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55型8K液晶が夏に製品化。アストロの8K向け開発加速

8K/HDR対応テレビ開発や、MMT多重化に向けた製品も

 アストロデザインは、関係者らに新製品やソリューションを紹介する「Private Show 2015」を6月18日と19日に開催。8Kで最小とする55型液晶モニタなど、8K対応製品を中心に多数展示している。

55型液晶やカメラヘッドなどの8K対応製品

 '16年のBSでの8K試験放送開始や、その先の'20年東京オリンピックに向けて8K/4K放送の整備が進められている中、今回のプライベートショーは「8K試験放送を見据え」をテーマに、放送局やテレビメーカーなどの実用に即した“8K Ready”の機器を中心とした提案を行なっているのが特徴。

8Kワークフロー

55型8K液晶や変換器など、8K放送に向けた準備が進む

 '14年の同イベントで注目されたのは、初披露された8Kの98型液晶モニタで、価格は約3,000万円というものだった。

 今回「8Kコーナー」にて披露されたのは、55型で8K(7,680×4,320ドット)のパネルを採用した液晶モニタ。研究開発や編集室のマスターモニターなど、幅広いケースでの利用を想定。展示されているのは試作機で、実際の製品はベゼル幅を2cm程度まで縮小するという。今夏の発売を予定しており、価格は約1,200万円。業務用の普及価格帯まで抑えたという。

夏に発売予定の55型8K液晶

 RGB 4:4:4、色深度はRGB各10bit、コントラスト比は1,400:1、60/59.94pに対応する。ブライトネスやコントラストの調整、設定値のセーブ/ロードなどが可能で、専用コントローラで映像調整を行なえる。入力はDualLink DVI(16ch/10bit)に対応し、DVI端子を16系統装備する。

 '14年には、シャープのUV2Aパネルを使った85型8K液晶モニタも参考展示されていたが、今回はその次の世代にあたるシャープ製パネルを使って製品化された「DM-3811」の実機も用意されている。既に販売中で、価格は約2,500万円。

85型8Kの「DM-3811」

 同モニタに合わせて、8K Dual Green(画素ずらし)で撮影された映像を補間してフルスペック8Kにリアルタイム変換するというコンバータ「SC-8212」も展示。画素ごとに方向性を推定しながら高精度に補間し、RGB間の相関を利用して偽色の発生を抑制するという。さらに、8K Dual Green信号をフル解像度にアップコンバートしながら、DPXファイルとして書き出せる変換装置「SE-8100」も展示している。

8K-DG to Full Specのコンバータ「SC-8212」で、85型モニタに変換後の映像を表示
DPX変換装置の「SE-8100」
8K映像から、4KやHD、SDに変換して表示する「8Kクロスコンバータ」のデモも

 8Kカメラ関連では、同社の小型8Kカメラヘッド「AH-4800」の活用などを紹介。同カメラの機動性の高さを活かし、スタジアムからのスポーツ中継などで上空から撮影するワイヤーカムにするシステムを提案。光ケーブルで接続し、従来に比べケーブルの取り回しを改善しているのが特徴。このほかにも、AH-4800に装着可能な8K液晶ビューファインダや、HDMI/HD-SDI入力のフルHD有機ELビューファインダ「DF-3515」などを展示している。

AH-4800を使ったワイヤーカム(右上)のデモ
AH-4800に8Kビューファインダを装着
フルHDの有機ELビューファインダのDF-3515

 スタジアムなどへの採用を想定するサイネージ「4K VIDEO WALL」も提案。'14年にも展示していた「ウルトラワイドビデオウォール」から解像度をアップさせたもので、同社プロセッサを用いて4K映像2面の表示が可能。今回の表示にはクリスティ製の20型ディスプレイユニットを4×6台(縦×横)利用し、8K映像1面とHD映像4面の表示も行なっていた。ディスプレイユニットは自由に並べられるため、従来の形に囚われない表示が可能で、例えば人の周りを曲面で取り囲むように各ユニットを配置することなども可能。'16年の2月には4K/60p×2面表示に対応予定としており、その時期をめどに発売予定としている。

4K VIDEO WALL
様々な構成のマルチ画面に対応
ビデオウォールに使用するプロセッサなど
海洋研究開発機構(JAMSTEC)が、無人海洋探査機「PICASSO」で8Kカメラによる探査を行ない、その準備にアストロデザインが協力しているという

8KテレビやUHD BLU-RAY機器開発に向けた製品

 上記で紹介した8K製品は、放送局など映像制作現場での利用を想定した製品だが、一方で'16年8K試験放送開始に向けては、テレビメーカー各社の製品開発に合わせた提案も行なっている。

 デジタルビデオ信号発生器「VG-876」は、HDMIやV-by-One、3G-SDIなどのインターフェイスユニットを最大4つ装着できるスロットを備え、4K/120HzやフルHD/240Hzの信号もサポート。HDMIユニットはHDCP 2.2にも対応する。

信号発生機「VG-876」

 この製品から信号出力することで、4K/8Kの画質評価に利用できる高精細/広色域の標準画像を、映像情報メディア学会の協力を得て開発者向けに提供している。ITU-Rで制定されたUHDTVのスタジオ規格「BT.2020」(Rec.2020)に規定された8K/4K解像度と、HDのBT.709(Rec.709)準拠の2K解像度の合計3種類の信号を、信号発生器のVG-876から出力可能。BT.2020に沿ったHDR(ハイダイナミックレンジ)用の画像も用意され、テレビメーカーなどは8KやHDR対応テレビの開発に活用できる。

VG-876と、画質評価用画像のデモ
映像情報メディア学会が協力
HDRの確認に利用できる信号も

 '16年の8K試験放送に向けて、現在パネルメーカーでは8K対応パネルの開発が進められているため、それに合わせてアストロデザインが信号発生機などの開発向け製品を提供。それを使ってセットが作られるという流れが進むと見られる。

 また、次世代Blu-rayのUHD BLU-LAY対応製品が今秋にも登場すると見て、著作権保護のHDCP 2.2もサポート。シャープの4K対応レコーダと組み合わせたデモを行なっている。

HDMI 2.0/HDCP 2.2対応プロトコルアナライザ「VA-1842」
シャープの4Kレコーダと組み合わせてデモ

 8Kとともに、放送の高度化に向けて採用が見込まれるMMT(MPEG Media Transport)多重化に向けた製品も展示。MMTにより、放送だけでなく通信ネットワークも活用してテレビ画面に複数の映像を同期表示するといったサービスが可能になる。アストロデザインはMMTレコーダ「CP-5541」やMMTアナライザ「SP-5800」により、開発/運用のサポートを図る。

 さらに、MMTテストストリームの送出ソリューションとして、MMTシミュレータとMMT-SIエディタを使ってMMTファイルをレコーダ/プレーヤー「CP-5541」にアップロードして利用するというシステムの製品化も検討中。今後のテスト用に、あえてエラーを起こすストリームを作る必要がある場合にも活用できるという。

MMT関連もいち早く製品化
MMT多重化の説明
検討中のMMT送出ソリューションのイメージ

4KからHDの動画切り出しや、Oculusも活用可能なCGバーチャル美術館など

 8K以外にも、今後提供予定のユニークな製品が展示されている。

 「4K-HD低遅延切り出し回転・ブレ補正装置」(GP-4020)は、4Kカメラの映像を、地デジなどのHD番組制作で活用する際に、リアルタイムでHDに切り出し、高度なブレ補正や、回転する効果を加えた表示が可能になるもの。

4K-HD低遅延切り出し回転・ブレ補正装置(GP-4020)のデモ

 「切り出し回転機能」は、音楽やバラエティなどの番組で、従来はカメラマンがカメラ本体を回したり専用カメラの内部を機械的に回転させて撮影していた映像を、GP-4020の映像切り出しによって作れるというもの。4Kカメラの機種を問わず利用でき、滑らかな回転と回転速度の変更が可能な点が特徴。

 「ブレ補正機能」は、カメラ本体に別売の小型センサーを装着することで、トラックや船の上など従来の防振台が使えない場所でも、高度なブレ補正を可能にするというもの。

GP-4020本体と回転後のHD映像
4Kカメラの下部に付けられているのがブレ補正機能用のセンサー

 いずれも、日本テレビと共同開発しているもので、日テレによる展示会「デジテク」でも出展されたものが製品化され、10月に発売予定。価格は、GP-4020本体が約220万円、ブレ補正のセンサーが約12万5,000円。

 「ウルトラCG・バーチャルミュージアムシステム」は、リアルタイム3DCGで構築した、VR映像の美術館/博物館を実現するというソフトウェアを使ったもの。

ウルトラCG・バーチャルミュージアムシステム

 あらかじめ用意した美術館のようなスペースの3DCG映像に、後から静止画や動画のファイルを指定すると、それが実際に展示されているように額縁や文字の解説などと組み合わせて表示できる。平面だけでなく、立体造形の作品を様々な方向から眺めるといったことも可能。実際の美術館/博物館内にバーチャル展示として利用したり、個人が自分の写真や動画などの作品を展示するといった利用を想定している。

 ソフトは、ゲーム開発に使われているUnityを用いて開発され、Windows上で動作。マウスやゲームコントローラなどで操作できるほか、ヘッドマウントディスプレイのOculus Riftで立体映像として楽しむといったことも実現できる。

画像を選択
額縁に合わせて表示された
解説なども表示。画像とテキストからリアルタイムで生成する
高解像度を活かして細部まで表現可能
立体物の展示も
ゲームコントローラでの操作

(中林暁)