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株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)の家庭用ゲーム機「PSP(プレイステーション・ポータブル)」で再生できる「UMDビデオソフト」がリリースされた。第1弾タイトルの正式な発売日は4月13日だが、ヨドバシカメラやビックカメラなど一部店舗では、DVDビデオなどと同じように前日の12日には、フライングで販売が開始されていた。早速UMDビデオソフトを購入し、画質や音質、使い勝手などを検証した。 ちなみに、UMDビデオソフトには、国内のコンテンツメーカー27社が3月3日に参入を表明。さらに、4月11日にブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメントも参入表明を行ない、現在28社が参画している。 4月13日発売の第1弾タイトルは、SME(ソニー・ミュージックエンタテインメント)、SPE(ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)、カプコンの3社が計11タイトル。今回、編集部では映画ソフトとしてSPEの「バイオハザードII アポカリプス」(標準価格3,990円)、音楽ソフトとしてSMEの「中島美嘉/FILM LOTUS IV」(同4,935円)を購入した。なお、そのほかのタイトルや発売日情報はUMDビデオ発売日一覧に掲載している。
実際に購入した店舗は新宿西口にのヨドバシカメラだが、DVD販売コーナーではなく、PSPを販売しているゲーム・ホビー館の中で取り扱われていた。販売コーナーは店舗によって異なるだろうが、ビックカメラでもゲームコーナーで販売されており、当初はPSPのゲームソフトと同じ売り場で扱われることが多そうだ。 価格についてはヨドバシカメラ、ビックカメラともにDVDビデオと同じく、標準価格から1割り引きで、10%ポイント還元となっていた。
■ 外観やディスクはUMDゲームソフトとほぼ同じ
UMDビデオのパッケージは、UMDゲームソフトと同じプラスチック製のトールタイプ。サイズもゲームソフトと同じで、DVDのケースよりも高さが1cm、幅が2cmほど小さいが、DVDソフト用のラックにも収納できそうだ。背丈が低いため、側面から見てもUMDとDVDの区別はつきやすい。 ケースを開けるとUMDビデオソフトと付属品が現れる。「バイオハザードII アポカリプス」にはUMDビデオのラインナップが書かれたチラシが、「中島美嘉/FILM LOTUS IV」にはライナーノーツが入っていた。なお、FILM LOTUS IVのライナーノーツはDVDに同梱してるものを縮小したもので、内容やデザインはほぼ共通の「縮小版」となっている。 ディスクのデザインはゲームソフトとほとんど同じで、ピクチャーレーベル仕様。唯一の違いは、保護カートリッジの表面に映画であるバイオハザードII のディスクにはフィルムのマークが、音楽ソフトのFILM LOTUS IVには音符のマークが印刷されていること。ゲームのディスクにはゲームコントローラーのマークが描かれている。
なお、PSPのUMDビデオ再生時のバッテリの持続時間は、カタログスペックで4時間~5時間となっており、映画1本は問題なく再生可能だ。
■ 小さなDVDビデオという感覚 PSPが起動した状態でUMDビデオソフトを挿入すると、UMDビデオソフトであることが認識され、ゲームと同様に独自の壁紙とサムネイル動画(FILM LOTUS IVはアイコンのみだった)が小画面で表示された。ディスクが認識されるまでの所要時間は両タイトルとも約9秒。なお、比較のためにゲームソフトの「RIDGE RACERS」も計測したが、こちらも約9秒とほとんど差はない。 ディスクが認識された状態で再生ボタン(○ボタン)を押し、映像が表示されるまでのロード時間は、バイオハザードIIが約4秒、FILM LOTUS IVが約5秒とほぼ同じ。25~26秒かかるゲームのRIDGE RACERSと比べると高速だ。 なお、初回再生時や、△ボタンを押して表示されるメニューから「始めから再生」を選んだ際などには、DVDビデオと同様に「違法上映や違法コピーなどを禁止する」という旨の注意画面が表示され、スキップボタンを押しても「その操作は実行できません」と表示される。しかし、一旦再生を停止し、再度再生ボタンを押すと同画面がスキップできる。このあたりはDVDビデオと同じフィーリングだ。 また、レジューム再生にも対応しており、○ボタンを押して再生すれば、前回終了した場面から再生が再開される。なお、レジュームポイントはディスクを抜いても保存されている。ただし、ディスクを抜いてほかのUMDビデオソフトを再生すると、レジュームポイントは新しいソフトのものに上書きされてしまい、元のソフトを挿入しても最初から再生されてしまう。レジュームポイントの記憶は「UMDビデオ用」として1つしか保持できないようだ。また、完全に電源をOFFにしても、レジュームポイントはクリアされてしまう。
再生中の基本的な操作はメモリースティックDuoに記録したMPEG-4動画を再生する際と同じで、△ボタンを押すと表示されるメニューアイコンを選んで操作できる。また、各ボタンにも操作が割り当てられており、チャプタスキップはL/R、早送り/巻き戻しは左右ボタン、再生/一時停止はSTARTボタンで行なう。各操作のレスポンスはDVDと変わらない。 原則として画角の変更もMPEG-4動画と同様に行なえるが、16:9のワイドスクリーンで収録しているバイオハザード IIは、フル画面表示のみしか行なえない。4:3のスタンダードで収めているFILM LOTUS IVは、フル画面やズーム表示への切り替えも可能だった。
なお、基本操作はボタンのみで行なえるが、音声切り替えやアングル切り替えなどはスクリーンメニューからのみ選択できる。字幕の切り替え時に一瞬画面が引っかかるが、不満を感じる遅さではない。なお、バイオハザードIIの字幕フォントのサイズは1文字あたり5×5mm程度で小さいが、PSPの液晶は高精細なため、視認性は確保されている。ただし、複雑な漢字は潰れてしまっているものもあり、老眼だと少々辛いかもしれない。
■ 画質は良好、音質は痩せ気味で、音量がネック 画質は良好で、高ビットレートでエンコードした自作のMPEG-4映像と比べても解像感や階調の豊かさで勝っている。特に女性の肌の滑らかさや髪の毛の描写などで違いが顕著だ。ブロックノイズもほとんどなく、モスキートノイズも確認できない。画面が小さいため、粗も目立たない。 ただし、暗部の階調は潰れ気味で、暗闇のシーンの情報量は少ない。しかし、ポータブルプレーヤーとして屋外で視聴することを考えれば、十分高画質と言えるだろう。 バイオハザードIIの音質はDVDと比べると痩せぎみで情報量が少なく、高域の伸びや低域の厚みは今一歩という印象。音場も一回り小さく感じる。しかし、圧縮に起因するノイズなどは感じられず、聞き疲れする心配はなさそうだ。なお、PSP本体のイコライザである「HEAVY」、「POPS」、「JAZZ」、「UNIQUE」の4モードも利用できる。
音質よりも気になったのは音量で、PSP本体のボリュームを最大にしてもアクション映画を観るにはもう少し音量が欲しい。耳栓型のイヤフォンを使用した方が良いだろう。また、そうした不満を見越してか、スクリーンメニューの中には「UMDビデオ音量」という項目が存在し、標準から+2まで、2段階の音量増幅が行なえる。 試しに+2に設定したところ、迫力と音量不足はだいぶ緩和された。しかし、若干イコライジングされている印象があり、中音域が迫り出した音になった。細かい音は埋もれて聞き取りにくくなるが、セリフの判別には役立ちそうだ。 DVDビデオの音声はダイナミックレンジが広いため、テレビなどにアナログステレオで接続していると、全体的な音量が低く感じてしまう。そのため、プレイステーション 2を含めDVDプレーヤーにダイナミックレンジを圧縮する機能が搭載されている機種も多い。しかし、UMDビデオの場合、オーディオは2chのみでPSPでしか再生されないのだから、それあわせたマスタリングとエンコードがされるべきだろうと思う。
なお、音質面では音楽ソフトであるFILM LOTUS IVのクオリティが数段上で、音量不足も感じなかった。DVD版と聴き比べると音場の狭さや厚みの無さが気になってしまうが、UMDビデオ単体で聴く分には必要十分なクオリティを確保している。
■ 価格に納得できれば満足のクオリティ 任天堂の「プレイやん」と比較すると、UMDビデオの再生画質は別次元と言っても良いクオリティで、直接ライバルとなるのは液晶モニター付きのポータブルDVDプレーヤーだろう。 プレーヤーのサイズ面ではPSPに軍配が上がるが、UMDビデオソフトの価格を加味すると評価がわかれるところだ。ちなみに「バイオハザードII アポカリプス」の価格は3,990円で、DVDの4,179円と比較すると価格差は189円。また、「中島美嘉/FILM LOTUS IV」は4,935円でDVDと同額だ。そのほかのタイトルについてもDVDと同額のソフトが多い。 DVDビデオは家庭のDVDプレーヤーやPCでも再生できるが、UMDビデオはPSPでしか再生できない。また、PSPには外部のテレビなどに映像を出力できるアダプタなどは現在のところ用意されていないので、多人数で同時に楽しむといった用途には向かない。 「お気に入りのタイトルをいつでもどこでも高画質で観たい」というニーズでは、ある程度高価でも我慢できるかもしれないが、「PSPでしか再生できない」という汎用性の少なさを考慮するとDVDと同額という現在の価格設定には疑問が残る。個人的には2,000円前後の価格が適正のように思う。 単体で値下げするのが難しいのであれば、DVDビデオを購入する時に500円~1,000円追加でUMDビデオも付いてくるとか、新幹線の駅で500円程度でレンタルしていれば、例えば東京駅で借りて、新幹線の中で鑑賞して、大阪駅で返却するといった、DVDとは違ったビジネスモデルの方が合っているのではないだろうか。
今後、どの程度の数のUMDソフトが発売されていくのかは未知数だが、生産量が増えるにつれ、価格は下がっていくだろう。クオリティ面では安心して購入できるソフトではあるので、今後のラインナップ展開と市場の拡大に期待したい。
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(2005年4月12日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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