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ソニーの無指向性スピーカー「Sountina」を聴く
-「癒しの音空間を」。“遠くでもいい音”


5月28日発表


 ソニーは28日、有機ガラス管を採用した無指向性スピーカー「Sountina/(サウンティーナ、型名:NSA-PF1)」を発表。同日に東京 品川のソニー本社において発表会を開催した。

ソニー オーディオ事業本部 第1ビジネス部門 水倉部門長

 ソニー オーディオ事業本部 第1ビジネス部門の水倉義博部門長は、「ハイエンドのオーディオではなく、指向性のない360度の音とデザイン性を生かした、新しいリスニング環境を提供する」と製品コンセプトを説明。愛称の“サウンティーナ”は、「サウンド、ファウンテン(泉)、女性的な響き」から命名したという。

 価格は105万円と高価だが、「スピーカーに正対するのでなく、音のある空間に、リラックスや癒しを求める方。あるいはホテルのラウンジやレストランなどの公共スペースなどに導入していきたい」とした。販売台数は年間数百台規模を想定しており、海外展開は現時点では未定。


コンセプトは「美しく自由に、音楽と暮らす」 想定ユーザー 360度のサークルサウンドステージが特徴

高さは185.5cm

 特徴は、長さ1mの有機ガラス管全体をツイータとして利用することだが、ガラスの下のアルミ円筒部に7cm径のミッドレンジと13cm径のウーファも内蔵し、一般的な表現でいえば3ウェイ3スピーカー構成となる。

 ツィータは、通常のスピーカーのような磁気回路を有さずに、4本の加振器によりガラス管を上下方向に振動させて音を出すという新機構「バーティカルドライブテクノロジー」を採用。これにより管全体が均一にすみずみまで振動し、管に対して垂直に音が発せられるという特性を持つ。

 同技術により、長さ1mの有機ガラス管から360度均一に再生されるため、指向性がなく、部屋のどの位置でも同じ音を楽しめる。さらに、通常のスピーカーと比べると、離れた場所でも高域の音の減衰が少なく、Sountinaから離れた場所でも音を聞き取れるという。

有機ガラス管の中にワイヤーを通している アルミ支柱の上部にミッドレンジを下向きに配している ガラス管の上部

バーティカルドライブテクノロジーの特徴

 システム全体の再生周波数帯域は50Hz~20kHz。ガラス管ツイータは「一般的なスピーカーとの比較は難しいが、イメージとしては3kHz~20kHz相当(オーディオ事業本部 オーディオ開発・技術部門 技術1部1課アコースティックエンジニアの鈴木伸和氏)」という。

 有機ガラス管の厚みは約2mm。強度は十分に確保しているという。昨年9月のソニーディーラーコンベンションにおける展示機と比較すると、ガラス管の部分を伸ばしたことで、高域の広がりを向上している。

 入力端子は台座部に備えており、アナログ音声(RCA)×1と、同軸デジタル×1、光デジタル×1を装備。デジタル音声は最高24bit/96kHzのリニアPCM(ステレオ)に対応するが、マルチチャンネルの入力や、ドルビーデジタル/DTSなどのコーデックには対応しない。

 Sountinaでは、1台のスピーカーで、ステレオ音源を再生することとなる。そのため、入力した信号に対し、DSP処理により広がりある音を創り出す必要があるが、特に難しかったのが「ガラス管を駆動する4本の加振器にどのように信号を分配して、空間表現するかという部分」という。この点は、「HT-IS100」など、同社のシアターシステムにおけるDSP処理のノウハウを活かして自然な広がり感の実現に注力。「ステレオでもモノラルでも無い、サークルサウンドステージ」とアピールしている。「例えば、リニアPCMレコーダ“PCM-D50”の生録音源など、いままでのスピーカーとは異なる臨場感が再現できる(鈴木氏)」とする。

台座の上にウーファを内蔵 ボリュームボタンやインジケータ、光/同軸デジタルやアナログ音声入力端子などを台座部に備えている

コンスーマプロダクツデザイングループ 柘植氏

 開発には約3年半前から着手。バーティカルドライブテクノロジーを前提とし、振動させる管の素材や厚さなどについて検討を進めてきたという。筐体デザインも、音の特徴を最大限に活かすため、有機ガラス管の内部に細いワイヤーを通し、イルミネーションを点灯するとワイヤーにも光が回るという構造とし、「音をシンボライズした(ソニー クリエイティブセンター コンスーマプロダクツデザイングループ 柘植隆弘氏)」という。

 なお、独自のS-Masterデジタルアンプを内蔵しているが、アンプ出力は非公開。「通常のスピーカーとは駆動方法が違い、測定方法が難しいため」としている。


イルミネーションの点灯で有機ガラス管内の光が浮き上がるデザインを採用 アルミ素材を採用したリモコン

 発表会で数曲体験してみたが、360度均等に広がる音は“無指向性”を謳うスピーカー中でも群を抜いている。音が広がって“拡散している”という印象ではなく、周囲のどこで聞いても、音像がぼやけることが無い。むしろ、普通のスピーカーより、女性ボーカルの輪郭などが力強く浮き上がってくる印象さえ残った。

 音質面では、トランジェントの良さが特徴的。ボーカルや、ベースなどの楽器音の音の立ち上がり/下がりが早く、くっきりと解像される。ガラス管を振動させるという構造ゆえか、付帯音の無いクリアな音は、かなりインパクトがある。

 さらに、バーティカルドライブテクノロジーによる、減衰の少なさもセールスポイント。ソニー本社の1階ロビーに設置したSountinaの音を、2階から聞いても、しっかりと音が聞き取れる。実際に近づいてみると、さほど大きな音は出ておらず、確かに「遠くでもいい音」というSountinaの特徴が確認できた。

 29日より、東京銀座のソニーショールーム、および大阪のソニースタイルストアにおいて、Sountinaの先行展示が行なわれる。

2階から聞いても音の減衰が驚くほど少ない バーティカルドライブテクノロジーにより、離れた音の減衰を抑えた

□ソニーのホームぺージ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/200805/08-0528/
□製品情報
http://www.sony.jp/products/Consumer/AV-HiFi/sountina/
□関連記事
【5月28日】ソニー、長さ1mの有機ガラス管を使った360度スピーカー
-105万円の無指向性スピーカー「Sountina」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080528/sony1.htm

( 2008年5月28日 )

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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