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ヤマハ株式会社は、「ハイグレードHiFi」と位置付けたピュアオーディオ新製品として、プリメインアンプ「A-S2000」とSACD/CDプレーヤー「CD-S2000」を12月中旬に発売する。価格はアンプが208,950円、SACDプレーヤーが176,400円。どちらもシルバー(S)とブラック(B)の2色を用意する。 同社は2006年9月に、高級スピーカーシリーズとして「Soavo」を投入しているが、今回のプレーヤー/アンプは、それらと同価格帯に位置する「ハイグレードHiFi」シリーズ第2弾モデル。同クラスの製品で、音の入り口(プレーヤー)から出口(スピーカー)までのラインナップが完成したことになる。
SACD/アンプ共に、'70年代に同社が発売したプリメインアンプの名機「CA-1000」などを彷彿とさせる、クラシカルなデザインが特徴。「かつて“ヤマハビューティー”と称されたヘアライン仕上げのフロントパネルやレバースイッチ、側面のウッドパネルなどを復活させ、時代に左右されないヤマハらならではの“凛”とした美しさをデザインテーマにした」(AV機器事業部 商品開発部 村松秋弘部長)という。
■ プリメインアンプ「A-S2000」
定格出力90W×2ch(8Ω)、最大出力120W×2ch(8Ω)のアナログステレオ、プリメインアンプ。最大の特徴は、入力から出力までの全段で完全バランス増幅を実現したこと。同様の機構を採用したハイエンドプリメインアンプは他社にも存在するが、それを約20万円の製品で実現するために、新たに「フローティング&バランス・パワーアンプ」という独自技術を投入した。 これは、出力段におけるスピーカードライブの完全対称化を目指すもので、フォノイコライザーとヘッドフォンアンプを除いた、全てのオーディオ回路をバランス化。左右チャンネルの信号処理回路を完全に独立させると同時に、出力段のプラス/マイナス側に同一極性の出力素子を採用し、NFBや電源供給も左右信号それぞれのプラス/マイナス側で独立し、処理している。
バランス増幅を行なう利点は、外部からのノイズの影響を受けにくくなるという点にある。ヤマハの「フローティング&バランス・パワーアンプ」では、電源のアースがシャーシのアースから浮いている構造を採用しているため、この名前が付けられているという。パワーサプライは4基搭載。
ヘッドフォンアンプはフルディスクリート構成による低インピーダンス駆動型。RCA入力、およびフォノイコライザーからの入力も、内部でアンバランスをバランス変換し、後段のバランス回路へと伝送している。 入力はステレオアナログのXLRが1系統、RCAが4系統、Phono(MM/MC)が1系統の合計6系統。出力はステレオアナログのプリアウトが1系統、レックアウトが1系統。メイン入力端子も備えている。消費電力は220W。外形寸法は435×465×137mm(幅×奥行き×高さ)。重量は22.7kg。リモコンも付属する。
■ SACD/CDプレーヤー「CD-S2000」
SACD/CD再生に対応したプレーヤー。SACDは2ch再生のみのサポートとなっている。また、CD-R/RWに収録したMP3/WMAファイルの再生もサポートしている。 DACに、TIのバーブラウン「PCM-1792」を採用。プラス/マイナス側それぞれに1基ずつ、合計2基搭載しており、変換精度を向上。プラス/マイナスの出力は、それぞれ独立したローパスフィルタに入力され、出力端子のまでの全段がバランス伝送される。そのため、前述の「A-S2000」とXLR端子で接続することで、ソースからスピーカーの直前まで、全てバランスでの伝送/増幅が行なえる。
SACD/CDドライブメカは筐体中央に設置。ブラシレス・スピンドルモーターを採用しているほか、ローディング機構の支えには新開発の「サイレントローダー」も投入。ディスクトレイはアルミニウム製で、高級感も高めている。 電源部はオーディオ系とデジタル系で独立したトランスを採用。デジタル回路からオーディオ回路への影響を防いでいる。オーディオ系のトランスにはトロイダルトランスを使用。ディスプレイを消灯させ、デジタル出力回路も停止させることで、ハイクオリティなアナログ出力を行なう「ピュアダイレクトモード」も使用できる。
インシュレータには、A-S2000と同様に、スパイク/パッドが選択できる特製脚部を採用。S/N比は116dB以上(SACD/CD)。出力端子は光デジタル×1系統、同軸デジタル×1系統、ステレオアナログ(XLR)×1系統、ステレオアナログ音声(RCA)×1系統。外形寸法は435×440×137mm(幅×奥行き×高さ)、重量は15kg。リモコンも付属する。
■ 「HiFiは、ヤマハから始まった」
ヤマハエレクトロニクスマーケティングの関口博社長は、現在のオーディオ市場について「市場全体の規模はそれほど拡大していないが、一部エリアは伸びている」とし、その分野を「フロントサラウンドを中心としたホームシアター」と、「Blu-ray/HD DVDなどと連携するAVコンポ」、そして「団塊の世代のオーディオ回帰の流れが徐々に見えはじめている、HiFi市場」であると説明。 また、「iPodや携帯電話での楽曲ダウンロードなど、デジタルオーディオを利用する若い世代にも、より良い音で聞きたいというニーズがある。それにも応えていきたい」と言う。その上で、同社が展開する音響製品分野として「アクティブスピーカーなどのデスクトップオーディオ」と「フロントサラウンド」、「BD/HD DVD用高級シアター機器」に続く“4本目の柱”として「HiFiオーディオ」を訴求していく姿勢を明らかにした。
さらに、関口社長はハイグレードHiFiシリーズの第1弾として投入した、「Soavo」スピーカーが、日本メーカーのフロア型スピーカーとしては初めて、欧州EISA賞を受賞したと報告。「日本のユーザーは機器選びにおいて、他者の評価も重視する傾向にあり、欧州での評価を気にする人が多い。これを機に、日本の皆さんにも“憧れられる機器”として、ハイグレードHiFiシリーズを訴求していきたい」と語った。
続いてAV機器事業部 商品開発部の村松秋弘部長は、同社が'50年代半ばの自社カタログ内で、「HiFiプレーヤー/スピーカー」という用語を世界で初めて使用したことを紹介。'74年のスピーカー「NS-1000M」や、V-FET素子を使ったパワーアンプ「B-1」など、同社オーディオ機器の歴史を振り返りながら「常に先端技術を取り入れ、名機と呼ばれるモデルを投入してきた。HiFiは、ヤマハから始まったと言ってもいい」と語り、これまでの歴史の重みを強調。
同時に、「若い技術者の中には、往年の名機を越えるようなHiFiオーディオを開発したいという思いが、マグマのように底流に流れていた。今回のモデルはそんな思いが爆発した商品。今後もラインナップを拡充することで、ハイグレードHiFiシリーズを強力に推進していきたい」とした。
発表会の後半では、JAZZシンガーのグレース・マーヤさんも登場。彼女のSACDアルバムを再生するデモに続き、最新アルバムからの楽曲などを生演奏で披露。発表会が行なわれた青山ラピュタガーデンのレストラン「アルトモンド」の開放的な環境と相まって、上質でゆったりとした雰囲気の発表会となった。
□ヤマハのホームページ
(2007年10月11日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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