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mora winが「カルチャーを変える」
マイクロソフトが音楽配信に本腰を入れる理由


マイクロソフト 堺和夫 執行役常務

5月28日発表


 マイクロソフトとレーベルゲートは28日、共同で展開している音楽配信サービス「mora win」を9月下旬に強化すると発表した。

 メタデータを利用した検索機能の向上などで、検索性や楽曲おすすめ機能の強化などを図った意欲的なアップデートで、「音楽との出会いの場」としてのWindows Media Player 11(WMP11)を変えていくという。

 サービスの提供開始は9月下旬だが、マイクロソフトがWMP11とmora winで目指すこととは何か? 同社でデジタルエンターテインメント事業を統括する堺和夫 執行役常務と、デジタルエンターテイメントパートナー統括本部 コンテンツ&サービス部の山本准マネージャーに話を伺った。


■ moraとマイクロソフトがタッグを組んだ理由

マイクロソフトとレーベルゲートが協力を強化

 同社では「おすすめオンラインストア」として「mora win」をWMP11のコンテンツサービスの中心に位置づけ、さらに今回、レーベルゲートとがっちりと手を組んでサービスの強化に取り組むことを発表した。パートナーとしてレーベルゲートのを選んだのはなぜだろうか?

 「こうしたコンテンツサービスは、マイクロソフトだけでできるものではありません。その分野を得意とするパートナーとの連携が当然必要です。とにかく欲しい楽曲が手に入り、互いに開発協力していける会社となれば、パートナーは限られてきます。音楽をやるのであれば、当然レーベルゲートさん協力したいと、かなり早い段階から考えていました」(堺常務)。

 日本向けの音楽配信でパートナーを求めれば、各レコード会社が出資し30万曲以上という楽曲のライブラリを持つレーベルゲートが候補になるのは、当然といえそうだ。

 「あとは、周りの機運というかタイミングもあります。着メロだったものが、着うたフルとかどんどん音楽的になって、あわせてWMPもかなり進化してきた。そのタイミングがちょうどあった、機が熟した、というところですね」。

 また、同社コンテンツ&サービス部の山本氏は、mora winをこう位置づけている。

 「(OnGenやShowTimeなど)たくさんのオンラインストアが(WMP11に)あることは、選択肢を用意するという点で重要だと思っています。ただ、それぞれ何が違うのか、わからないというお客様も多い。だから、こちらをまずは使ってみてください、とにかく最初に試してくださいと。mora winはそういう位置づけのサービス。また、サービスを開発する上での意欲、という点でもレーベルゲートさんは非常に高かった」という。


■ メタデータの扱いが新mora winのキモ

 mora winでは、基本的なプレーヤーの部分はマイクロソフトが担当。インターフェイスの実装やデータベースの扱いなどのサービス部分の開発などをレーベルゲートが担当しているという。

 山本氏は、「マイクロソフトが開発しても、それをサービスとしてどうやって提供するか。例えば、どういった曲をどの段階でおすすめするか。そうしたサービスの作りこみや、販売データベースの連携ノウハウなどはわれわれにはありません。一緒に作業することで、ソフトとサービスを一体化できる」と協業のメリットを語る。

 新機能の特徴としては、「重要な点は、楽曲のメタデータを内包してしまうこと。自分の持っているライブラリが、あたかもお店にいるかのように扱える」という点を指摘。HDDのメタデータを活用することで、「Word wheel(ワードホイール)」の高速な検索を実現するほか、mora winの楽曲についてもローカルと同様に検索やレコメンドができるなど、使い勝手や、レコメンドの選択肢拡大が期待できる。

メタデータを利用した検索やレコメンド機能強化が最大の特徴

 WMP11での同種のサービスは、米国でWMP11β公開にあわせて、音楽配信サービス「URGE」がスタートしている。同サービスも、HDD内に楽曲のURGE用のメタデータを保存し、おすすめ楽曲やプレイリストを表示できるなど、mora winに非常に近いものにように思える。実際、山本氏によれば、「mora winのプラットフォームは基本的にはURGEと同じもの」という。

 とすれば、すぐに日本でもサービスできるそうだが、「超えなければいけない壁がかなり多い」とする。メタデータをいかにあつかうか、そこには、日本と米国の音楽市場の違いがあるという。

 「アメリカでは、『ジャンル』という考え方が浸透しています。オルタナティブ・ロック、アンビエントとか、細かくジャンルで分けて、入っていくというやり方です。販売形式やプロモーションも、『ジャンル』を基本としています。西洋文化的なカテゴリ分類が機能しているため、データもそれに基づいて用意すればいい」

 「一方、日本では、大抵の楽曲がJ-POP/邦楽になっていて、ジャンルは演歌ぐらい。宇多田ヒカルがJ-POP、元ちとせも松田聖子もJ-POPというように、ロジカルなジャンル分けがあまり浸透していない。大量のデータを扱うIT系の考え方とは、相反するところがあります。そこで、(レーベルゲートの)今野社長が説明したような『発見』をどうやって提供していくかとなると、西洋文化的なジャンルを、大きなJ-POPの中にも作っていかないといけない」

Brandnew-Jもメタデータを活用してmora win連動

 そのため、おすすめのアルゴリズムや、抽出/表示方法などが大幅に異なってくるのだという。検索した際には、キーワードだけでなくその目的を推測しておすすめに反映したり、年代別のカテゴリを活用するなど、日本向けの工夫がmora winには多数盛り込まれる予定だ。

 また、HDD上のメタデータを活用した例が、J-WAVEの「Brandnew-J」との連携だ。

 「mora winのライブラリとラジオのそれそれのメタデータがシームレスに、融合される。ネットラジオに連動して、楽曲の情報が表示されることで、『この曲がいい』と思った瞬間にすぐに購入できる。単にオンラインストアを見ているだけでは購入しない人も、『200円だったら、今すぐ買ってもいい』となるのではないでしょうか。そこで『発見』したものをすぐに買えるという使い勝手が実現できれば、楽曲の売上も上がるのでは」と語る。


■ 「mora winがカルチャーを変える」

 mora winとの協力を強化する一方、マイクロソフトでは、多彩なデバイスとの連携やmora win以外の多くのコンテンツサービスとも手を組み、サービスとコンテンツ、デバイスについてそれぞれのパートナーと協力している。

 Windows Media Player 11では、mora winが特別なサービスに位置づけられているが、DRM 10を利用したNapsterなどのサブスクリプション型サービスはmora winにはない。「Windows Mediaの世界」でありながら、各サービス事業者が異なったサービスを展開していることをマイクロソフトではどう考えているのだろうか?

 堺氏は、「マイクロソフトでは、さまざまなサービスの選択肢を提供していくことが重要。サブスクリプション型のサービスと、他のサービスがあり、日本でどちらがなじむのか、どういうサービスがウケるのか。それを皆さんがモニターされている。これが最適というわけではなく、一番いいかたちを探すことが重要」という。

 また、日本の音楽配信の現状としては、その売上のほとんどが携帯電話向けとなっている。しかし、堺氏は「PCの配信の時代は絶対に来る」と強調する。

 「レコードからCDには変わらないという人もいた。アナログにはアナログのよさがあると。でも変わった。PC配信でもジャケットのデータも付いているし、プレイリストを手軽に楽しめるなど、新しい使い方が加わる。家でもポータブルデバイスでも、車でもいろいろな新しい使い方ができる」

 だが、それは何時になるのだろうか?

 堺氏は「具体的にいつまでに、というのは無い」という。「なぜなら、これはカルチャーを変えることだから。そうした意味では、今一番大事なのは宣伝。パソコンがあって、そこに放り込んである楽曲やプレイリストを再生するだけで、CDを取り出したり交換せずに、音楽で盛り上がれる。友達が家に来たとき、彼女が来たとき、家族が来たとき、パソコンで簡単に再生するだけでいい。とにかく使ってみればわかる、伝わると思います。みんなを巻き込んでいくことが重要です」と期待を語った。


□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.com/japan/
□ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3070
□レーベルゲートのホームページ
http://www.labelgate.co.jp/
□mora winのホームページ
http://morawin.jp/
□関連記事
【5月28日】mora winのカタログ検索など、9月にWMP 11を機能拡張
-MSとレーベルゲートが協力。WMPを「発見」の場に
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070528/mora.htm

( 2007年5月28日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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