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【新製品レビュー】
HDMI装備の24型/フルHD液晶ディスプレイの実力は?
三菱電機 「VISEO MDT241WG」


6月1日発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:138,000円


 世帯普及率が20%を超え普及に拍車がかかるとともに、大画面化の一途をたどっている液晶テレビ。しかし、大型化の一方で、最近では個室やパーソナルユース向けの「セカンドテレビ需要」も拡大しているという。シャープや松下電器、東芝、ビクターなど、そうした需要にこたえるべく、20型から30型前半の製品を発売している。

 一方で、PCの世界でも液晶ディスプレイのワイド化/大型化が進んでいる。さらにPC系の入力端子だけでなく、HDMIやD端子など、AV系の入力を備えたマルチメディアディスプレイ的な製品も増えており、注目を集めている。

 液晶テレビの場合、フルHD解像度は基本的に37型以上。唯一の32型/フルHD製品としてシャープが「LC-32GS10/GS20」を発売しているだけだ。しかし、PCディスプレイでは、より小型の24型クラスでフルHD以上の1,920×1,200ドットパネルが採用されている。パーソナル用途のフルHD対応ディスプレイを求めるのであれば、PCディスプレイの応用は、非常に有力な選択肢といえる。

 さらに、この春以降、24型クラスでAV機能を強化した製品が発売されている。6月には、三菱電機の「VISEO MDT241WG」とナナオの「EIZO FlexScan HD2451W/HD2441W」が発売。さらに8月にはアイ・オー・データ機器が「LCD-MF241X」の発売を予定している。いずれもHDMI 2系統や、D端子などのコンポーネント入力を備えており、「パーソナルフルHDディスプレイ」を各社が盛り上げるべく、積極的な展開を図っている。

 今回は、いち早く市場投入された三菱「MDT241WG」のAV系機能を中心に試用し、実力を検証した。


■ ピアノ調の外装。HDMI×2など充実のAV入力

ベゼル部はピアノ調でPLAYSTATION 3にマッチするデザイン

 24.1型の1,920×1,200ドットの液晶パネルを採用。パネル自体のアスペクト比は、PCディスプレイのため16:10となっている。テレビの16:9と異なっている点には注意が必要だ。

 パネルメーカーは非公開だがVA系で、同社では「AMVA(Advanced Multidomain Vertically Aligned)方式」としている。応答速度は16ms(中間色6ms)、コントラスト比1,000:1、輝度500cd/m2、視野角は上下/左右178度。

 ベゼル部はピアノフィニッシュの光沢ある仕上げが施されており、なかなか高級感がある。前面の下部にステレオスピーカーを内蔵。右下部にはヘッドフォン出力のほか、操作ボタンを備えている。ボタンは左からMP MODE/PIP、DV MODE/RESET、INPUT/SELECT、MENU/EXITの各種機能ボタンと、OSDの操作を行なうコントロールボタンを用意。各機能ボタンで設定する項目を呼び出した上、コントロールボタンで、メニュー項目選択を行なう。

 最大の特徴はHDMI 2系統などの豊富な入力端子。本体左脇にHDMI×2、D5×1、S映像×1、コンポジット×1、アナログ音声×2の各AV系入力端子と、光デジタル音声出力を装備する。背面下部にはPC系の入力端子を備え、DVI-D(HDCP対応)とアナログRGB(D-Sub15pin)を各1系統と、アナログ音声入/出力(ステレオミニ)を各1系統用意する。スタンド部は約60cmの上下動作が可能。重量は約11.2kg。

本体前面 液晶下部にステレオスピーカーと操作ボタンを装備する AV系の入力端子は側面に備えている。HDMI×2やD端子を装備。光デジタル出力も用意する
背面にDVI-DとD-Sub15pinを装備 アームを前後して高さ調整が可能


■ AV入力は豊富だが、入力切替やボリューム操作はPCディスプレイ譲り

 AV機能としては、2系統備えたHDMI端子にまず注目したい。PLAYSTATION 3やHD DVDプレーヤーなどとHDMI接続して、Blu-ray/HD DVDなどのビデオソフトを楽しめる。また、ハイビジョンレコーダをHDMI接続し、外部チューナとして利用することでデジタル放送対応のテレビとしても活用できる。

 D5端子も備えているので、CATVのSTBなどへも対応できる。入力端子の豊富さで言えば、低価格帯のテレビを上回る充実ぶりだ。

HDMI1/2など5系統の入力を順送りで切り替える。INPUT SKIP設定も可能

 今回は、HDMI端子にPLAYSTATION 3とブルーレイDIGA「DMR-BW200」を、D端子にXbox 360を接続して、AVディスプレイとして利用してみた。

 入力切替は、本体前面のINPUT/SELECTボタンを利用する。HDMI1/HDMI2/VIDEO1(D5端子)/VIDEO2/D-SUB/DVI-Iの順送りで選択でき、利用しない端子についてはスキップ設定も可能となっている。

 HDMI(PS3)からVIDEO 1(D3/Xbox 360)への切替は3秒程度、VIDEO 1からHDMI(PS3)も4秒程度とストレスはないが、HDMI(PS3)やVIDEO(D3/Xbox 360)からHDMI(DMR-BW200)切替時には10秒程度かかってしまう。出力機器側のHDMI認証の問題なのか、HDMI機器によっては切替に時間がかかる場合があるようだ。

 また、MDT241WGにはリモコンが付属しないため、入力切替や画質設定操作を、前面の操作ボタン群で行なう必要がある。本体スピーカーのボリューム操作は、コントロールボタンの上下、もしくは一度OSDを立ち上げてから設定する。PC利用の場合は、OS側のボリューム機能を操作すればいいが、テレビの感覚で数メートル離れたところから視聴するような場合には、少々不満が残る。特にテレビ視聴時には、CMと番組で大きな音量差がある場合などが多い。リモコンがあれば瞬時にボリュームの上げ下げができるが、MDT241WGでは、ディスプレイの前まで移動して操作しなければいけない。

 本来PCディスプレイは1m以下の近接距離で利用するものなので、このあたりはPCディスプレイならではの制限といえる。視聴距離を長めに取る場合は、別途オーディオシステムを用意したほうが、使い勝手はいいかもしれない。

 なお、PC向けディスプレイでも、例えばアイ・オー・データの「LCD-MF241X」のようにリモコンが付属し、入力切替やボリューム切替だけでなく、画質モード変更やPinP設定などがリモコンで操作可能なものもある。各社の24型クラスのディスプレイはスペック的には似通っているものの、AV用途を考えると、リモコンの有無は使い勝手を大きく左右する要素になるだろう。

本体前面のボタンを利用してスピーカーのボリューム調整を行なうため、離れた場所から即座にボリューム増減ができない点に注意


■ 高度な画質設定も装備

画面サイズは、フル/アスペクト/リアル/2Xズームの4モードを用意する

 まず入力信号の表示モードとして、フル/アスペクト/リアル/2Xズームの4種類を用意。フルは全画面拡大、アスペクトは入力信号のアスペクトを維持したまま拡大、リアルはいわゆるDot by Dot表示、2X表示は入力信号を2倍にして表示するモードだ。基本はアスペクト、もしくはリアルでの利用となるだろう。

 さらに、AV入力信号の場合は、アスペクトモードとしてオート/16:9/4:3/オフの4モードを用意する。オートにしておけば、スクイーズ信号を検出した場合も、正しいアスペクトで表示できるので、通常はオートで問題ない。

 また、オーバースキャン設定として、入力信号を100%表示する[オフ]のほか、上下約2%をカットして表示する[98%]、同5%(D3以上の信号では7%)カットする[95%(93%)]が用意される。


入力信号の表示アスペクトも選択できる AV機器からのデジタル入力信号は、AV MODEを選択しないと黒レベルがおかしくなってしまう オーバースキャンはオフ(100%)と2段階の設定が可能

画質モードの「DV MODE」は8種類

 画質モードは、「DV MODE(Dynamic Visual Mode)」という名称で管理される。前面のDV MODEボタンで切替可能となっており、スタンダード/テキスト/フォト/sRGB/ゲーム/ムービー/IV MODE/スルーの各モードが用意される。画質モードやアスペクトなどの設定は、入力端子ごとに管理される。そのため、DVDプレーヤー用やテレビチューナなど、接続する機器にあわせた画質設定を作っておけば、入力を切り替えるだけで設定が自動的に呼び出される。

 PC向けのためか、スタンダード、フォト、sRGBなど各モードとも、初期状態では輝度が非常に高く設定されている。テレビ番組などを見ると、白側の階調が飛んでしまうので、ブライトネス(輝度)を抑えながら利用したい。初期設定からすぐに使えそうなのは、コントラストが強めのできっちりとした画の「ゲーム」と、階調表現がしっかりしている「ムービー」だ。


画質モードの「DV MODE」は8種類

 また、画質モードだけでなく、動画応答性能を改善する「MP MODE」を備えている。このMP MODEはスタンダード/ゲーム/ムービーの3モードにのみ機能し、DV MODEと組み合わせて画質調整が可能となっている。この3モードをベースに、AV系入力の画質設定を行なうといいだろう。

 MP MODEは、中間階調のオーバードライブのほか、各画像フレームへの黒挿入と、黒挿入に同期したバックライト消灯の3つの要素からなる動画ボケ改善技術。液晶ディスプレイ固有の残像感を軽減する一方、黒挿入を行なうため、必然的に輝度が低下する。ただしMDT241WGの場合、基本の輝度が高めなので、各モードでMP MODEを適用することでAV系コンテンツにちょうどよい輝度になるケースが多い。パネルの自体の応答速度は16msだが、MP MODEの導入により中間階調については応答速度6msまで低減しているという。

 MP MODEは、3段階の効果設定とオフの選択が可能。レベル1が動きが少ない動画向け、レベル3がレーシング系ゲームなどの動きの早い動画向けで、レベル2はその中間となっている。パーソナルユース向けのディスプレイで視聴距離が近くなることから、もともと大型の液晶テレビほどには残像感は感じないのだが、MP MODEオフの時と比較すると、確かに残像感の低減が感じられる。

 レベルの違いによる残像感の低減効果については、映画視聴時やゲームプレイ時にはそれほど顕著な差を感じない。バックライト輝度がレベル3だとかなり暗くなるので、明るい部屋ではかなり使いづらくなる。また、バックライト点滅を伴うためか、レベルを上げていくとちらつき(フリッカ)が感じられる。輝度や効果のバランスを考えながら、調整したい。

 映画視聴時は、基本的にスタンダード/ムービー/ゲームの3つのDV MODEモードをベースに、MP MODEのレベル補正を行なうのがよいだろう。階調表現に不満が少ないのはムービーだ。

 レコーダやチューナと組み合わせてテレビとして使う際には、スタンダード/ムービーでMP MODE OFFのままブライトネスを抑えるか、MP MODE 1程度を加えるといい。また、アニメなどではDV MODEゲームがしっくりくるソースもあった。

 DV MODE/MP MODEだけでなく、RGB各色ごとにゲインや色の濃さが設定できるなど詳細な画質設定も行なえる。ただし、ソニーの40型液晶テレビ「BRAVIA KDL-40X2500」と比較すると、色純度や階調表現はやや及ばない印象は残る。

 だが、普通のテレビより視聴環境が近いため、テレビとは異なる没入感を得られる。特にゲームなどでは、大型テレビから一定距離離れてプレイするより、強烈な体験を得られそうだ。

 画質設定は入力ごとに設定できるので、入力ソースにあわせた画質でコンテンツを楽しめる。ただし、テレビやプロジェクタのように、リモコンから画面を見ながら画質調整などはできないので、気軽さという点ではテレビには及ばない。製品の作りこみや、使い勝手など、細かな点をみると「ディスプレイ」と「テレビ」の違いはかなり多いように感じる。

PinPの利用例 PinPの設定画面

 また、PinP(2画面表示)機能も備えている。通常画面のほかに子画面を表示できるおなじみの機能で、前面のMP MODE/PIPボタン長押しでPIPのON/OFFが可能となっている。MDT241WGでは、表示場所や3段階(16:9映像の場合400×250ドット/520×292ドット/640×360ドット)のサイズ変更などができる。

 また、子画面の音声を出力する「子画面連動」設定も可能なため、PC画面の子画面としてテレビの映像を流しながら、本体スピーカーにテレビの音声を出力することもできる。

 ただし、HDMIとHDMI、DVIとHDMIなどデジタル系入力を組み合わせたPinP表示はできないほか、D-SubとD5(VIDEO1)も同時に利用できないなどの制限がある。DVI-D接続してPCを操作しながら、子画面でHDMI入力したテレビ映像を見る、などの利用はできないのは残念だ。

 また、1080p入力時には、[画像サイズ]で[フル](全画面拡大表示)以外の[アスペクト](入力信号のアスペクトを維持)、[リアル](DotbyDot)などを選択していると、PinP表示ができない。

【お詫びと訂正】
記事初出時に、PinP機能の操作方法について誤った記載を行なっておりました。お詫びして訂正させていただきます。(7月8日)

【PinP可能な組み合わせ】
D-SubDVI-DHDMI1HDMI2VIDEO1VIDEO2
D-Sub××
DVI-D×××
HDMI1×××
HDMI2×××
VIDEO1××
VIDEO2×


■ 24型フルHDの新鮮な映像体験

 PCディスプレイとしての豊富な機能だけでなく、AV用のディスプレイとしても十分な実力を備えている。1m以下の近接距離でフルHDの臨場感を得られる24型というサイズは、広い居住環境を望みにくい都心の日本住宅事情にもマッチする。

 AVパソコンを中心とした環境はもちろん、民生用のレコーダやPLAYSTATION 3などを接続した、家庭内のメインウィンドウとしても十分利用できる。チューナこそないものの、価格も14万円弱と、フルHDの液晶テレビと比較すると割安感はある。パソコン利用が中心だが、デジタル放送やBD/HD DVDの映像もフルHDで楽しみたい、という人にとっては、外部機器をそろえれば簡単にそうした環境が構築でき、非常に良い選択肢となるだろう。ただし、やはりテレビの使い勝手をそのまま実現できているわけではないことは、十分に念頭においておきたい。

 競合のナナオの「FlexScan HD2451W/HD2441W」や、アイ・オー・データの「LCD-MF241X」とは価格もスペックも非常に良く似ているが、インターフェイスやリモコンの有無などの違いはある。「テレビ的な利用」と「PC利用」の頻度、さらには視聴距離などにより、さまざまな利用ケースが想定しうる。それだけに、製品選びには慎重な検討が必要となるだろう。実際の設置イメージと、利用方法をしっかり考えながら、できれば店頭でしっかり違いを見極めたいところだ。

 AV機器とPC/IT機器との微妙な境界線を狙った製品ともいえるが、1m以下の距離での、BD/HD DVD視聴やゲームプレイは、「テレビ」とは一風異なった新鮮な体験。本機や競合製品も含め、今後の展開が気になるところだ。

□三菱電機のホームページ
http://www.mitsubishielectric.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2007/0510.htm
□製品情報
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/display/product/mdt241wg/
□関連記事
【5月10日】三菱、HDMI 2系統装備の24.1型WUXGA液晶ディスプレイ
-実売138,000円。HDCP対応DVIやD5入力も装備
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【6月26日】アイ・オー、HDMI 2系統搭載24.1型液晶を8月上旬発売
-144,900円。解像度1,920×1,200ドット
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070626/iodata.htm
【新製品レビュー バックナンバー】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/backno/npback.htm

(2007年7月6日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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