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デジタル私的録画問題に関する権利者会議28団体は9日、私的録音録画補償金制度を不要と主張する社団法人電子情報技術産業会(JEITA)に対して、公開質問状を送付。地上デジタル放送の新録画運用ルールである「ダビング10」についても、私的録音録画補償金制度の維持が前提と訴え、記者会見を行なった。
「私的録音録画補償金制度」については、文化庁の文化審議会著作権分科会 私的録音録画小委員会にて審議が続けられ、10月12日に中間報告をまとめている。しかし、JEITAは、「同委員会では議論が尽くされなかった」とし、コピー制限が施されているコンテンツや、自分で購入した音楽CDをポータブルプレーヤーなどに取り込んで聞く“プレイスシフト”、放送時間に制約されずにテレビ番組を視聴する“タイムシフト”の場合においては、「補償金は不要」とする声明を10月16日に発表している。 「ダビング10」は、総務省の情報通信審議会情報通信政策部会のデジタルコンテンツ流通促進等に関する検討委員会において、現行のコピーワンスルールの見直し案として提案されたもの。録画した1番組について9回までのコピー、10回目でムーブとなる新運用ルールで、総務省の情報通信審議会が第4次中間答申として提案。現在、ダビング10の導入に向けて関連業界が運用ルールの整備を行なっている。 権利者会議の28団体は、ダビング10の導入は補償金制度の維持と不可分と訴え、JEITAの声明に反論。「コピーワンスの緩和に応ずることはやぶさかではないが、コピー可能な枚数が増えれば不利益も増す。補償金制度による補償の機能は必須となると発言してきた。新方式の導入は補償金制度を前提としたもの」と強調。「私的録音録画小委員会の議論が不足」というJEITAの主張については、「中間答申策定時に主張せず、なぜ今になって主張するのか?」、「コピーワンス緩和の合意を破棄するつもりなのか?」と疑問を呈している。 そのため、28団体は連名でJEITAの町田勝彦会長宛てに質問状を送付。JEITAの姿勢について7項目の質問を用意し、12月7日までの回答を要求している。 7項目の概要は以下のとおり。質問状はJASRACのホームページにも掲載されている。
■ 「権利者はコピーワンスから学んだ。JEITAはダメ」
会見では、実演家著作隣接権センターの椎名和夫氏が、質問状送付の経緯と意図を説明した。 椎名氏は、個人的な所感として、「JEITAは、本当にメーカーの利益を代表されているのか? 意地になってませんか?」と問いかけ、「コンテンツ大国を目指す上で、ソフトウェア、ハードウェアの両輪が必要。こうした内容でJEITAさんに質問させていただくと同時に、メーカーの経営者の方も本当にこれ(補償金廃止)を望んでいるのか、お聞きしたい」と語り、「(コピーワンス緩和の議論の中で)JEITAさんは、EPN(出力保護付きでコピー制限無し)を主張されていたが、それ以外の方法が見つかった段階でもEPNとしかおっしゃらなかった。消費者と権利者が中間点を見つけてダビング10に至った。最後までEPNといっていたJEITAってなんだろう? その真意をうかがいたい。というわけで、今回の会見を開きました」とJEITAへの疑問の声をあげた。
日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏は、「映画製作者の基本的な考え」として、「映画のビジネスは、オリジナルネガフィルムを主体的にコピーコントロールしながら複製して、マルチユースすることでビジネスが成り立っている。家庭内での複製であっても、われわれの資本回収の窓口が閉ざされるということで、第三者による複製については禁止。どのような形であれ第三者による複製については、対価を請求することが生命線」と、業界の姿勢を説明。 「映画館での盗撮はもとより、DVDのパッケージも複製禁止、適法配信も原則複製禁止としている。あらゆるウィンドウで複製禁止をしているが、この点では社会的にもコンセンサスがあるから、問題は生じていない。だから、私的録画補償金を求めることもない。唯一、私的複製を許容しているのが、無料地上波放送。タイムシフティングという視聴形態が含まれており、短絡的に複製禁止するのは社会通念上なじまない、だから、補償金を前提に甘受している。これが、権利者保護とユーザーの利便性を保つ、究極のバランスではないか、と思っている」とし、「10回のコピーが可能となるということは、従前のとおり、補償が必須であると考えている。決して無謀な要求をしているわけではない」と訴えた。 また、日本音楽作家団体協議会の小六禮次郎氏は、「私も作曲家として、いろいろな楽曲をコピーして覚えたり、演奏したりしてきた。コピーの重要性は、骨身に浸みて感じている。コピーが、どのような形で社会に文化に貢献するかを認識しているのはユーザーだけではない。作家もその重要性をより強く認識している。コピーの自由度を確保することは非常に重要だ」と語る。 「ただし野放図なコピーは、作家の生活圏を脅かすものになる。だから、保護手段ではなくて補償金という形でざっくりと作家に補償する。それがなぜ不適切なのか、わからない。適切な制度だと考えているが、制度には不備があるのも事実。是正を続けていきたい」と補償金制度の意義を語り、改善を図りながら継続していくよう訴えた。 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)の菅原瑞夫理事は、「自由なタイムシフト、プレイシフトを実現するということで、平成4年に導入された制度。メーカーはコピーが可能な機械を作って利益を上げていくわけで、その社会的責任があるのではないか、という議論から導入されたもの。当時の(機器メーカーの)経営者の方はそれを理解していていただき、制度に賛同されて実現した。平成4年から考えると、簡単に複製できるようになっており、メーカーの社会的責任はより重要になっているのではないか?」と訴えた。 さらに「日本のメーカーはヨーロッパで販売されている機器には、補償金を払っている。いろいろな判断があるとは思うが、なぜ、母国の日本だけはいらないというのか? 我々からすると不可解である。経営者の方にも、導入時の理解のもと継続されてきたわけですから、今どのように理解されているのか。お伺いしたい」と、質問状への回答を求めた。
また、JEITAのコピーワンス改善に向かう姿勢について、椎名氏は、「端的に言ってダメだと思います。“技術的保護手段で解決できる”といいながら、“ではその技術的保護手段について話し合いましょう”というと、“特に言うことはありません”という。その繰り返し。我々は、真剣に考えており、権利者もコピーワンスから学んでいます。一定のアロワンス(許容)は文化の発展に必要だと。ついてきていただけない、というのが正直なところです」とコメントした。 □ニュースリリース ( 2007年11月9日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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