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■ 過去最高、7,247人の株主が出席 ソニーは22日、東京・高輪の新高輪プリンスホテルで第89回定時株主総会を開催した。
ハワード・ストリンガーCEO体制となって初めての株主総会ということもあり、例年よりも株主の来場が早く、開会30分前には、メイン会場となる第1会場が満杯になるという状況。会場への出席株主数は過去最高の7,247人となった。 総会はハワード・ストリンガー会長兼CEOと、中鉢良治社長兼エレクトロニクスCEOが共同議長として進行。ストリンガーCEOは冒頭、日本語で「みなさん、おはようございます」と挨拶し、その後、逐次通訳を通じて、議事を進行させた。 2005年度の営業報告を行なった中鉢社長は、「2005年度は、エレクトロニクス事業の復活を最重点課題とした。当初は、下方修正を行なうなど厳しいスタートだったが、第3四半期以降はBRAVIAの好調ぶりもあり、急成長を遂げるフラットテレビ分野で確固たる地位を築いた。ビデオカメラ、デジタルカメラ、バイオなども増益に貢献し、エレクトロニクス事業の回復に道筋をつけた」と語った。 また、ストリンガー会長は、2006年度の方針として、「ソニーは、2007年度の連結営業利益率5%、エレクトロニクス事業における営業利益率4%を目指す。2006年度は、ソニーにとって重要な1年であると考えており、サイロの解消、事業の絞り込み、独自性と持続性のある競争力の創出の3点に取り組む。構造改革を引き続き行なう一方、PLAYSTATION 3、Blu-rayといった画期的な製品を投入する。これらの製品は短期的な成果を生むだけでなく、中長期的なソニーの位置づけを向上させることになる。また、ソニーは創業60周年を迎えたこともあり、グループの結束が改めて重要になると考えている。エレクトロニクス製品とエンターテイメント製品の融合などにより、競合他社にはない独自の強味を発揮していく」と語った。 ■ PLAYSTATION 3ではこれまでを超える成功を目指す 質疑応答のなかでは、連結営業利益率5%、エレトクロニクス事業の営業利益率4%の達成に対する経営陣のコミットに対する質問が出たが、「2005年度の実績を見る限り、2007年度の営業利益率の達成に向けては、軌道に乗って進捗している」とストリンガー会長が発言。「この目標達成に対して、中鉢社長の強い情熱が込められている」とした。中鉢社長は、「課題は多く、まだ道半ばだが、構造改革、収益性の改善、成長戦略という3つの観点から取り組んでいく。市場環境の変化や競合他社の動きもあるが、2007年度のエレクトロニクス事業の4%の営業利益率達成は可能だと見ている」とした。 ソニー単体としての営業赤字が続いていることに関しては、「ソニー株式会社単体の業績が赤字でいいとは思っていない。だが、まずは連結決算で評価していただきたい。ただし、エレクトロニクス事業にはまだまだ投資をしていかなくてはいけない部分もあると考えている」(大根田伸行執行役エグゼクティブバイスプレジデント兼CFO)とした。 また、ソニーのサービス体制に関する質問もあり、「サービスに関しては、応対品質の改善や、修理のための品質強化といったことには継続的に取り組んでいる。システムの統一や改良にも取り組んでおり、修理料金に関してもリーズナブルな料金設定を目指している。コールセンターへの電話接続に関しても、つながらない比率は5%と他社よりもいい数値となっている。ソニーは、高い品質の製品を提供するとともに、修理サービスでもお客様の満足を追求し、すべてを顧客視点で捉え、『技術のソニー』、『世界のソニー』として、輝くブランドを改めて作り上げたい。ソニーへの期待は、お客様の期待を越えることにある」とした。 ストリンガーCEOは、「私はソニーに入るまで、ソニー製品は絶対壊れないと思っていた。それは、私が買ったソニー製品が壊れたことがなかったから」とジョークを飛ばしたあと、「修理体制に関する点は、真摯に受け止めたい。間違ったことは学んでいきたい」とした。さらに、「ニューオーリンズでは、洪水で水に浸かってしまったプレイステーション 2が、その後動いたという報告を受けた」とのエピソードも披露した。
ゲーム機事業における収益が悪化していることに関する質問では、ソニー・コンピュータエンタテンメントの久多良木健社長が回答「2005年度は、PSPおよびプレイステーション 2については、前年に比べて売り上げも上昇し、利益も増えている。だが、PLAYSTATION 3のハード、ソフトに対して、戦略的な投資を進めており、その分が影響している。プレイステーションやプレイステーション 2と同様に、累計1億台の出荷を目指したい。とくにソフトに対する研究開発投資を積極化させており、魅力的なソフトをグループ会社のなかから出していきたい。プラットフォームが変わるタイミングは大きな投資があるため、株主にとっては心配の種だろうが、PLAYSTATION 3では、これまでの成功を越える成功を目指したい」とした。 一方、ソニー損保のサービスレベルが低いことに関する指摘が相次いだ。 総会では、会社法施行に伴う定款変更、取締役14人の選任、ストックオプション付与を目的とした新株予約権を発行するといった第1号議案から第3号議案までの会社提案の議案はすべて可決。2002年から毎年株主から提案されている「取締役の報酬の株主への個別開示に関する定款変更」は、第4号議案として採決されたが3分の2以上の賛成を得られず否決された。ただし、年々、賛成比率が高まっており、今年は賛成が初めて4割を超えた。 なお、同社では中央青山監査法人に監査委託を行なっているが、ソニーを担当した監査人が処分の対象ではないことを含め、今回の監査報告は適正であるとし、2006年7月1日の同監査法人の資格抹消を受けて、業務停止期間における監査業務を滞らせないために、一時期的に他の監査法人に委託することを改めて示した。 10時にスタートした総会は、午前11時58分に終了した。 ■ 下期に50インチ台の液晶テレビを投入へ~ソニー・井原副社長が言及
定時株主総会の後に行なわれた株主懇談会では、井原勝美副社長がテレビ事業に関して説明を行なった。 井原副社長は、「2005年下期に、BRAVIAブランドによる展開を全世界で開始したが、当初は心配する声が寄せられたにも関わらず、昨年のクリスマスシーズンには世界ナンバーワンのテレビメーカーに返り咲くことができた。それ以前は、WEGAというブランドでやってきたが、トリニトロンテレビで全世界を席巻したイメージがあり、また、これが成功したがゆえに、他社に比べて、フラットテレビで遅れをとった経緯があった。BRAVIAは、フラットテレビという新たな時代のための製品であり、S-LCDによるソニーパネルの出荷や、テレビのエンジニアが新たな画づくりの技術を開発し、これを搭載するという、他社との明確な差異化が可能になった点も大きい。BRAVIAは、短期間の導入であったが、全世界の販売に従事する社員、全世界12の工場、テレビ事業部の技術/設計チームといった製・販・技の3つが一体になることで、投入できた製品である。これまでウォークマンやハンディカムといった成功例を見ると、いずれも製・販・技が一体となっている。これがソニーの勝ちパターンでもある。BRAVIAの成功も同様であり、テレビ事業にスピードがよみがえってきた」と語った。 また、今後の製品展開にも言及。「現在は、32インチ、40インチを中心とした展開であり、すでにソニーにおける32インチ以上の出荷比率は70%を超えている。ソニーパネルの調達によって、世界の液晶テレビを大型化していきたという自負がある」と前置きしながら、「今年は、より大型化したテレビを投入していきたい。すでに46インチの液晶テレビは製品化しているが、下期には50インチ台の製品を導入し、付加価値の高い製品として提供する」と、大型液晶テレビのラインアップ強化を明言した。 さらに、「リビングにBRAVIAを設置すると、キッチンや書斎にもBRAVIAと対になる製品が欲しいという声も出てくる。こうした需要に対して、小型モデルも品揃えする必要がある。大型から小型までフルラインアップを揃えることで、テレビビジネスを大きく飛躍させたい」とした。 ソニーでは、2006年度の液晶テレビの出荷計画として、年間600万台(2005年度実績は280万台)を掲げている。「現時点でも、この線に沿って、ビジネスが進捗している」としているものの、下期からのフルラインアップ戦略で、一気に事業を加速させる考えだ。 また、ソニーでは、今後の薄型テレビ事業の基本戦略として、大型化のほか、フルHD化をもうひとつの柱としている。 「地上デジタル放送の浸透のほか、デジタル一眼レフカメラや、フルHDクオリティのハンディカム、さらにはPLAYSTATION 3やBlu-rayの投入など、ソニーはフルHDクオリティの高精細の商品群を拡大している。そのなかで、ディスプレイ製品は率先して投入していきたい」と、ソニーのフルHD化戦略の中核的役割を担う姿勢を示した。 さらに、「日本の特約店の方々からは、“BRAVIAには様々な機能を搭載しているが、機能を使いこなす自信がない”という顧客の声が多いと聞く。テレビ、ビデオ、オーディオ機器を含めて操作性の良い製品が求められているのは事実で、近いうちに圧倒的に使いやすい、テレビ、ビデオの操作環境を提供できる」とした。 一方、中鉢社長は、「ソニーのエレクトロニクス事業に対しては、社員の目が輝いてきた、胸を張って仕事をしているという声が販売店からも聞こえている。今は、BRAVIAが好調であり、ビデオも順調に売れている。ここに、ウォークマン、デジタルイメージングも足並みを揃え、すべてが好調となった際に、ソニーが復活したというイメージが、みなさんと共有できると考えている」として、テレビ事業の回復を足がかりに、主要製品群の事業拡大を目指す考えを示した。 □ソニーのホームページ ( 2006年6月22日 ) [Reported by 大河原克行]
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