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電機大手では最後となる、三洋電機株式会社の2005年度連結決算が発表された。 売上高は前年比3.5%減の2兆3,970億円、営業損失は523億円減のマイナス171億円、税引前損失は969億円減のマイナス1,656億円、当期純損失は341億円減のマイナス2,056億円の赤字決算となった。 三洋電機の井植敏雅社長は、「2期連続の大幅な赤字となり、ステイクホルダーをはじめ、誠に申し訳なく、お詫び申し上げたい」と切り出した。 ■過去を引きずる体質とは決別、強化した財務体質で再スタート
今回の連結決算では、構造改革費用として849億円、および固定資産の減損損失で713億円を計上したことが赤字に影響したほか、昨年12月に三洋電機クレジットの株式の一部を、米ゴールドマンサックスグループの関連会社に譲渡したことにより同社が連結子会社から外れたこと、さらに、一昨年10月に設立した三洋エプソンイメージングデバイスの設立に伴う、液晶事業の大幅な減少などの影響もあるとしている。 井植社長は、「2005年3月末に比べて、有利子負債を約4,200億円削減し、3カ年での達成を目標としていた14,000人の人員削減も、1年で達成した。さらに、株主資本比率も2005年9月末の6.6%から18.7%に回復し、財務体質を強化できた。2005年度の決算で、過去を引きずる体質とは決別したつもりである。本当の意味でスタートを切れる体制ができた」と総括した。 部門別には、コンシューマ部門の売上高が、939億円減の1兆1,543億円。営業損失は387億円減のマイナス988億円の赤字。「デジタル家電全体での競争激化が影響したほか、在庫評価の見直しの影響が赤字の要因」とした。 そのうち、AV・情報通信機器の売上高が931億円減の8,945億円、営業利益が206億円減の105億円。電化機器が7億円減の2,598億円、営業損失が181億円減のマイナス204億円となった。 AV・情報通信機器では、北米市場で受注が好調だった海外向け携帯電話や、GPS機能を搭載したカーナビゲーションシステム「ゴリラ」シリーズの好調に支えられたものの、デジタルカメラがローエンドおよびミッドレンジで価格下落の影響を受けたほか、PHS基地局の出荷台数の減少なども響いた。電化機器は、エアコンや洗濯機が低調だったのが影響した。 コマーシャル部門は、売上高が201億円増の2,362億円、営業利益は12億円増の74億円。 国内のスーパーマーケットおよびコンビニエンスストア向けのショーケースが堅調に推移したほか、同製品の中国向け出荷が増大したのに加え、大型エアコンが中国向けや国内の学校向け物件で増加した。また電子カルテシステムや調剤システムの増加もプラス要素となった。 コンポーネント部門は、売上高が359億円減の9,484億円、営業利益は65億円減の116億円。そのうち、電子デバイスの売上高が641億円減の3,782億円、営業損失は206億円減のマイナス285億円。電池の売上高は501億円増の4,192億円、営業利益は167億円増の357億円となった。 電池では、リチウムイオン電池が、携帯電話やノートパソコン市場の拡大によって堅調に推移。「BRICs」向けの需要拡大や、携帯オーディオプレーヤーや電動工具などの市場向けの販売も好調だったという。また、昨年11月に発売した「eneloop」をはじめとする市販用二次電池も好調だったという。 ■2006年度はテレビ/デジカメ減収、携帯電話は事業拡大
一方、2006年度の連結業績見通しは、売上高は前年比0.1増の2兆4,000億円、営業利益は650億円、税引前利益400億円、当期純利益は200億円と、黒字転換を目指す。
部門別には、コンシューマ部門の売上高が1兆1,581億円。営業利益は205億円。コマーシャル部門は、売上高が2,675億円、コンポーネント部門の売上高は9,127億円とした。 なお、コンシューマ部門のうち、テレビの売上高は238億円減の863億円、デジタルカメラの売上高は344億円減の1,508億円といずれも減収の計画。 これに関して井植社長は、「現在の予想のなかでは、テレビ事業において、台湾クオンタ・コンピュータと合意しているフラットテレビの合弁会社設立の件は、盛り込んでいない。いわば、三洋電機のこれまでの延長線上で事業を進めていたらこうなるという数字だと考えてほしい。会社設立などの進捗にあわせて、その都度発表していくことになる。合意の進捗状況などについては詳細は語れないが、できるだけ早く進めたいと考えている。年末の商戦にはなんとか間に合わせたいと考えており、そのためには8月、9月頃には動き出さなければ、年末には商品を打ち込めない。この商戦を逃がさないような形で話を進めている」とした。 一方、デジタルカメラに関しては、「価格下落が大きく、その影響で前年割れとしているが、出荷台数計画では、前年実績を上回る計画で、年間1,000万台以上を出荷したい」とコメントした。 また、携帯電話でフィンランドのノキアと合意したCDMA携帯電話事業に関しても、今回の業績見通しのなかには盛り込んでおらず、「2005年度は、1,250万台の携帯電話を出荷したが、グローバルに展開する新会社によって、事業を拡大させる」とした。 ■コア事業の強化に投資を集中、「2006年度は再構築のフェーズ」
同社では、パワーソリューション事業、冷熱・コマーシャル事業、パーソナルモバイル事業の3事業に経営資源をシフトする考えを示しており、2006年度に予定している1,050億円の設備投資、および1,360億円の研究開発費の大半を、これらのコア事業に投資する考えを明らかにした。 また、2006年度を再構築のフェーズと位置づけ、グローバル展開の徹底強化、ガバナンスの充実、クロスファンクション機能の強化などを進めていく考え。 井植社長は、「今年7月には半導体事業の分社化もある。社内技術の融合によって、『ThinkGAIA』を具現化した製品も登場している。昨年11月に策定した中期経営計画の達成に向けて、さらにスピードをあげて取り組みたい」と改めて宣言した。 □三洋電機のホームページ ( 2006年5月18日 ) [Reported by 大河原克行]
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