|
米HDMI Licensingは、ディスプレイ機器向けのデジタルインターフェイス「HDMI」の最新バージョン「HDMI 1.3」についてプレス向け説明会を開催した。 HDMI 1.3は、6月22日に仕様策定を発表している。新たに、シングルリンク時の帯域を、これまでの165MHz(4.95Gbps)から340MHz(10.2Gbps)にまで高め、約2倍の情報を伝送を可能にしたことで、色深度は従来のRGB最大24bitを30/36/48bitまで拡張。さらに、1,920×1,080ドット以上の高解像度化や、120Hzなど高リフレッシュレート対応が実現可能となった。
そのほか、色空間として「xvYCC」をサポートし、従来の約1.8倍の色数の表示に対応。また、ドルビーTrueHDやDTS HDなどの次世代コーデックをそのまま伝送可能としたほか、映像/音声伝送時の映像/音の同期ずれを防ぐリップシンク機能を追加した。 コネクタ形状に関しても標準コネクタに加え、HDカムコーダやデジタルカメラなどでの利用を想定した、ミニコネクタが新たに策定されている。 ■ HDMI対応機器拡大を推進
説明会では、HDMI Licensingのレスリー・チャード社長が、HDMIの現状や今後の展開、 1.3の新機能について解説した。 HDMIの基本的な特徴として、オーディオ/ビデオを一本のケーブルで伝送できることをあげ、「複雑な様々な機器が共存する今日のエンターテインメント製品において、“シングルケーブル”が消費者には非常に重要な要素になる」とHDMIのシンプルな接続性をアピール。 さらに、in-Statの調査レポートを例に引き、2004年には500万台だった対応機器が、2005年には1,700万台に増加。2006年には約6,000万台、2007年には1億2,000万台と、対応機器の急速な増加を予測し、テレビやDVD、次世代DVDプレーヤー、ゲーム機などでの採用のほか、「カムコーダやデジタルカメラなどでも対応を拡大したい」とし、ソニーのHDVカメラ「HDR-HC3」や、SamsungのデジタルカメラでのHDMI搭載事例を紹介。 また、パソコンにおいても、HD DVDやBlu-rayドライブを搭載した東芝、ソニーのノートPCで採用しているほか、米国においては、FCCが2007年以降に発売されるデジタルテレビで、著作権保護機能としてHDCPの採用を義務づけることを決定。それに伴い、「さらに(HDCPに対応する)HDMIの搭載が加速する」と説明した。
2002年12月に発売したHDMI Ver.1.0以降、Ver.1.1でDVDオーディオ、1.2でSACDの音声やモニターにおけるRGBカラースペースに対応。2005年12月に発表したHDMI 1.2aでは機器間の制御などを規定したCEC(Celectronics control)機能を搭載するなど、「HDMIは常に進化し続けてきたが、いずれのバージョンでも後方互換性を維持し続けてきた。HDMI 1.3においても過去のHDMIとの互換性を有している」と、アピールした ■ 帯域拡大による画/音質改善と、用途拡大を図る HDMI 1.3における帯域の拡張においては、対応機器の拡大や画質向上が見込めるという。「1,920×1,080ドットを超えるWQXGA(2,560×1,600ドット)や、1440pなどより高解像度映像の扱いも可能になる。現在デルやアップルが発売しているWQXGAディスプレイ製品ではデュアルリンクDVIを採用しているが、HDMI 1.3を利用することで機器側のコスト削減も実現できる」とした。また、最高120Hzまでの高リフレッシュレート対応により、ゲームにおける映像再現や応答性の改善も図れるという。 さらに帯域向上により、色深度(bit depth)の拡大も可能となり、現在の24bit(1,677万色)から、30/36/48bitまで拡張。24bitカラーではグラデーション表示で帯状のノイズが視覚できるが、色深度の拡大により解消できるとした。新たにサポートした色空間「xvYCC」については「従来のカラースペースでは、人間の目でとらえられる一部分しか表示できなかったが、xvYCCにより可視範囲内の色をすべて表現できる」と紹介した。
新たに搭載したリップシンク機能については、「映像処理の複雑化により、より深刻な問題になりつつあり、対応する必要があった。従来は、設定が複雑だったり、場合によってはユーザーが目視で調整することが必要だったが、HDMI 1.3ではソースデバイスが遅延状態を確認しながら、レシーバに情報を送り、それぞれのずれを調整する」と、その意義を強調した。 また、最初のHDMI 1.3搭載製品としては11月11日発売の「PLAYSTATION 3」を見込んでおり、SCE久夛良木社長のコメントを紹介。そのほかの対応機器については、「2007年第1四半期には多くの機器で搭載されることを期待している」とした。 ■ PC向けのUDIはHDMIとの高い親和性 家電向けを中心に規格化を図ってきたHDMI。しかし、PC向けのディスプレイ接続規格の「UDI」や、VESAがイニシアチブをとる「Display Port」などの他のデジタルインターフェイス規格も規格化や、製品化への取り組みが進んでいる。 これらのインターフェイス規格との違いについては、「HDMIは家電向けを中心にして開発したものだが、重点を置いてきたのは(PCディスプレイ向けの)DVIとの後方互換性の維持。ここはHDMIが達成してきたポイントだ」とHDMIとDVIの互換性を強調。 「UDIについては、DVIの進化版、あるいはHDMIのあるセグメント向けというもので、基本的に企業向けのPCを対象にしてる。UDIではDVIと同じく音声の伝送は行なわない。UDIとHDMIは技術的にも非常に近く、相互運用性も高い規格で、メーカーもコアの部分をUDI/HDMIで共用して開発/利用することができる。そうした意味では、HDMIとUDI、DVIは相互運用性を備えたファミリーといえるかもしれない」と、UDIについては親和性を強調するとともに、用途ごとに棲み分けていく考えを示した。 一方、Display Portについては、「まだ標準化を検討している段階で、仕様も未決定で製品も無い」としながらも、「Display PortでできてHDMIでできないことはないが、HDMIでできなくてDisplay Portでできることはない。また、HDMIとDVIの互換性を有していないようなので、これは非常に大きな懸念と感じている。テレビやPCにDVI/HDMIに加えて、Display Portをつけるというのはメーカーにとって現実的ではないように思える。また、ロイヤリティもHDMIでは1つの機器で4セントと明確だが、Display Portでは未定のようだ」と説明した。 □HDMIのホームページ(英文) ( 2006年7月14日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|