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東芝、'09年に有機ELテレビを投入。「SEDの位置付けに変更ない」
-経営方針説明会。新HD DVDレコーダも「すぐに出る」


代表執行役社長の西田厚聰氏
4月12日発表


 株式会社東芝は12日、都内で経営方針説明会を開催。代表執行役社長の西田厚聰氏が、2007年度以降の注力事業や、事業目標などについて説明。その中で、2009年に有機ELを採用した民生用テレビを商品化すると発表した。


■ 有機ELテレビを2009年に投入

東芝松下ディスプレイテクノロジーが「Display 2007」で展示した20.8型の有機ELディスプレイ

 西田社長は、同社が推進している「イノベーションの乗数効果」が生み出す商品例として、東芝松下ディスプレイテクノロジーが開発している有機ELディスプレイを紹介。4月11日から開催されているDisplay 2007で1,280×768ドット/20.8型のパネルを展示していることにも触れ「東芝松下ディスプレイはこれまで、中小型のディスプレイを中心に手掛けてきたが、有機ELはカラーテレビ用の大型も生産する」と説明。

 製品投入時期については「2009年に、有機ELのカラーテレビが出てくると思っていただいてかまわない」(西田社長)とした。ただし、明確な時期やサイズ、価格などについては未定という。

 有機ELの発光材料は、その分子構造によって低分子と高分子に分けられる。一般的に低分子は開発が進んでおり、製品化も行なわれているが、高精細化には高分子が有利とされている。西田社長は「テレビでは低分子も高分子もやる。低分子はコモディティタイプに、高分子は高画質な高級モデルになるだろう」とし、2つの製品ラインになる可能性を示唆した。

 しかし、東芝には既に、現行液晶テレビの上位ラインとしてSEDが予定されている。西田社長は有機ELテレビの位置付けについて「やってみないとわからない」としながらも、「スタート段階での価格は、激しい低価格化が進んでいる液晶とは比較にならないだろう」と語り、有機ELも液晶テレビより高価格帯の製品になると予測した。

 なお、有機ELの生産に関しては「自分達で投資して作っていこうと考えている」とし、東芝松下ディスプレイテクノロジーのパネルを採用していく姿勢を示した。

イノベーションによって生み出される新商品として、有機ELテレビなどの例が挙げられた


■ 「SEDの位置付けに変更はない」

 SEDに関しては、関連技術特許をめぐって、キヤノンと米ナノ・プロプライアタリーが係争中であり、東芝は事実上SEDテレビの開発を凍結している状態にある。西田社長は「ナノ社はSED株式会社をキヤノンさんの子会社と認めないと言っており、直接関係していない東芝としては、その話し合いの中に入っていけない。キヤノンさんに、なんとかがんばっていただくしかないというのが我々の立場」と説明。

 「東芝として、ここで“SEDを積極展開するぞ”と明言すると、例えばライセンス料が上がってしまったりと、話し合いに影響が出てしまうかもしれない」とし、経営方針説明の中でSEDに関する話が少ない理由を説明。「その代わりに有機ELの話をさせていただいた」と明かす。

 しかしながら、SEDの位置付けについては「従来と変更はない。大型サイズをSEDでと話していたが、液晶で52/57インチなどを出したからといってSEDをやらないというわけではない。キヤノンさんの方から良いディスプレイが出れば、今までの戦略の延長線上でSEDのテレビを作っていきたい」と語った。

 また、液晶テレビのパネルについては「液晶の技術自体は真新しいものでは無くなりつつあり、各社、技術的にも限界に近いレベルに達している」とし、今後も引き続き他社からのパネル供給を受け、生産していくとした。


■ 国内向け新HD DVDレコーダは「すぐに出てくる」

HD DVD関連事業の'09年度目標売上高は2,000億円

 HD DVD関連事業については、'09年度の目標売上高を2,000億円とし、年平均成長率は187%になるという。西田社長は「新しい日本市場向けのレコーダもすぐに出てくる。もっとコストダウンしたHD DVDプレーヤーも出す。まずは、パソコンの中にHD DVDドライブを搭載させることが重要。ノート用のスリムタイプのドライブをもっと普及させたい」という。

 携帯電話事業については「国内メーカーはいずれも海外で苦戦しているが、だからといって国内だけをやっていたのでは生き残れない」とし、リスクを考慮した上で、欧州を中心に携帯電話事業を地道に進めていく考えを強調。

 機能面では「携帯電話はIPネットワークへのアクセスがパソコンと比べて弱い」とし、ネットアクセス機能の強化を示唆。「低消費電力でもパワーのあるプロセッサを採用し、パソコンの機能を電話に盛り込んでいきたい。ワンセグが話題だが、12セグメントの地デジそのものを観たいという要望もあるかもしれない」とし、12セグメント受信に対応した携帯電話の開発を示唆した。

 設備投資は2004年~2006年度の1兆4,421億円から3,000億円増加させ、2007年~2009年度には1兆7,500億円を投資する予定。その内、68%をNAND型フラッシュメモリなどの電子デバイス部門に投入。1兆円以上を半導体事業に投資し、NANDフラッシュメモリの生産力を増強させる予定で、第4製造棟の増強や第5製造棟の建設も予定している。

 NANDフラッシュメモリのBit成長率は、1GB換算で見ると年間130%の伸びを見せている。しかし価格の下落スピードが早く、東芝は毎年50%価格が下がるという予測の上に生産を行なっているという。そのため、同社では金額ベースの市場の伸びは2006年から2009年では24%と予測している。

 西田社長は拡大する需要に対して「プロセスの世代を進めることで生産能力を増強したい」とし、従来の70nmプロセスから、2007年1月に56nmプロセスでの量産を開始したことを報告。第5製造棟なども予定しているが、「合わせて、今後も43nmなど、プロセスの微細化を進めていきたい」とした。

 また、「これまでは動画関係の需要が多かったが、今後はパソコンでも使用容量が増えるだろう」とし、フラッシュメモリを使ったノートパソコン向けストレージ「SSD(Solid State Drive)」を紹介。HDDの代わりにSSDを装備したり、HDDとSSDのハイブリッドモデルを2007年に投入することも明らかにした。

NANDフラッシュメモリ市場のBit成長率 プロセスルールの微細化で需要増加に対応するという 2007年中にSSD、SSDとHDDのハイブリッドパソコンがリリースされるという


■ 2009年の売り上高を8.7兆円に

 2006年度の見通しについては「4月26日に数字は公表する」としながらも、2007年1月に発表した売上高7兆円、営業利益2,500億円、営業利益率3.6%、当期純利益1,200億円という見通しを「いずれも達成できると考えている」という。達成されれば、'05年度、'06年度と2期連続の増収増益となり、売上高は過去最高、営業利益は歴代4位という結果になる。

 西田社長は売上高について、「'95年にやっと5兆円になり、その後9年間は5兆円台が続いた。年間の成長率は1.3%と低かったが、私が'05年に社長に就任した時に6兆円になり、成長率は8.7%。'06年は7兆円台、成長率は12%になった。やっと成長軌道に乗ったかなという感じ」と、好調をアピール。

 その上で、2009年度の目標として売上高8.7兆円、営業利益4,000億円、営業利益率4.6%を掲げる。続く、2010年度には売上高9.5兆円、営業利益4,800億円、営業利益率5%を目標に据える。

 これを実現するために、海外での事業展開を加速。映像機器やPCを中心とするデジタルプロダクツ事業の海外構成比は、'06年の70%から'09年には75%、NAND型フラッシュメモリなどの電子デバイスは50%から56%にそれぞれ増加。全体では49%から56%へと、利益の半分以上を海外事業で獲得するという。

 営業利益の構成では、NANDや個別半導体の収益拡大で、電子デバイスの利益構成率を40%台へ引き上げるほか、前述の投資計画などを実施。研究開発計画にも'07年度からの3年間で、1,800億円の増額を行なうことなどを明らかにした。

2006年度の見通し 2009年度の目標 経営方針のポイントは「利益ある継続的成長の実現」、「イノベーションの乗数効果の発揮」、「CSR経営の遂行」だという

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□経営方針説明会の情報
http://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/library/pr/pr20070412.htm
□関連記事
【2006年5月11日】東芝、中期経営方針説明会を開催
-SEDテレビは2007年第4四半期発売
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20060511/toshiba.htm

(2007年4月12日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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