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国内ケーブルテレビ業界で最大規模の展示会「ケーブルテレビショー 2008」が、東京ビッグサイトで開幕した。期間は6月19日から21日まで。主催は日本CATV技術協会と日本ケーブルテレビ連盟。入場は無料だが、会場での登録が必要。 今年のテーマは「ケーブルテレビがつなぐあなたと未来」。出展社数は昨年よりも4社多い192社。2011年の地上デジタル移行を控え、地デジ再送信用システムへの取り組みが紹介されているほか、制度改変で導入しやすくなったギャップフィラーシステム、新STBなども展示されている。ここではSTBを中心にレポートする。
■ パイオニア パイオニアブースでは2008年夏から秋にかけて投入を予定している、新型STB「BD-V371」(OFDM/QAM対応双方向型)と、「BDV-371L」(同片方向型)を参考展示している。HDMI出力を備えたスタンダードなSTBの新機種で、スリムな新デザインの筐体を採用。文字の大型化や色分けなどで視認性を向上させた新型リモコンを同梱するほか、マスターSTBから設置時に必要な情報をUSBメモリに書き出し、他のSTBにコピーすることで設置時の諸設定を手軽に完了できるという「設置支援機能」も搭載。事業者の設定作業時間の軽減や設定ミスを低減できるという。 また、Ethernet端子を2ポート用意。インターネット接続用とLAN用としており、将来的にNASへのデジタル放送の録画サポートを検討しているという。BD-V371自体にHDDは内蔵されていないが、ハードウェアとしてDTCP-IPをサポートしており、NASへの録画機能をファームウェアアップデートで対応できるようにする予定。「DLNAクライアントとしても機能するようにし、製品の魅力を高めていきたい」という。出力端子はHDMIに加え、D4、S映像、光デジタル音声なども備えている。
7月に発売を予定しているSTB「BD-V171」はコスト低減を図った低価格モデル。筐体は前述の「BD-V371」と同じだが、HDMIとコンポジット、アナログ音声出力以外の端子を省き、Ethernetも備えていない。地上デジタルのパススルー/トラモジに対応し、BSデジタルもサポートしているが、110度CSデジタルへの対応も省かれている。EPGやデータ放送にも非対応。発売は7月を予定している。
■ 松下電器
松下のブースでは、6月から発売している新型STB 3モデル「TZ-DCH3000」、「TZ-DCH3800」、「TZ-DCH3810」をメインに展示している。地上/BS/CATVデジタルチューナをダブルチューナ構成で搭載。いずれも500GB HDDを内蔵。TZ-DCH3000はトランスモジュレーション方式のみ、TZ-DCH3800とTZ-DCH3810は、トランスモジュレーションとOFDMパススルーの両方式に対応する。また、TZ-DCH3000/3800はDOCSIS2.0相当のケーブルモデムを内蔵、TZ-DCH3810は100BASE-TXのEthernetを装備する。
モデムや受信方式以外の仕様は共通で、地上/BS/CATVの番組表をシームレスに切り替えられるEPGを採用。おすすめ番組を知らせる「番組推薦」機能も搭載する。i.LINK端子も2系統備え、対応DIGAやHDDレコーダなどに録画番組をムーブできる。 ブースでは、この最新STBをベースにした試作機を用いて、携帯電話とSTBの連携サービスの参考デモを行なっている。NTTドコモと共同で開発しているというもので、携帯電話の内蔵GPSの情報と、STBの番組視聴ログデータを共用し、利用者に便利なサービスを提供しようというのがコンセプト。例えばSTBのネット接続機能を用いて、子供が持っている携帯電話位置を、テレビで手軽に確認できる。また、STBの番組視聴履歴から、ユーザーの趣向を判断。スポーツ番組の視聴が多い場合、スポーツのニュースやチケット発売情報などを、あらかじめ登録した携帯電話に送ることなどが可能になるという。 CATV網とドコモのFOMA網からそれらの情報を、松下電器のCSPサーバーが取得。解析した上で、サービスに役立てている。システム開発は既に完了しており、現在は「どのようなサービスを盛り込むのが良いかを検討している段階」という。携帯電話の連携相手としてCATVが選ばれた理由は「サービスを提供する地域を固定でき、機能差の無いSTBが各家庭にあることが前提であり、通常の薄型テレビやレコーダで同種のサービスを提供するよりも開発しやすいという利点がある」とのこと。年内に正式サービスを開始するのは難しいが、「どこかの地域や事業者で試験的なサービスを行ない、フィードバックを得る試みはスタートするかもしれない」という。
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■ 八木アンテナ 八木アンテナのブースで注目を集めているのは、地上デジタル放送のサイマル伝送が可能なデジアナコンバータ「DAT10」。マンションやホテル、病院、学校などにおいて、共同のUHFアンテナで受信した地上デジタル放送を、各部屋に向けてパススルー伝送する装備なのだが、そこに地デジチューナ(デコーダ)と、チャンネル変調器を搭載しているのが特徴。デコードした地デジ放送をアナログ信号に変換し、従来のアナログ放送と同じVHF帯域(UHF帯域も可能)を用いて、各部屋に配信できる。そのため、従来のアナログテレビで、何も手を加えることなく地上デジタル放送が観賞できる。 データ放送には対応できず、SD解像度の映像となるが、既存のアナログテレビを買い替えたり、デジタルチューナを追加しなくても、2011年以降テレビが継続視聴できるのが特徴。受注生産となっており、7月頃から導入を開始。「大きな反響も頂いており、導入に向けた話し合いを進めているところもある」という。
■ NHK NHKのブースでは、規模の小さい再送信機器をデモ展示している。「室内用ワンセグ受信カップラ」と名付けられたもので、ワンセグ電波の受信がしにくい室内において、壁のアンテナ端子から地上デジタルの信号を受信し、免許が不要な微弱電波の限度を超えない電波でワンセグを再放射。機器のそばにワンセグ受信機を置くことで、良好なワンセグ受信ができるようになるというもの。 送出出力制御ユニットと、アンテナを埋め込んだシート的な部品で構成されており、シートの上にワンセグ携帯などを設置する利用を想定。シートから離しても、2~3m程度であれば受信は可能だという。製品化の時期や価格は決まっていないが「できるだけ早く製品化したい」という。 同ブースでは2008年12月のサービス開始を予定している、VOD配信「NHKオンデマンド」のデモも実施。「大河ドラマ」や「朝の連続テレビ小説」など、過去に放送した約1,000本の番組をVOD配信する予定だ。料金などの詳細は決定していないが、1番組あたり300円程度になる予定。1週間に放送されたニュース、ドラマ、ドキュメンタリーなどを見返すことができる「見逃し番組」サービスでは、月額1,500円程度のパックメニューも用意するという。
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■ 各社の新STBなど、そのほかの展示 マスプロのブースでは、地デジ/BS/110度CSなどに対応し、EPGなどにも対応したSTB「DST62」シリーズに、HDMI端子を追加した「DST62H」シリーズを参考出品。OFDM/64QAM対応の「DST62H」と、64QAMのみの「DST62TH」を用意。HDMIとD4端子を両方備える以外、主な機能は従来のDST62と同じ。付属の標準リモコンに加え、機能を絞った別売の簡単リモコンも用意する。2009年の発売を予定。「価格はDST62とあまり変わらない」という。
デジタル放送の電波が届きにくい山間辺地や地下街に向け、再送信を行なうギャップフィラーは、必要な無線局免許に関する制度化が2007年10月に完了。導入が進められているが、2008年5月30日からはさらに制度が変わり、都市部の建造物や丘陵の遮へいによる難視聴や、デジタル混信による受信障害の対策用としてもギャップフィラーが導入しやすくなった。そのため、マスプロや八木アンテナなど、各メーカーのブースではギャップフィラーシステムの紹介に熱が入っている。
□ケーブルテレビショー 2008のホームページ
(2008年6月19日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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