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株式会社BCNは5日、家電量販店など24社、約2,300店舗(2007年11月1日現在)のPOSデータを集計した「BCNランキング」における、2007年の市場動向を発表。今回は主に、11月月次データを中心とした、年末商戦における次世代ディスク(BD/HD DVD)レコーダの販売動向について分析を行なった。 デジタル放送対応/非対応や、次世代ディスク/DVDも合わせた、レコーダ全体の台数伸び率は、買い控えが起こっていた10月で前年同月比81.6%と低い水準。各社新製品が投入された11月には同93.9%と約12ポイント増加したが、市場全体でのプラス成長には至っておらず、低調な滑り出し。 一方、金額ベースでは10月の前年同月比91.4%から、11月には112.2%と、今年初めての2桁増を達成。これは、単価の高い次世代ディスクレコーダが好調なためで、BCNの田中繁廣取締役は「12月末までに次世代ディスクレコーダがどれだけ牽引できるかがポイント。その動向はレコーダだけでなく、テレビも巻き込み、市場の今後を占う大きな鍵になるだろう」と分析した。
■ BDとHD DVDのシェアは、98:2
レコーダ全体に占める次世代ディスクレコーダの構成比は、台数ベースで見ると、10月全体で5.8%だったものが、11月には21.1%と急激に増加。単価が高いため金額ベースではさらに数字が上がり、10月の11.9%から、11月には36.6%まで向上している。 平均単価は、11月第5週の時点で次世代ディスクレコーダ全体が13万円。BDレコーダも同額の13万円だが、HD DVDは10万円と大幅に安い。HD DVDは東芝の年末商戦向け新レコーダ「RD-A301」の発売日が12月中旬であり、現在店頭にあるのは夏商戦向けの「RD-A600/300」で、いずれも低価格化が進んでいるためだ。
一方、非次世代レコーダの単価は61,000円であり、次世代ディスクレコーダの13万円とは2倍以上の開きがある。田中取締役は「かなり高額にも関わらず、年末商戦で次世代ディスクレコーダ市場が急激に立ち上がっている。新しい製品が登場する際はエントリーモデルに人気が集中するのが普通だが、これは珍しい現象」と印象を語る。
10月と11月を合算した、フォーマット別のシェアは、台数ベースでBD:HD DVDが98 : 2、金額ベースで98.3 : 1.7という状況。メーカー別では台数でソニー(57.1%)、松下電器(32.3%)、シャープ(8.7%)、東芝(2%)。金額ではソニー(54.8%)、松下電器(37.2%)、シャープ(6.2%)、東芝(1.7%)という内訳。 各社の戦略を簡単にまとめると、ソニーはBDレコーダを4機種と、バリエーションを増やし、10万円台前半のエントリーモデルを充実。台数シェアを取りに行った戦略が数値の結果に現れている。松下電器は13万円~23万円程度の中~上級クラスを重視した結果、金額シェアが大きい。
シャープはHDD非搭載の単体BDレコーダを展開し、VHSデッキからの買い替えを中心とした新規ユーザーの掘り起こしを目指したため、台数シェアが大きい。田中取締役は「3社が狙うユーザー層が上手く住み分けられており、それぞれが戦略の特色に合ったユーザー層を捕らえられた」と総括した。 この状況はメーカー別の平均単価(11月)を見ると顕著で、ソニーは128,000円、松下電器は153,000円、シャープは96,000円と3社で大きく異なる。メーカー合わせた、平均単価の台数構成比(11月)でも、10~13万円未満が46.2%と多いものの、13~16万円未満(11.4%)、16~20万円(26.7%)も多く、エントリーから最上位モデルまで、まんべんなく売れている状況だ。 売れているモデル(モデル別台数シェア)では、ソニーの「BDZ-T70」(HDD 320GB/平均単価119,791円)が17.9%でトップ。2位以下も「BDZ-T50」(同250GB/103,583円)が14.9%、「BDZ-X90」(同500GB/160,395円)が14.5%と、上位をソニーが独占。松下電器は「DMR-BW800」(同500GB/161,672円)が12.2%で4位、「DMR-BW700」(250GB/125,133円)が10.2%で6位と、高額ながら健闘している。
■ 「東芝の次世代ディスクレコーダ商戦はこれから」 次世代ディスクレコーダの低価格化は、平均単価でシャープの「BD-AV10」が91,051円、「AV1」が79,931円と牽引。田中取締役は「かなり早いスピードでこなれた価格になっている。東芝のA301も10万円を切る価格と言われているので、次世代ディスクレコーダは思いのほか気軽に買えるものになるだろう」と言う。 また、東芝については「レコーダではBD陣営が多いので、1社でHD DVDを推進している東芝との差は歴然としている。これには東芝の年末モデルの投入時期が他社とズレていることも関係している。12月中旬登場のA301と、2008年春に投入されるという新機種で若干の巻き返しはあるだろう。東芝の次世代ディスクレコーダ商戦はこれから」と説明。だが、「BDとHD DVDの勢力関係が逆転することは、もう、ちょっと無いのではないか」との見解も付け加えた。 一方で田中取締役は、今後のレコーダ市場における「BD vs HD DVD」という2規格が競合する図式に疑問を提示。「HDDの大容量化やMPEG-4 AVC録画の実現、メモリーカードの大容量化なども進んでおり、必ずしも2つのディスクが争うだけでなく、ソースやニーズに合わせた様々なメディアの使い分けがメインになるかもしれない」と予測。 「HD DVDは単体プレーヤーが海外市場で伸びているほか、価格がシビアなPC市場でもシェアを伸ばしている。AVもPCも全てがBDに一本化されることはなく、しばらく共存が続くだろう」(田中取締役)とした。
■ 薄型テレビの年末商戦は出足遅れる 次世代ディスクレコーダが好調な反面、薄型テレビは出遅れている。 液晶は台数ベースで2007年の各月、前年同月比125~130%程度で推移していたが、10月は116.7%、11月で120.5%と低迷。プラズマも10月が110.3%、11月が109.4%と、2桁増ギリギリといった状況。金額ベースでは10月が96.4%、11月が92.9%と前年を割ってしまっている。
これには、液晶テレビの32型がフルHDパネルへの切り替わりが終わっておらず、単価が下がっていること。30~40型に関しては、松下電器が37型をプラズマから液晶へシフトしたことなどが影響している。 また、50型以上で液晶とプラズマの競争が激化。台数構成比で液晶が36%、プラズマが64%となったほか、60型以上でも液晶が46%、プラズマが54%と、「大型で有利」とされたプラズマの市場が液晶に奪われた格好だ。 田中取締役は「このままテレビが伸び悩んで年末商戦が終わってしまうのかわからないが、商戦全体にこれまでのような勢いが足らないと感じるのは事実。サブプライムローンの影響があるのかわからないが、心理的に消費にブレーキがかかっているのかもしれない」と語った。
□BCNのホームページ
(2007年12月5日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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