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株式会社日立製作所は、中期経営計画「協創と収益の経営」について、古川一夫社長による説明会を開催した。2009年度の収益目標として営業利益率5%を確認したほか、社会基盤、産業基盤、生活基盤の各事業の強化を訴えた。また、不採算部門となっているHDD事業や薄型テレビ事業への対応について説明した。 14日に発表した2007年度の通期決算では、売上高が前年比9.6%増の11兆2,267億円、営業利益は89.3%増の3,455億円と増収となったが、PDP設備の減損損失や薄型テレビ事業の構造改革費用計上などにより、当期純損失581億円の赤字となった。 液晶事業については、「昨年末、松下電器、キヤノンとの提携を決断し、新たなステップを踏み出した」としながらも、「薄型テレビについてはいまだ改革加速中」と説明。また、HDDについては、「構造改革が進み、黒字のめどが立ってきた」とし、2008年度はこれら事業の改善などを含め、「3,800億円の営業利益と、純利益400億円を必達すべく推進していく」と述べ、構造改革の現状と、収益改善策について説明した。 ■ 2009年の黒字化へ、テレビ事業の収益改善を進める 昨年度大きな損失要因となった薄型テレビについては、構造改革を推進。2008年度は下期の黒字転換を図り、2009年度通期の黒字化を目指すという。 グローバルの地域戦略については、2007年は欧米を中心に大型テレビの拡販を図っていたが、「昨年の7月以降、サブプライムの影響で伸びなかった」として、その見直しを行なっている。北米、欧州についてはチャネルを絞り、ローリスク経営を徹底し、収益の改善を目指す。一方、高いシェアを有している中国のプラズマテレビなどを強化、さらに、社会インフラ事業との連携による新興市場の開拓などに注力する。 また、製品については超薄型など「グループの総力を結集した製品」を強化し、ビルシステムや情報システムなどのB to Bルートでの販路拡大も狙う。さらに、Wooonetなどの「放送通信融合サービス」も強化していく。
テレビ事業を継続する理由については、「伸びる事業」、「テレビの機能がドラスティックに変わっている」、「テクノロジが要求される」の3点を上げて解説。 「中国で善戦しているが、世界的にもまだまだ伸びる。特に新興国のほかの事業とシナジーが取れる、伸びに対応していける事業だ。また、お茶の間に鎮座するものから、放送通信融合の新しい端末になる。そういう時代が来ている。6月に展開するWooonetは、いままでのテレビになかったサービスをやる。そのバックにあるシステムも、われわれの強いストレージなどに技術などが生かされている。その機能を如何なく使える端末になる」と説明した。 なお、プラズマを内製する理由については、「液晶のパネルはすでにコモディティ化しているが、PDPはまだまだいろいろなテクノロジ的な変化、進化がある。差別化が可能だと思っている。超薄型を開発するということでも、プラズマの技術は必要であるという判断。パネルの事業をやり抜く」と訴えた。 HDD事業については、「長く不振が続いてきたが、その間改革を続けてきた」として、製品の原価低減などの成果を説明。ヘッド/メディア拠点の集約や、エンタープライズ向けやモバイル/デスクトップ向けの大容量品など、主力セグメントの注力などにより、「2007年第4四半期は黒字化し、下期でも黒字となった。2008年も第1四半期が黒字で、通期でも黒字を目標としている。目標を確実にするため、改革を計画どおりに進めていく。HDD事業は今後も日立のグローバル化を推進する事業として大きく育てて生きたい」と説明した。 日立がHDD事業を持ち続ける意義については、「常にコア事業であると考えてきた。社長就任以来、徹底的に関与してきたが、HDDは極めてテクノロジ志向な製品。いかに研究開発成果をいち早く入れ、安定的な量産化ができるのか。それで確実に勝てる事業」としたほか、「ストレージビジネスとのシナジーという点でも重要な位置づけ」とし、技術動向の把握やストレージ事業展開においても、HDD事業との相乗効果が見込めることをアピール。 さらに、「IBMから買収した事業であり、世界中で設計し、製造し、販売するという完璧なグローバルビジネス。これは今までの日立になく、きちっと成功させることが、真のグローバルメーカーになるということにつながる」とし、収益の目標も、「Seagate、Western Digitalなど、先行している社の数字まではいける。一日も早くキャッチアップして追い抜きたい」と語った。
■ 「2008年度は規模ではなく収益を追う」
また、安定的高収益構造の実現に向け、電力や鉄道システムなどの「社会基盤」、自動車機器や産業、金融などの「産業基盤」、都市システムや医療、ホームICTなどの「生活基盤」、システム・ソリューションなど「情報基盤」といった「社会イノベーション事業」を強化する。 社会基盤事業においては、2007年度の営業利益率マイナス1%から、2009年度の目標をプラス3%と設定。新興国を中心とした社会インフラ需要に対応し、電力システム事業では、GEとの協力関係を元に、原子力の新設案件の受注を拡大。原子力、火力ともに地域密着型の経営によりリスクの低減を図りながら、収益の拡大を目指していくという。 鉄道システム事業は、車両から信号/システム、保守のすべてを手がける日本唯一の総合メーカーとして世界展開。車両生産拠点を各地で増強するほか、旧式設備のリノベーションの双方を強化していく。 産業基盤事業では、自動車向けのインバータやリチウムイオン電池などを拡大し、2009年度営業利益率5%を目指す。また、クラリオンなどグループ各社とのシナジー強化を図っていくという。情報基盤事業では、グループの総合力を生かした環境配慮型のデータセンター構築などを目指す。 また、環境的適合製品の拡大など、同社の「環境ビジョン2025」に沿った活動を推進し、「協創と収益」をテーマに、収益の安定化を図る方針。2008年度通期の売上高について古川社長は、「2006、2007年度より若干下がるが、規模は追わない。収益を追う」と言及した。
□日立製作所のホームページ ( 2008年5月26日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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