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株式会社日立製作所とキヤノン株式会社、松下電器産業株式会社は、液晶ディスプレイ事業/技術の強化、発展を目的とし、包括的提携を行なうことで基本合意。25日に都内ホテルで、3社の社長が合同会見を行なった。 各社が開発で協力するとともに、日立の100%子会社として中小型液晶パネル事業を行なっている株式会社日立ディスプレイズについて、キヤノンと松下がそれぞれ株式の24.9%を2008年3月31日までに取得する。 今後詳細について検討を続け、キヤノンは日立ディスプレイズ株式の過半数の取得を目指し、中小型液晶の安定調達とともに、有機ELディスプレイ事業の強化を図る。また、松下電器は、株式会社IPSアルファテクノロジへの事業関与を深め、同社株式の過半数を取得。松下電器主導のもと、次世代工場の投資を進める。 つまり、従来は日立中心となっていた大型液晶と中小型液晶の各事業において、中小型についてはキヤノンが事業主体に、テレビ用の大型については松下電器が中心となり、事業を展開する。また、その枠組みの中で3社が協力して開発協力を進める体制を構築する。日立古川社長は、「最強のシナジーを生み出す連合」と、新しい事業モデルを訴えた。 ■ 「SEDは諦めない」。キヤノン内田社長
キヤノンの内田恒二社長は、提携について「主要キーパーツの内製化というキヤノンの進める基本方針によるもの。中小型液晶パネルは、キヤノンにとって欠かせないキーパーツ。キヤノンの各事業の一層の強化ができる」と説明。 「中小型液晶パネルは、カメラなどキヤノンの関連製品だけでなく、携帯電話やゲーム、車載用途など、これからも拡大するパーツ。将来的には日立ディスプレイの株式の過半数を取得し、そのノウハウを生かしてキヤノンの開発にシナジーを生み出し、より高品質なパネル生産を目指す。有機ELの開発についても加速をしていく。製造機器メーカーのトッキのグループ企業化などとあわせて、有機ELの製品化、“ジャンプ”に向けて取り組む」とした。 SEDについては、「現在は訴訟中で、控訴審に入っているが、現在技術開発に邁進しているということだけはお伝えしておく。我々は決して諦めたわけではない。今回の日立ディスプレイズとの協力を見て、“もしやキヤノンはSEDを辞めるんじゃないか”、という心配は無用」とコメントした。 また、「キヤノンは、静止画の入力、カメラやスキャナ、複写機、静止画の複写機、ビデオカメラなど、入力から、出力まで多くの機器を持っているが、動画のディスプレイを持っていない。中小型液晶、有機EL、SEDの3つで、静止画から動画、入力から出力、映像から情報全てを扱う、高度な連携を可能とする“クロスメディアイメージング”の実現を目指す」と訴えた。 有機ELについては、「デジタルカメラ向けが中心。SEDは当初から55型以上で製品化を目指してきたが、有機ELについてはテレビ向けは考えていない」と説明した。 ■ 薄型テレビの軸はPDP。30型クラス向けの新工場を松下主導で
松下電器産業の大坪文雄社長は、提携について「液晶ディスプレイ事業と将来の有機EL事業についての新たな枠組みの合意に至ることができた」とし、「プラズマを基軸に薄型テレビ市場を勝ち抜くという当社の戦略に、いささかも変更はない。今後も37型以上でグローバル占有率25%以上を目指していく。一方で、多様なニーズや地域のニーズにこたえるためには事業基盤を確固たるものにすることが急務になっている。日立が培ってきた、広視野角、高画質、低消費電力のすぐれたIPS液晶パネル技術を採用し、PDPとあわせて“VIERAシリーズ”の商品力を高めてきたが、今回の合意により、中長期的かつ安定した調達が可能となる」と提携の意義を解説。 さらに、「将来的には、IPSアルファの経営権の過半を持ち、当社が中心となりIPSアルファの新工場に投資を行なっていく」としたほか、「薄型テレビにおける将来の有機ELへの展開も視野に入れられるようになった。垂直統合化をプラズマだけでなく、液晶テレビにおいても進めていく。より盤石なテレビの事業体制を構築する。新たな枠組みにご協力、ご理解いただきたい」と訴えた。 なお、IPSアルファへの新工場については、「詳細は決まっていないが、30型代を最も効率的に生産できる第7、第8世代あたりを検討している」としており、IPSアルファ株式の東芝持分については、「全数松下に譲渡していただくことで合意している」とした。 また、「今から本格的な液晶投資を始めて、メジャープレーヤー(業界大手)になれるのか?」との質問については、「松下はプラズマも最後発でしたが、現在まさにメジャープレーヤーです。パネルができれば、それでいいテレビができるというわけではない。そのためのいろいろな取り組みがあるが、いわゆる垂直統合型で取り組む。セットとデバイスの連携で、画質、コストなどさまざまな点で改善を図っている。必ずメジャープレーヤーになれると確信している」と説明した。 尼崎に建設中のプラズマ第5工場については、「建設計画に一切変更はない」としたほか、東芝との液晶ディスプレイ合弁会社東芝松下液晶ディスプレイテクノロジーについても「特に変更はない、協業は継続していく」としている。
■ 筆頭株主から外れるのは「世界と戦うため」。日立古川社長
日立製作所の古川社長は、日立ディスプレイズをキヤノンが、IPSアルファを松下が主導となり、事業を進めるという今回の提携の枠組みについて説明。事業の主導権を譲った理由については、「パネル事業は奥が深い。単なる部品という位置づけから変わってきている。最終製品で最も強い松下さんとキヤノンさんが経営なさったほうが、この事業を世界で勝たせるためにはベターだ、と判断した」とした。 古川社長は、「液晶市場は拡大しており、高画質、高品位なパネルを安定的に低価格で提供できることが課題となっている。日立のIPSパネルは世界最高の液晶であると考えている。今後は、高度な液晶技術を持つ、カメラで高いシェアをもつキヤノンと、テレビ市場のグローバルリーダーである松下電器が協力することで、開発の加速や、パネルの安定調達などが図れ、3社の競争力をより高めることができる。グローバルに戦える企業との協力は、最強のシナジーを生み出す連合と自信を持っている」とアピールした。 また、セットメーカーとしての日立の今後については、「日立の幅広い事業領域から、最適な技術を融合させ、日立ならではの製品開発を進めていく。世界最薄35mmの薄型テレビ“Wooo UTシリーズ”のような特徴ある製品をタイムリーにお客様にお届けし、液晶テレビの製品競争力の強化につなげていく。また、今回の合意により、日立グループとして経営リソースの最適配分を図り、安定的な高収益構造を確立していく」と解説。有機ELについては、「3つの課題がある。量産性とコスト、大型化」とし、「テレビとして量産し、事業としてやるには時間がかかる」と説明した。 □松下電器産業のホームページ ( 2007年12月25日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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