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携帯電話への搭載により、珍しいものではなくなったワンセグ受信機能。PC用のUSB接続タイプも爆発的にヒットし、現在は価格/受信感度競争に移行。こちらも落ち着きつつある。カーナビやポータブルDVDプレーヤーでの採用も進んでおり、20日に通常モデルの発売が開始された新型「プレイステーション・ポータブル」(PSP-2000)でも、ワンセグチューナが周辺機器にラインナップされている。 一方、ワンセグ受信のみに対応した専用端末はそれほど多くなく、ソニー、BLUEDOT、KFEあたりが投入している。その他のデバイスで視聴できてしまう以上、単体端末としての魅力や利点を訴求するのが難しいというのが現状だ。そんな中、誰も想像しなかった“独自の魅力”を引っさげて登場したのが、イー・レヴォリューションの「SEGNITY」だ。 発売日は9月28日。価格はオープンプライスだが、店頭予想価格は12,800円~14,800円程度の見込み。市場のワンセグテレビは2万円台後半から3万円程度、ソニーの「XDV-100」も3万円を若干超える程度だということを考えると、かなり割安感がある。ただ、液晶ディスプレイが2.7型と小型なのには注意したい。 だが、価格や画面サイズより強烈な付加価値として存在感を発揮しているのが「ツンデレボイス」機能。ユーザーの操作に合わせて、昨今流行のツンデレな女の子の声で応対をしてくれるという、前代未聞と言っても良い機能が内蔵されているのだ。 もともとこの「SEGNITY」は、今年の1月に開催された「TOYフォーラム2007」のタカラトミーブースで展示されていたものだ。会場で発見して、あまりの斬新さに録音した音声を交えて記事化したところ、非常に大きな反響があった。だが、製品化までの道のりは険しかったようで、価格や販売方法などの問題でいったん開発中止状態となり、「東京おもちゃショー2007」では展示されず。その後、イー・レヴォリューションが販売元として製品を引き継ぐことになり、今回のリリースに繋がったという。 確かに価格帯やツンデレ機能を考慮すると、タカラトミーが得意とする子供向けの玩具とは言えないところもある。今回、実機に触れる機会に恵まれたので、そのツンデレぶりを体験してみたい。
■ 筐体は若干おもちゃっぽい ツンデレ機能ばかりに目が行くが、基本は2.7型の液晶ディスプレイを備えたワンセグテレビだ。外形寸法は61×99×22mm(縦×横×厚さ)で、本体のみの重量は約90g。ソニーの「XDV-100」は厚さ15.1mm、BLUEDOTの「BTV-400K」は11mmであることを考えると、かなり厚めの筐体だ。前面には光沢処理が施されており、パッと見の質感は高い。だが筐体の素材はプラスチックで、手にするとチープな、おもちゃっぽさを感じてしまう。 液晶の輝度は調節可能で、輝度を上げると見やすくなるが、階調はすぐに飛びがちだ。調整値では0~4、5あたりにとどめたほうがいいだろう。最大値は23だ。視野角は狭めで、上下、左右ともに色反転が起こりやすい。もっとも、屋外での個人視聴を想定しているので、この点はマイナスとは言えないだろう。製品には設置角度を2段階に調節できるスタンドも付属。室内で小型テレビとして使用する際は便利に使える。
チューナはワンセグのみ搭載で、ラジオやアナログテレビチューナは備えていない。受信は内蔵する伸縮型のロッドアンテナで行なう。EPGやデータ放送表示には非対応で、録画や視聴予約機能は備えていない。番組名表示や字幕表示にはサポートしている。ワンセグテレビ機能としてはシンプルで、必要最低限といった感じだ。 前面には左側にメニューボタン、増減/上下用のプラスマイナスボタンを装備。右側はチャンネルボタン、ボリューム調整モードボタン、輝度調整モードボタンと並ぶ。シンメトリーなボタン配置で、全体としてのデザインは悪くない。上側面にはチューニングボタンと、モード切替を行なうスライドスイッチを装備。スライドスイッチは左から電源OFF、ON、ホールド、ボイスナビゲーションの4モードを備えている。 左側面にはアンテナ入力端子とイヤフォンジャック、そしてUSB端子を用意。右側面にはminiSDカードスロット(専用カードスロット)を装備する。このスロットは将来的にボイスナビゲーションの声データの入れ替える時に使用するもので、公式サイトでデータ作成用のソフトも10月28日に公開されるという。声データを記録したカード単体の販売も想定しているという。現在のところ使用方法は無く、ブランクのminiSDカードを入れても無反応だった。 USB端子も気になるところだが、残念ながらUSBポートからの電源供給で動作するためのもので、PCとの連携機能は備えていない。実際にUSBケーブルを接続してみたが、PCからドライブと認識されることはなかった。
電源のONは、上側面のスライドスイッチで行なう。初回起動時や受信場所を変更した場合などは、左側にあるチューニングボタンを押すと、チャンネルのオートスキャンを行なってくれる。オートスキャン中の画面デザインはなかなか格好良い。 登録が終わると動作可能になる。基本は右側の3ボタンで変更したいモードを選び、左側のプラスマイナスボタンで値を変更するというもの。例えばチャンネル変更では右のチャンネルボタンを押し、画面内のチャンネル表記の色が変更してから、左の増減ボタンを押す。ボリューム、輝度の調節も同じだ。なお、メインメニューの長押しで画面の表示/非表示も行なえる。
メインメニューは左上のメニューボタンから呼び出す。項目は「画面切り替え」、「チャンネル一覧」、「番組名表示」、「音声多重」、「音声言語」、「字幕表示」の6個。これらの項目決定には、再びメニューボタンを押す必要がある。右上のチャンネルボタンに改行(リターン)マークが記載されているのでついつい押してしまうのだが、この場合はキャンセルボタンとして機能し、メニューが消えてしまう。メニューボタンで呼び出し、増減ボタンで項目を選び、再びメニューボタンで決定するという、不思議な操作だ。慣れると左手のみで操作できるということなのかもしれないが、後述するボイスモードを使用することで、その謎が解けることになる。
■ 萌え絵も装備 前述のスライドスイッチを「ON」の状態にして起動させると、普通のワンセグテレビとして動作し、ツンデレボイスが流れることはない。このスイッチをさらに右まで動かし「ボイスモード」に変更することで、いよいよ「ツンデレワンセグテレビ」に変身するのだ。 モードを切り替えてみると、声よりもまず画面が変化して驚かされる。チャンネル切り替え中に一瞬表示されるウエイティング画面が、これまでのテレビアイコンを使った無難なデザインから、萌えイラストに変化したのだ。イラストはチャンネル切り替えの度にランダムで種類が変わり、3種類が入っていることが確認できた。
イラストレーターは加茂氏(GAFAS)。様々な雑誌や、最近では「キミキス」文庫版のイラストなどでも活躍中だ。東京ビッグサイトに行く時に国際展示場駅を使っている人は、途中の白い屋根付き通路のところにぶら下がっている同人誌印刷大手・サンライズのポスターのイラストも手掛けているので見覚えがあるだろう。 3種類のイラストはいずれも女の子の手にSEGNITYが握られている。いずれも2人組なので「ツンデレボイスのイメージガール」というわけではなさそう。だが、ツンデレボイスを聞きながらニヤニヤと妄想に浸る際の触媒として非常にツボを突いた表示機能だ。
肝心のボイスナビゲーション機能を見て(聞いて)いこう。以前の展示会レポート記事において、ツンデレボイスを掲載し「声の主は釘宮理恵さんでは?」と予想したところ、「その通り」や「絶対違う」など、様々な反響を頂いた。 会場で録音した音質が良くなかったので申し訳ないのだが、AV Watchのアニメ系記事担当、アニメオタク歴15年以上、アフレコ取材で釘宮さんにも何度も会っている身としては「釘宮予想」を撤回する気はない。最近ではルイズやシャナ、ナギなど、子供っぽいキャラクターを演じている事が多いが、SEGNITYでは若干大人っぽい声なのでわかりにくいのは確かだ。関係者筋からも、「釘宮理恵である」との証言も得られたが、声優名が正式発表されず非公開である以上、推測であることは変わりはない。このあたりは、読者の耳で判断してもらいたい。 そのツンデレボイスだが、右側のチャンネル、ボリューム、輝度ボタンをトリガーとして喋るようになっている。そのため、左側のメニューや増減ボタンを押しただけでは何も喋らない。メニューボタンが決定の役割を担っていたのはそのためだ。 購入当初の「ツン」状態を例にとると、チャンネルボタンを押すと「チャンネル変える気ぃ?」と言われ、実際に増減ボタンでチャンネルを変えると「ちょっと! 見てるんだから勝手に変えないでよね」と続く。 ボリュームも、変更モードに切り替えた次点で「ボリューム変える気ぃ?」となり、実際に変えると、「うるさいわねぇ」(ボリュームアップ)、「聞こえないわよ!」(ダウン)と続く。1つ1つのボタン操作に割り当てられている声は同じなのだが、結果的に1つの設定変更に2つの声が使われている。また、増減で2種類の言葉が割り当てられているので、結果的に非常に多くのバリエーションの声で喋っているように感じられる。各ボタンに1種類の声が割り当てられていただけでは、表現力はイマイチになっていただろう。 「ツン」モードの反応は他にも、画面表示OFFの状態から画面を表示させると「テレビでも観る気?」、輝度モードで「明るさ変える気ぃ?」、変更で「暗いわね」、「まぶしいんだけど!」と続く。そして画面OFFにすると「べ、べつに寂しくなんかないんだからね!」と、ツンデレの王道的なセリフでまとめてくれる。 全体的にツンツン度合いが激しく、厳しい言葉が多い。だが、電源OFFでさよならをすると急に「べ、べつに寂しくなんかないんだからね!」と、「デレ」の片鱗を見せてくれるあたりが心憎い。製品説明によれば、ここから使い込むうちに「ツンデレ」になり、最終的には「デレデレ」モードになるという。さっそく「ツンデレ」になってくれとボタンを押しまくること数十分。一向に声が変化する兆しがない。そこから1時間以上頑張ってみたが変化は見られなかった。 数時間ごとにチェックしていたところ、6時間ほど過ぎた所で反応が変わった。「一緒にテレビ観たいの? 仕方ないわね、許可するわ」(表示ON)、「ちょっと本気!?、まあチャンネル変えていいわ」(チャンネル変更)、「ちょうど飽たところだったの、チャンネル変えていいわ」、「あ、あなたのためにチャンネル変えるんじゃないんだから!」、「ボリューム権限は私が持ってるのよ、勝手に変えるなんて、どういうつもり?」(音量変更)、「ちょうどうるさいと思ってたのよ、次から気をつけないさい」、「静かにすればいいんでしょ!」、「確かに、明るさは変える必要があるわね、許可するわ」(輝度変更)、「ちょうど眩しいと思ってたのよ、変えていいわ」、「本気で明るくする気? まぁ、好きにすれば?」、「そ、そう、しょうがないわね、さようなら」(表示OFF)。
ユーザーの操作に対し、最初は否定の言葉を口にするが、強がりながらも“許してあげる”的なコメントに変化している。“そっぽを向いて文句を言いつつ、ほっぺが赤い”という「ザ・ツンデレ」状態。言葉では伝わりにくいが、声の表情にも焦りや、動揺が出ており、操作していて楽しい。表示OFFのコメントはキツク感じるかもしれないが、実際の声には「もう帰っちゃうの!?」という感情が色濃く出ている。
もともと“ツンデレ”は、気の強い女の子が人目がある学校などで、好きな男子にツンツンした態度をとるが、2人きりの下校時などには気が緩んで「デレデレ」してしまうという相反する反応が同居したものだ。これを忠実に再現するならば、SEGNITYを屋外で使った時は事務的な反応で、家に帰るとデレデレになるのが正しいだろうか? それゆえ、時間で変化するのが「厳密にツンデレなのか?」は引っかかるところ。しかし、ツンデレを表現する言葉のチョイスとしては、非常に“わかっているなぁ”という印象を受けた。 それにしても、“ツンデレ”までへの道のりは思いのほか険しい。連続使用なので1日でこの状態になったが、通勤通学の合間に使用している程度では、数日かかるのは必至だ。「簡単にデレになるような子は、ツンデレっ子ではない」というメーカーからのメッセージなのだろうか。その後も使用を続け、最終的に“デレ”状態に到達することはできたが、非常に長時間が必要で、途中で寝てしまったので正確に何十時間必要だったのかは定かではない。購入後のお楽しみとして「デレ」モードのセリフの紹介も割愛する。「デレへの道のりは容易ではない」ということのみをお伝えしておきたい。 ちなみに、使用時間経過で変化するこのモード。説明書によれば、使用時間の記録は、内蔵電池が減った状態の赤色表示では記録されないのだという。モード移行の早期実現にチャレンジする場合や、屋内で使用する場合は極力USBから電源を供給したほうがいいだろう。また、その際に乾電池を入れたままにしておくと急速に電池の方が消耗してしまった。理由は不明だが、USB接続の際は乾電池を取り外すよう、説明書にも記載されている。なお、本体裏のリセットスイッチでデレモードをツンモードに戻すことは可能なので、何度でもデレへの行程は楽しむことが出来る。
■ 今後も広がりを見せて欲しいボイスナビゲーション おおむね楽しいツンデレ機能だが、困ったこともある。ツンデレボイスが流れている最中は、テレビの音がキャンセルされることだ。例えばボリュームを小さくしておいて、画面だけを表示してニュースを見ている際、気になる映像が出てきて、慌ててボリュームアップボタンを連打すると「ボリューム変える気ぃ?、うるさいわねぇ、うるさいわねぇ、うるさいわねぇ」と、連打分のボイスが流れたあとで、はじめてテレビの音声が出力。当然ニュースは終わっていた。思わず「うるさいのはお前だ」とツンツンしたくなるが、「だったらツンデレモードを使うな」という話になるので、こうしたお邪魔っぷりも、小悪魔的な可愛い要素と楽しむことにしよう。 チャンネル切り替えの所要時間は約3秒。電源投入から出画までも同程度で、昨今のワンセグ機器からすると若干遅めだ。受信感度も総武線や山手線内でテストしたところ、携帯電話内蔵タイプよりも若干落ち、受信が安定しない区間は多めだった。薄型化も含め、もう少しワンセグテレビとしての基本性能を高めて欲しいと感じる。ちなみにイヤフォン接続時もツンデレボイスはイヤフォンから楽しめるので、電車内でデレデレすることも可能である。 ツンデレボイス機能は、チャンネル変更時の待ち時間も短く感じさせてくれるイラスト表示やツボを付いた言葉の選択など、完成度の高さが好印象。育成ゲーム的な“成長”を感じさせてくれるテレビというのは今までなかったジャンルで、人に見せた時の反応も大きいだろう。万が一、ボイス機能機能に飽きてしまっても、ワンセグテレビとしては引き続き使えるという安心感もある。
今後は専用音声カードの発売や、ユーザーによるカスタマイズでの広がりを期待したいところ。ユーザーが自分の声を入れるというのは厳しそうなので、声優さんの声を入れたカードの発売は実現して欲しい(個人的には雪野五月さんに千鳥かなめの声や、たかはし智秋さんに厳島貴子の声を入れて欲しい)。カスタマイズではツンデレに縛られることなく、恋人の声でも動物の声でも何でも入れられる。静止画の入れ替えにも対応しているため、アイデア次第で自分だけの「インタラクティブテレビ」が作れそうだ。
□イー・レヴォリューションのホームページ
(2007年9月20日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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