プレイバック2016
フォースの覚醒、映像の世紀、レヴェナントを抑えたお気に入りはコレ! by 本田雅一
2016年12月29日 09:30
“オーディオ&ビジュアル”というジャンル。大きなお金が動く上、モノとして実体に触れることができる“機材”の比重が高くなりがちだが、実際に我々が愉しむのは”モノ”ではなく”映像”であり”音楽”だ。そうした意味では今年、とりわけ日本の中のAVファンとして考えたときには、コンテンツの愉しみ方が変化した年だったと言えよう。
年末になると、その年に気に入った映像作品を審査したり、自分自身が気に入ったコンテンツを選定するといった仕事がいくつか入ってくる。ところが、そうした審査や選定の対象となる作品は、どれも“光ディスク”として発売されているものに限られていた。
今年発売された作品で言えば、ブルーレイならば「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」や「NHKスペシャル 新・映像の世紀 ブルーレイBOX」、UHD-BDならば「レヴェナント:蘇えりし者」、「オデッセイ」あたりがお気に入りだが、もっとも気に入った作品はと問われると、コンテンツ選定の仕事では対象にならない「ゲットダウン」を挙げたい。
ヒップホップ文化の黎明期、現実の出来事と空想のヒップホップスターが交わり、新たなカルチャーを生み出していく様を描いた作品だが、その制作と配信はNetflix。いわゆる「NETFLIX Exclusive」のうちの1本だ。
他のNETFLIX Exclusiveと同様、著名な映画監督や俳優が協力しており、この作品も「ムーランルージュ」などで知られるバズ・ラーマンがメガホンを握っている。その出来はバズ・ラーマンの手腕だけでなく、劇中に登場する実在人物が存命で協力していること、この作品のために書き下ろされた音楽が素晴らしい仕上がりであることも含め、称賛に値するものに仕上がっている。2シーズン目が待ちきれないというファンも、読者のなかにはいるのではないだろうか。
実はNetflix、日本市場では少々苦戦していると言われる。苦戦と言われる理由は、NETFLIX Exclusiveの作品が(日本制作のものも増やそうとしているが)海外ドラマファン以外の視聴者を捕まえられていない点や、国内コンテンツを多数抱えるdTVやHuluに対して一般的な映像コンテンツのカバレージが狭いといったことも影響しているのかもしれない。
しかしNetflixは日本発の映像作品に継続的な投資をしている。いずれは日本でも定着してくるだろう。加えてAmazonプライムという巨大な会員データベースを誇るプライム・ビデオも、オリジナル作品を増やしてきており、Netflixと同じく日本にもその戦略を拡げている。
まだキラーコンテンツと言えるほどの日本独自作品は生まれていないが、アマゾンは低価格ながら映像コンテンツを愉しむには必要充分な端末として「Fireタブレット」や「Fire TVシリーズ」も販売。今後、こうした流れが止まるとは思えない。いずれは、ネットから大ヒットドラマシリーズが生まれる日(その日は意外に近いと思う)が来るだろう。
もちろん、いくら映像圧縮技術が進んだとしても、インターネット配信がUHD BDを越える画質を提供することはない。あったとしてもはるか未来のことだ。今後もプレミアムな映像作品をパッケージ購入するのであれば、光ディスクは重要な媒体であり続けるだろう。しかし“放送”に関してはどうだろうか。
AbemaTVの例を挙げるまでもなく、これまで多くのコンテンツを生み出してきたテレビ局の考え方も変化してきている。“テレビ局が変化した”とも言えるが、それは視聴者のライフスタイル、世の中のインフラの変化を映す鏡と捉えることもできよう。
世の中の変化はハードウェア、ソフトウェア、高級品、普及品などを問わず、市場に変化をもたらすものだ。海外からは一歩遅れるかたちではあるが、コンテンツの流通トレンドの変化は、来年以降のAV製品にも少なからず影響を与えるに違いない。