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【新製品レビュー】
渋い外観の個性派カナル型イヤフォン
ウッドドームの味わい深い音。ビクター「HP-FX500」


2月下旬発売

標準価格:オープンプライス

実売価格:15,000円前後


 音質や遮音性にこだわるポータブルオーディオユーザーに人気が高いカナル型(耳栓型)イヤフォン。iPodなどのポータブルオーディオ製品の普及とともに、市場が拡大し、 各社が音質やデザインなどを競っている。

 製品数が増えたことで、差別化は難しくなりつつある。とはいえ、プレーヤーに合わせた10数のカラーバリエーションを備えた廉価モデルから、複数のドライバユニットを搭載した高級機など、下は1,000円程度から上は10万円に迫るクラスまで様々な製品が用意されている。

 そうした中、ビクターが発表したのが「HP-FX500」だ。特徴は、外見からも一目瞭然だが、木を使ったイヤフォンということ。大型ヘッドフォンではよく見る木製ハウジングだが、カナル型では非常に珍しい。

 さらに振動板に「木」を採用した世界初のウッドドームユニットを搭載。ビクターは、ウッドコーン振動板を採用したスピーカーやコンポなどに積極的に取り組んではいるものの、小さなカナル型イヤフォンでも、木製ハウジング/ユニットを採用するというのは驚きだ。

 HP-FX500の実売価格は15,000円前後。イヤフォンとしては、高価な部類に入るが、音質にこだわる人にとっては、手の届かない価格帯ではない。今回、このウッドドームイヤフォンを体験してみた。なお、発売日については、当初2月上旬と予告されていたが、2月下旬に延期されている。


■ 樺材の質感を生かした高級感ある仕上げ

同梱品

 イヤフォン本体のほか、キャリングケースとイヤーピース、0.7mの延長ケーブルが付属する。イヤーピースは低反発型とシリコンの2タイプが用意され、シリコンイヤーピースはS/M/Lの各サイズが付属する。

 ハウジングには樺材を採用しており、他のカナル型イヤフォンと比較しても異質な印象を与える。ハウジング後端の金属製のオーナメントと相まって、なかなか高級感のあるデザインだ。遠くから見れば普通のカナル型イヤフォンだが、よく見てみると実は木製というのも面白い。


ハウジングに樺材を採用した独特のデザイン 側面にビクターロゴやL、Rの表示をプリント オーナメントの処理など、細かいつくり込みがよく、高級感を感じさせてくれる

ウッドドーム振動板

 ハウジング部は密閉型で、型式はダイナミック型。構造上の最大の特徴は、やはり、木の振動板をドーム状に成型加工した「ウッドドーム」振動板を採用したことだろう。

 独自の被膜加工技術により、振動板の薄膜に樺材をドーム型に成型加工したもので、高域の周波数帯におけるピークディプを抑え、ナチュラルな波形を実現できるなどの特徴がある。また、ウッドドームユニットの背面に比重の大きい「ブラスリング」を加えたハイブリッド構造を採用し、リングでユニットの振動を抑え込み、安定したクリアな再生を可能としたという。


世界初のウッドドームユニットを採用 本体の構造。スクリーンやリングダンパーなど様々な音質調整パーツから構成される ハイブリッド構造を採用し、ユニットの振動ロスを改善。クリアな音質を実現する

 再生周波数帯域は、8Hz~25kHz、感度は100dB/1mW、インピーダンスは16Ω。最大許容入力は200mW。コード長は80cm。個人的には、プレーヤーをカバンもしくはコートのポケットに入れて音楽を聴くことが多いたので、カバンの位置や体を動かした時にコードにゆとりがなく短かく感じてしまった。

イヤーパッドを交換できる シリコンイヤーパッドや、低反発イヤーパッド(下)が付属する


■ ウッドドームらしさとは? 音質をチェック

中央下がHP-FX500

 イヤーピースは、シリコンタイプと低反発タイプが用意されている。イヤーピース部は、左/右それぞれの耳穴に向かってなだらかに傾斜が加えられており、左右を間違えなければ、耳穴に押し込むだけできちんと装着できる。

 強く押しこまないと、動いた時などに外れてしまうこともあったが、付属イヤーピースの中では、低反発型が耳へのフィット感が良く、外れにくかった。装着感だけでいえば、個人的には、低反発型が一番しっくりときた。また、遮音性についても低反発型のほうが良く、地下鉄などでの利用にはマッチする。

 ただし、「HP-FX500」は、イヤーピースの選択により、音質がかなり変わってくる。音質とフィット感のバランスをしっかり考えたい。


低反発イヤーパッド装着時 装着部は、耳穴側に傾斜している

 音質や装着感については、個人差もあるので、参考までにスタッフ2名で聞き比べを行なった。

【音質インプレッション】

編集部:臼田(常用イヤフォンMDR-EX90SL)

 iPod/iPod touchに接続して視聴した。

 繊細で木の響きを生かしたやさしい音調を予想していたら、思いのほか迫力あるサウンドで驚いた。

 まずは、シリコンイヤーピースを装着して視聴したが、ファーストインプレッションでは、明らかに中低域が厚く重く感じた。周波数帯域として下がでているというよりは、音圧の強さが印象に残る。特にジャズのベースラインや、ヒップホップ系のソースなどの迫力がぐっと上がる。

 同じビクターの「HP-FX300」もそうした傾向を感じたが、さらに顕著に中低域の押しだしが強く感じる。鈍重というわけではなく、音圧の中にも楽器のニュアンスが息づいており、メセニーメルドーの「A Night Away」でも、ピアノ、ギターデュオに重量感あるベースが絡むが、ハーモニーを崩すようなことは無い。

 個人的にはキレの良い低域が好きなので、最初は“ちょっと違うか?”と感じたのだが、さまざまな音源を聞いていると、癖になる深みがある。情報量は下から上までしっかりと出ており、また、カナル型イヤフォンとしては、かなりしっかりとした音場感が味わえるのも特徴だ。

 ロック系のソースでも、歪んだファズギターが空気を震わす臨場感が、驚くほど伝わる。「MDR-EX90SL」と比べると、全く傾向が違うので、iPod内のいろいろな曲を聞き返したくなる。

 さらに、イヤーピースを低反発型に変更すると、かなり音が変化する。押しの強かった低域は控えめかつすっきりと立ち上がり、中域の深みが出てくる。一方、音場もやや狭くなる印象があるが、バランス的にはナチュラルで、細かな情報が聞きとりやすくなる。音像もシャープな印象に変わる。

 シリコンイヤーピースが、強烈な音圧の中にも、やさしく音場感を生かしたサウンドだとすると、低反発型では、演奏者の繊細なタッチや弦のたわみなどの情報量をそのまま伝えてくる、という印象。バランスの良さでは低反発型と感じるが、個人的に、シリコン型のライブ感あるサウンドに惹かれるものがある。このあたりは、ソースや利用シーンに応じて使い分けたいところだ。

編集部:山崎(常用イヤフォンATH-CK7)

 常用しているケンウッドのHDDプレーヤー「HD20GA7」と「iPod touch」を使ってテストした。

 低反発型のイヤーピースは、KOSSの「THE PLUG」などに使われている素材と似た質感で、シリコン系のものと比べ、堅めなので耳の奥まで挿入しやすい。ハウジング部が重いこともないので、装着の安定感も良い。常用しているオーディオテクニカ「ATH-CK7」はチタンハウジングで冬はボディが冷たくなるが、「HP-FX500」の樺材ハウジングは指でつまんでも暖かみがあり、「ああ、木製の製品を使っているんだな」と実感できる。

 “木の振動板”と聞くと、「木=ぬくもり/暖かみ」などのイメージで、音を想像しがちだ。SXシリーズなど、ビクターのスピーカーの音は昔から、滑らかで、女性ボーカルなどを艶っぽく聴かせる傾向があり、そのイメージから連想する人も多いだろう。

 しかし、ウッドコーンは剛性が高く、トランジェントの良さが特徴なので、実際の音はそうした先入観とは大きく異なる。音の立ち上がり/下がりが早く、解像感も高い現代的な音。音像がスピーカーの前に定位し、音が前へ前へと吹き出してくるイメージだ。

 イヤフォンの「HP-FX500」でもその傾向は同じで、一聴して感じるのは音圧の高さ。特に中域の元気が良く、ボーカルが明瞭。山下達郎「アトムの子」の冒頭のドラム乱舞も迫力がある。ライヴ音源の熱気もアップする一方、ライヴハウスが一回り小さくなったような音場の縮小を感じる。注意深く聴くと周囲に散らばる拍手や歓声など、細かな音もキッチリ再生されているが、迫力のある中域に耳がいってしまう。

 しかし、音色そのものに妙な付帯音は無く、ベースの再生音はニュートラル。バランスを無視して低音を増幅しただけの下品な音とは次元が違う。このあたりは実売15,000円の高級モデルらしい実力だ。

 小編成のJAZZやクラシックが得意。ボサノバも良い。スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトのアルバム「Getz Gilberto」から「Corcovado」を再生すると、「ATH-CK7」で再生したよりも、アストラッド・ジルベルトのマイクに顔を近づけたように音像が頭内中央に近くなって面白い。アコースティック・ベースの響きも実に芳醇。やはり樺材ハウジングの響きはアコースティック楽器と相性が良いようだ。

 また、トランジェントが良いため、打ち込み系の電子音の再生も素晴らしい。 高槻やよい「キラメキラリ」、Marica「せかいにさよなら」など、疾走感や清涼感のあるアップテンポな楽曲もイキイキと再生でき、好印象だ。「バランスド・アーマチュアユニットに艶や迫力の面で物足りなさを感じるが、普通のダイナミック型ユニットの音には飽きた」という人には、お勧めしたいモデルである。



■ 個性的なウッドドームの音とデザインが魅力

 ウッドドームユニットや樺材ハウジングの採用など、あまたあるカナル型イヤフォンの中で唯一無二の個性を放つイヤフォンだ。構造やデザインからくるガジェット的な魅力はもちろんだが、最大の特徴はやはり音質だろう。実際に体験できる環境は少ないかもしれないが、ウッドドームならではの個性を感じさせ、なおかつバランスよくまとめた非常にユニークな製品だ。

 実売15,000円という価格は、少々高価ではあるが、個性的なイヤフォンを探している人は、ぜひ体験してほしい。

□ビクターのホームページ
http://www.victor.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.victor.co.jp/press/2007/hp-fx500.html
□製品情報
http://www.victor.co.jp/accessory/headphone/inner/hp-fx500/index.html
□関連記事
【2007年12月16日】ビクター、“木”の振動板を採用したカナル型イヤフォン
-振動板とハウジングに樺材を採用。実売15,000円
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20071226/victor.htm
【新製品レビュー バックナンバー】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/backno/npback.htm

(2008年2月1日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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