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ついに発売された「PSP」のAV機能と性能を検証
-自由度も完成度も高いMP3/MPEG-4再生機能


12月12日発売

価格:「PSP-1000」20,790円
   「PSP-1000K」26,040円


 2004年12月12日、ついに株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCEI)から、携帯ゲーム機「PSP」(プレイステーション・ポータブル)が発売された。PSPは、世間で騒がれているように任天堂「ニンテンドーDS」のライバルとなる携帯ゲーム機だが、同社の社長兼CEOの久夛良木健氏が「21世紀のWalkman」と語るように、その機能はゲーム機の枠に留まらない。

 PSPの発売が近づくとamazon.co.jpでは、「メモリースティックPROデュオ」の512MBがトップセーラーランキングに顔を出し、あっという間に在庫切れとなってしまった。PSPでは、ゲームのデータもメモリースティックDuoにセーブするというものの、ゲームのセーブデータのみであれば512MBも必要がない。512MBのメモリが売れるという現象は、PSPがAVビューワとしても期待されていることを表しているのだろう。

 AV Watchとしてもこれまでに、PSPのAV機能について開発者にインタビューを行なうなどして迫ってきた。このインタビューで、想像以上にユーザーに解放されたAV機器であることがわかり、さらに期待が高まった。

 早速AV Watch編集部でもPSPを購入して、AV機器としての機能と性能を検証した。なお、PSPではUMDで映像や音楽のコンテンツが提供されることが予定されているが、現在のところ、バンダイが映像ソフト「機動戦士ガンダム for PSP(仮称)」を2005年春の発売を発表しているのみ。

 また、UMDはROMのみ提供され、書き換え型のディスクは予定されていない。そういった事情も踏まえ、今回は基本的にメモリースティックDuoを使った機能にのみスポットをあてた。

 なお、一部販売店などではUMD「Demo Disc for PSP vol.1」が配布されている。このUMDには、映画のトレーラーや、音楽クリップ、ゲームのデモ動画などが収録されている。UMDビデオ/オーディオのパフォーマンスの片鱗を見ることができる。さすがにどの映像もPSPに併せてエンコードされているだけあって、画質はかなり綺麗だった。

【音楽再生機能】 【動画再生機能】 【静止画再生機能】


■ 外観と基本仕様
  ~高級感のある本体。存在感のある液晶


PSP-1000Kのセット内容。赤枠内はPSP-1000のセット内容。デモディスクは一販売店などで配布されていた

 PSPは、本体にPSP専用ACアダプタ(PSP-100、3,675円)、PSP専用バッテリパック(PSP-110、5,040円)を同梱した「PSP-1000」(20,790円)と、さらにメモリースティックDuo 32MB(PSP-M32、2,940円)、PSP専用リモコン付きヘッドフォン(PSP-140、2,940円)、PSP専用ソフトケース&ハンドストラップ(PSP-170、2,100円)もセットにした「PSP-1000K」(26,040円)の2種類がラインナップされる。

 PSP-1000Kは7,980円分のオプションが付いて、PSP-1000との価格差が5,250円とお得な価格設定となっている。しかしAV機器として使うなら、メモリースティックDuo 32MBでは容量が不足して、買い直すことは確実。そうなると、PSP-1000にリモコンなど必要なオプションを買い足す方が、購入額は減らせるだろう。ただ、出荷数はPSP-1000Kの方が圧倒的に多く、しばらくはオプションの入手性も低いだろうから、早く入手したいならPSP-1000Kを購入するしかない。

各種周辺機器にもPSPのロゴが入っている

PSP専用ソフトケース。ケースに入れてもヘッドフォンジャック(リモコンコネクタ)が使えるようになっている。また、ケースに出し入れると本体を拭く効果もある?

 PSPの外形寸法は約170×74×23mm(幅×高さ×奥行き)、質量は約280g(バッテリ含む)。今までの携帯ゲーム機からすると大きく重い。中でも、本体の大半を占めるワイド4.3インチ液晶の存在感は大きい。液晶パネルはシャープ製の480×272ドットのASVパネルを採用。この液晶あってこその製品であること印象づけている。

 画質も精細感が高く、クリア。視野角は上下が広く、左右は若干狭くなっている。おそらく、覗き見防止の効果もあるだろう。1人で見る分にはまったく問題がない。液晶表面もコーティングされており、簡単には傷がつかないようになっている。

 いわゆるツルツル液晶なので、映りこみはあるが、映像が表示されている限りはほとんど気にならない範囲。しかし、本体の表面全体に光沢仕上げが施されており、指紋はかなり目立ってしまうので、クロスなどは必須だろう。なお、液晶で気になるドット欠けだが、今回購入した機体には見当たらなかった。

 液晶の輝度は200/180/130/80cd/m2の4段階で調整可能。ただし、バッテリパック使用時には200cd/m2は選択できない。液晶をOFFにすることも可能で、音楽再生時などに利用すればバッテリ駆動時間を延長することができる。

 バッテリパックは高出力内蔵型リチウムイオン電池(3.6V/1,800mAh)で、外形寸法約42×36×12.5mm(幅×奥行き×高さ)/重量約44g。バッテリの充電は本体に付属のACアダプタを接続することで行ない、充電時間は約2時間20分。USB充電には対応していない。

PSP専用バッテリパック(PSP-110)。底面積は携帯電話用と同程度だが、厚みがある PSP-110をPSPにセットしたところ。この上にフタがかぶさる バッテリの状況は設定メニューから確認できる

 バッテリパックはオプションとして、追加購入もできる。出先でも予備の電池があれば、安心して使用できる。ただし、今のところ本体充電しかできないので、複数の電池を充電するのは面倒だ。しばらくすればサードパーティなどからも、バッテリチャージャが発売されるだろう。また、PSP本体のACアダプタコネクタには外部端子が用意され、充電クレードルの発売も予定されている。

 電源スイッチは一度上に動かすと電源が入り、もう一度上に動かし2秒以上固定していると電源切れるタイプ。また、電源が入った状態で電源スイッチを上に動かすとスリープモードに入り、下に動かすとHoldになる。起動時間は、UMDが入っていない状態で電源OFFから実際に操作できるようにようになるまで約9秒。スリープモードからの復帰は1秒弱だった。電源ONにした時、UMDが入っていると最初にUMDを読みにいくため時間がかかるが、UMDを抜いて動画/音楽プレーヤーとして使うのなら、待たされる感はほとんどない。

 メモリースティックDuoを入れて起動すると、WEGAやPSXなどと共通イメージの「XMB(クロスメディアバー)」 が現れる。操作系は直感的で、非常にわかりやすい。多機能な製品ということもあって、説明書は125ページもあるが、説明書を読まなくても一通りの操作はできるだろう。

PSP専用ACアダプタ(PSP-100)。100~240V対応のワールドワイド仕様。持ち歩ける程度の大きさだ PSPのACアダプタのコネクタ部には、クレードル用と思われる端子が設けられている

 PSP-1000Kに含まれるPSP専用リモコン付きヘッドフォンには、再生・一時停止、FF、FR、音量(+/-)、Holdスイッチを搭載。ステレオミニ端子を装備し、インナーステレオイヤーフォンが付属するほか、市販のヘッドフォンも接続できる。PSP本体の高級感と比べると、リモコンは安っぽくボタンの押し心地も悪いのは残念なところ。

 なお、Holdスイッチは本体にもあるが、本体のHoldスイッチは本体にのみ、リモコンのHoldスイッチはリモコンにしか適用されない。つまり、本体をHoldにしても、リモコンでは操作でき、その逆もできる。本体をカバンなどにしまう場合は誤動作しないように本体をHoldにして、リモコンで操作するといった使い方が想定されている。

PSP専用リモコン。全体的に安っぽいが、機能的には問題ない。背面にクリップを装備。クリップは少し前のソニー製品とは逆の左方向に向いており、男性の左前の上着やシャツにつけると、ヘッドフォン端子が上を向く PSPとリモコンの接続部。コネクタ形状が似ているので、HDDネットウォークマンなどにも対応している液晶リモコン「RM-MC35ELK」が使えるかもと期待したが、物理的に接続することができなかった

本体上部のUSB(USB mini-B)端子

 USB端子は本体上部に装備。PCと接続するためには、USB Type-A - USB mini-Bのケーブルが必要だが付属しておらず、別途用意する必要がある。家電量販店などでも数百円程度で販売されている一般的な製品だ。USB 2.0のHi-Sppedに対応しており、メモリースティックPROデュオ 512MBに287MB(53ファイル)を転送したところ3分11秒かかった(約12Mbps)。

 なおメモリースティックDuoは、設定メニューからフォーマットすると、[PSP]フォルダとその下に、ゲームのセーブデータを保存する[GAME]、静止画を入れる[PHOTO]、MP3ファイルを入れる[MUSIC]フォルダが自動的に作られる。

プリセットイコライザとして「HEAVY」、「POPS」、「JAZZ」、「UNIQUE」が用意される ソニー製品ではおなじみの、最大ボリュームを小さく抑える「AVLS」(Automatic Volume Limiter System)も装備する

 ヘッドフォン接続時には液晶下にある、サウンドボタン[♪]で「HEAVY」(低域と高域を最も強調した迫力のある音質)、「POPS」(中域を強調したヴォーカルなどに適した音質)、「JAZZ」(低域と高域を強調したメリハリのある音質)、「UNIQUE」(低域と高域を強調し、中域もある程度強調した音質)を切り替えられる。

 この機能は、スピーカー出力や、ゲームプレイ時にはOFFになる。ちなみに、スピーカーの出力ポートは底面付近にあるため、手で持つとちょうど手のひらの部分が、バスレフポート代わりになる。

 また、設定メニューに「ネットワークアップデート」があり、無線LAN経由でファームウェア/ソフトウェアをアップデートできる機能が用意されている。今後、どんなアップデートが行なわれるのか楽しみだ。

ネットワークアップデートに対応対応している USB端子をPCと接続した上で、設定メニューから[USB接続]を選ぶと、ストレージクラスとして接続される メモリースティックDuoスロット周りに、どの向きに入れるかインフォメーションがないは不親切。表裏が逆でも途中までは入るので、気をつけたい


■ 音楽再生機能
  ~使いやすいMP3、使いにくいATRAC。音質は必要十分


 PSPの音楽再生機能は、パッケージソフトとして提供されるUMDソフトで使用されるUMD Audioに加え、メモリースティックDuoに入ったATRAC3/ATRAC3plusと、MP3ファイルの再生に対応している。

 MP3ファイルは、メモリースティックDuoの[PSP]-[MUSIC]フォルダに入れるだけで、PSPが認識してくれる。メモリースティックDuoが入ったPSPと、PCを接続すればドライバなどをインストールしなくても、USBストレージクラスとして認識され、メモリースティックDuoにアクセスできるようになる。

フォルダはグループとして認識される

 後はPC上にあるMP3ファイルを、メモリースティックDuoの[MUSIC]フォルダにドラッグ&ドロップするだけ。セキュア化するといった面倒な作業は一切ない。また、[MUSIC]フォルダの下層フォルダはグループとして認識されるほか、プレイリスト「m3u」ファイルにも対応しており、これもグループとして認識される。iPodのようにID3タグで分類するスタイルではなく、グループを単位として操作することになる。

 なお、[MUSIC]フォルダの下層フォルダは1階層のみ認識し、それ以下は無視されるので、ジャンル別やアーティスト別などに階層深く分類している場合は、そのままコピーすると再生できなくなってしまう。

 もちろん、ファイル名やID3タグの日本語表示にも対応している。対応ビットレートについては、仕様書や説明書に記述はないが、試した限りでは128kbpsや256kbpsはもちろんのこと、32kbpや320kbpsのCBRもVBRも問題なく再生できたので、一般的なMP3ファイルで再生できないことはほとんどないだろう。なお、WAVやWMAファイルなども試したが、認識すらされなかった。個人的には、WAVぐらいは再生できるかもしれないと期待していたので、少々残念だった。

 また、これも説明書に書かれていないが、「iTunes」などでID3タグ内に画像を埋め込むと(iTunesではアートワークと呼称)、PSP上でジャケット写真として表示することができた。各種解像度の画像で試したところ、長辺が640ドット(つまり最大640×640ドット)までのJPEGやGIFが表示可能で、641ドット以上になると画像が認識されなくなった。実際にPSP上で表示される画像はかなり小さいので、あまり大きな画像を入れる意味はない。

 再生モードは、全曲1回再生(通常)、1曲リピート、全曲リピート、シャッフル再生、シャッフルリピート再生の5種類。なお、グループがある場合のシャッフル再生は、グループ内でシャッフル再生した後、次のグループに移る。グループの順番は組み変わらない。そのほかには、グループ単位で再生する「グループモード」、A-Bリピートなどにも対応している。

各ボタンの割り当てをPSP上で確認することもできる

 操作は、各ボタンに割り当てられたショートカットのほか、プレイステーション2のDVDビデオ操作や、PSXのようなOSDによる操作もサポート。[○]ボタン/[START]ボタンで再生、[START]で一時停止、[×]で停止。[L]/[R]に前曲/次曲、方向キーの左/右に早戻し/早送りが割り当てられている。もちろん、早戻し/早送りは音声付きで、1クリックでは早戻し/早送りが固定され、押したままだと押しているだけ早戻し/早送りになるなど、操作体系はよくできている。

 また、リモコンでは前曲/次曲ボタンを1クリックで前曲/次曲、長押しで早戻し/早送りになる。本体、リモコンとも操作性は音楽プレーヤーとして必要十分なもの。また、メモリースティックのアクセスランプを見ていると、ほとんどバッファリングしていないようで頻繁にアクセスしているが、ちゃんと曲間ギャップレス再生を実現していた。

再生画面

 再生画面には、ID3タグに含まれる曲名、アーティスト名のほか、ジャケット写真、ファイル形式やプログレッシブバーなどが表示される。また、[情報]表示によりタイトル、アーティスト名、アルバム、ジャンル、サイズ、更新日時、再生時間、サンプリング周波数、コーデックの種類ビットレートを表示することも可能。ファイル削除もメニューから行なえる。

 付属のイヤフォンは、PSPのロゴを入れるなどデザインはこっているが、ソニーのステレオイヤフォンで最も安いタイプ。実際に音質もスカスカで音楽を聴くようにはできていない。

 ということで、いくつかヘッドフォンを試してみたが、PSP自体の音質は、低音から中音にかけて弱い感じがするため、全体的に少し薄い印象を受ける。しかし変な誇張がなくて素直な音質。ポータブルオーディオとしては十分なレベルにある。また、リモコン経由にすると格段に音質が落ちるポータブルオーディオ機器もあるが、PSPではリモコンを間に挟んでもほとんど劣化を感じなかった。

 ポータブルオーディオ機器にモニター的な音質を求める人は少ないだろうから、低音が強くて少々癖のあるKOSSの「Porta Pro」や「The Plug」などと組み合わせると、メリハリが出て楽しめるだろう。また、サウンドボタンで切り替えられる「HEAVY」、「POPS」、「JAZZ」、「UNIQUE」のイコライザーは、破綻しない程度に音質がかなり変わるので、ソースによって色々試してみるといい。

 なお説明書には、なぜか音楽再生でのバッテリ駆動時間について記述はないが、実際に液晶OFFでMP3ファイルをループ再生したところ、9時間4分連続再生できた。現在のシリコンオーオーディオプレーヤーとしては長いほうではないが、通常の使用では必要十分だろう。

 以上のようにMP3プレーヤーとしての操作性、音質ともに十分なレベルにあるが、非常に残念なのはレジューム機能。ホームに戻る程度なら、レジューム可能だが、そこから他の操作を行なったり、スリープ、電源OFFでキャンセルされてしまう。ブックマーク機能もないので、細切れの時間で聴く事の多いポータブルプレーヤーとしては、改善してほしいところ。今後のアップデートに期待したい。

ファイル情報表示

 ここまで音楽再生機能としてMP3をメインに紹介したきたが、それには理由がある。今のところPSPでATRAC3/ATRAC3plusを扱うのは得策とは思えないからだ。そのことを説明するのには、まずメモリースティックの種類から説明しなければならない。

 小型のメモリースティックには「メモリースティックDuo」と、「メモリースティックPROデュオ」の2種類がある。また、メモリースティックDuoには著作権保護技術「マジックゲート(MG)」に対応した製品と、そうでない製品の2種類が存在する。さらに2005年2月には、メモリースティック PROデュオ(High Speed)が発売される予定。メモリースティック PROデュオと、メモリースティック PROデュオ(High Speed)はすべてMGに対応しているので、小型のメモリースティックには計4種類あることになる。

 こんなに複雑化してしまったのは、初期の「メモリースティック」が規格上、容量の上限が128MBになってしまったため(スイッチ切り替えで256MBを実現した製品もあるにはあるが)、それを超えるために「メモリースティックPRO」が制定されたことにある。今でも「メモリースティックDuo」の容量は最大128MBで、それ以上の容量はメモリースティックPROデュオしかない。

 128MBだとゲームをセーブするだけならいいが、音楽ファイルや動画ファイルを入れようとすると容量が少なすぎる。PSPをAV機器として使用しようと思う人のほとんどが、価格も1万円程度にこなれてきた「メモリースティックPROデュオ 512MB」を購入するだろう。それに、メモリースティックPROデュオであれば、標準でMGに対応している。

Sonic Stage 2.3 for Mora
 しかしここに落とし穴がある。現在のところメモリースティックPRO(デュオ)のMGに対応した音楽アプリケーションが存在しないのだ。ソニーが11月10日にリリースしたばかりの音楽統合ソフトの最新バージョン「SonicStage 2.3」でもサポートしておらず、ソニーでは「現在開発中」としてる。

 このため、メモリースティックPROデュオにATRAC3/ATRAC3plusを書き出す(チェックアウト)ことはできず、ATRAC3/ATRAC3plusをチェックアウトするためには、MGメモリースティックDuoを使用しなければならない。そうなると、ATRAC3/ATRAC3plusを使うと、必然的に容量の上限は128MBまでになってしまう。

 さらに問題は、PSPは「ATRAC Audio Deivce」でも、MG対応メモリースティックリーダ/ライタでもないため、SonicStage上から認識することができないことだ。つまり、MG対応メモリースティックスロットを持ったVAIOなどのパソコンか、MG対応のメモリースティックリーダ/ライタが必要になってしまう。もちろん、メモリースティックのみに対応したスロットで使うには、メモリースティックDuoアダプタも必須。

 メモリースティックスロットがあるパソコンや、カードリーダは色々な会社から発売されているが、MG対応となるとソニー以外からはほとんど発売されていない。これらの環境をそろえて、やっとATRAC3/ATRAC3plusが使用できるようになる。

 ATRAC3/ATRAC3plusを扱えるソフトとして、レーベルゲートが「SonicStage 2.3 Mora」を無償公開したので、ATRAC3/ATRAC3plusを使用するハードルは一段低くなったが、それでもまだ難しい問題が残っている。

 また、この環境は、MP3や動画、ゲームのセーブにはまったく不要。ATRAC3/ATRAC3plusを使用するためだけにそろえなければならない投資になる。ATRAC3を使用すれば、有料音楽配信で購入した曲を再生できるというメリットはあるものの、すでにこの環境を構築している人はいいとしても、このためだけに今更128MBのMG対応メモリースティックDuoなどを購入するのはバカバカしい。

 使い勝手の面でも、パソコンとPSPをUSBで接続してドラッグ&ドロップで転送でき、ドライバすら不要なMP3とは、あまりにも違いすぎる。まだ、ATRAC3/ATRAC3plusとメモリースティックDuo環境を整えていないのであれば、、メモリースティックPROデュオ 512MBを購入してMP3を使用し、SonicStageがメモリースティックPROに対応してから、改めてATRAC3/ATRAC3plusを使うことも検討したほうがいいだろう。


■ 動画再生機能
  ~かなり高画質な動画再生を実現


 PSPの動画再生機能は、パッケージソフトとして提供されるUMDソフトで使用されるUMD Videoに加え、メモリースティックDuoに入ったMPEG-4の再生に対応している。MPEG-4といってもかなりの数の種類があるが、PSPが対応しているのは「メモリースティック ビデオフォーマット」とある。

 しかし、メモリースティック ビデオフォーマットについては、メモリースティックドットコムのPSPページに少し説明があるが、フォーマットの詳細については明らかにされていない。ソニーが2003年9月に提案した「モバイルムービー」とも違うようだ。

 現状、SCEIが対応すると発表しているのは、MPEG-4動画を撮影・録画できるデジタルカメラ、サイバーショット「DSC-M1」で撮影したファイルと、ソニーマーケティングが発売を予定しているPC用動画変換ソフト「Image Converter 2」で作成した、MP4準拠の「メモリースティック ビデオフォーマット」のみ。

 Image Converter 2は同バージョンが、ソニーが9月に発売した有機EL採用「クリエPEG-VZ90」に、「Image Converter 2 for CLIE MP4」として付属している。なお、PSP用Image Converter 2は13日に、プレビュー版がダウンロード提供される予定。

 メモリースティックドットコムのPSPページを見ると、VAIOの「Giga Pocket」や、「Do VAIO」とImage Converter 2を組み合わせて、TV番組を予約録画する時に、PSP用ファイルに自動的に変換することを設定することができるようになるようだ。

 そもそも、説明書にはMP3ファイルやJPEGファイルについては、メモリースティックDuoのどのフォルダに入れるかが解説されているのに対し、MPEG-4ファイルについてはそういった記述はない。DSC-M1とImage Converter 2で作成した動画再生できると書かれているのみで、ユーザー自身がエンコードしてフォルダに転送するという想定はされていない。

 実際に色々試した結果、DSC-M1のフォルダ構成である、[MP_ROOT]-[101MNV01]フォルダをメモリースティックDuoのルートに作成し、その中に「M4V0****.MP4」(*は任意の数字1文字)を入れると再生することができた。

 そこで、編集部にあるMPEG-4に対応した機器のファイルを片っ端からテスト。松下のMPEG-4カメラ「D-Snap SV-AV30」、Sigma DesignsのMPEG-4コーデック「RMP4」は予想通りダメ。また、同じグループのソニーが発売したモバイルムービー対応製品、メモリースティックビデオレコーダ「PEGA-VR100K」、MPEG-4記録/再生が可能なモバイルAVビューワ「MSV-A1」も非対応ファイルと表示された。

 結局、弊誌で掲載している製品で再生できたのは、ソニーのMPEG-4記録対応デジタルカメラ「DSC-M1」と、有機EL採用「クリエPEG-VZ90」に付属する「Image Converter 2 for CLIE MP4」。正式に発表されているものだけという残念な結果となった。

 DSC-M1の動画最高画質設定では、640×480ドット/約30fpsでビットレートは768kbpsだが、PSPでは640×480ドット/約30fpsの動画は再生できない。また、PSPの説明書には「768kbps以下のビットレートで変換されたファイルを再生できます」とある。実際に、320×240ドット/30fpsの動画を再生してみたが、フレーム落ちなどもまったくなく、美しく表示された。PSPの液晶解像度は、480×272ドットなので、拡大表示になっているはずだが、ほとんどわからない。字幕もまったく問題なく読むことができる。これなら、通常のTV番組はもちろん、映画などでも十分鑑賞にたえる。

 512MBのメモリースティックPROデュオの実容量は約480MBなので、768kbpsだと単純計算で約85分入ることになる。バラエティやドラマなら問題ないが、映画だと少し足りない。2005年1月の1GBのメモリースティックPROデュオの登場が期待されるところだ。なおPSPでは、1.5Mbpsのファイルも再生できたので、意外と高ビットレート動画の再生できそうだ。

各ボタンの割り当てをPSP上で確認することもできる

 実際の操作は、音楽再生とほぼ同じ。各ボタンに割り当てられたショートカットのほか、OSDによる操作も可能。[○]ボタン/[START]ボタンで再生、[START]で一時停止、[×]で停止。そのほか、[L]で動画の先頭、方向キーの左/右に早戻し/早送りが割り当てられている。リピート再生にも対応。なお、次の動画に移る操作はできないので、1本動画を見終わったら、ホームに戻って選ばなければならないのが不便だ。

 早戻し/早送りは中は音声は出ず、多少コマ落ちするものの動画としてスムーズに再生されているので見たいところで止めるのはそれほど難しくない。早戻し/早送りは3段階あり、ボタンを押すごとに増速。押したままだと、押している間だけ早戻し/早送りになる。また、スロー再生やコマ送りまで可能だ。なお、コマ送りにはボタンの割り当てはなく、OSDからの操作のみとなる。

 早戻し/早送りの各段階の倍速は説明書にも明記されていなかったので、768kbpsのファイルで実測したところ、約5倍、約30倍、約90倍だった。説明書に記述がないのは、ビットレートによって多少変動するからかもしれない。リモコン操作にも対応し、前曲ボタンを1クリックで動画の先頭、前曲ボタン/次曲ボタンの長押しで早戻し/早送りになる。

 PSP上からファイル削除もできるので、自宅で録画したTV番組を持ち出して、通勤・通学電車などで消化したらその場で消すといった使い方ができる。バッテリ駆動時間はカタログ値で約4~5時間、UMD「Demo Disc for PSP vol.1」のムービーをバックライト最大でループ再生して4時間5分、メモリースティックに入れた768kbpsのムービーを同条件で再生して4時間56分だった。通勤・通学電車で使用する程度ならなんとかなる範囲だろう。

 PSPがワイド画面ということもあり、「オリジナル」、画面サイズにあわせて表示する「ノーマル」、縦横比は変えず、上下または左右をカットして画面いっぱいに表示する「ズーム」、縦横比を変え、上下左右に引き伸ばして画面いっぱいに表示する「フル」に画面表示を切り替えることができる。この操作はOSDからのみで、ボタンに割り当てられていない。

 最近のDVカメラの多くで持っている16:9撮影機能で撮影して、そのままスクイーズでMPEG-4に変換。PSPで「フル」で再生すれば高画質で16:9映像を見られる。
再生画面
(c)CREATIVECAST
ファイル情報表示

 ファイル情報は、タイトル、更新日時、サイズ、再生時間程度しか表示されないのが残念なところ。ビットレートぐらいは見たいところだ。動画再生中は、プログレッシブバーを表示することもできる。

 レジューム機能は音楽再生機能と同じで、他の動画を見たり、スリープや電源を切るとキャンセルされ、ブックマークなどの機能もない。やはり、この点は要改善項目だ。


■ 静止画再生機能
  ~1,670万画素でも表示可能。拡大表示、スライドショーも可能


 静止画はデジタルカメラでメモリースティックDuoに直接撮影したファイルのほか、[PSP]-[PHOTO]フォルダに画像ファイルを入れることで、PSPで表示可能になる。表示できるのはJPEG(DCF2.0/EXIF2.21)。JPEG以外にGIFやPNGなどを入れてみたが、認識すらされなかった。

 表示は最初に荒い画像、しばらくして精細な画像が表示されるタイプ。表示方法は、縦横比は変えずに画面サイズに合わせる「ノーマル」、縦横比は変えずに上下または左右をカットして画面いっぱいに表示する「ズーム」の2種類を選択できる。

ズームは、拡大エリアを確認しながら行なえる

 最大200%までのズームも可能。ズームやズームの移動はアナログスティックに割り当てられている。表示した画像は左右に90度回転できほか、スライドショー機能も搭載する。ただ、スライドシュー中に音楽再生ができないのが残念なところだ。スライドショーの開始や、写真の送りと戻しはリモコンでも操作可能となっている。

 デジタルカメラ画像は、1,670万画素のキヤノン「EOS-1Ds Mark II」で撮影したJPEG画像(4,992×3,328ドット)も表示できたので、ほとんどのデジタルカメラで撮影した画像を表示できるだろう。ただこの解像度だと、開くのにも、操作するのにも時間がかかる。粗く表示されるのに7秒、精細に表示されるのに15秒。表示された後も、拡大や移動処理をするだびに約40秒もかかり、まったく実用的ではない。

 400万画素データであれば精細表示するのに約2秒。拡大表示に約8秒。800万画素データでは精細表示に8秒、拡大表示に約19秒かかった。400万画素ぐらいまでは比較的に快適に利用でき、800万画素ぐらいから実際に使うのは厳しくなる。

 ファイル情報として表示されるのはファイル名、サイズ、撮影日時、更新日時、解像度、撮影機器、フォーマット。できれば、絞りやシャッター速度ぐらいは表示してほしい。

 液晶が高精細なのでデジタルカメラ画像ビューワとしても楽しく遊べる。また、200%まで拡大できるので、撮影画像のピントチェックもなんとか可能だ。しかし、媒体がメモリースティックDuoであるのがネックになる。PSPにはUSBホスト機能はないので、カードリーダ/ライタをUSBで接続してCFなどを読むこともできない。

 メモリースティックDuoのCFアダプタ「MSAC-MCF1」を利用すれば、CF対応のデジタルカメラで直接メモリースティックDuoに撮影できるが、それ以外だと、PCなどを経由してメモリースティックDuoに転送しなくてはならない。

各ボタンの割り当てをPSP上で確認することもできる ファイル情報表示


■ まとめ
  ~メモリースティックDuoであることを差し引いても、破格値のAVプレーヤー


 シャープ製の480×272ドットのASV液晶を搭載したMP3/MPEG-4プレーヤーというだけで、AV機器として製品化すれば2万円強という価格は考えられない価格だ。ゲーム機ならではといえるだろう。

 MP3、MPEG-4ともプレーヤー機能には、レジューム機能の強化と、ブックマーク機能の追加以外の大きな不満はない。画質や音質も水準以上。ただ動画には関しては、パソコンでファイルを変換しなくてはならないというのは、スマートな方法とはいえない。これから期待されるのは、やはりスゴ録やPSXなどで直接メモリースティックPROデュオの録画できるようになることだ。

 現在のメモリースティックの立場は、SDカードなどに押されて存在感が薄い。そのため、PSPもメモリースティックDuoというだけで、そこが足枷になってしまっている。しかし、これを機にメモリースティックワールドを拡大、強化してくれるのなら、メモリースティックDuoの採用もしかたないと思える。

 多少の不満はあるものの、2万円という価格を置いていおいても、PSPを超えるポータブルAVプレーヤーは登場していない。ゲーム機ビジネスで、この価格でこのクオリティの製品を出されると、先行してポータブルAV機器を発売しているメーカーは厳しい。しかし是非とも負けない機器を出して、ポータブルAV機器市場を広げて欲しい。

□ソニー・コンピュータエンタテインメントのホームページ
http://www.playstation.jp/
□PSPのページ
http://www.playstation.jp/tgs2004/psp_spec.html
http://www.jp.playstation.com/psp/index.html
□関連記事
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-13日に動画変換ソフト公開。DSC-M1の動画も再生可能
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20041203/scei.htm
【10月27日】SCEI、「PSP」を20,790円で12月12日に発売決定 -バッテリ駆動時間は4~6時間に決定。重量は280gに
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【5月14日】【E3開幕直前レポート】これは21世紀のウォークマンだ!(GAME Watch)
新携帯プラットホーム「PSP」の開発を久夛良木社長が発表
http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20030514/psp.htm

(2004年12月12日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]


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