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45型AQUOSの好調で加速するシャープの液晶事業
-約100万円の製品が事前予約だけで千台越え


シャープ 45V型液晶テレビ「AQUOS LC-45GD1」
 シャープが8月1日から出荷した45V型液晶テレビ「AQUOS LC-45GD1」の売れ行きが好調だ。

 同社の町田勝彦社長によると、「発売前の事前予約だけで1,000台強に達した。出荷済みのものを含めて、すでに2,000台弱の予約に到達している」。

 1台約100万円(標準価格997,500円)という高額商品が、あっという間に1,000台の予約数を越えてしまうのだから驚きだ。

 実は、当の町田社長も、その出足の良さに驚きを隠さない。

 「事前予約1,000台強のうち、約800台が地域販売店によるもの。大型量販店は2割程度でしかない。この販売ルートの傾向にも驚いたが、そのほとんどが現金で購入しているというのだからさらに驚いた」と話す。

 地域販売店の多くは地元に密着し、優良顧客を抱えている。それだけに、高額商品の販売では驚くべき力を発揮する。松下電器産業のVIERAも、プラズマ大画面の高額製品ほどナショナルショップでの販売比率が高く、高額モデルに限定すれば約半分をこれらのルートで売っている。

 「報告によれば、37型の商談をしていた時に、もう少し大きいのが出ますよ、といったら、『じゃあ、そっちにしてくれ』という話になることもあるという。サンプルも見ないで、これだけ多くのお客様に予約していただいていることは大変ありがたいこと」と町田社長は話す。

 すでに品薄なのは明らかだ。「いまは即納は無理。商品供給が潤沢になるのは9月後半頃から」と国内営業本部長を務める大塚雅章専務取締役は説明する。

 そして、この勢いは当面続きそうだともいう。

町田勝彦社長

 「今後も月間1,000台程度で推移しますか」という質問に対して町田社長は、「いやいや、そんなわけないよ」と強気の姿勢を見せる。続けて、「年末までは、最低でも月3,000台はいくんじゃないだろうか」と話す。

 同じ質問を大塚専務にもぶつけてみた。こちらの発言はもっと強気だった。

 「8月、9月で月5,000台ずつ。合計で1万台を売りたい」。1万台といえば、それだけで、ざっくり100億円のビジネスに到達する規模だ。

 「アテネオリンピックは、水泳競技が早い段階に予定されている。ここで、北島康介選手が金メダルでも取ったら、またテレビの需要が伸びるんじゃないだろうか」と余裕のコメント。

 今年4~6月の実績は前年同期比180%の計画を上回る200%。7~9月は一服感が出そうだというが、それでも1.5倍から1.8倍の伸びを見せる可能性は高い。そして、年末も同様の勢いで推移するという強気な見通しだ。その背景には、やはり45型の貢献が見逃せない。

 「45型に引っ張られて、37型の売れ行きも高まってきた。一番上の製品まではいらないが、2番目の製品がいいという顧客層を捕まえ始めている」(町田社長)というのだ。これが平均単価の上昇にも影響しているという。

●50型台にも展開を検討

 そして、45型の出足の良さは、今後の製品戦略にも大きく影響を及ぼしそうだ。「45型の感触の良さで、もう少し上の需要もあると考えている」と町田社長は言及する。

 「大画面テレビの最大の売れ筋ゾーンは、37型になると見ている。それを軸に考えれば、上方向には、45型だけでなく、50型や55型のラインアップも必要ではないか」。

 大画面ではプラズマが優位とされるが、応答速度、消費電力、価格でも大幅な改善が図れるとして、「プラズマよりも1割程度価格が高いところで落ち着くようになれば、大画面での競争力は一気に高まる。いまは、そのための努力に取り組んでいる」という。

 さらに技術陣は、45型の低価格化についても、町田社長に対して、「任せてほしい」と自信溢れる報告をしていると話す。

 まさに、45型の出足の好調ぶりと今後の技術改善を背景に、大画面製品に自信を深めたシャープが、プラズマに対して改めて宣戦布告した格好だといっていい。

●亀山への次期投資も本格検討へ

亀山工場

 大画面テレビの事業を加速するためには、当然、生産設備の増強も鍵になる。主力となる亀山工場は、8月から第2期の生産設備が稼働し、生産に加速がかかっている。

 また、来年春には第3期の生産設備の稼働となり、増産体制にも対応できることになる。

 気になるのは、やはり次期生産設備への投資ということになるだろう。

亀山工場の生産ライン

 町田社長は設備投資について、「事業計画から逆算すると2006年度末までには、次の工場が欲しい。亀山第2工場ということも考えなくてはならないだろう。だが、亀山工場が、当初の計画よりも4カ月も早く立ち上がるなど、その立ち上げノウハウも蓄積されている」とする。

 「既存生産拠点の生産効率の向上を優先すべきかといった検討なども行ない、結論を急がずに、もう少しゆっくり考えることもできると考えている。年末ぐらいには最終的な結論を出すことになる」。

 「むやみに資金を投入するのではなく、技術が追いつくタイミングを見計らって、一気に投入する」というように、生産設備の増強の時期を推し量っている段階だといえよう。

●安定した液晶の事業体質

 一部報道などでは、今後のクリスタルサイクルの影響や、今後、液晶やプラズマが市場に過剰に供給されることになるとの動きを懸念する声が出ている。

 また、大幅な価格下落の影響によって、液晶各社の業績悪化を懸念する指摘もある。だが、シャープの町田社長は、その見方を強く否定する。

 「世界需要が年間1,200万台に達するという予測もあったが、とてもそうなるとは思えない。当社は、当初から今年度の世界需要が750万台程度と予測しており、それに向けた生産設備投資を行なっている。過剰な供給にはならない」と話す。

 そして、業績悪化の懸念についても、同社の事業体質の面から影響はないとする。

 「当社の液晶事業のうち、約6割は中小型の分野。ここに関しては、日本のメーカー同士の競合であること、さらにカスタムメイドの製品であり、価格下落の影響を受けにくいなどの特性がある。6割をこの分野が占めているということは、しっかりと事業の数字が読めるということでもある。また、残り4割の大型分野に関しても、半分以上がシャープ自身が使うもの。価格競争の影響を大きく受ける可能性がある不安材料は全体の1割の事業でしかない。私自身、これまでのビジネス経験のなかで、価格が上がったという経験は一度もしたことがない。常に価格下落という点を読んでいる。その点を含めても懸念されるような業績悪化ということはない」

 ただ、液晶テレビの最終製品として、現在のシェアを維持することに関しては難しいと手綱を締める。

 「ソニー、松下などの強いベンダーとの争いを余儀なくされるだけに、いまのままの圧倒的なシェアが維持できるとは思っていない。それでも、液晶テレビで3割のシェアを確保したい。もろちん、液晶の外販を含めて5割以上のシェアというのは堅持したい」と意欲を見せる。

 最終商品で3割のシェア維持は、1位の座は譲らないというのと同義だ。同社の株価は、液晶事業の行方に大きく左右されているのが実状。当面、液晶事業を強気に展開することが株価維持にも直結する。

 そろそろ各社から次の新製品が発表されるタイミングに入ってくる。まずは、「オリンピック商戦と同等の販促費用を計上している」(大塚専務)という年末商戦に向けたシャープの次の一手が気になるところだ。

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(2004年8月6日)

[AV Watch編集部/Reported by 大河原克行]


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