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ソニーは27日、2006年度第1四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比11.2%増となる1兆7,442億円。営業利益は66億円の赤字だった前年同期から270億円の黒字に転換。税引き前利益は同318.7%増の540億円、当期純利益は前年同期のマイナス73億円から323億円の黒字に。液晶テレビ「BRAVIA(ブラビア)」シリーズの好調などで、エレクトロニクス事業も大幅に改善。2期ぶりに黒字化を果たした。
好調な業績の要因はエレクトロニクス事業の回復。分野全体では前年同期比13.5%の増収で、売上高は1兆2,809億円。営業利益も前年同期の損失267億円から、474億円の黒字になった。 製品別では「液晶テレビBRAVIAが、展開している全地域で大幅増収となった。商品力の強化とともに、コスト削減効果も出てきている」(コーポレート・エグゼクティブ SVPの湯原隆男氏)と説明。執行役EVP兼CFOの大根田伸行氏も「エレクトロニクス事業は回復への道筋を着実に歩んでいる」と語った。
しかし、エレクトロニクスの連結棚卸資産は前年同期末と比べ、40.6%増の8,076億円となり、棚卸資産回転日数も52日に増えた。在庫が増加したことに関して大根田氏は「最大の要因はワールドカップ商戦が、我々が思っていたより奮わなかったことだ」と説明。しかし「通期までで考えれば十分に対処できる誤差だ」という。また、「PLAYSTATION 3向けの半導体(CELL)の生産を進めていることも影響している。だが、こちらもコントロール可能な水準にある」と語った。
なお、テレビビジネス全体の売上高は前年同期比74.6%増の約2,620億円で、営業損失は300億円改善し、110億円と縮小した。「液晶テレビの競争は激化しているが、価格の下落などは概ね想定通りに推移している。2006年下期での黒字化というこれまでの予定に変更はない」とした。 エレクトロニクス分野ではほかにも、コストダウンが進むデジタルカメラが増益に貢献。ビデオカメラでもHDVカムが引き続き堅調な伸びを示したという。さらに、業務向け分野ではHD放送制作機器の販売が好調だった。ほかにも、構造改革によりブラウン管テレビの固定費が減少したことも好影響を与えている。 ソニー・エリクソンの携帯電話分野では、ウォークマン携帯「W810」が業績に貢献。売上高が前年同期比41%増、税引前利益は143%増となった。
■ 「任天堂DSに苦戦している」
好調なエレクトロニクスに対し、ゲーム分野では損失が拡大。売上高は前年同期比29.1%のマイナスとなる1,225億円、営業損失も同59億円から、268億円へと拡大した。 前年は新型PS2に対する旺盛な需要があったが、今期はPS2、PSPともにハードウェア生産出荷台数が前年に比べて減少した。ソフトウェアでもPSP用ソフトが前年同期比420万本のプラスとなる910万本となったが、PS2は同200万本マイナスの3,300万本にとどまった。 ハードウェアが低調な理由について大根田氏は「任天堂のDSに苦戦しているのが大きな原因。アメリカでは順調だが、ヨーロッパでもやや苦戦している」という。しかし、「ゲーム需要の大半は年末に集中しているので、そこに向けて挽回していきたい」と語る。さらに、PS3への投資についても「引き続き積極的な研究開発投資を行なっており、PS3プラットフォーム立ち上げ関連費用を計上したことで損失が拡大している」と説明した。
また、映画分野では「ダ・ヴィンチ・コード」の全世界でのヒットにより、売上高が前年同期比41.8%増の2,048億円に達した。また、「Hostel」や「ファイナルファンタジーVII アドベントチルドレン」などのDVDタイトルも好調で、映像ソフトウェアの売上げも増加した。
しかし、第2四半期に劇場公開を予定している映画の広告宣伝費が増加したことや、秋に放送を予定しているネットワーク局向けのドラマなどの新番組製作費を計上したことで、総合的には前年同期42億円の黒字から、12億円のマイナスへと赤字化している。
■ 電子辞書事業から撤退 質疑応答では、欧州委員会が2004年に承認したソニー・ミュージックと独BMGの合併承認に対し、これを無効とする判断を欧州司法裁判所の第一審裁が下した件に質問が集中。大根田氏は「今後は欧州委員会と協議しながら次のステップに進みたいと考えている。我々は合併そのものが無効だというわけではなく、委員会の審査が十分ではなかった、もっと審査しなさいよということだと考えている」と述べるに止まった。 ほかにも、電子辞書事業からの撤退を発表。「業界内のシェアや競争力などを考慮して決定した」という。社内で2月に撤退を決め、5月には生産を終了したという。「今後は電子辞書ビジネスで築いた出版社などとのお付き合いを、違うビジネスに活かしていく」とした。 また、今後の業績発表について、これまでは各製品部門の情報を開示していたが「今後はエレクトロ二クス分野全体の開示だけにしたいと考えている。しかし、開示すべきだと考えるものは適時開示したい」とし、その例として「注目が高いテレビや半導体」を挙げた。さらに、「それ以外でも損益の絶対額、増減額が大きいものは開示していきたい」という。
ほかにも、2006年度第1四半期から、従来「その他の収益」に含めていた特許実施許諾料を売上高、および営業収入に含めて表示することになった。2006年通期の業績見通しに関しては、その特許実施許諾料見込み額の300億円を売上高、および営業利益に計上する影響を除けば、4月時点から変更はないという。
□ソニーのホームページ
(2006年7月27日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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