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第73回:CEATECで見る液晶の応答速度最新事情
~ 弱点を克服する次世代パネル続々登場 ~


■ 液晶は本当に動画表示が遅いのか

 これまで「液晶は動画表示が遅い」、「動画表示はプラズマが優位」が定説だった。しかし、液晶TVメーカー各社はこの定説を払拭するため、様々な技術を開発。最近では「プラズマより液晶の方が現実世界に近い形で動画を再現できる」という逆転の意見まで出るなど、この分野の戦いはかなり熱くて面白い。

 今回は液晶の高速応答化技術に絞ってCEATECを回ってみよう。まず基本として、動画が60fpsの場合、1枚の描き換えにかかる所要時間が1/60秒以下、つまり16.66ms以下であれば問題はないはず。現在の液晶パネルの応答性能はほぼこの条件を満たしているが、それでも残像が見えてしまう。これはなぜか。

 それは、液晶が常に発光している「ホールド型」の映像素子であるためだ。液晶はバックライトからの光を常に透過し続けるので常時発光(ホールド)しており、画素が別の色に変化した場合にも常に光を浴び続けている。

 つまり、応答速度12msの場合、本来表示すべきではない色を12msの間見てしまうことになる。全黒(0)から全白(255)への変化は高速で、多くの場合、公称スペックではこの値を記載している。中間階調付近での応答速度は遅く、ワーストケースでは1.5倍から2倍ほど遅い場合もあると言われており、12msの液晶はスペック上では16.66ms以下なのだが、ワーストケースでは24msになってしまうというわけだ。

 プラズマやブラウン管は画素が自発光式であり、光った後すぐに消えて黒に戻る短残光な特性を持つ。しかも目的の色(階調)に瞬間的に達することができ、一瞬しか光らない。希望の輝度で立ち上がってすぐ消失する波形特性から「インパルス型」と呼ばれる。

 余談だが、プラズマは経年劣化などに配慮するとアナログ的な輝度を作り出すことが得策でないため、全黒と全白を複数回繰り返して希望の階調を作り出す、時間積分的な階調表現手法を採用している。これがプラズマの弱点である「色割れ」の原因だ。複数回明滅すると言っても一瞬なので「色割れ」はほとんど知覚されないというのがプラズマ陣営の反論だが、いずれにせよ人によって感じ方が違う。



■ 日立はインパルス型をホールド型液晶で模倣

 「液晶にインパルス型の概念を導入してみよう」という発想が、液晶の「インパルス駆動」だ。液晶素子が希望の階調に達成したと思われる時間帯から、一気に画素を黒表示状態にして、インパルス型の挙動をホールド型で真似するというもの。

 インパルス駆動には大別して2通りがある。1つは画素が目的の階調に達した後、実際にその画素に黒を書き込んでしまう方式。もう1つは画素が目的の階調に達した後、バックライトを消してしまう方式だ。いずれにせよ、液晶の良さであった明るさを維持する能力がキャンセルされてしまうため、ピーク輝度が低下するという問題も含んでいる。

 このタイプの高速応答技術を研究し、その発展形を実装したのが日立製作所。「倍速スーパーインパルス駆動」とよばれるもので、暗くなる弱点を低減する工夫を採用。人間の視覚特性に配慮したインパルス駆動を行なうところが特徴だ。

「倍速スーパーインパルス駆動」の概念図 倍速スーパーインパルス駆動あり(左)となし(右)の比較。写真でもその差が現れる

現行AQUOSで採用されているインパルス駆動パネルと従来駆動パネルとで左右スクロールの映像を表示しての残像比較

 秒間60fpsのコマ割りを倍速化して120fpsとして考え、表示する映像フレームを最初に表示し、その後に応答速度の遅くなる中間階調のみの画素に対し選択式に黒画素を書き込み、それ以外には、輝度を補う画素を書き込む。こうすることで、黒挿入時の効果を得つつ、ピーク輝度を下げないで済むというわけだ。日立では「Wooo」春モデルから、この技術を採用している。

 また、シャープも具体的な方式模式図は示していないが、現行の「AQUOS」では、独自のアルゴリズムで弱点を克服したインパルス駆動方式を採用している事を明らかにしている。


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■ フレーム補完技術で現実に近い情景を

 現実世界の情景を目で見るとき、その景色の光は明滅していない。つまり、現実の情景はホールド型だ。だとすれば、ホールド型液晶は現実世界の情景再現に適しているとも考えられる。

 これが冒頭でも触れた「プラズマよりも液晶の方が現実世界に近い形で動画を再現できる」という主張の根幹だ。ただ、これを実現するにはシャッタースピード1/無限大のカメラで撮影した映像フレームを、フレームレート無限大の表示装置で表示しなくてはならない。つまり実現は不可能に近い。

 現在は高速度カメラを除けば、24~60fpsのカメラで撮影し、60fps前後の映像機器で表示している。動きが1/60秒=16.66msよりも速い動きでは、理論上はその動きをカメラで捉えていないことになり、その情報は失われていることになる。

 しかし、失われた情報を、今あるデータから推測して再現するということは技術的には可能だ。液晶パネルにおいて知覚される残像は、ある画素の色から色への状態変化が、望ましくない形で見えてしまう事が原因となっている。だったら、この画素の色から色への状態変化そのものを制御して、自然に見せるように制御してしまったらいいのではないか。

 「状態変化を見せない」のではなく「積極的に見せる」とした逆転の発想だ。そこで考え出されたのは「撮影時に失われてしまった16.66ms間隔の情報を補完/再現する」というもの。60fpsの映像があるとしたら、コマとコマの間に「本来はこういうフレームがあったはず」として算術合成した1コマを補い、120fpsの映像として表示してしまうのだ。

 これが「フレーム補完駆動」と呼ばれるもの。黒挿入はしないので明度低下はない。各画素の状態変化は「希望の色になる前にこの色になるだろう」と予測される色を経る形で実現されるので、残像が低減されるだけでなく、動きが滑らかになる効果まで得られる。現実と同じホールド型のため、理論的にはリアリティも向上する。

 「無い映像を合成して作り出す」という発想は突拍子もなく聞こえるが、前フレームと現在フレームとで、対応する画素同士を比較し、RGB各色の変化速度や加速度を吟味(ベクトルの検出)して、キーフレームアニメの合成のような手法で生成すればいいだけだ。場合によって表示までに1フレーム溜め込んでおき、1フレーム先の情報を参照するアルゴリズムもある。

 このタイプを採用しているのが日本ビクターやパナソニックなど。メモリ容量と高速な画像プロセッサが必要になるため、実装コストは高いのが難点。パソコン用のGPUメーカーも、ビデオ高画質化機能の1つとして実装を開始している。

120fps倍速フレーム駆動技術を去年より実用化している日本ビクター。一番右の画像は120fps化のON/OFF比較。この120fps化フレーム補完駆動アルゴリズムをフルHDパネルにまで適用していくという

 ビクターは昨年より「高速液晶パネル」というそのままズバリの名前で一部のモデルに実装を開始している。ただし、現在実装されているのは720p対応モデルに対してのみで、フルHDパネルには採用されていない。200万画素のフルHDスペックでは単位時間あたりの処理する画素数が多くなってしまうため、掛けられるコストとプロセッサ性能やメモリ容量のバランスの問題で実装されていないのだ。ビクターでは近未来の次期フルHD液晶への搭載を予告している。

 パナソニックでは同種技術に「フレームクリエーション」という名前を付けて、液晶VIERAのLX500以降に搭載している。フレームクリエーションでは元60fpsを1.5倍化した90fps化している。処理速度やメモリ、コストからこの妥協点に落とし込んだのだろう。

 また、シャープでも120fps技法のフレーム補完駆動の技術展示を行なっており、将来のAQUOSでの採用を予感させる。

 インパルス駆動の先駆者である日立は、映画のような24fps映像を美しく60fpsに表示させるための技術として、フレーム補完駆動を研究。「なめらか動画」表示技術という名前が付けられており、残像低減目的ではなく高画質化目的で利用しようというのがユニーク。テレビだけでなく、光ディスク再生機器への応用も考えられる。現在のWoooシリーズにはまだ搭載されていないが、倍速フレーム化するわけでもないので、プロセッサ処理能力もそれほど必要ないはずだ。近い将来のWooo製品で採用されるかもしれない。

パナソニックのフレーム補完駆動技術「フレームクリエーション」の仕組み。90fps化が可能 シャープも「高速動画技術」としてフレーム補完駆動を研究中。ただし、ブースに展示されていたデモ機は1,366×768ドット機。フルHDの120fps化を実現しているのは今のところビクターだけ フレーム補完駆動を高画質化手段として考える日立。残像低減はインパルス駆動一本で行くという意思表示のようにも思える


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■ シャープは液晶ミニ万博状態

 今年のCEATECでも、最新映像パネルの主役はSEDに持って行かれた格好だが、展示内容の密度で見れば液晶やプラズマも負けてはいない。「液晶のシャープ」のブースで注目を集めていた次世代液晶パネルは、フルHD(解像度1,920×1,080ドット)の約4倍の解像度をもつ「4k×2K超高解像度液晶パネル」。解像度は4,096×2,160ドットとなり、画面サイズ64V型。4K2K液晶としては世界最大なので「世界最大64V型デジタルシネマ対応」というキャッチコピーが添えられている。

 画素ピッチは0.35mmで、計算すると37V型フルハイビジョンAQUOSよりちょっと小さい程度。つまり、37V型フルHDAQUOSよりも小さい画素で4K2K解像度を構成すると64V型程度になるというイメージだ。

 担当者によれば、あくまで技術展示であり製品化の予定はないという。バックライトシステム、コントラスト、輝度性能は現行のAQUOSと同じ。画素数比率が16:9でなくほぼ2:1となっているのは、4K2Kといわれる劇場用映像規格である「デジタルシネマ規格対応」としているため。解像度は凄まじく、近寄っても画素がほとんど見えない。表示される映像からは固定画素系であることを全く感じさせない描写力のインパクトがある。

884万画素の解像力。現行フルスペックハイビジョンの4倍の解像度は圧倒的だ

 もう一つはコントラスト比100万:1を実現したメガコントラスト液晶。昨年公開されたのは37V型のフルHDだったが、今年は同種のテクノロジーで作り上げた65V型のフルHDパネルが公開された。

 液晶パネル側はAQUOSパネルと全く同一だというが、メガコントラストの構造は非公開。パネルと組み合わせる光学フィルタ技術に秘密があるという。バックライトは通常の3波長CCFLで。 ピーク輝度はやや低めの200cd/m2。メガコントラストはピーク輝度の明るさではなく、暗部の落とし込みで実現されているということだ。

 こちらは製品化の予定があり、2007年度を目標としている。テレビ製品ではなくモニタ製品としてリリースされる可能性が高く、プロフェッショナル/AVマニア用途を想定。「価格は同画面サイズのAQUOSよりも高めになる」とのこと。今のところメガコントラスト技術を全てのAQUOSに適用する予定はないという。

 既にシャープは、液晶パネルの高コントラスト化技術として黒を沈み込ませて2,000:1のネイティブコントラストを実現する「ニュートラルブラック」技術を実装しているが、メガコントラスト技術はこれとは別技術であることを強調していた。

今回のCEATECで初公開となった65Vメガコントラスト液晶。黒の沈み込みが圧倒的。黒浮きが全くない液晶パネルというのにはちょっと感動を覚える

去年に引き続き展示された37V型フルハイビジョンスペックのメガコントラスト液晶 シャープブースでは亀山工場の最新設備や液晶パネルの製造工程の紹介する展示を行っていた。写真右は52V型を6枚製造できるマザーガラスの展示


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■ 日立、直下型LEDバックライト液晶を使用

 液晶のバックライト方式としてRGBのLED(発光ダイオード)を使うことは、今や珍しくない。ソニーは「QUALIA 005」で民生向けテレビとして初めてLEDバックライトを採用し、NECはLEDバックライトを採用したPCディスプレイ「LCD2180WG LED」を発売している。

 LEDバックライトシステムにはいくつかのバリエーションがある。米BRIGHTSIDEのワークステーション向けディスプレイでは白色LEDを活用しているが、民生機ではRGB(赤/緑/青)の3色のLEDを使うことが多い。白色LEDは光スペクトルに斑があるので、3原色のパワーを調整しやすいRGB-LEDの方がコストを度外視すれば発色の傾向が良いとされる。

 そのLEDを液晶パネルの背後に配置して、直接光を透過させる方式は「直下型LEDバックライト」と呼ばれる。一方、LEDを一箇所に集めてそれを光源ユニットとして、そこから導光版を介してパネル全域に導いて透過させる方式を「導光型LEDバックライト」と呼ばれる。ちなみに「QUALIA 005」は直下型、「LCD1280WG LED」は導光型だ。

日立のLEDバックライト液晶システム

 日立のLEDバックライトシステムはRGB-LED方式の直下型。直下型はLEDの個数がかさみ、LEDの個数をけちると色斑が出やすいという弱点があるが、日立の新方式ではこの両方の弱点を克服しているという。具体的な技術概要については現時点では非公開だが、おそらく韓国系メーカーでも開発が進められている直下型と導光型のハイブリッド方式だと思われる。

 RGB-LED方式なので色再現性が高いのは当然として、日立独自技術として特徴的なのは、映像の輝度に応じて、RGB-LEDバックライトのR-LED/G-LED/B-LEDを個別に駆動して高い色ダイナミックレンジを実現したこと。暗い赤は赤に対応する液晶画素を暗い赤として、さらにR-LEDの出力を制御して調整する。通常、1,677万色(24ビットカラー)液晶パネルはR、G、Bの各階調が8ビットで制御されるが、バックライト側でさらに階調を作り出すことで、色分解能と色域を広げるわけだ。

RGB-LEDバックライトシステムでは発色が美しいのが特徴。特に赤色が鋭くなり、肌色も自然になる

 もちろん、液晶画素に1個1個相対する形でLEDを配置することはできない。そこで、日立の場合も分割数は非公開としながらも、液晶画面を複数エリアに分け、そのエリアごとに対応するRGB-LEDブロックに対して最適なRGB-LED出力制御を行なっているという。

 例えば映像中に鋭く光る光源があった場合、そのエリアを担当するRGB-LEDバックライトの出力を高くすれば、高いダイナミックレンジが得られコントラストが向上する。明るい光源が赤っぽかったらR-LEDの出力を高めにするわけだ。これを動的に制御すると、映像中の暗い部分はバックライトを下げることができ、常時点灯型のRGB-LEDバックライトシステムよりも消費電力を下げられるという副次的なメリットも得られる。

 このシステムを活用した液晶Woooの登場を期待したいところだが、担当者によれば未定とのことで、今回の展示はあくまで基礎研究発表ということだ。

左上のバーが各R、G、BのLEDの出力状態を表している。画面内に青領域が多いときにはB-LEDの出力が高くなり、R,Gの出力が低くなっている点に注目。これで高い色分解能、高ダイナミックレンジ、そして省電力性能が得られる



■ 日立、フルHDプラズマの本命はALIS方式?

 日立ブースでは来年春の発売に向けて開発中のALISパネル方式のフルHDプラスマを展示している。日立といえば60V型フルHD「プラズマWooo」を12月発売予定としているが、ブース内に展示されていたのは2007年春発売予定の42V型と50V型のフルHDモデル。

 独自のALIS方式とは、垂直方向に並ぶ放電電極の偶数ラインと奇数ラインを交互に点灯させるもの。表示はインターレースになるが、電極の数を少なくでき開口率も高くできるメリットがある。また、デジタルハイビジョン放送を初めとする現行の主流ハイビジョンコンテンツは1080iであるため、ALIS方式と相性がよいとされる。

 新開発の42V型フルHDスペックALISパネルではリブ構造を1,024×1,080ドットパネルの0.3mmに対して、半分の0.16mmへと微細化。開口率は透過型液晶パネルに迫る60%を達成している。実際に比較デモを見ても、12月発売のe-ALIS方式の60V型よりも明るい。画面が大きいほど開口率が高いはずなのだが、ALIS方式の42V/50V型の方が明るいのだ。

ついにALIS方式にもフルHDの流れが。1080i表示の本命となるか 左がALIS方式フルHD、右がW42P-HR9000(1,280×1,080ドット、長方画素)。ALIS方式フルHDの方が写真でも明るいことが分かる。実際に目で見ても同じ

 現行42V型1,280×1,080ドットの「W42P-H9000」とも比較されていたが、ALIS方式42V型フルHDの方が明るい。用意されたルーペで画素の微細性を観察したが、本当に液晶並の微細度だ。分離感の強かったプラズマ画素もここまで微細化されれば、誰も文句は言わないだろう。

 インターレースという特徴はあるが、コスト的にも優位であり、価格は50V型で60万円前後、42V型はさらに戦略的な値段が設定される見込み。60V型のe-ALIS方式のフルHDモデルが100万円前後であることを考えると、この価格設定は強力だ。プログレッシブを取るか、1080iの生表示を取るか、といった議論は白熱しそうだ。

50V型のALIS方式フルHDパネルも展示

表示内容や撮影位置が違うので単純比較はできないが、左がALIS方式フルHDパネルで、右がW42P-HR9000(1,280×1,080ドット、長方画素)


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■ 125V型/7,680×4,320ドットパネルの基礎技術

 プラズマの老舗・パイオニアも高精細化に本気で乗り出している。ブースではRGB画素ピッチ0.36mmの超高精細PDPを展示。0.36mmというと、37V型のフルHD液晶パネルの画素よりも細かい。前出のシャープの4K2K液晶パネルとほぼ同等の画素ピッチだ。

 この技術は、次世代ハイビジョンといわれるスーパーハイビジョン解像度の7,680×4,320ドットのパネルを製造するために開発されたものだという。ちなみに、この画素ピッチで7,680×4,320ドットを形成すると125V型相当になるそうだ。

超高精細プラズマパネルの展示コーナー 超高精細プラズマパネルの画素サイズ比較

 製造上の問題やドライバモジュールの都合もあって、シャープのように大画面表示とはいかなかったようで、この画素ピッチで18インチ画面のパネルを展示している。わずか18インチの大きさで横1,000ドット以上、縦500ドット以上の解像度がある。

 今まで何度も「プラズマは微細化に向かない」といってきたが、「そんなことはない」という反論のような展示だ。ここまでの微細化ができたのは、隔壁形成の工法に進化があったためだという。

 だが、プラズマ画素の場合、画素セルの体積が小さくなると放電速度が遅くなる特性もある。隔壁形成の技術が進歩したとしても、発光速度の問題を解決しなくてはならないのだ。発光速度が遅いと時間積分型カラー方式のため、色域や階調性に影響が出てしまう。

 パイオニアではこの問題に対しても技術ブレイクスルーがあったとのことで、放電速度の高速化を実現。蛍光体においても高速化の改善を試みたという。特に遅い赤と緑の蛍光体について30%の高速化を達成できたことが実現に向けて大きく前進したようだ。青の蛍光体は元々高速だ。

 光学フィルタを組み合わせないネイティブ発光では580cd/m2の輝度を実現。各種フィルタを貼り合わせた実際のプラズマパネルとして形成しても180cd/m2程度の輝度は確保できているという。一般的なプラズマテレビと比べればまだまだ暗いが、暗室であれば十分見られるレベル。なお、あくまで技術展示なのでこれをこのまま製品化する予定はないという。

実際の表示映像を撮影してみた。最新のプラズマテレビと比較すると若干暗い印象はあるがそれでもこの高精細感がプラズマで実現されていることは驚きに値する

 特設シアターでは新開発のコントラスト比20,000:1の60V型パネルを展示している。従来のプラズマパネルの約20倍のコントラスト比を実現しているとのことだが、技術背景については現時点では一切非公開だ。

 デモでは従来製品との比較という形で行なわれており、もともとコントラスト性能に優れるプラズマではあるが、その常識を踏まえても、その違いには圧倒されるはず。明るさのピークは従来とほぼ変わらないように見えたので、暗部の沈み込ませ方に工夫があるのだろう。

 夕暮れのシーンでは、漆黒の夜空にうっすらと遠景の森やビルの形がさらに黒めの陰影で描かれるほど暗部描写力が凄い。早期に実際のプラズマテレビに搭載されることを期待しよう。

左が新開発の2万:1プラズマ、右が従来の1000:1のプラズマ 同じく左が20,000:1、右が1,000:1。写真ではわかりにくいが、暗部の描写力が凄い。デモを見る場合は夜空の漆黒表現にも注目してほしい


□CEATEC JAPAN 2006のホームページ
http://www.ceatec.com/2006/ja/visitor/
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2007年製品化に向け55型フルHD SEDが初公開
-パイオニアは高コントラストPDPを展示
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20061003/ceatec05.htm
【CEATEC JAPAN 2006レポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ceat2006.htm

(2006年10月6日)

[Reported by トライゼット西川善司]


西川善司  大画面映像機器評論家兼テクニカルライター。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化しており、映画DVDのタイトル所持数は1000を超える。

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AV Watch編集部

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