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シャープと東芝、液晶TV用パネル/半導体で提携
-シャープはパネル、東芝はLSIを供給し、「鬼に金棒」


シャープ片山幹雄社長(左)、東芝の西田厚聡社長(右)

12月21日発表


 シャープ株式会社株式会社東芝は21日、液晶パネルと半導体分野における事業提携を発表した。

 提携は、「両社の企業価値向上と、収益力向上、競争力強化を図るため」としており、シャープは東芝にテレビ用液晶パネルモジュールを、東芝がシステムLSIを供給する。

 相互供給は2008年度からスタートし、2010年にシャープは東芝から液晶テレビ用システムLSIを約50%購入、東芝はシャープから32型以上のテレビ用液晶モジュールを約40%購入することを目標にしている。

 両社では、「液晶、半導体分野でそれぞれ世界トップクラスの両社が提携関係を構築することで、両社のコアテクノロジーを相互に活用して他社との差異化を図る」としている。当初は、液晶パネルと液晶テレビ用LSIの相互供給となるが、「今後、提携領域を広げていくことも視野に入れている(東芝西田社長)」としている。

 なお、REGZAとAQUOSのブランド統一について、シャープ片山社長は「ありえない」とした。


■ シャープパネル+東芝LSIで「鬼に金棒」
 -有機ELは中小型のみ。次世代ディスプレイは「シャープ液晶中心」

東芝の西田厚聡社長

 東芝の西田厚聡社長は「提携の決めた何よりの理由はシャープさんが堺に建設を予定している第10世代の液晶パネルへの大きな期待。シャープは液晶を世界で初めて作り、日本で最大規模のメーカーとなった。液晶をひとつの事業から、産業へ発展させた功績は偉大。さまざまなメーカー、ディスプレイがある中、シャープは、画質はもちろん、低消費電力、薄型軽量による使用資源の低減を実現している。東芝のこれからの製品像に合致する」と提携の意義を説明。「LSIにおいても、当社の技術でシャープの液晶テレビをより一層、高性能、高品位化すると確信している。シャープの液晶と当社のLSIで、まさに“鬼に金棒”としたい」と訴えた。

 また、東芝が大型有機ELテレビの2009年製品化計画を見送った理由の一つとして、今回の提携があるという。「大型の有機ELは、技術的課題と、量産性の観点から見送ることにした。これから投入されるシャープの液晶は、薄型、軽量、高画質はもとより、長寿命、そして特に低消費電力性の点で、有機ELと比較してはるかに優れている。大型有機ELに対する液晶の優位性は、今後もしばらく維持されると判断した」と述べ、「したがって、有機ELについては中小型に注力する。大型については開発は続けるが、次世代のディスプレイとしてはシャープの液晶を中心に進めていきたい」とディスプレイデバイス戦略について語った。

 なお、東芝が出資している液晶パネル製造販売合弁会社のIPSアルファテクノロジについては、「出資分を売却する方向で検討しているが、現時点では、何も決まっていない」とコメント。SEDについては、「キヤノンさんにおまかせしていますので、私からは何もコメントできません。ご承知の通り、ライセンサーと交渉中なので、私のコメントが影響をあたえてはいけないので、コメントしない。今回の件にSEDは全く関係ない」とした。

 西田社長は、東芝の半導体事業における影響についても解説。「大変意義のあるもの。液晶テレビで世界トップクラスのシェアを持つシャープにテレビ用システムLSIを供給することは、ビジネスの拡大だけでなく、協業を介した競争力ある製品開発にもつながると考えている。テレビの高精細化によって、システムLSIにもより高機能が求められている。シャープの声をLSI開発に生かして、より競争力あるLSIを作っていきたい」という。

 さらに、「デジタルコンバージェンス時代において、ITとCEや、放送と通信といった、従来の垣根が崩れてパラダイムシフトが起こっている。映像の商品群でも同様な動きが起きており、とりわけテレビは、多くのメーカーが社運をかけて取組み、グローバルで激しい競争を繰り広げている。この中で勝ち残るためには、パネル、LSIの両方を強化していくことが不可欠。従来のように一社で競争力あるすべてを持つことは困難。強い者同士が組むのは必要であり、必然の流れである。今回の提携は強い液晶テレビと強い電子デバイスの提携。グローバルで両者Win-Winの関係が築ける。自信を持って世界で戦える条件が整った」と、今回の提携の背景と意義を解説した。


■ 強者連合で「日本発の最高の製品を」

シャープ片山幹雄社長

 シャープ片山幹雄社長は、「堺市の新工場では、世界初の第10世代大型マザーガラスを使った液晶パネル生産を2010年3月までに行なう。液晶パネルは、旺盛な需要が世界的に見込まれることから、今後も強化を図り、そのためにも自社用パネルだけでなく、パネルの外販にも従来以上に力を入れていきたい」とパネル外販の強化を説明。

 東芝から供給を受けるシステムLSIについては、「デジタル家電におけるシステムLSIはコアとなるもので、必要不可欠。しかし、今後システムLSI製造はますます微細化が進むため、巨額な設備投資が必要になる。そのため、当社の半導体事業において、デジタル家電用システムLSIへの対応が課題となっていた」という。

 従来は、システムLSIを自社開発し、一部台湾のファウンダリでも製造してきたが、「これを東芝に切り替えていく」。その理由として、「東芝は、最先端プロセスを持ち業界をリードする半導体メーカーで、テレビメーカーとしてもブラウン管時代からの高い技術力と画質には定評がある。通信と放送の融合時代に向けた、映像技術やIP技術を持つ唯一の企業だと考えている。長期契約により、東芝から安定してLSIの供給を受けることで、液晶テレビの競争力が確保できると考えている。また、当社のテレビ用液晶を東芝に供給することで、東芝さんのテレビ事業にも貢献できる」とした。

 片山社長は、「お互いがそれぞれの強い部分に投資を集中して、事業の強化を図り、それによる成果を共有することでWin-Winの関係が作れる。両社がタッグを組むことで、いままでにない高画質なテレビを供給できると考えている。また、パネルの供給で長期契約を結び、東芝の40%に供給することで、亀山、堺工場の安定した操業が見込めることになる」と提携の意義を説明。

 さらに、「日本の製造業はすりあわせの妙で成り立ってきた。お互いの高いレベルの要望をかなえながら、じっくり時間をかけてすりあわせることで、海外メーカーにはまねのできないオンリーワン技術、オンリーワン商品が作れると信じている。私は常々、“技術に限界はない”と言っていますが、長期間かつ相当量の協業により、“すりあわせの効果にも限界がない”といえるようにしたい。それぞれの主力事業がますますレベルを上げていくことで、日本発の最高の商品をお客様にお届けし、企業価値の向上につなげていく」とアピールした。


■ 次世代DVDは「関係ない」

 提携交渉の開始は、「夏ごろから。双方それとなく、お互いの話し合いの中で、始まった」(東芝西田社長)としており、7月31日の堺工場の立ち上げ発表時にシャープ片山社長が外販の強化とパートナーの存在を示唆したが、「(示唆した)つもりはないけど、結果としては、こういうこと(シャープ片山社長)」。さらなるパネル供給先メーカーの拡大についても、「われわれとしては大歓迎(片山社長)」とした。

 なお、LSI供給比率50%、パネル供給比率40%という目標について、シャープ片山社長は、「その時の事業規模、環境によって変わるものなので、目安として50%。これを固定するつもりはないし、開発体制が整えばもっと増やしてもいい」。東芝西田社長は「40%についても(片山社長の方針と)同様」と語った。

 シャープにおける半導体開発は、「セグメントを絞り込んでおり、デジタルカメラ用イメージャーと液晶のドライバLSIに集中している。システムLSIの開発については重点分野から少しづつずらして、選択と集中を進めていく」(片山社長)。

 なお、相互供給の契約期間について、シャープ片山社長は、「今後検討していく」としており、「次世代DVDにおけるすりあわせは?」との質問には、「今回の件には、一切関係ない」とした。

 IPSアルファからの出資引き上げを検討し、パネル生産から手を引くという東芝の事業方針について、東芝西田社長は、「それぞれが強い所に投資して、さらに強いものにしていく。液晶の製造については、資源の傾斜配分ということで関わらず、外部調達を基本方針としてやっていく」とする。

 また、松下電器が、液晶テレビに力を入れるという報道について、シャープ片山社長は、「強力なメーカーが増えるのはどうかな、というところもあるが、液晶がそこまで認知されたということでもある。フラットパネル市場で液晶のポジションが上がっていると考えれば歓迎すべきこと」とコメントした。


□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2007_12/pr_j2101.htm
□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20070731/sharp.htm

( 2007年12月21日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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