◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
ソニー、第1四半期決算は最終利益が大幅増
-VAIO、ウォークマン、PSXが苦戦、携帯電話は好調


(左から)IRオフィスバイスプレジデントの小沢幸雄氏、執行役副社長兼グループCEO&CSOの井原勝美氏、執行約常務の湯原隆男氏
7月28日発表


2004年度第1四半期の連結実績

 ソニーは28日、2004年度第1四半期(4~6月)の連結決算を発表した。

 売上高は、前年同期比0.5%増の1兆6,121億円に対して、営業利益では41.4%減の98億円、税引前利益は81.5%減の66億円と大幅な減益となったものの、当期純利益は前年同期比1,975.3%増となる233億円となった。

 今回の決算は、ドル、ユーロの円高為替の影響を大きく受けており、「売上高では、現地通貨べースで換算すれば前年同期比5%増、営業利益でも27%増の計算となる。また、税引前利益に関しても前年同期には株式の売却益が計上されていたことが大きく影響している。4月時点では、第1四半期は営業損失の可能性を指摘していたことと比較すると、営業利益を計上できたことは予想を上回る実績といえる」(ソニー執行役副社長兼グループCSO&CFO・井原勝美氏)と、数字上の結果で示されるもの以上に好決算な内容であるとの見解を強調した。

 また、今回の決算では、持ち分法利益に関して説明する時間を割き「今後は、1社でビジネスをやるよりは、補完できる企業と一緒にビジネスをやることが増える。ソニー・エリクソンによる携帯電話事業や、サムスンとのLCDのビジネスなども、この持分法損益のなかで示されることになる。当社のビジネスを推し量る上で、重視していただきたい」と井原氏は説明した。

 ちなみに、第1四半期の持分法損益は、ソニー・エリクソンの大幅な収益改善効果があり、前年同期のマイナス97億円の赤字から、今期は201億円の黒字となった。

■液晶リアプロ、電子デバイス関連が支える

エレクトロニクス概況

 ソニーの第1四半期決算を支えたのは、CCDや低温ポリシリコンLCD、光ピックアップなどの電子デバイス関連事業の好調ぶり。また、海外向けの液晶リアプロジェクションテレビ、フラットパネルテレビ、デジタルスチルカメラなどの好調ぶりも大きく影響したという。

 エレクトロニクス事業は、プレイステーション 2の外注生産移行などが影響して、前年同期比0.2%減の1兆980億円と微減。だが、これも現地通貨ベースでは4%増となり、為替の影響が大きいことを示した。

 営業利益は49.9%減の69億円。構造改革費用で107億円を計上したこと、半導体プロセス技術に関わる研究開発費の増加が減益要因。だが、これも現地通貨ベースでは前年同期比25%増となり、円高が大きく影響していることを改めて強調した。

■携帯オーディオで巻き返しを図る

 エレクトロニクス分野を製品ごとにもう少し詳しく見てみよう。

 テレビに関しては、ブラウン管テレビが落ち込みを見せている一方で、国内では液晶テレビの需要が大きく伸張。さらに、液晶プロジェクションテレビが米国および中国で高い伸びを示しており、「ブラウン管テレビの売上の落ち込みを、フラットテレビや、プロジェクションテレビのGRAND WEGAでカバーし、テレビ全体では増収。ただし、利益に関しては、フラットテレビのコスト低減が追いつかず、前年実績を割り込む結果になった」(湯原隆男執行役常務)という。

 オリンピック需要に関しても、「欧州などでは効果もあったが、地域によって効果がなかったり、製品によってはまったく影響がなかったりと温度差がある」とした。

海外で好調のGRAND WEGA

 オーディオは、市場全体が、iPodをはじめとするHDDなどを搭載した携帯オーディオへと移行しはじめたのを受けて、CDウォークマン、MDウォークマンといった既存の携帯オーディオ機器が相次ぎ減収。この影響を受けて、第1四半期としてはオーディオ事業初の赤字決算となった。

 湯原執行役常務は、「7月にHDD搭載ネットワークウォークマンを発売し、さらに、Hi-MD対応製品やVAIO pocketなど多種多様な製品を投入した。今後、オーディオ機器の繁忙期を迎えるため、これらの製品により売上を伸ばせる」と巻き返しに意欲を見せている。

井原執行役副社長 湯原執行役常務

 井原執行役副社長も「HDD搭載のオーディオ機器の市場が今後広がることは認識している。当社の強みは、端末の性能で他社を凌駕できる点にある。使い勝手、音質、HDDの容量、バッテリの持ち時間など、ポータブルオーディオに必要とされる機能で他社を凌駕していると自負している。1機種だけでなくバラエティ豊かな製品ラインナップをしているのも強みだ。また、当社も「CONNECT」といった音楽配信サービスを開始し、製品だけではないアプローチも開始している。競争は始まったばかりと認識している」と、iPodへの対抗する姿勢を見せた。

■テレビ、オーディオ、情報・通信が赤字

製品カテゴリー別の実績

 パソコンのVAIOは、第1四半期は苦戦を強いられている。その点に関して、湯原執行役常務は次のように説明した。

 「夏商戦は、市場全体が想像以上に落ち込んだ。VAIOもその影響を受けている。また、新しいVAIOを5月に投入し、基調カラーを黒に統一するなどイメージの一新を図ったが、主力としている高機能モデルを購入するユーザーは購入検討に時間がかかるという報告も受けている。VAIOの様々な使い方が、お客に対してちゃんと訴求できるように、国内のマーケティング部門とともに今後の売り方を考えていきたい。国内では、個人向けの年末に向けた新製品が9月の後半から10月に出ることになるが、当社としても、ここに向けて新たな製品を出していくことを考えている」

 新生VAIOの売れ行きはやや鈍いという点が、今回の決算から明らかにされ、巻き返しへのテコ入れが必要だといえそうだ。

 なお、同社では、今年度のパソコンの出荷計画として、国内120万台、海外250万台の合計370万台の出荷を見込んでいるが、この目標値は修正しない考えだ。

 デジタルカメラは、欧州およびアジア地域で急速に売上が拡大。とくに中国でサイバーショットの売上が増加していることで、収益拡大に貢献したという。

 一方、DVDレコーダに関しては、「前年に比べて伸びている」(湯原執行役常務)としたものの、「利益貢献は決して大きいものではない」、「PSXは期待よりも売上が少ない」などと説明、利益改善とテコ入れが臨まれることになりそうだ。

 エレクトロニクス事業を、製品セグメントごとに、利益の観点から見てみると、オーディオ、テレビ、情報・通信が赤字決算、ビデオも前年同期比29.8%減という結果。円高の影響や第1四半期という需要期ではないことなどの理由があるとはいうものの、主力製品が軒並み厳しい内容となったのが気になるところだ。

■携帯電話事業は利益体質に完全転換

 そうしたなか好調なのが携帯電話事業。ソニー・エリクソン・モバイル・コミュニケーションズは、売上高が前年同期比34%増の15億400万ユーロ、税引前利益は前年比2億1,500万ユーロ増加の1億1,300万ユーロと黒字転換。当期純利益も1億7,700万ユーロ増加の8,900万ユーロと最終黒字化した。このうち、ソニーへの持分法での利益への影響額は58億円で、前年同期から116億円の改善となっている。

 販売台数も前年同期比55%増の1,040万台となり、「出荷台数は四半期としては過去最高を記録。携帯電話事業は利益を出せる構造に転換したと言い切れる」(湯原執行役員常務)とした。

 前年までソニー・エリクソンを担当していた井原執行役副社長は、「昨年になって、T610という製品をやっと出すことができたが、その間、米国での一部ビジネスの撤退やR&Dサイトを閉鎖するなど荒療治もやってきた。だが、強い商品を作り、成長できる基盤ができあがってきたと考えている。ソニーにはワイヤレスに関するノウハウがあまり蓄積されていないことから、ソニー・エリクソンのノウハウが貢献できるだろう。また、ビジネス面でも最近、ソニーにはスピード感がないといわれているだけに、これを蘇らせる役割もできそうだ」と、携帯電話事業の成功体験を全社に波及させたいとの意向を示した。

■映画事業は第2四半期に急成長か?

 一方、ゲーム事業は、売上高は前年同期比15.9%減の1,054億円。営業損益は、前年同期の18億円からマイナス29億円と一転して赤字決算となった。

 ハード本体の出荷台数が欧州では増加したものの、米国、日本で販売台数が減少したのに加え、戦略的な価格引き下げの影響が減収に直結。さらに、自社制作ソフトが、前年の14%から11%に構成比が減少したことが減益につながった。

 「プレイステーション・ポータブル(PSP)や、次世代ゲーム機向けに高水準の研究開発投資を継続的に行っており、これも利益を引き下げる原因になっている」(湯原執行役常務)としたが、「PS2のビジネスは収穫期に入っていると判断しており、ソフトは増収となっている。夏以降は本体の増産体制をとり、ピーク時には月産300万台をやりたい」とゲーム事業の業績回復に意欲を見せている。

ゲーム事業概況 音楽事業概況
映画事業概況 金融事業概況

 音楽事業に関しては、売上高が前年同期比1.5%増の1,188億円、営業損失がマイナス11億円の赤字。赤字幅は縮小しており、売上高の7割を占めるSMEI(ソニー・ミュージックエンタテインメント)における回復が寄与している。

 映画事業は、DVDやVHSソフトの売上増加によって、前年のマイナス24億円の赤字から41億円へと黒字転換。売上高は、前年同期比1.9%減となったものの、現地通貨ベースでは6%増の増収になったという。6月30日に全米で公開されたスパイダーマン2が、7月からの第2四半期の収益に大きく貢献するのが確実なことから、第2四半期は強気の読みを見せている。

 金融事業は、ソニー生命の減収減益が影響して、金融ビジネス収入が前年同期比10.7%減の1,336億円、営業利益が25.9%減の104億円となった。

2004年業績見通し

 なお、同社では、第1四半期の連結決算が当初見込みを上回ったとしながらも、通期の業績見通しである売上高7兆5,500億円(前年比1%増)、営業利益1,600億円(62%増)、税引前利益1,600億円(11%増)、当期純利益1,000億円(13%増)に変更はないとした。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース(ソニー本体)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200407/04-039/
□ニュースリリース(ソニーコミュニケーションネットワーク)
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200407/04-038/
□関連記事
【5月19日】ソニー、2004年度経営方針を説明
-レコーダの共通仕様を構築。Cellは2006年以降に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040519/sony.htm
【4月27日】ソニー、2003年度決算を発表。売上高は微増
-「PSXは想定した売上台数に届いていない」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040427/sony.htm

(2004年7月28日)

[AV Watch編集部/Reported by 大河原克行]


00
00  AV Watchホームページ  00
00


Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.