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International CES 2003の開催前日となる現地時間1月8日、今年も米Microsoftのビル・ゲイツが基調講演を行なった。会場は例年通り、CES会場に隣接するヒルトンホテル内シアターだ。
■ 3つの“Smart”コンセプト 2001年ごろからのゲイツ氏のお気に入りのキーワード、「Digital Decade(デジタル化の10年≒デジタル時代)」は、今回登場。さらに「2003年となる今年は、この『デジタル時代』がついに本格化を迎える時期となるだろう」と予言した。 そんな「デジタル時代」成長期を見据えた2003年にMicrosoftが提唱したキーワードが「Smart」コンセプトだ。これは「Smart Devices(高性能機器)」、「Smart Connectivity(高接続性)」、「Smart Services(気の利いたサービス)」という3つからなり、今後、マイクロソフトがリリースする製品は、この3つのコンセプトのうち少なくとも1つには適合するものになるという。
■ Smart Devicesとは 今回、Smart Devicesコンセプトの具体例として紹介されたのは、ゲーム要素を盛り込んだエクササイズ自転車、プログラマブルな縫製が可能なインテリジェント型のミシンなどだった。これは裏を返すと、MicrosoftのいうSmart Devicesとは「Windows CE.NETあるいはWindows XP Embededが搭載された家電製品」ということだろうか。 このタイプの製品で最もMicrosoftが期待をかけているのが、2003年春登場予定の「SmartDisplay」だ。「インテリジェントなPDA的な活用ができる液晶ディスプレイ」と説明されることが多い製品だが、その実、液晶ディスプレイにWindows CE.NETを搭載したデバイスであり、動作にWindows XPのリモートデスクトップ機能を活用している。デモンストレーションではSmartDisplay単体の活用シーンが紹介されたが、実際に販売される場合にはトラブルを避けるため、ホストPCとのセット販売になると予想されている。
ちなみに、SmartDisplayの中核技術となっているリモートデスクトップ機能は「Windows XP Home Editionでは利用できない」、「1つのホストPCに対して1機までしか端末を接続できない」という根本的な問題点がある。また、価格も通常の液晶ディスプレイと比べて高価になってしまい、かといってノートPCほどの機能はない。こうした機能面での課題も指摘されており、家電製品としてみた場合、Microsoftがいうほどは、その前途は明るくないだろう。 このほか、SmartDevicesカテゴリの製品として紹介されたものとしては、「Windows XP Media Center Edition(以下MCE)」搭載PCがある。昨年のCESでは「Freestyle」という仮称で紹介されたもので、これまで各社が独自インターフェイスで提供してきたPCのマルチメディア機能を「Windowsレベルで面倒見よう」とのコンセプトで開発されたものだ。 Microsoftとしては、テレビ録画機能付きのテレビAVパソコンなどはこのOSを搭載してリリースしてほしいという願望があるようだが、実際に搭載製品を投入する予定の日本のメーカーは東芝とNECくらいしかない。業界の反応は予想外に厳しい。 今回の基調講演では、東芝製のノートタイプのWindows XP MCE搭載AVパソコンのプロトタイプが初めて公開されたが、スペックや価格、リリース時期についてはアナウンスされなかった。 このほか、PCとAV機器のメディア標準規格「HighMAT」対応 & WMV再生対応のDVDプレーヤーが松下電器や、米Polaroidよりリリースされることもアナウンスされた。
■ HDD搭載型携帯マルチメディアプレーヤー「Media2GO」を公開 SmartDevicesコンセプト機器のうち、最も高い関心を集めたのが、今回初公開となったコードネーム「Media2Go」と呼ばれる小型機器だ。 Microsoftはこれを「パーソナル・メディアプレーヤー」と表現しており、簡単に言えば「音楽だけでなく映像の再生に対応した携帯プレーヤー」ということになる。 小型の映像/音声録再携帯機器というと松下電器の「D-Snap」などを連想するが、D-Snapがフラッシュメモリベースのデバイスなのに対し、Media2GoはHDDを内蔵するのが特徴。 公開されたプロトタイプは、4インチカラー液晶ディスプレイと20GB HDDを搭載し、ビデオなら175時間、音楽なら8,000曲、静止画なら3万枚の記録が可能だという。「単体でビデオ録画ができるのか」、「Windows CE.NET搭載機だとすればPDA機能はあるのか」といったところに興味がわくが、上記のスペック以外、情報開示は一切なかった。発売時期は2003年末の予定で、すでにSANYO、iRiver、SAMSUNG、ViewSonicの4社が開発に乗り出しているという。
一方、SmartConnectivityコンセプトは、Universal PnPに代表される「ユーザーに優しい接続性」を提供するものだ。既にWindows MeやWindows XPに実装されているテクノロジであり、Bluetooth、Wi-Fi(無線LAN)などのサポート強化を述べた程度で、とりたてて新しいテクノロジの開示はなかった。 SmartServicesコンセプトは「ユーザー本意のネットワークサービスを提供する」というもので、例として2002年10月より開始された「MSN8」、そして同じく11月より北米ではスタートし、日本でも1月16日より開始予定の「XboxLive!」が紹介された。
■ Smartコンセプトの集大成「SPOT」は次世代時計? そして、基調講演の最後に紹介されたのは、SPOT(Smart Personal Object Technology)と呼ばれる新技術。 SPOTとは簡単に言えば「一般的な家電製品にユーザー本意の基本的な情報処理能力を持たせよう」ということになる。「SPOTは、これまで述べてきた“Smart”コンセプトの集大成ともいうべきものである」と前置きをしつつ、ここでゲイツ氏は多数の時計を掲げた。 SPOTに関しては、2002年のCOMDEX Fallでも紹介されたが、この時点では「時計はアプリケーションの1つに過ぎない」というニュアンスでの発表だった。ところが、今回の発表では「時計の歴史」というビデオを見せてからの発表だったこともあり、「SPOTは新世代時計の技術」という印象を来場者に与えてしまったように思える。実際、今回、SPOT関連製品の開発に賛同するメーカーとしてCITIZEN、FOSSIL、SUUNTOが挙げられたが、これらはいずれも時計メーカーである。 ゲイツ氏は壇上で「2003年末までにSPOT製品が市場に並ぶ」とコメントしたが、時計製品一色になる可能性が非常に高い。また、気になるその情報提供のインフラだが、第1世代機では無線LANなどを用いたIP網をサポートする予定はなく、意外にもクラシックなFM放送のサブキャリアチャンネルを利用した単方向通信方式を採用するとのこと。これは丁度日本でも放送されているFM文字放送と同様の手法ということになる。 天気予報、交通情報のような加入者全員が受信できる情報の放送のほか、ある特定のユーザのみにデータを配信することも可能で、ポケベル的な活用も可能だという。これは、各端末にはキーデータが仕込まれているため、放送するデータに対し、その受信先端末を特定するような暗号化を行なって送信することで実現するとのことだ。前述の通り、SPOT機器自体には受信機能しかないので、メッセージの送信はPCなどを用いるのだろう。
Microsoftは、このSPOT用通信方式をNarrowBandやBroadBandになぞらえて「DirectBand」と呼称するという。なお、今回ゲイツ氏が、壇上に持ってきたプロトタイプ機は以下のような仕様であった。
(2003年1月9日)
[Reported by トライゼット西川善司]
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