◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
東京FMとKDDI、デジタルラジオのH.264簡易動画デモを実施
-MPEG-4より高品位な動画放送を実現


試験放送でH.264の簡易動画を放送し、会場で受信するデモが行なわれた
9月14日開催


 株式会社エフエム東京ニッポン放送JFNC(ジャパンエフエムネットワーク)が共同運営するDigital Radio 98 The VoiceとKDDI株式会社は14日、地上デジタルラジオのPDA型受信機で、H.264フォーマットを使った簡易動画放送の受信デモを行なった。

3月3日に行なわれたデモでは、簡易動画のフォーマットが決まっていないため、試験放送で流せず、会場ではTSポートから直接データを流していた

 KDDIとエフエム東京は、3月3日にPDAタイプの地上デジタルラジオ受信端末の試作機を公開。東京タワーの特設会場で一般向けの体験会を開催し、簡易動画放送のデモンストレーションも行なった。しかし、当時は簡易動画のフォーマットが決定しておらず、MPEG-4フォーマットを使用し、TSポートから直接データを流すしていた。

 今回のデモは、3月24日に地上デジタルテレビ放送の携帯端末向けフォーマットが「AVC/H.264」に決定し、デジタルラジオについても同方式を採用する方向で検討が進められているのを受けてのもの。

 会場ではKDDIのPDA型端末を使い、実際に試験放送からH.264の動画データを受信するデモに加え、日立アドバンスドデジタル/日立製作所が開発しているH.264用エンコーダ、株式会社デイ・ストームが開発した簡易動画付番組制作システムなどの展示も行なわれた。

 展示された端末は、3セグメント放送の受信に対応し、動画やBMLの表示もサポート。ハードウェア的には3月3日に公開されたものとほぼ同じだが、今回新たに韓国McubeworksのH.264ソフトウェアデコーダを搭載した。動画はBMLとの同時表示に加え、全画面表示もサポートしている。

KDDIが開発したPDA型の端末は、3月に公開されたものとほぼ同じ。背面にバッテリーパックやチューナを備えている

伝送パラメータと伝送帯域

 放送された動画のビットレートは192kbpsで、解像度は320×240ドット、フレームレートは15fps。Baselineプロファイル1.2に準拠している。音声はAACの128kbpsステレオ。伝送帯域は、A階層と呼ばれる1セグメント帯域に音声とデータを、B階層(2セグメント)に簡易動画とダウンロード用のデータを収めている。

 なお、H.264とMPEG-4の同ビットレート/フレームレート時の画質比較も行なわれたが、総じてH.264のほうがブロックノイズや輪郭のブレが少なく、解像感でも優れていた。ただし、端末にかかる負荷はH.264が約2倍高く、消費電力も大きく、現在のところ携帯電話などでソフトウェアデコードするのは難しい。KDDIは「新しいデコーダチップの開発などで対応していきたい」としている。

H.264とMPEG-4の画質比較デモ 日立アドバンスドデジタル/日立製作所が開発しているH.264用エンコーダ


■ 3、4年後には本格的な放送を

「あくまでメインは音声放送だが、テレビとは競合しない、独自の動画放送を作っていきたい」と語る、エフエム東京の園城常務取締役

 エフエム東京の園城博康常務取締役は、「デジタルラジオの開発は5年前から開始してきたが、当時は理解を得られない場面が多かった。だが、MDやCDやPCなど、デジタル機器が一般化し、放送局側のデジタル化も進む中、テレビを含めて地上波放送のみがアナログのままという状況に疑問を持っていた」と当時を振り返り、「デジタルで作り、デジタルで放送し、デジタルのまま受信する。そのスマートな形が実現しつつある」と、喜びを語った。

 今回のデモについては「TOKYO FMでは3セグメント放送を予定しているが、簡易動画はその大きな利点の一つ。H.264に決まったことで、デジタルラジオのハードウェア面でのパーツが、やっとすべてそろったという気持ち」と感想を述べた。さらに、「国の方でも近いうちにチャンネルプランの検討を始めてくれるのではないかと期待している。3、4年後にでも本格的な放送を始めたい」と心境を語った。

KDDIの村上技術開発本部長

 KDDIの執行役員技術開発本部長の村上仁己氏は、FMラジオを搭載した同社の携帯電話の出荷台数が100万台を突破したことに触れ、「上層部も考えていなかったヒット。3月に試作機を出してから約半年が過ぎたが、このように状況は刻々と変化している」と語る。

 さらに、「iPodでデジタルオーディオがより身近になり、音楽をネットワークを通じて購入するという文化も芽生えようとしている。これは地上デジタルラジオの付加サービスにも大きな追い風になるだろう」と語り、今後の業界動向に注目しながら、地上デジタルラジオの新たなサービスやコンテンツを提案していく考えを示した。

 なお、試験放送では発表会当日だけでなく、今月よりH.264フォーマットの動画放送が継続的に行なわれるという。現在の試験放送用番組はエフエム東京の中で最も小さなスタジオで、3~4人のスタッフが、シンプルな機材を使って制作しているとのこと。

 機材はディ・ストームの簡易動画付番組制作システムを利用。一般的にWeb向け動画コンテンツ製作現場で使われているもので、ショートムービー制作ツールや、クロマキー&バーチャルセットを作り出すソフトウェア、映像制作総合ツールなどで構成されており、ノートPCやクロマキー用のセットだけで手軽に構築できるという。

試験放送用番組の収録模様。パーソナリティーの前に設置されたディスプレイには、デジタルキューシート(番組進行表)が表示されている。使われるメタデータには、コーナー名や曲名なども含まれているため、地上デジタルラジオのデータ放送に利用が可能 デイ・ストームが手掛ける簡易動画付番組制作システムも展示された

 


□エフエム東京のホームページ
http://www.tfm.co.jp/
□KDDIのホームページ
http://www.kddi.com/
□関連記事
【3月24日】地上デジタルの携帯端末向けフォーマットが「AVC/H.264」に決定
-2005年度中にサービス開始できる見通し
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040324/gdb.htm
【3月3日】KDDI、3セグ対応の地上デジタルラジオ試作機を公開
-東京タワーで4日から体験イベントを開催
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040303/kddi.htm

(2004年9月14日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c) 2004 Impress Corporation All rights reserved.