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シャープ株式会社とシャープ・ヨーロッパ研究所は、液晶ディスプレイの視野角を制御することで、左右に異なる情報やコンテンツを同時に表示できる「デュアルビュー液晶」を開発。7月から量産を開始した。 既に出荷も開始しており、9月以降の今秋中には搭載製品が発売される予定という。同社が2002年より製品化している「3D液晶」の技術を応用し、左右で異なる映像を表示可能としたディスプレイで、右画面でテレビ放送を見ながら、左画面ではインターネットブラウズを行なうなどの応用が可能となる。
デュアルビュー液晶では、一般的なTFT液晶ディスプレイ上に「視差バリア」を設け、バックライトからの光を左右に分離させることで2方向への表示を可能としている。3D液晶では、視差バリアを利用して、左右の目に対して約6度の角度で画像を分離していたが、デュアルビュー液晶では分離角度を40度以上に広げ、さらにピクセルの配置位置の最適化などによりデュアルビューを実現しているという。 なお、1つのパネルで2画面を同時に表示するため、横方向のピクセル数は通常の液晶ディスプレイ表示の半分となる。例えば、1,376×768ドットの液晶パネルの場合、1画面で利用するピクセル数は688×768ドットとなり、ピクセルの最適化により自然な表示を行なうという。また、左右の画面に同じ画像を表示することで、通常の液晶ディスプレイとしても利用可能となる。
欠点としては、スリット構造の視差バリアを配置するため、液晶の透過率は通常の液晶パネルの半分以下となり、輝度が下がるということ。しかし、バックライト出力の強化などの改善により、従来の液晶テレビ/ディスプレイ程度の輝度を実現できるとしている。そのため、消費電力は「数割上がる見込み」。
同社常務取締役 液晶事業統括の片山幹雄氏は、「オンリーワン製品」にこだわった同社の液晶事業の歴史から、3D液晶の技術を応用した「デュアルビュー」について解説した。 応用例としては、2画面表示可能な液晶テレビ兼ディスプレイや、運転席と助手席で異なる映像を表示する車載ディスプレイ、対面の顧客に提案資料を、販売員向けに内部の資料を表示する「業務モニター」、広告用ディスプレイなどの用途を提案しており、既に秋からの対応製品の発売も見込まれている。
デュアルビューのメリットについては、「リビングのテレビで、チャンネルを取り合いというのはよくある光景だが、デュアルビューを利用することで、そうした争いも避けることができる。また、お父さんはインターネット、お母さんはテレビドラマなど、異なる用途での同時利用も可能となるなど、AVとITの融合という点でも大きな可能性がある」と説明した。 なお、テレビでの応用時には2系統の音声をどう処理するのかという問題もあるが、「今回は技術発表だが、テレビ製品のための指向性スピーカーなどの研究も進んでいる。あるいは一系統はスピーカー、もう一系統はヘッドフォンで利用するという使い方も考えられる」とした。 同社が特に期待しているのがカーナビ用途。「2006年には車載端末向けに1セグ放送も始まる。運転中はテレビ映像を見るわけにはいかないが、助手席などでは見ても問題はない。そのため、運転席にはナビ、助手席にはデジタル放送の精細な映像を表示するなど、デュアルビューの特徴を生かした機能が実現可能となる。車載用は数年以内にデュアルビューに変わっていくのでは、と期待している」。 さらにゲームについても、「同じディスプレイで、異なる画面が表示できることから、対戦ゲームなど全く新しいゲームも実現できる。もちろんトランプや麻雀などでも活用できる」と述べ、さまざまな応用例を示して見せた。 既に複数のメーカーでの製品化が予定されているが、具体的な製品については「どういった製品に乗るのかというのは、期待しておいてください(片山常務取締役)」と述べるに留まった。ただし、製造は中小型液晶を生産している三重第3工場のため、大型テレビなどでの採用はしばらく無いと予想される。
また、視野角をコントロールできる「ベールビュー液晶」もあわせて発表された。ノートパソコンなどのモバイル機器で視野角をスイッチで狭めたり広げたりすることができる技術で、ノートパソコンでの利用時には「覗き込み」を防止できる。 ベールビュー液晶は、メインパネルとスイッチパネルと呼ばれる光の透過率を変化させるパネルを組み合わせた液晶パネル。スイッチパネルに電圧を印加させることで、左右方向の光の進行を制御し、光の透過率を下げるため、操作している本人以外は見えなくなる。ノートPCでの採用のほか、「ATMやコンビニの端末での暗証番号入力などをのぞき見られる心配も減らせるなど、業務用途でもさまざまな応用が期待される」という。 なお、販売目標については、初年度でデュアルビュー、ベールビューあわせて100億円程度を見込んでいる。
□シャープのホームページ (2005年7月14日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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