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家電メーカーや通信事業者、放送局など17名/社は24日、IPTVサービスに関する技術仕様の策定や頒布、周知広報などを行なう「有限責任中間法人IPTVフォーラム」の設立を発表した。
2006年に発足した任意団体の「IPTVフォーラム」を解消し、規格維持のための恒久的、継続的な技術/サービス基盤の整備に向けて新法人を設立。 同フォーラムでは、IPTVサービスの実現と普及を目指し、送信/受信機器に関する規定や、受信仕様、技術仕様の策定/運用などを担当。さらに、IPTVサービス共通課題の検討や高度化により、利用者の利便性向上などを目的としている。 設立時の社員は以下の17社/名で、代表理事には慶応義塾大学の村井純教授が就任する。
同フォーラムでは、技術委員会傘下に、「VOD」、「ダウンロード」、「IP放送」、「IP再配信」の4つの配信サービス仕様案作成ワーキンググループを設立。さらに、「CDN(コンテンツデリバリネットワーク)スコープ」、「インターネットスコープ」、「放送連携」などサービスアプローチごとの仕様策定グループを設置している。それぞれのWGで規格案の策定作業が進められている。 これらの規格では、NTTぷららの「ひかりTV」で採用している「IPSP仕様」や、「アクトビラ」で採用しているデジタルテレビ情報化研究会、さらに実現はされなかったものの技術検討が続けられてきた「サーバー型放送」の各規格を内包しており、これらの3つをベースとし、標準化が進められているという。 標準仕様策定の最大の目標ともいえるのが、各IPTV事業者間の仕様の統一。これまでは、各IPTV事業者が異なる仕様に基づきSTBなどを設計していたため、受信のためにはそれぞれのサービス向けの端末が必要となっていた。規格が標準化されることで、1つの端末で複数のサービスに対応可能となる。例えば、機器メーカーが新規格対応のSTBやテレビを開発/販売し、NTTグループやKDDI、ソフトバンクなどの通信事業者がそれぞれに標準規格に基づきサービスを設計するため、ユーザーもこれらの事業者の違いを意識せず端末を購入できる。こうした標準化の利点を生かして、対応機器と、サービスの拡大を目指す。 また、CDN型の配信サービスにおいて、VODのみの部分を使い、ダウンロードには対応しないなど、一部を利用しての機器/サービス開発も可能という。なお、課金やユーザー管理、ユーザーインターフェイスなどはサーバーのバックエンド側で管理するため、これらは事業者の判断にゆだねられる。同様にDRMについても、複数のDRMを用途に合わせてサービス事業者が選択できるなど、柔軟な対応を可能としているという。 技術委員会の主査でフジテレビジョン 技術局 役員待遇技師長の関祥行氏はフォーラムの意義や技術仕様の概要、規格化ロードマップを説明。規格書は「2,300ページに及ぶ」としており、7月にはドラフト版となるVer.0.95を策定。産業財産権の確認などを経て、9月には正式版となるVer.1.0の規格化を完了する予定。 ただし、各WGにより規格化の進捗は異なるほか、今後も新しい機能やWGの立ち上げなど、新しいサービス提案に向けた規格化作業は続けていくという。対応機器の発売は、「機器メーカー次第。一般論として規格化から1年半後といわれるが、規格化作業はかなり前から進んでいたので、もっと早いかもしれない(関氏)」。 また、海外における標準化作業についてもITU-Tなどの動向を勘案して、提案や調整を行なっていく予定。
■ 先進的なIPTV規格化で「世界に貢献」 同フォーラム代表理事に就任する慶応義塾大学教授の村井純氏は、「この中間法人ができる前に、大きな二つの動きがあった」とし、アクトビラの「デジタルテレビ情報化研究会」と、IPSP仕様の「IPSプロジェクト」の取り組みを紹介。 アクトビラについては、「オープンインターネットのなかで、テレビ受信機がどのような映像、サービスを受けられるかという検討の積み重ねでできてきた。要求するネットワーク帯域、状況が高く、それが如何に先進的かということで、世界中の注目されたところだが、そこが順調に離陸した。1つの成果」と言及。IPSPについては、「放送コンテンツを含めたリッチなコンテンツが、どうやってIPを通じて消費者に届けられるか。緻密な議論を経て、NGNのようなクオリティ保証型の新しいインターネット基盤と、必要とされる受像機の検討が進められた。それに対し、IPの再送信同意の問題をどうやって解決するかなどに取り組んできた。これも成果」とまとめた。 2つの取り組みを振り返った上で、「手段はそれぞれ独立したアプローチで進めてきたが、IPTVフォーラムはその財産を引継ぎ、ひとつの場として発展させていく組織。高い期待があると思う。2つの流れが調整されながら、新しい流れに育って発展していく可能性が生まれた。その成長の場がIPTVフォーラム」とフォーラムの意義を強調。 さらに、「この状況は、わが国の先端的な環境が背景に成り立っている。2つの大きな挑戦の結果をより透明にオープンに展開できる。世界中が注目する分野で国際的に貢献できる。このIPTVフォーラムの議論、技術仕様、みなが集まれるという場を生かして、世界で大きな貢献をしていきたい」と述べ、フォーラムへの意見と関係者の参加を呼びかけた。
総務省情報通信政策局 総合政策課長の鈴木茂樹氏は、「IPTVは、ブロードバンド利用のもっとも有効なアプリケーションと考えてきた。この規格がテレビに実装されれば、通信事業者の違いに関わらず、どなたもIPTVでハイビジョンで受信できる。利用者の利便性を大幅に向上するものと期待している。放送、通信、機器製造事業者のみなが、結集した意義は大変大きい。通信と放送の融合、ハーモナイゼーションのひとつの証」と評価。 さらに、「コンテンツ配信市場を急速に発展されるものと、期待しているし、インパクトは大きい。一日も早く、この団体の規格が機器に実装され、市場に出回ることを強く期待する。総務省は全面的に支援していく」とIPTVの拡大への期待を語った。
NTT取締役で研究企画部門長の花澤隆氏は、NTTぷららの「ひかりTV」による地上デジタル再送信などの例を引き、「厳しい競争をしているのは通信事業者だけでなく、ネット、コンテンツ事業者も同じ。この状況の中で利便性を損なわずに、IPTVを普及させるには受信機、およびサービスの規格統一が必要。テレビやSTBなどの規格品が一般の市販製品に入り、それを買うだけで各事業者のサービスに対応できるということは非常に重要と考える。通信事業者、放送事業者、機器メーカーの互いが協力できる機関ができたのは意義深いもの。皆様に参加いただき、日本におけるIPTVの発展、世界への貢献を活動していきたい」と訴えた。 KDDI コンシューマ事業統括本部 プラットフォーム開発本部長の吉満雅文氏は、FTTHによるVODサービスや、携帯電話/PC向けの「LISMO Video」などの取り組みを紹介。「LISMO Videoでは見たいときに見たい映像を視聴できる環境を実現した。従来は音楽配信に力を入れていたが、映像も音楽に並ぶ戦略商品として力を入れていく。サービスの進化に積極的に取り組む」と説明。 さらに、事業者側の努力だけでなく、「規格化により、市販のテレビ、HDDレコーダに当たり前のように機能が搭載されることで、サービスを利用する側の環境も整備される。KDDIでも、IPTVフォーラムの仕様策定の後、規格に準拠していきたい」と語った。 ソフトバンクBB 常務執行役員 接続規格本部本部長の弓削哲也氏は、「規格が統一されることで、サービスを拡充できる。光とDSLとで新しいサービスを手がけれらるのではないか。いい規格を作り、IPTVの普及につなげていきたい」とした。
□IPTV FORUMのホームページ ( 2008年6月24日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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