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ソニーは26日、2007年度第1四半期決算を発表した。売上高は前年同期比13.3%増の1兆9,765億円。営業利益は同267.2%増の993億円、税引き前利益は同55.0%増の838億円。当期純利益は前年比105.8%増の665億円となった。
エレクトロニクス事業は、売上高が前年同期比約11.6%増の1兆4,293億円と好調で、液晶テレビ「BRAVIA」や、デジタルカメラ「サイバーショット」が増収に寄与。円安などの要因もあり、エレクトロニクスの営業利益は前年比77.3%増の841億円となった。 製品別では、デジタルカメラやPS3向けのシステムLSI、ビデオカメラが増益に寄与したが、液晶テレビは単価下落が影響し、減益となった。 ゲーム事業は、PLAYSTATION 3の発売により前年比60.5%増の売上高1,225億円を記録したが、営業損失は前年比で24億円拡大し、292億円の損失となった。全地域合計のPS3売上台数は71万台。 ■ エレキ好調も、フルHD製品が弱くBRAVIA後退 同社の大根田伸行 EVP兼CFOは、「エレクトロニクスの増益などで、第1四半期としては売上高、利益ともに過去最高」と報告。売上高が前年比11.6%増の1兆4,293億円、営業利益77.3%増の841億円と好調のエレクトロニクス事業については、デジタルイメージング関連が好調で増収増益となった。一方、液晶テレビ「BRAVIA」は売上は伸長したものの、価格下落の影響を受け、テレビ事業は赤字転落している。
カテゴリ別では、デジタルカメラ、液晶テレビ、ビデオカメラの順で増収に貢献。半導体もPS3向けの増加により、大幅な増収となったという。利益貢献の高かったカテゴリは、デジタルカメラ、ビデオカメラ、イメージセンサ、PCの順となり、「デジタルイメージング関係が相当牽引した。オーディオも健闘しており、VAIOはコストダウンが進み、海外での販売が伸びている(大根田CFO)」とする。 一方、損失額の大きいカテゴリは、液晶テレビとリアプロジェクションテレビの2つ。 テレビ事業全体の売上高は、前年比約10%減の2,350億円。営業損失は390億円で、前年比で約280億円悪化している。特にリアプロジェクションは低迷しており、「液晶テレビは価格下落が響いたが、リアプロジェクションは、価格下落だけでなく、市場の縮小が大きな要因(IR部 園田達幸統括部長)」と語る。大根田CFOはも「リアプロは米国の売上が落ち込んだ。数量も価格も想定より悪い数字」とコメントした。 液晶テレビについては、価格下落により損失を計上したものの、売上は前年比で約2割増の2,000億円と伸長している。大寝田CFOは、「大型で25~30%、小型で20~25%ぐらいの価格下落を想定していたが、特にヨーロッパでは想定以上で、5~8%程度見込みより早く落ちた。これが損失の大きな要因」とする。 製品にも低迷の理由があるとし、「競争力のあるラインナップでは無かった。競合他社が春に向けて、“フルHD”をメインのラインナップを組んでいたが、われわれは遅れており、市場で値段を下げないと戦えないような状態になってしまった」と言及した。 しかし、第2四半期以降は新製品投入により、巻き返しを図る方針で、「8月から秋にかけて、フルHDの“強い製品”を出していく。フルHDのラインナップを強化することで、下期は十分に戦える」とする。 テレビ事業の通期業績については、「もちろん黒字を目指すが、第1四半期は厳しい数字となった。下期でどれくらいリカバーできるかだが、テレビ事業全体ではかなり厳しい。ただし、液晶テレビに限れば、年間では黒字になるだろう」と説明した。 ■ PS3「売上台数」は71万台。年末に向けてコスト削減に取り組む
ゲーム事業は、PLAYSTATION 3(PS3)の発売により、売上高は前年比60.5%増の1,966億円と増収だが、PS3の製造コストを下回る価格設定などにより、営業損失292億円となった。売上に占めるハードウェアとソフトウェアの割合は6対4。 ハードウェアの売上は、PS3が71万台、PS2が前年比16%増の270万台、PSPが同52%増の214万台。PS3の発売以来の累計売上台数は428万台。 なお、同社では、ゲーム関連の製品数量について、2007年第1四半期より従来の「生産出荷台数(実質的な工場出荷台数)」から、販売店などで売れた実数に近い「売上台数」に変更している。変更した理由については、「売上にリンクした数字を出すべきではないか、という指摘があり変更した。また、テレビやカメラなど、ほかのセグメントでも“生産出荷数”という形での発表はしておらず、他製品にあわせた(大根田CFO)」とした。生産出荷数という数値を採用した経緯については、「任天堂が開示していた数字が、流通に出した数だった。それに近いものとして工場出荷台数を採用した、と聞いている」という。 PS3は、「売上増に貢献したが、業績は計画を若干下回っている(大根田CFO)」とする。ただし、「米国では8月に人気ソフトをバンドルした、80GBモデルを発売。また、60GBモデルも価格改定を実施し、今期(第2四半期)は実売にはずみがついている。日本、欧州でもに人気ソフトを追加した製品などを投入し、マーケットにあわせた施策を展開する。E3などでもソフトを充実する方針を打ち出したが、年内に全世界で200タイトルを用意する(園田IR統括部長)」とゲームタイトルの充実で、販売拡大を図っていく方針を示した。 また、PS2も売上数量が増加、PSPも欧米の価格改定などにともない売上を伸ばしており、国内も年明け以降前年を上回る販売を続けているという。さらに、9月の新薄型PSPの投入と、ソフトの充実で、普及の拡大を目指す。 2007年度の全世界市場販売目標は、PS3が1,100万台、PS2が1,000万台、PSPが900万台。ソフトは各プラットフォーム合計で2億5,000万本。棚卸資産額は2,270億円。PS3の全世界展開と第1四半期の売上が当初予想を下回ったため、在庫は拡大したが、「危険水域といは考えていない(大根田CFO)」。 なお、PS3の製造コストについて、大根田CFOは、「今の時点でも逆ザヤ(製造コストが販売価格を上回っている状況)ですが、去年から比べるとかなりコスト削減が進んでいる。抜本的なコスト削減は、65nmプロセスのCellの導入と光学ピックアップ部分だが、もう少し先になる。まだ、逆ザヤは解消できていないが、年度末に向かって相当コストは下がっていくだろう」と説明した。値下げについては、「製品戦略に密接に関わる部分のため、コメントできない」とした。
■ 「ウォークマンは音楽ケータイのリーダー」
ソニー・エリクソンは、売上高が前年同期比約37%増の31億1,200万ユーロ、純利益が同54%増の4億4,700万ユーロ。結果、ソニーの持分法による投資利益として177億円を計上した。 販売台数は前年同期比59%増の約2,490万台。市場シェアは前年同期比3%アップの9%強を達成。「特にウォークマン携帯が好調で、販売は900万台を達成。音楽ケータイのリーダー的地位を築いた(大根田CFO)」。 映画事業は、売上高が13%増の2,314億円、営業利益は33億円。「スパイダーマン3」が全世界で好調な劇場興行収入を記録したほか、米国における番組配信事業において、広告収入が増加し、売上増に寄与した。また、「007/カジノ・ロワイヤル」や「ストンプ・ザ・ヤード」などの前年度公開映画のDVD化により、営業収益も黒字化している。 金融事業は、ソニー生命の増収/増益により、売上高が48.9%増の1,848億円、営業利益は637.1%増の338億円。その他の部門は、売上高は842億円、営業利益は78億円。同事業内のソニー・ミュージック・エンタテインメント(SMEJ)は増収で、YUIの「CAN'T BUY MY LOVE」、Crystal Kayの「All Yours」、BEAT CRUSADERSの「EPopMAKING~Popとの遭遇~」などの作品が売上増に寄与した。ソニーBMGは、売上高は0.3%増の8億7,500万ドル、純損失は2,100万ドル。Avril Lavigneの「The Best Damn Thing」やKelly Clarksonの「My December」などがヒットした。 2007年度通期の業績予測は、5月発表の売上高8兆7,800億円、営業利益4,400億円、純利益3,200億円から変更はない。大根田CFOは、「テレビは残念な結果だが、ほかのカテゴリについては結構力が付いていると感じる。通期は、エレクトロニクスに限れば当初予測より上方に行くが、ゲームが若干厳しくなるだろう」との見通しを示した。
□ソニーのホームページ ( 2007年7月26日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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