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シャープ株式会社は、2006年度連結決算を発表。売上高、営業利益、経常利益、純利益ともに4年連続での過去最高の業績となった。 また、片山幹雄社長は会見の席で有機ELテレビについても触れ、「今後5年を経過しても、家庭の薄型テレビが有機ELに置き換わることはない」と断言。「有機ELに対して、一番準備ができている会社はシャープ」とコメントした。 ■ 「有機ELの準備は一番できている。液晶はまだ進化」
売上高は、前年比11.8%増の3兆1,277億円、営業利益は13.9%増の1,865億円、経常利益は13.1%増の1,705億円、当期純利益は14.7%増の1,017億円となった。 エレクトロニクス機器の売上高は、18.6%増の2兆675億円、営業利益は31.1%増の817億円。そのうち、AV・通信機器の売上高が26.6%増の1兆3,815億円、営業利益は24.1%増の444億円。「液晶テレビの大型化とともに、国内向け携帯電話事業の売り上げ増が貢献した」(片山社長)とした。 液晶テレビの売上高は、49.4%増の6,135億円。台数では前年比1.5倍となる603万台となった。 「年間で店頭価格は2割程度下落したが、亀山第2工場の稼働によって、下期に40インチ以上の構成比率が急速に高まっており、当社の下期における販売単価は、上期に比較して7%上昇。年間でも前年比横ばいの平均価格を維持している」とした。 一方、今回の会見では、話題を集めている有機ELテレビについて、片山社長が初めて言及。「家庭の薄型テレビが有機ELに置き換わるのかといえば、今後5年を経過しても、それは絶対にない」と断言した。 片山社長は、「私は技術者なので、こうしたテーマでは、つい語りたくなるが、社長なので抑えて語る」と前置きしながらも、約5分に渡って、シャープの見解を説明した。 「シャープでは、有機ELの研究開発は他社に比べても十分やっていると認識している。すでにプロトタイプを開発し、携帯電話メーカーなどに見せている。携帯電話用、デジカメ用、PDA用などがあり、5インチクラスのものもある」とする一方、「有機ELで、大画面液晶テレビと同じ画質を出そうとすれば、駆動用のトランジスタが必要になり、液晶テレビ事業と同じ規模の生産設備投資が必要になる。もし、有機ELで52インチの大画面テレビを作ろうとするならば、亀山第2工場と同じ第8世代の工場設備が必要になる」とした。 また、「品質、信頼性の確保でも有機ELは課題がある。有機ELは自発光型のディスプレイなので、RGBのそれぞれが、色ずれを起こさないように工夫する必要がある。この時の材料の選択と調整が有機ELでは難しい。また、液晶は電圧駆動に対して、有機ELは電流駆動。電流駆動では、いまのトランジスタ性能では品質がいいものができない。そのための製造装置がいまはあるとは思えない。少なくとも、今後5年は、いまの技術の 延長線上で走ることになる」という。 小型の有機ELについても「疑問がある」とし、「液晶の技術はまだピークに達していない。液晶はまだまだ進化する。先日、当社が発表した新しいモバイル向け小型液晶は、有機ELよりもきれいだ。有機ELは否定しないが、コスト面や生産性の点において課題は多い」と述べた。 さらに、「有機ELに対して、一番、準備ができている会社はシャープだともいえる。トランジスタとカラーフィルターの間に液晶を入れると液晶パネルになり、一方、有機ELのトランジスタに有機EL用の材料を塗布してガラスを載せると有機ELになる。つまり、基本的な製造の考え方は同じで、亀山工場を一部改良すれば、そのラインは有機ELの製造ラインとして稼働できる。有機ELに対する備えがある」などとした。
■ 2007年度も利益面の成長維持へ
携帯電話の売上高は、29.2%増の6,073億円、台数では18%増の1,481万台。 「2006年度は、国内携帯電話市場において、シェア1位を獲得した。ワンセグ対応のAQUOSケータイが好調。ソフトバンクモバイル、NTTドコモに続き、3月にはauもAQUOSケータイを発売した。また、当社の強みを生かせる薄型製品に力を注ぐ一方、通信融合端末が新たなジャンルとして広がりを見せ始めている。国内では、ウィルコム、イーモバイルで通信融合端末を投入し、海外ではTモバイル向けの製品が人気を博している。ザウルスで培った技術を応用して展開していく」とした。 2007年度の携帯電話の売上計画は、0.9%増の6,130億円。台数では5%増の1,550万台を見込んでいる。 電化機器事業の売上高は、6.4%増の2,391億円。営業利益は12.2%減の18億円。主要製品の売上高は、冷蔵庫が17.2%増の576億円、エアコンが1.7%増の488億円、電子レンジ・オーブンが5.8%増の600億円となった。 情報機器事業は、売上高が4.7%増の4,469億円、営業利益が45.3%増の354億円。だが、そのうちPCは、40.8%減の202億円と大幅な減少となった。 一方、電子部品部門の売上高は15.0%増の1兆5,616億円、営業利益は3.5%増の1,055億円となった。そのうちLSIの売上高は0.2%増の1,907億円、営業利益は18.3%減の64億円。液晶は、売上高が21.6%増の1兆423億円、営業利益が14.6%増の781億円となった。太陽電池が含まれるその他電子部品に関しては、売上高が6.0%増の3,286億円、営業利益が19.0%減の209億円となった。 また、同社が発表した2007年度の業績予想によると、売上高は、前年比8.7%増の3兆4,000億円、営業利益は1.9%増の1,900億円、経常利益は2.6%増の1,750億円、当期純利益は3.2%増の1,050億円とした。 利益での成長率が低いが、減価償却制度の変更に伴う減価償却費の増加が約200億円あり、これを含まない場合には、営業利益は12.6%増の2,100億円、経常利益は14.3%増の1,950億円、当期純利益は16.0%増の1,180億円になると説明。利益面でも、事実上の2桁成長を維持するとした。 部門別では、エレクトロニクス機器の売上高が11.7%増の2兆3,090億円、営業利益は9.5%増の895億円。そのうち、AV・通信機器事業の売上高は16.5%増の1兆6,100億円、営業利益は17.1%増の520億円。電化機器の売上高は0.4%増の2,400億円。営業利益は5.7%増の20億円。情報機器は、売上高が2.7%増の4,590億円、営業利益が0.3%増の355億円とした。 また、電子部品部門の売上高は11.9%増の1兆7,480億円、営業利益は2.9%減の1,025億円。そのうちLSIの売上高は4.9%増の2,000億円、営業利益は53.4%減の30億円。液晶は、売上高が15.1%増の1兆2,000億円、営業利益が0.5%増の785億円。その他電子部品に関しては、売上高が5.9%増の3,480億円、営業利益が0.2%増の210億円とした。 設備投資に関しては、前年比3.8%増の2,950億円を計画。そのうち、液晶関連の設備投資は3.7%減の1,970億円とした。「液晶への設備投資額は前年同様、2,000億円規模。しかし、2006年度には中小型のシステム液晶への投資が残っていたが、2007年度はほとんどが大型液晶に対する投資であり、大型液晶への投資額は増加している」(片山社長)とした。 液晶テレビは、38.5%増の8,500億円。台数では1.5倍増となる900万台を目指すという。そのうち30インチ以上は、80%近くまで高まると見ており、2006年度の55%の構成比から大きく上昇することになる。 ■ 32型以下も予想以上の売上。次期液晶パネル工場は「夏に公表」
片山社長は、今年1月の経営方針説明会で、「全世界の液晶テレビ市場は、2007年度は6,800万台規模に達する」としていたが、今回の会見では、「7,200万台に達するだろう」と上方修正。また、「年間1億台に達する時期も前倒しになるのではないか」などとした。 しかし、市場全体の出荷台数が、当初見通しよりも拡大したのにも関わらず、2007年度のシャープの液晶テレビの出荷計画は、1月に公表した900万台のまま。片山社長は、「32インチ以下のDシリーズが予想を上回る売れ行きを見せており、最終的には900万台を上回る可能性はあるかもしれないが、この数字は変えるつもりない」と語る。
同社では、今年7月に稼働する亀山第2工場の第3期ラインによって、月間6万枚のパネル生産が可能になるほか、同じく7月にはポーランドで液晶モジュールから液晶テレビまでの一貫生産を開始。同様に、メキシコ工場では、7月を目処に液晶モジュールから液晶テレビまでの一貫生産を行なう第2工場を新設することで、世界5極体制による液晶テレビの生産体制が整うことになる。 こうした海外事業における生産体制の確立とともに、海外におけるブランド戦略を推進する考えであり、「まずは生産体制を整えることが大切だが、同時にブランドを定着させていかなければ意味がない。収益確保を前提として事業を推進することが大切であり、それは900万台ぐらいがせいぜい。弱気になったのではなく、戦う以上は、ちゃんとした体制を作ることを優先したい」とした。 今年夏にも公表するとしている次期液晶パネル工場の建設計画については、今回の会見でも、「夏に公表する」と繰り返すに留まった。
□シャープのホームページ ( 2007年4月25日 ) [Reported by 大河原克行]
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