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パイオニア株式会社は8日、国内約600名の人員削減や、プラズマディスプレイのOEM事業縮小などの事業改革方針を発表した。
ホームエンターテインメントビジネスグループは、既存のプラズマディスプレイ、DVD、ホームオーディオの事業部を全て統合した事業部となる。2007年4月を目処に、企画/開発/設計の人員を一拠点に集約し、生産性向上と部門間の連携を向上させる。
全世界の生産拠点を40箇所から30箇所程度に統廃合するほか、海外を中心に約2,000名の人員削減を実施。さらに、国内でも、管理/間接部門の統廃合を起点とし、600名程度の人員削減を予定している。国内での人員削減による固定費の削減は50~60億円規模となる見込み。
研究開発費も現在売上高比で8%超の水準から、他社との競業や提携を積極的に進めることで、7%以下に削減。さらにニューヨーク、アムステルダム、大阪での上場を廃止し、約10億円の固定費削減を図る。 今回の構造改革に伴い、2006年3月期の業績予測を下方修正。売上高7,700億円、営業損失250億円については変更が無いが、構造改革費用として当初予定の80億円から450億円増の530億円を計上し、営業損失は870億円となる見込み。
■ プラズマは「パイオニアブランド」で復活へ
事業説明会ではカー・エレクトロニクス事業出身で2006年1月1日から社長に就任する須藤民彦副社長が、事業構造改革について解説した。 モバイルエンターテインメントについては、「引き続き積極的に強化」、ホームエンターテインメントについては「規模を求めるのでなく、適切な事業規模と収益性を目指す。さらに製品間での協調性を高め、新しい価値創造を図っていく」とし、各事業の改革計画を説明した。 ディスプレイ事業については、国内テレビメーカーのプラズマ撤退などでOEM供給量が大幅に減少したプラズマディスプレイのOEM事業を縮小。「今期の業績不振の主要因」と分析し、今後はパイオニア自社ブランドでのセット販売に注力していく。 同社のPDP生産キャパシティは100~110万枚だが、OEMを含む今年度の販売予測は約64万枚に留まる見込み。来期は40~50%の成長を見込んでいるが、それでも生産ラインに余剰ができるため、生産設備の減損として320億円を計上。同社のPDP生産6ラインのうち、一部の生産ラインの休止を来期も継続するほか、需要動向を見ながら、さらなる休止ラインの拡大も検討する予定という。 PDPに関しては来期(2007年3月期)も赤字の見込みだが、「フルHDも立ち上がり、XGA以上のモデルに人気が集まる。来期以降はPDPの収益は回復する」。なお、黒字化の時期については、「まだ目処が付いていないので、これから全て見直して明らかにしていく」という。 製品としては2006年春に発売予定の50型フルHDモデルを中心に商品力を強化。パイオニアブランドのセットに注力する。OEMについては完全になくすわけではないが、依存度は大幅に下げていく。 パイオニアPDPのアピールポイントとして、HDの高精細パネルや画質を訴求。さらに新事業部では、DVDレコーダやAVアンプ、スピーカーなどの設計開発からシステムレベルの連携を高めていく。「ホームAVの入り口から出口まで手がけているパイオニアの特徴を生かし、製品間の融合を進めていく。新しい価値創出でお客様に訴えていく」と意気込みを語る。
なお、報道陣からは、松下や日立などが生産規模を拡大してシェアを取りに行く中での、減産による縮小均衡方針に、事業の成長性を疑問視する質問も出たが、「台数ベースでは、来年も拡大する。ただし、他社の見込みよりは伸び率は低くなる。中長期的には拡大のため、再チャレンジしないといけないのは間違いない。今はそこで売り切る能力、技術力をじっくり付けるしかない。もう一度チャレンジし、自分たちのポジションを作り出す機会が来ると考えている」と、来期は事業の収益性を優先させる方針を示した。 また、撤退や事業売却については「PDPは今後もホームエンターテイメント事業に不可欠で、撤退は無い。しかし、(PDP事業を立て直す時間は)そう長くあるとは思っていない。さまざまな検討を進める上では、パートナーとの協業などもあり得るだろう」と説明した。 さらにアクティブマトリックス型の有機ELディスプレイについては量産化を中止。アクティブマトリクス用TFT基板については、東北パイオニアによる合弁事業エルディス株式会社の合弁を解消し、撤退する。ただし、研究開発は保有特許の有効利用も含めて、継続する。一方、パッシブ型の有機ELについては継続し、自社製品での搭載比率を高めていくという。「採用が一番多いのは自社のカーオーディオ。有機ELディスプレイのCDプレーヤーはパイオニアの特徴。また、車のインパネやポータブルオーディオ製品などでの採用増も見込んでいる」という。 アクティブの有機EL撤退理由については、「歩留まりや価格などの問題が多く、先行きが見られず、収益性が見込めないため(伊藤周男社長)」と説明。なお、アクティブマトリクス型有機EL用のTFT基板の製造販売合弁会社であるエルディスの解散も本日決定した。
■ レコーダ用DVDドライブを世界市場シェア30%に DVDレコーダについては、欧米向けのDVD単体レコーダなど低価格製品やビデオ一体型のDVDレコーダの自社開発を中止する。ドライブを供給し、生産委託による外部調達に切替えるとともに、国内の地上デジタル対応製品など先端技術を導入した製品開発に注力する。また、LSIやソフト開発面では他社との協業や提携を推進する。ドライブに関してはノートPC用のスリムドライブに注力し、開発の中心をブルーレイに切り替えていく。また、DVDレコーダ用のドライブユニットの外販も積極化。2006年度の約300万台から、来年度は600万台に拡大し、世界市場シェア30%を狙う。また、新規事業領域の開拓も推進し、カムコーダ用の8cm DVDドライブなどを強化していく。なお、一部で報道されたティアックとの提携については、「さまざまな会社と話し合っている。それで互いにメリットがあれば進めていく」とした。
ホームオーディオに関しては、「プラズマ、DVDレコーダとともにコア事業として再活性化させる」とし、DVDレコーダやプラズマテレビなどの連携を強化。新しいホームエンターテインメントビジネスグループでの連携を軸に、新たな提案製品を模索していくという。
■ 「いまやコア事業」のカーAVも積極展開 須藤副社長が「いまや当社のコアビジネス」というモーバイルエンターテインメント事業は、積極的に強化していく。
具体的には、市販のカーオーディオ事業をBRICs(ブラジル/ロシア/インド/中国)を中心とした地域で積極的にブランド認知とシェア拡大を図る。 国内のカーナビゲーションではトップシェアを維持するほか、音楽配信や、放送のデジタル化などのトレンドにあわせて、パイオニアならでは提案を組み込み、ブランドイメージ向上を図る。海外でも市場特性にあった商品展開を進めるという。 また、OEMについても、拡大傾向の国内ディーラーオプション市場への取り組みを強化するほか、純正市場でもパイオニア製品の導入を目指すという。またITSやテレマティックスなどの新規事業領域への取り組みも積極化していく。
■ 原点回帰で信頼回復へ
また、12月末日で退任する伊藤社長は、「経営の方向性は間違えていなかったが、戦略事業のDVDやPDPの市況変化の対応が遅れ、業績を悪化させてしまったのは残念。パイオニアは他社に先駆けた製品開発で市場を作ってきた。今後も新経営陣が感動を届けるために事業を続けていく」と、新経営陣へエールを送った。 □パイオニアのホームページ http://www.pioneer.co.jp/ □ニュースリリース http://www.pioneer.co.jp/corp/ir/finance/announce/cp_051208/index.html □関連記事 【11月21日】パイオニア、PDPとDVDレコーダ不振で社長交代 -カーAV出身の須藤氏が昇格。「原点回帰を」 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20051121/pioneer.htm 【3月23日】パイオニア、50型フルHDのPDPを来夏までに発売 -DVDレコーダは東大研が協力。Blu-rayドライブは今夏 http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050323/pioneer.htm
(2005年12月8日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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