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松下電器産業株式会社は7日、6月28日付けで代表取締役社長に就任した大坪文雄氏の就任記者会見を開催した。 ■ 現場主義を徹底。「NATO」はいらない
冒頭ではこれまでの経営改革を振り返り、今後の取り組みについての考えを説明。2005年度は15年ぶりに営業利益が4,000億円台まで伸びたことを挙げ、2006年度の見通しとしては営業利益4,500億円、営業利益率5%達成を目指すとした。 そのために取り組む方針としては、これまでの成果を刈り取り、新商品事業で売上を伸ばすというフェーズチェンジを掲げる一方、「仕事の進め方に奇手奇策はなく、もの作りに徹する姿勢は変えない」とした。また、「現在は世界で戦える枠組みを終了し、隊列を整えつつある。現在の取り組みをやりきって、成果を1つずつ出し、収益に結びつけるのが私の役割」とした。 さらに、理想として「モノづくり立社」をキーワードに、「製造業としての基本をどこよりも実行できる会社を目指し、開発やマーケティングなど製造全体の活動が商品に結びつく。直接収益に結びつくような価格や品質などの"表の競争力"と、生産性やコスト力など"裏の競争力"をパラレルに強化する」と述べた。
そのほか、コストダウンについては、部品点数削減や共用化、ソフト再利用など設計におけるコストダウンがカギとなるとし、「コストを下げるという発想は中村会長と同じだが、開発や設計でコストダウンを図る方法についてもう一度メスを入れる」とした。また、「活動の最終成果は原価」として、販売増とコスト削減の相乗効果により原価低減を行ない、利益を最大化すると述べた。 経営姿勢としては、徹底した「現場主義」を掲げ、「詳しい人間と、現物を見て触れながら議論することが、一番スムーズで正しい結論にたどり着ける。“NATO”(No Action,Talk Only)はいらない」とした。
■ 薄型テレビは「パネルは国内、アセンブリは各市場の近くで」
個別の製品では、「いかに海外で増販するか。商品力、コスト力を強化するかということを成長のポイント」とし、アプローチとしては「マクロ戦略のみでなく、事業戦略ごとのシナリオを個別の商品に落とし込むことが必要」と述べた上で、中期的な成長を担う重点事業として薄型テレビやカーエレクトロニクスの売上規模の目標を1兆円、生活家電などを含む「生活快適実現事業」を3兆円、半導体を6,500億円とした。 テレビの製造拠点について「海外では上海、メキシコ、チェコ、シンガポールでプラズマや液晶のアセンブリ拠点があるが、パネルは尼崎で集中生産し、“パネルは国内、アセンブリは各市場の近く”を続ける」とした。 なお、大規模な投資計画については「現時点で詳細な検討はしていないが、PDPや半導体は成長の途についたばかり。こういった商品が世界のマーケットで負けないようにするには先手を打った積極的投資が必要。必要とあれば大胆に投資する」とした。 なお、個別製品についての具体的な戦略については、2007年1月に発表される2007~2009年度の中期計画目標で明らかにされる予定で、その時点では各商品をベースにした計画について説明され、具体的なロードマップについても公表するという。
一方、現在赤字を抱える分野として、ビクターや携帯電話事業の展開についての質問が寄せられたが、「ビクターは特徴ある技術を多く抱える。当面は大株主として自主努力の経営を見守るというのが基本スタンス。事業の展開面から相談があればグループとしてノウハウや考え方などを提供すべきだと考えている」とした。 携帯電話事業については、海外事業を一旦縮小し、国内の事業を起点に再度事業構築を図りなおすという。なお、NEC矢野薫社長が、5月29日の会見でパナソニックモバイルコミュニケーションズとの協業強化に触れたことについては、「大事なのは提携によって効果を出すこと。まずは自分たちの事業が大切」と述べるに留まった。 2010年に営業利益率10%達成するという目標については「ひと時も忘れたことがないが、並大抵の努力では達成できない。新しい中期計画でメドを付けられるように考える。そのために、各ドメインの主力が現状以上に強いコスト競争力、収益力を付けることが必要」とした。 目標達成に向けてのM&Aの必要性については「現状(5%)の倍と考えると、M&Aなどの施策のみで解決できるとは考えていない」とした。さらに、「必要とあればM&Aに投じるが、10年、20年先のデジタル家電事業を考えると、テレビなどの開発要素はいろいろある。潤沢なキャッシュは、将来の開発に活用すべき」と述べた。
□松下電器のホームページ ( 2006年7月7日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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