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ウォークマン「NW-A800」やD-snap Audio「SV-SD850N」など、国産オーディオプレーヤーの新モデルが相次いで発表/発売されている中、東芝も新モデル「gigabeat U」を3月28日に発売した。 高音質化や動画対応、騒音キラー、ミニコンポ連携などさまざまな提案が行なわれているが、新gigabeatの訴求ポイントはシンプルに「音質」。同社が開発した「DCTSC方式」を採用した新1ビットDACを内蔵し、高音質化を図っているという。 gigabeatシリーズはワンセグ対応やビデオ対応などHDD搭載のメディアプレーヤーのイメージが強いが、音質については、バランス良くまとまっているものの、際だった高音質という印象も無かった。だが、今回は半導体開発から一貫して音質改善への取り組みが行なわれているとのことで、期待も高まる。 また、gigabeatシリーズということで、WM DRM10などWindows Media系サービスもサポートしている。価格は1GBモデル「U101」で13,800円前後、2GBモデル「U202」で16,800円前後。カラーバリエーションは1GBがホワイト/オレンジ/ブルー、2GBがホワイト/オレンジが用意される。
■ 小型ボディにカラー有機ELディスプレイを装備
同梱品は、イヤフォンや、マニュアルなどを収録したCD-ROM、USBケーブルなど。 外形寸法は76.5×36.2×10.9mm(縦×横×厚さ)。アクリル部分も含めると、厚さは11.9mmとなる。iPod nanoやウォークマン「NW-A800」と比較すると、やや厚めながら、一回り小振りなボディで、胸ポケットに余裕で収まるサイズだ。 ディスプレイは1.1型のカラー有機ELを採用。解像度は96×96ドットで、JPEG静止画やアルバムジャケット、4種類の時計などが表示できる。視野角が広く、色も鮮鋭なため、楽曲情報などテキストの視認性は高い。画像表示時にはやや白が黄色がかっているようにも感じるが、オーディオプレーヤーとして利用する分には大きな不満ではない。 ディスプレイ下に[バック]と[クイック]の2つのキーを装備。その下に上下左右に押し込める操作ボタンと、決定ボタンを配している。本体上部に電源スイッチを装備。右にスライドさせると電源ON、左にスライドさせるとHOLDとなる。本体下面にはUSB端子とストラップホール、ヘッドフォン出力/ライン入力兼用端子を備えている。 重量は36g。リチウムイオン充電池を内蔵しており、連続再生時間は約20時間。充電はパソコンのUSBポート経由で行なう。 イヤフォンなどのほか、音楽配信サイト「MUSICO」専用のダウンロードカードも同梱されている。カードに記載されているIDを「MUSICO」で入力すると、500円分の楽曲がダウンロードできる。期間は12月末まで。
■ こなれた操作体系。レスポンスも良好
パソコンとの接続はUSB 2.0で、楽曲の転送にはWindows Media Playerの利用が推奨されている。サポートする音楽フォーマットはWMA、MP3、WAV(PCM)で、ビットレートは16~320kbpsに対応。WM DRM 10に対応しており、音楽配信で購入した楽曲も転送/再生可能。 対応OSはWindows Me/2000/XP/Vista。MTPモードでの転送にも対応しており、MP3やWMAなどのDRM無しファイルであれば、Windowsのエクスプローラから直接転送/再生できる。Napsterで購入した楽曲もナップスターアプリから転送できた。 本体上部のスイッチをスライドさせると電源がONになる。トップメニューにはライブラリ/FMラジオ/ダイレクト録音/フォト/タイマー/設定の各項目が用意される。 ライブラリから楽曲選択メニューに入ると、アーティスト/アルバム/プレイリスト/ブックマーク/すべて再生の各項目が現れる。上下ボタンで検索モードを指定し、決定ボタンもしくは右カーソルを押し込むと下の階層に移動する。楽曲やアルバムを選択して決定/右カーソルで楽曲再生が始まる。一階層戻るときには左ボタン、トップメニューに戻る時にはバックボタンを利用する。
再生中にカーソル上下でボリューム、決定ボタンで再生/一時停止、左右ボタンでバック/スキップ、左右ボタンの長押しで早戻し/送りとなっている。基本的な操作はシンプルでほとんど戸惑うことはないだろう。 唯一戸惑ったのが、再生画面から再生前の画面(アルバムの楽曲選択画面など)に戻ることができないこと。バックボタンを押すと、トップメニューに戻ってしまう。楽曲検索時には左を押すと上の階層に移動できるが、再生時は曲の頭出しなので、アルバム再生中に次の曲をチェックしたい、といった時にはやや不便だ。
レスポンスも良く、従来モデルのgigabeat Pでは楽曲スキップ時に、操作後1秒ほどのタイムラグがあったが、gigabeat Uではそうした問題も解決されている。操作画面もわかりやすく、ディスプレイの表示情報も楽曲検索時で6行、音楽再生時はアーティスト/アルバム/楽曲、再生時間、残り時間などがグラフィカルに表示される。 ただし、画面の解像度が96×96ドットとあまり高くないこともあり、ジャケット表示をONにすると表示情報がかなり見づらくなってしまうほか、画像も線がきちんと出ないなどあまり表示品質は高くない。そのためか初期設定ではジャケット表示はOFFになっている。
■ クリアな音質が特徴
最大のセールスポイントは「音質」。gigabeat Uでは、東芝製の高音質LSI「TC94A82XBG」を採用。DACのほか、CPU、NAND型フラッシュメモリコントローラ、SRAM、バッテリーチャージャなどの主要部品を集積し、外付け部品を削減することで製品の小型化や低ノイズ化を実現。 DAC部は⊿Σ方式による1ビットDACで、新たに「DCTSC方式」を採用。従来方式と比べ、回路内の抵抗やトランジスタが少ないため、デジタル信号からアナログ信号に変換する際に発生する音楽信号の劣化が抑えられるという。
付属のイヤフォンは、プラスチックの質感がかなりチープで、イヤーパッドも同梱しないなど見た目からは音質は全く期待できない。しかし、装着してみると、高域の情報量や低域の量感、スピードは十分で、音場感や情報量もしっかりしており、そのままでも十分使える。ただ、装着感や触感的にはやはりチープなので、「これからいい音で聴くぞ」という気持ちにはなれないかもしれない。 音質設定機能はシンプルでFLAT/ROCK/JAZZ/CLASSIC/POP/USERの各イコライザ程度。gigabeat S/Vで搭載していた「H2C」など、高域補完機能は備えていない。 イコライザをFLATにして、ソニー「MDR-EX90SL」やケンウッド「KH-C701」などのイヤフォンで聞いてみた。付属のイヤフォンと比べると、高域の分解能やピアノトリオの繊細なピアノタッチなどがグッと際だち、ベースの低域にもゆとりがでて、聞きやすく広がりが出てくる。総じてiPod(第5世代)より好印象だ。 ダイナミックレンジも広く、バスドラなどのタイトな低域も気持ちいい。特にEX90SLとの組み合わせはマッチするので、音質を重視したプレーヤーと考えればやはりイヤフォンは変更したい。 なお、ライブ盤などの曲間のギャップについては、短いながらも知覚できる。また、オーディオテクニカ「ATH-CK7」利用時には、曲の再生開始時や一時停止時などに若干ホワイトノイズが感じられた。 gigabeatシリーズらしいバランスの良さを引き継ぎながら、一段音質が向上し、ゆとりある再生性能を実現している。NW-A800など高音質を謳うプレーヤーが増えてきている中でも、競争力ある製品だろう。ただ、付属のイヤフォンの質感など、その音質を製品のトータルパッケージの中で活かせていないようにも思える。
■ FMトランスミッタなど充実の付加機能
Windows Media Player11から転送した写真の表示も可能。ただし、解像度が低いこともあり、画質は今ひとつだ。また、WMP9では写真の転送は行なえない。
オートプリセット機能を備えたFMラジオも搭載。音質も良好で、MP3形式での録音も可能となっている。録音ビットレートは128kbps。さらに、FMトランスミッタ機能も備えており、カーオーディオなどでの利用時にも活用できる。 また、ヘッドフォン出力はライン入力兼用となっており、CDプレーヤーなどと接続して録音も可能。また、録音したファイルを、任意の位置で分割する機能も装備。さらに、FM/ライン録音したファイルのタイトル編集も本体のみで行なえるなど、録音ファイルの編集機能がかなり充実している。 録音ファイルの分割は、トップメニューの「ダイレクト録音」から任意のファイルを選択して、分割したいポイントまで再生。分割ポイントで[クイック]ボタンでサブメニューを呼び出して、[ここで分割する]-[分割処理開始]を選択すると、ファイルが分割される。
録音ファイルのタイトル編集も同様に、任意のファイルを選択し、クイックボタンを押す。すると曲名編集の項目が現れ、決定を押すと、文字入力画面が現れる。ここで上下左右ボタンを使ってアルファベットや数字、記号を入力していく。 こうした本体編集機能の充実はgigabeat Uの大きな特徴といえるだろう。個人的に使わないと思うが、パソコンが苦手な人にとってはこうした機能もありがたいのかもしれない。もっともタイトル編集の仕方は、CD-ROMに収録されているPDF説明書を読まないと確認できないが……。 バッテリはリチウムイオン充電池で、連続再生時間は約20時間。充電はパソコンのUSBポート経由で行なう。
■ WM DRM対応と高い完成度がポイントに
音質はもちろん、操作体系もこなれてレスポンスも向上、使いやすいプレーヤーになったと感じる。価格も2GBモデルで16,800円と、iPod nanoの17,800円やNW-A800の21,000円に比べ安価だ。 ただ、ソニーのNW-A800は音質をセールスポイントとするために、高品質のヘッドフォンを付け、実際の音質だけでなく、触感やパッケージのデザインなども含めて高級感があった。その点、gigabeat Uではイヤフォンの質感などから、トータルのパッケージとして「高音質」というイメージが感じられず、若干地味な印象が残る。 製品の完成度は高く、WM DRM対応というポイントもあり、WM DRM系のサービスを中心に考えると、非常に魅力的な選択肢だろう。また、音質をアピールする上では、WMA Losslessなどの対応など、今後の取り組みにも期待したい。
□東芝のホームページ
(2007年4月6日) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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