|
株式会社オプティキャストは、NTTの光ファイバー「Bフレッツ」を使って地上デジタルなどのテレビ放送を再送信している「スカパー! 光」の伝送帯域を拡張。BSデジタルの全12チャンネルを視聴できるようにする「スカパー! 光ホームタイプ ワイド」サービスを7月1日から開始する。地上アナログ/デジタル、BSアナログ/デジタルとFMラジオのみが視聴できる「スカパー! 光ライトコース」は月額682.5円と低価格なのが特徴。 7月1日に開始するのは東京23区、神奈川、埼玉の首都圏一部エリア。その後、8月1日に東京都下、千葉、9月1日からは福島でスタート。それ以降は現行の「スカパー! 光」提供エリアにて順次サービスを開始。NTT西日本のエリアでも、年内に同様のサービスを開始する予定。
現在の「スカパー! 光」では、70Mhz~770MHzまでの伝送帯域を用いて、地上デジタル/アナログ、CS、BSアナログに加え、BSデジタルの1/3/13/15チャンネルのみ配信を行なっている。しかし、BSデジタル放送は770MHzを超える周波数の放送であるため、BSデジタルの周波数を770MHz以下にダウンコンバートして配信。家庭の受信機側に専用の「BSデジタルパススルーアップコンバータ」(月額利用料263円)を設置し、変換した低い周波数を再度アップコンバートで元の周波数に戻し、テレビやレコーダなどにBSデジタルを配信していた。また、770MHzの帯域に空きが無いため、BS 1/3/13/15チャンネルしか配信できなかった。
そこで、NTTと協力して技術改良を行ない、帯域を2,072MHzまで拡張。アップ/ダウンコンバートをせずにBSデジタルの周波数をそのまま送信できるようになり、アップコンバータが不要になった。さらに、BS 9(デジタルWOWOW)、10(スター・チャンネル ハイビジョン)、11(BS11デジタル)、12(TwellV)の再送信可能になり、受信チャンネルが増加。加えて、2008年11月頃には「e2 by スカパー!」の配信がスタートする。さらに、スカパー! が2009年に予定している番組のハイビジョン化拡大にも対応。2009年春にはCS HD放送の配信もスタートする予定。
また、2011年7月にBSアナログが停波されることに伴い、周波数再編により新たにBSデジタルのチャンネル追加が行なわれる可能性があるが、「その場合でも対応できる帯域の広さを確保している」(オプティキャストの齋藤達郎社長)という。
これに合わせて、7月1日から料金体系も変更される。従来の「ホームタイプ」は6月30日で新規受付は終了。以降は「ホームタイプワイド」が作られる。地上アナログ/デジタル、BSアナログ/デジタルとFMラジオという、無料放送のみ配信する低価格な「ライトコース」は月額682.5円。CSの無料14chも見られる「アラカルトコース」は1,617.5円(スカパー! 光CSデジタル基本料、スカパー!用チューナレンタル料含む)。CSの有料50chが加わる「スカパー! 光パックセレクション」(同月額4,357.5円)、68chが加わる「スカパー! 光パック」(同月額4,957.5円)も用意する。
従来の「光パック」(割引適用後の月額4,590円)、「光パック セレクション」(同月額3,990円)と比べると若干値上がりしているが、前述のように月額263円のBSデジタルアップコンバータが不要になるため、価格面ではほぼ従来通り。BSデジタルの見られなかったチャンネルが視聴でき、今後のHD放送やチャンネル追加にも対応できるため、乗り換える利点は多い。また、従来は回線終端装置(ONU)が、電話などに向けた「GE-ONU」と、テレビ向けの「V-ONU」の2種類存在していたが、今回の広帯域化に合わせ、1台でカバーできる新タイプのONUに変更。アップコンバートが不要になることと合わせ、配線の簡略化も行なえるほか、NGN(フレッツ 光ネクスト)もサポートしている。
なお、新料金プランの登場にあわせ、NTT側も伝送サービス名を「フレッツ・テレビ伝送サービス」と名づけた。サービス料金は月額472.5円で、前述の価格に含まれている。例えば月額682.5円の「ライトコース」の場合、内訳は「フレッツ・テレビ」が月額472.5円、「スカパー! 光施設利用料」が月額210円となる。
■ 「光ファイバーをアンテナの代わりに」
オプティキャストの齋藤達郎社長は、「地上デジタルとBSデジタルだけ観たい場合でも、従来は“アラカルトチャンネル”と契約する必要があった」とし、スカパー! 光用のCSデジタルチューナレンタル料(315円)や、有料チャンネルとの契約が不要な「ライトコース」の低価格性を強調。「今まで無理をして(有料チャンネルを含むプランを)買っていたお客さんに、もっと自然体に買ってもらえる」と説明。「まずは光ファイバーをアンテナの代わりとして使ってもらう環境を作り出すことが重要。その上で、で多チャンネルの良さを説明しながら、多チャンネルが楽しみたい人にはそれを売っていくという営業戦略もとっていきたい」とする。 また、NTTぷららが実施している「ひかりTV」のようなIPベースの再送信と比較した際の利点として、「IPベースではデジタル放送を同時に2chしか受信できないなどの制約がある。また、家庭内にLANを張り巡らさなければならないが、そのような家庭はまだ少ない。スカパー! 光では同軸ケーブルで各部屋に配信でき、同時受信チャンネル数の制限なども無い」とアピール。複数台のテレビでより便利に使えるとする。
「スカパー! 光」の加入件数は、6月11日の時点で8万件を突破。対象エリアの拡大も続けており、2007年度末の東日本エリアでの対象世帯数は915万となる。関西でも約170万世帯、名古屋でも約50万世帯となる。2008年度には東日本エリアで約115万世帯、西日本と合わせてエリア拡大は約250万世帯にのぼり、合計で約1,400万世帯をカバーできるとしている。
NTT東日本の古賀哲夫代表取締役副社長は、「個人的には加入件数8万という数字には不満がある。東日本の対象エリアは915万世帯だが、そこに全部スカパー! 光が入るくらい、光ファイバーがテレビに直結しなければ、本当の光の普及はありえない。NTTは2010年に光ファイバーの普及2,000万世帯を目指しているが、光の最大のメリットは映像配信だと考えており、アンテナよりも安定した受信が可能なことや、無料放送の送信だけならば低価格で導入できることをアピールしていきたい。そこから多チャンネルが広がるかどうかはスカパー! さんの編成やコンテンツの魅力次第。ただ、電話すればすぐに多チャンネルも開通する利便性は大きな魅力」と語る。
また、グループ会社が提供している「ひかりTV」とサービス内容がかぶる件については、「IPベースのひかりTVはVODも含めたサービス。多チャンネルが観たいという場合はスカパー! 光というすみ分けになる。価格は確かにスカパー! 光が安いが、どちらの方式が最終的に支持されるかは“神のみぞ知る”だろう」とした。
スカイパーフェクト・コミュニケーションズの仁藤雅夫代表取締役執行役員社長は「アナログ停波の2011年7月まで、後3年しかない。デジタル放送にはアンテナ設置というハードルがある中で、光ファイバーがアンテナ代わりになる状況を作ることは非常に重要。放送のデジタル化に向け、受信可能な裾野をかなり急激に拡大するためのメニューであり、その後はコンテンツの中身で勝負という段階に入る。そこでは圧倒的な数のハイビジョン番組を投入していきたい」と抱負を語った。
□オプティキャストのホームページ
(2008年6月23日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|