、高付加価値モデルとしての登場も期待がかかる。

パナソニックが有機ELテレビを欧州向けに発表

 IFAで予想以上に盛り上がっていたもう一つの動きは、ポータブルオーディオ。パイオニアがプレスカンファレンスにおいてハイレゾプレーヤー「XDP-100R」を発表し、それに続いてオンキヨーも「DP-X1」の試作機を披露。ウォークマンは、小型筐体にNW-ZX1の機能を継承した「NW-ZX100」を発表。パナソニックはハイレゾ対応イヤフォンを多数展示した。

 オーディオ関連では、スマホでも簡単に楽しめる定額音楽配信サービスの広がりに合わせて、ヘッドフォンなどのポータブル製品の展示が増え、代わりに据え置き型オーディオの展示が減るという傾向も、一段と進んだように感じた。一方、日本以外でのハイレゾの浸透は、まだこれからという印象だ。

Xperia Z5を発表したソニーの平井一夫社長兼CEO
パイオニア「XDP-100R」
オンキヨー「DP-X1」

 10月に行なわれた国内最大イベントである「CEATEC JAPAN」。AV関連では、4K/HDR対応テレビや、UHD Blu-ray、8Kなど注目の出展があった。話題性という意味では、“モバイル型ロボット型電話”の「RoBoHoN(ロボホン)」や、洗濯物を自動で畳むという「laundroid(ランドロイド)といった、かなりインパクトのある製品が目立ったのは、これまでのCEATECから変わった点の一つだろう。

パナソニックが参考展示した4K/HDR対応液晶テレビ

 なお、昨年に続いてソニーの出展は無かった。ソニー社内ベンチャーから生まれた、FeliCaをバンドに備えた腕時計「wena wrist」や、ソニーの「SmartEyeglass」のディスプレイ技術を活用した村田製作所のメガネ型端末「Cool Design Smart Glass」などは興味深かったが、今後も“ソニーの技術”だけが所々で見られるだけになっていくのだろうか。

プロ向けや自動車業界など。プライベートショーにも注目の技術

 映像/放送関連のイベントとしては、5月に恒例の「NHK技研公開」が開催。いよいよ'16年に試験放送が始まる8K/スーパーハイビジョン(SHV)では、番組制作用の機材や、符号化/復号装置、伝送システム、アーカイブと、放送実現に向けた様々な技術が一つにつながろうとしていることが、展示内容からも見えてきた。

NHK技研公開での8K制作機器のデモ

 「Inter BEE」に出展された4Kカメラは、小型化と、多用途に向けた製品が増えたという印象。4K/HDRへの注目を受けて、プロ用のカメラやディスプレイでも、改めてその画質面のメリットをアピールする展示が多かった。興味深い試みとして、スカパー! が衛星を通じて会場内限定で4K HDR映像伝送を行ない、複数社がそれを受信するというデモが行なわれていた。テスト用ではなく実際の伝送路を活用していたこともあり、放送実現に向けて準備が進んでいることが実感できた。また、ドローンを飛ばせる専用コーナーを屋外に用意するという取り組みもあった。

Inter BEE 2015に合わせて実施されたHDR映像伝送

 多くの企業が1カ所に集まる展示会/トレードショーとは異なり、1社が開催するプライベートショーは、関係者向けの招待制ということもあって、大型イベントでは見られない発表前の様々な試作機や技術展示が発見できるのは面白い。

 5年に1度行なわれる「Canon EXPO」では、2020年の東京オリンピックをテーマの一つとして打ち出し、それに向けた写真/映像技術が数多く登場。'16年に業務用4K LCOSプロジェクタを製品化することを明らかにしたほか、今年のトレンドであるVRを採り入れた360度3Dハンドヘルド型ディスプレイ試作機や、動画/写真の管理の新しい形となる「次世代Connect Station」を展示。撮影した後の素材をどう活用していくかという点や、コンテンツの新しい見せ方について、様々な模索を続けている姿勢が強く感じられた。

360度3Dハンドヘルドディスプレイの試作機

 コンシューマが直接製品を購入することはほとんどないが、波形モニターや信号発生機などの製品を手掛け、テレビメーカーや放送事業者にとって欠かせないのがアストロデザイン。同社の「Private Show 2015」を見ると、これからどんな製品やサービスが出てくるかの一端が分かってくる。既に中型〜大型の4K/8Kモニターなどを数多く製品化しているほか、NHKなど放送事業者らと協力し、8KやMMT(MPEG Media Transport)多重化に向けた製品などをいち早く開発していることが展示から分かった。

4K/8Kの画質評価に利用できる信号発生機「VG-876」。余談だが、アストロデザイン製品の筐体が深い赤色なのは、社長がワイン輸入業者のオーナーであるためだという

 業界は変わるが、隔年開催の「東京モーターショー」の開催年でもあった。AVに関連するところでは、国内でもAppleのCarPlayや、GoogleのAndroid Auto関連の展示がいくつか見られた。海外では、既に低価格なカーAVとして様々なメーカーがCarPlay/Android Auto対応製品の採用を進めている。日本は高機能なナビが多いという特殊性もあるが、スマホ用ナビアプリの高機能化は進んでおり、今年は音楽配信の「AWA」がAndroid Auto対応を発表。こうした国内サービサー/アプリ側の対応が進むと、日本での見方も変わっていくかもしれない。

三菱自動車がCarPlay/Android Auto対応の「スマートフォン連携ディスプレイオーディオ」を参考展示

 振り返ると、今年も様々なイベントをレポートしたが、このほかにもオーディオ・ホームシアター展(音展)や、CATV関連、ヘッドフォン祭など多様なジャンルのイベントがあった。もちろん、取材したことがないイベントもまだまだ多いので、機会を見つけて、新たなジャンルもチャレンジできると面白そうだ。'16年も、米国時間の1月4日から「CES 2016」での取材がスタートする。今年感じたトレンドが、次はどう変わっていくのかが楽しみだ。

(中林暁)