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39,800円の液晶付きポータブルDVDプレーヤーを検証する
-MPEG-1/2やMP3、JPEGファイルをそのまま再生可能


 長瀬産業株式会社が、台湾Action Electronics製の液晶付きポータブルDVDプレーヤー「AXN-2588R」の販売を開始した。液晶付きのポータブルプレーヤーは以前から、ソニー、松下、パイオニア、シャープ、Samsungなどの各社から発売されているが、AXN-2588Rの最大のポイントは実売39,800円前後という価格にある。

 ニュースリリースにはあまり詳細が書かれていなかったので、長瀬産業にバッテリの駆動時間などの詳細を問い合わせたところ「実機がありますので、触って見てください」とのこと。せっかくのご好意なので、早速お借りしてその機能を検証した。


●外観は、大きな石鹸箱?

液晶を閉じるとまるで石鹸箱のようだ

 まずは外観から。広報写真は液晶を開いた正面からのアングルしかなかったので、実機で初めて閉じたところを見た。

 本体色はパールホワイトと黒のツートンカラー。パールホワイト部分がプラスチック丸出しな質感で、例えるなら大きな石鹸箱だろうか。安っぽくはあるが、実際に安いのでここは納得しておきたい。

 外形寸法は205×150×50mm(幅×奥行き×高さ)で、DVDのトールケースを重ねると少しはみ出る程度。重量は本体が950g、付属の専用バッテリが約500g(編集部で測定)。

 バッテリはニッケル水素(7.2V、3,600mAh)。本体底部に装着する座布団スタイルとなっている。通勤で持ち歩いてみたが、軽量とはいえないものの、それほど苦にはならなかった。

本体のみ バッテリ装着時

 パッケージには本体のほか、バッテリ、リモコン、ACアダプタ、専用AV変換ケーブル、ステレオイヤフォンといった必要不可欠なものに加え、シガーライターソケット用アダプタ、キャリングバックまで付いてくるという、豪華パッケージ。4万円を切る製品とは思えない充実ぶりだ。

 キャリングバッグは、これらすべての付属品が収納できるようになっており、肩掛け用ストラップも添付。キャリングバッグは上下2重構造で、上側に本体を固定して、バッグに入れたまま液晶を開いて鑑賞することができる。

 ただし、本体にバッテリを付けたまま上側に収納しようとすると、入らないことはないが、かなりきつくてやぶれそうになる。上側にはバッテリをつけない状態で収納して、バッテリは下側に入れるのが正解のように思えるのだが、そうするとバックに入れたままでは、ACアダプタを接続しないと使えなくなる。悩ましいところだ。

 なお、バックの下側にはリモコンを入れるポケットもあり、なかなかよくできている。ちなみに、上部にバッテリをつけた状態で本体を収納すると、下側のスペースも圧迫され、リモコン用ポケットが使いづらくなる。

「DVD」と大書きされているのはちょっと恥ずかしい キャリングバッグの上側に本体がすっぽり収まる


●本体だけでできる操作は少ない

 本体に装備する操作ボタンは、電源のスライドスイッチと、[PLAY]、[STOP]、[NEXT]、[PREV]、[OPEN]、[WIDE]のみ。[WIDE]ボタンを押すと、液晶の16:9表示と4:3表示が瞬時に切り替わる。

 最初に見たときには気がつかなかったのだが、使ってみると本体の操作ボタンだけでは、DVDプレーヤーとしてはかなり使いづらいことがわかった。というのも、最近のDVDタイトルは、最初にメニュー画面が表示されるタイプが多い。

 そうすると、本体にカーソルキーがないので、メニューを選択することができない。通常、デフォルトで本編再生が選択されているので、PLAYボタンを押せば本編の再生はできるが、映像特典を再生するのは無理だ。さらに、本体だけでは、字幕や音声も切り替えられない。

 もちろん、付属のリモコンを使えば全操作が可能ではあるが、基本的な操作ぐらいは本体だけでしたい。この点はかなり不満だ。音楽CDの再生だけなら、今あるボタンだけで問題ないだろうが、DVDの再生を考えるとカーソルー、決定、メニューボタンは欲しい。

 また、OSDは英語表記のみで、リモコンもすべて英語。ただし、説明書に日本語の説明が掲載されているので、問題ないだろう。

 動作音はDVD再生時に、時折シーク音が聞こえるが問題ないレベル。ただ、ドライブのフタを少し押すとディスク当たってしまうのが気になる。

 さらに、再生中にフタをオープンすると。ディスクが回ったままで、強制ブレーキすらかからない。DVDだとかなり高速に回転しているので、自然に止まるまで待つとかなり時間がかかるので、結局指で止めてしまうはめになる。もう少し配慮が欲しい。


●画質は必要十分、音質は思いのほかいい

 搭載する液晶はワイド5.8インチのTFT。液晶はいわゆるツルツル系のため、映りこみがあるが、動画を表示している分にはあまり気にならなかった。なお、解像度については説明書にも記述がなかったので、ざっと目視で数えると約390×約230ドットだった。

 画質関連で調整できるのは液晶右脇にある「BRIGHT」のみで、色調は変えられない。見えるという意味での視野角はそこそこ広いが、実際のスイートスポットはそれほど広くはない。そのため、結構細かく液晶の角度や、BRIGHTを調整する必要がある。

 また、階調が狭く黒つぶれも目立ち、多少ドット感はあるが、字幕がギリギリ読めるので、内容を確認する程度なら必要十分な画質。多少淡い色彩でパネル解像度の低さもあって、実写系よりアニメ系に向いているだろう。

DVDビデオ『モンスターズ・インク』の再生画像
 モンスターズ・インクを再生した液晶画面をデジタルカメラ「D100」で撮影した

(c)DISNEY ENTERPRISES,INC./PIXAR ANIMATION STUDIOS

付属のステレオイヤフォン

 音質面では、パッケージに誇らしげに「高音質設計 96kHz/24bit オーディオDAC搭載」と書かれている。ヘッドフォン端子が液晶脇に2つ用意されているのも特徴的だ。実際に聞いてみると、付属のステレオイヤフォンでは今ひとつだが、「Sennheiser PXC 250」でDVDのPCMトラックを聞いてみると、思いのほかいい。

 高音の伸びが弱く多少不安を感じるところもあるが、低音が不自然に強調されず、聞き疲れのしない良質な音だ。モーターを使ったポータブル機器ではよくある、回転系のノイズが乗ったりすることもない。ただ、バーチャルサラウンド系はもとより、高音・低音すら調整できないのは残念だ。また、128kbpsのMP3を再生すると、フォーマットの差以上に音質が劣るなど、ソースによりかなり音質が左右されるのも気になった。

 AXN-2588Rの背面には、外部入出力も装備しているので、液晶ビデオモニタとしても利用可能。ただし入力出力ともに、コンポジット/アナログステレオ音声のみ。S端子や、デジタル音声出力もないので、とりあえす繋げます程度と思ったほうがいいだろう。また、出力と入力が別々のコネクタになっているのはポータブル機では珍しいが、変換ケーブル1本しか付属しない。

背面に外部入出力端子を備える 付属の変換ケーブル


●MPEG-1/2のファイルを直接再生可能!

 DVDプレーヤーをレビューする際に毎回行なっている、再生互換テストの結果は以下のとおり。意外なのはリージョン1のDVDとビデオCDが再生できなかったこと。台湾製ということで、当然再生できると思っていたのだが。一方、PALについて本体の液晶での表示はもちろん、NTSCに変換して外部出力もされていた。

【再生互換テスト】
ディスク種別 結果
DVD-R
DVD-RW(VRモード) ×
DVD-RW(ビデオモード)
DVD-RAM(VRモード) ×
DVD+R
DVD+RW
DVDビデオ
リージョン1
×
DVDビデオ
PAL収録
ビデオCD ×
レーベルゲートCD
(SOUL'd OUT/ウェカピポ)
CD-R/RW、DVD-R/RW
(MP3)
CD-R/RW、DVD-R/RW
(WMA/Ogg Vorbis)
×
CD-R/RW、DVD-R/RW
(RMP4)
×
※この動作結果はあくまでチェックした個体での動作状況です。また、編集部では個別の動作状況についてお答えできません。ご了承ください。

ブラウザ画面。拡張子によりアイコンが変わる

 DVD-RWにVRモードで録画したディスクを入れると、再生することができないものの、なぜかファイルブラウザ画面が表示された。通常のデータディスクと認識されたようだ。そこで、DVD-RにJPEG、MP3、MPEG-1、MPEG-2ファイルの4種類を書き込んで、AXN-2588Rにセットすると、ファイルブラウザにすべてのファイル名が表示された。ブラウザでファイル選ぶと、4種類のファイルすべてが問題なく再生可能だった。

 つまり、オーサリングしなくともCD-Rや、DVD-R/RWにMPEG-1/2ファイルをそのまま焼き込めば、再生できるということになる。PCでTV録画をしているならば、録画したMPEG-1/2ファイルを、オーサリングなしで、そのままディスクに入れて外出先で見るということが簡単に実現できる。

 なお、DVD-Rは格安で販売されている製品も含め数枚試したが、すべて問題なく再生できた。一方、DVD-RWについては、安く売られているもので再生できないものがあったので、相性が多少あるようだ。また、CDの読み込み速度が遅いらしく、高ビットレートのMPEGファイルを入れたCD-Rでは、コマ落ちが発生した。

 ファイル名の日本語表示には対応しておらず文字化けし、MP3のID3タグも表示できない。再生機能についても、全曲、リピート、フォルダリピートしかなく、シャッフル再生などはないので、音楽プレーヤーとしてはあまり使い勝手はよくない。

 静止画については、DVD-Rに入れた3,008×2,000ドットのJPEGファイル(約3MB/枚)でも1~2秒で表示できたので、写真ビューワとしても実用性は高い。また、リモコンのカーソルキーで画像が回転し、縦位置で撮影した写真も正方向で表示できる。


●DVD再生3時間、液晶OFFで6時間のバッテリ駆動

付属のACアダプタ

 説明書には、バッテリは満充電に約5時間かかり、3時間の使用ができるとある。また、「充電中はDC電源端子が赤く点灯し、充電が終わると緑色になる」とも書いてある。

 しかし、DC電源端子部には赤く光るようなところはなく、バッテリの前面にあるLEDの間違いかと思った。しかし、ACアダプタを挿して電源を切ると、バッテリのLEDが確かに赤く点灯するのだが、いつまでたっても赤いまま。丸一日置いても変化なし。借りた個体が故障しているだけかもしれないが……。

 多少の不安を抱きながら使ってみると、問題なくバッテリ駆動できたので、充電はされているのだろう。しかし、充電が終わったのが、いつかわからないのは困りもの。使用時もバッテリ残量のインジケータはなく、後どれくらい再生できるのか目安すらわからにのも不安だ。

 とういことで6時間程度充電して、液晶でDVDビデオ再生すると、ほぼスペックどおりの約3時間10分再生したところでバッテリが切れた。もう一度充電して、MP3をリピート再生させながら、液晶を閉じる(液晶がOFFになる)と、約6時間連続再生できた。



●値段分の価値は十分にあり

 デザインや、操作性など完成度が低い部分もあるが、4万円を切る価格を考えれば我慢できる範囲。ただ、映像出力がコンポジットのみ、デジタル音声出力もないので、据え置きで使おうと考えている人は、その点は考慮したい。

 また、オーサリングなしでMPEG-1/2が再生できるのは、PC録画派にはかなり便利だろう。MP3やJPEGファイルも再生できるので、パソコンとの連携性能は高い。

 この値段であれば、買って損はない製品であることは確か。今後、AXN-2588Rに触発されて、格安液晶付きDVDプレーヤーが各社から続々発売されること期待したい。


□長瀬産業のホームページ
http://www.nagase.co.jp/
□Action Electronicsのホームページ
http://www.action.com.tw
□関連記事
【7月2日】長瀬産業、実売39,800円のポータブルDVDプレーヤー
-5.8インチのワイドTFT液晶ディスプレイを搭載
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030702/nagase.htm

(2003年7月15日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]


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