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リムーバブルHDDの規格団体「iVDRハードディスクドライブ・コンソーシアム」は18日、「iVDR セミナー 2006 ~iVDR is now taking off! ~」を開催した。iVDRサポート各社がそれぞれの取り組みを説明する中、日立製作所は2007年の夏を目処にiVDR内蔵のテレビを発売することを明らかにした。
iVDRには、通常のiVDRのほか、著作権保護機能SAFIAを盛り込んだ「iVDR Secure」が用意される。デジタル放送録画や著作権保護を施したメディアや地図データなどの保護のためには「iVDR Secure」を利用する。このiVDR Secureのスペックが策定され、iVDR Secureの著作権保護規格「SAFIA」が、デジタル放送のコンテンツ保護方式として2006年3月にARIBより認定された。そのため、様々なアプリケーションへの応用が見込まれる。 iVDR Secureには、3.5インチなどの内蔵型のBulit-inと、カートリッジタイプが用意される。Built-inではSAFIAに対応した専用の格納領域を設け、デジタルテレビの内蔵HDDやデジタル放送対応のSTBなどの利用を見込む。カートリッジはテレビやレコーダのほか、車載用となどの応用が期待される。
シャープ株式会社/iVDRハードディスクドライブコンソーシアムの菱川薫氏はiVDR Secureのスペックを簡単に紹介したほか、規格のアップデートについて解説。11月にオーディオ用の「Audio Recording」アプリケーション規格を策定し、あわせてデジタルテレビ録画規格や、ストレージデバイス規格の改訂も図ったと語り、「iVDRはまさにビジネスのフェーズに入ってきた」と、本格普及に向けての環境整備が整ったことをアピールした。
■ 日立はiVDR内蔵テレビを2007年夏に発売
現在のところ市場に発売されたiVDR機器は、アイ・オー・データの外付けHDD「USB2-iVDRシリーズ(2004年4月発売)」のみ。Secure非対応で、基本的には外付けHDDとしてしか利用できないため、iVDR Secureの新機能を活かした製品はまだ存在しない。 しかし、株式会社日立製作所 ユビキタスプラットフォームグループの吉野正則担当本部長は、「2007年夏にiVDR搭載のテレビを発売する」と発表。来夏の発売を目指して、現在開発を進めているという。 吉野本部長は、日立のHDD内蔵テレビへの取り組みを説明。2003年に初のHDD内蔵テレビを発売した際には、社内でも「誰が買うんだ?」という声が上がったという。しかし、2006年の5~8月に発売されたプラズマテレビのうち、約40%がHDD内蔵テレビとなり、さらに日立製のプラズマテレビにおいては2006年上期のHDD内蔵率が70%を越えたという。HDDがここまで受け入れられた背景には、「レコーダでHDDの利便性が認知されたおかげで、HDDを受け入れられる環境が作られていたのでは」と分析する。 さらに、同社のアンケート(24型以上のCRTユーザー106名)によれば、『iVDR(取り外せるHDD)』を求める声は非常に多く、「フルHD対応よりも圧倒的に支持を受けている。DLNAやHDMIリンクより、HDDへのニーズは高まっている」という。特に「増設できる」というニーズが強く、将来の製品化の方向性についても、「HDDを1TBや2TBと増やしていくという方向も考えているが、お客さんに聞くと『HDD容量が少なくてもiVDRが欲しい』という。単なる大容量化よりは、iVDRを付けていくほうが魅力的なのではないか。だからiVDRの商品化を進めていく」という。
会場には、iVDR搭載のプラズマテレビのデモも行なわれた。iVDRへの直接録画に加え、内蔵HDDからのiVDRへのムーブ、iVDRから内蔵HDDへのムーブも可能という。価格などは未定だが、「通常のHDD内蔵製品よりは3万円程は高くなる可能性はある」という。 SAFIAの仕組みでは、SAFIA対応のiVDR機器であれば、著作権保護を行なったiVDRメディアをそのまま読み込めるため、例えば、カーナビ用のiVDRをテレビにセットし、テレビのHDDから録画番組をiVDRにムーブ、カーAV環境で視聴するなどの応用が可能という。 また、日立マクセルもiVDRへの参入を表明。2007年中にiVDRメディアを発売する計画を明らかにした。iVDRのランダムアクセス性能や、スケーラビリティ、可搬性、コストなどの面から「特に映像コンテンツの記録において優位」と分析。民生用のほか、ノンリニア編集などの放送やビデオ制作業務向けへの応用にも期待しているという。
■ PCや車載、STBなどでもiVDR応用に期待
2004年4月に世界初のiVDRメディアと、PC用接続アダプタを発売している、株式会社アイ・オー・データ機器の細野昭雄 代表取締役社長は、初のiVDR製品となるPC用接続アダプタとiVDRメディアが累計6,000台以上の販売を記録したと報告。 同社のPC用接続アダプタ「USB2-iVDR」については、「パラレルATAPIをシリアルATAにして、さらにUSBに変換するなど、面倒な作り。ただし、単なるカードアダプタでも9,800円(税抜)という値段で販売しているので、おかげさまで、SDカードの10倍ぐらいは粗利を稼げるのではないか。ただ、一般利用は6,000台の半分ぐらいで、今後のiVDRの市場拡大に向けて、半分ぐらいは関係者が買っていると思う」とコメント。会場の笑いを誘った。 ただし、官公庁や行政機関などでは、iVDRが、昨年と比較して倍ぐらい売れるようになっているという。「『利用者がいないから、セキュリティが高い』という意見もあるが、それではここに参加している皆さんが困ってしまうので、応用例を考えていきたい」と提案。同社の製品プランとして、iVDR家電との接続をねらった「iVDR I/O」製品や、iVDRにOS環境ごと入れて、会社と自宅でパソコンを使い分けるなどのプランを紹介した。
トヨタ自動車株式会社 e-TOYOTA部 情報システム室の藤原靖久氏は、自動車でのiVDRの扱いについて、「車は、プライベート空間という価値が今後広がるだろう」とし、デジタル放送の録画/視聴環境としての応用に加え、車を買い換えた際のカーナビの個人情報の引き継ぎなどの応用にも期待しているという。 「いまはこうした個人情報はあきらめてもらうしかない。しかし、お気に入りの店や自宅などの情報、アドレス帳なども簡単に引き継げるようになるかもしれない」という。 さらに、車のデジタル化が進む中、データを安全に供給するためのデリバリーメディアとしても期待している。「ナビの地図データだけでなく、車そのもののエンジン制御ソフトのアップデートなど、安全で信頼性の高いメディアとして主流になるかもしれない」と期待のほどを語った。
シーゲート株式会社戦略マーケティング部の渡辺亮氏は、アメリカ市場におけるiVDRへの取り組みを説明した。 HDコンテンツのポータブル用途やCATVや衛星放送用セットトップボックスでの採用が期待されることを紹介し、特に、「米国では放送事業者がレンタルするSTBが家庭内のエンターテインメントシステムの中心になる」と定義。録画対応のSTBでの採用のためには、コンテンツホルダに受け入れられるビジネスモデルの提案が必要になると訴えた。
□iVDRコンソーシアムのホームページ ( 2006年12月19日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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