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シャープがBlu-ray Discレコーダを内蔵した液晶テレビ「AQUOS DXシリーズ」を11月20日より発売する。BDレコーダを内蔵したテレビは“世界初”だ。 この発表には個人的には驚かされた。というのも、かつてはDVDレコーダ内蔵液晶テレビも発売されていたが、大きな市場を築くには至らなかった。それがBDになって急に変わるとはにわかに考えにくいと感じたためだ。 また、「BDレコーダ内蔵」といっても既にレコーダを利用している人とってはピンとこないのではないだろうか? 頻繁にBDやDVDディスクに残すユーザーでも、録画は基本的にHDDを利用しているだろう。HDDに録り貯めた番組の中から好みの番組をディスクに書き出すというのが一般的だ。当のシャープ製BDレコーダ「AQUOSブルーレイ」でも、BDやDVDへの直接録画はできず、一度HDDに記録した後にディスクに書き出すという仕様になっている。 一方で、東芝、日立、パナソニックなどが、HDDレコーダ内蔵テレビを発売しており、主流とはいわないまでも、1ジャンルを築いている。テレビに内蔵するならHDDのほうが適しているのでは? というのが「AQUOS DX」発表時の率直な感想だった。 しかし、AQOUS DXは実験的な位置づけの製品ではなく、メインストリーム向け製品として展開される。52/46/42/37/32/26型の6サイズを用意し、合計16モデルを展開するという本格的な製品ラインナップからもその本気が伝わってくる。世界初BDレコーダ内蔵テレビの狙いをシャープに聞いた。
■ アナログビデオからAQOUS DXへ シャープによれば、AQUOS DXは既存の「レコーダ」のユーザー層を狙った製品ではなく、HDD/DVDレコーダの利便性にまだ気づいていない、潜在的なユーザーにターゲットを絞った製品という。
薄型テレビの普及率は4割を超え、成熟期を迎えつつある。同様にBDの市場もソフトウェア、ハードウェアともに急拡大している。しかし、同社調査では、ハイビジョンレコーダ(BD含む)の所有者が約640万世帯、DVDが約1,690万世帯とある程度普及しているにもかかわらず、アナログビデオを利用しているという世帯も約1,640万世帯あったとする。 こうした「アナログビデオ世帯」がなぜDVDやHDDレコーダに移行しなかったのか。その理由を同社では「操作が難しくて、買い替えが進まなかった」と分析している。そこで、「簡単」とデジタル放送の「高画質」、「楽しく操作」をキーワードに開発に取り組んだテレビ。それがAQUOS DXなのだという。 BDレコーダを一体化したことの利点は確かに理解できる。BD/DVDディスクを再生するために、液晶テレビ+レコーダでは、電源を入れ、入力切替、リモコンモード切替、トレイを開け、ディスクを入れるなど7ステップの操作が必要となる。それがAQUOS DXではテレビとBDを一体化したことで、電源をONにし、ディスクを入れるだけですぐに再生できる。 レンタルでDVDやBDを借りてみたいが、操作がわからないという人にも、AQUOS DXは「とにかくカンタン」と訴求できる。操作だけでなく、配線もチューナにアンテナケーブルをつなぎ、電源ケーブルをコンセントに挿すだけとシンプル。配線が絡まることもなく、設置も簡単というわけだ。
■ カンタン+楽しく操作がコンセプト AQOSU DXのBDドライブは、BD-R/REへの録画だけでなく、BDビデオ、DVDビデオ、音楽CDなどの再生に対応している。再生機能はシンプルなもので、前述の通りディスクを入れるだけで再生を開始できる。同社では「一発再生」と命名し、シンプルな操作性をアピールしている。また、ひとつのリモコンですべての操作が行なえるというのも特徴といえる。
もっとも注目される点は録画機能だ。地上/BS/110度CSデジタルダブルチューナを搭載し、裏番組を見ながらの録画に対応している。BD-R/R DLとBD-RE/RE DLの各メディアに直接記録が可能。DVDへの録画には非対応だ。アナログチューナも搭載しているが、アナログ放送は録画できない点は注意したいところだ。 番組表から番組を選択するだけで、録画予約が行なえる「一発予約」を搭載。BD-R/REディスクを入れていなくても予約録画指定は可能だが、もちろん放送開始前にはディスクを入れておく必要がある。 BDレコーダ内蔵により、番組表も従来のAQUOSから一新しており、左側に「予約リスト」を表示。最大16件までの予約を登録できる。予約した番組を時系列で確認できる。また、録画予約時にディスクの残量が足りない場合も、この画面で警告の表示を促してくれる。
録画モードは、デジタル放送をそのまま記録する「DRモード」のほか、MPEG-4 AVC/H.264によるトランスコード録画機能も装備。2/3/5倍の長時間録画モードが用意されている。2/3倍の場合は、データ放送も併せて記録、5倍モードの場合はデータ放送部分を省略して記録する。 初期設定では5倍モード。つまり、メーカー推奨の利用モードが最も長時間録画モードとなっているのだ。5倍モードであれば、1層/25GBディスクで約10時間、2層/50GBで約21時間のHD番組録画できる。HDDレコーダなどとは異なり、限られた容量を生かすための考え方といえるが、「同時に5時間モードでも十分な画質を維持できていると判断したため」という。トランスコーダは「AQUOSブルーレイ」と同じViXS製で、画質もAQUOSブルーレイ相当としている。ただし、編集系の機能などは省かれている。
毎週録画も指定可能だが、おまかせ録画機能は搭載していない。また、ブランクメディアを挿入して約3秒で録画が開始できる「瞬速録画」機能を搭載。突然の来客時などに、メディアを挿入するだけですぐに続きが録画でき、番組表情報を元に番組終了時点で録画を自動停止する。 ディスクを入れた際には、ローディングまでにそれなりに時間がかかるのだが、一定時間のバッファリングを行なうことで、ローディング完了前に録画開始可能とし、瞬速録画を実現している。 録画機能の搭載にあわせて、ユーザーインターフェイスも改良。「モーションガイド」と命名している。 録画ディスクを入れると、ピクチャインピクチャのように右サイドに、ディスク内のタイトルリストと選択中の番組のサムネイル動画を表示。再生リストの番組を選択すると再生が開始される。リモコンのカーソルキーで番組を選択しなくても、ここでリモコンの1を押すと、1番上の番組を、3を押すと3番目の番組を再生開始してくれるなど、細かい使い勝手向上の工夫が行なわれている。 また、5チャンネルから4チャンネルなど、チャンネルを数が小さくなる場合は上方向のワイプエフェクトを、3から7チャンネルなど逆方向にチャンネル移動するときは下方向にワイプをかけるなど、操作に対して動きを見せる工夫を施している。
■ 2012年にBD内蔵率 5割を目指すシャープの本気
画質面でも、パネルに最適化し、自然な画質に見えるようにした「AQUOS純モード」を搭載。GUIや録画系などの基本的なプラットフォーム、各種コンポーネントは、AQUOSブルーレイで培ったものが多く流用されているが、テレビ側は完全に新設計されている。また、万一、BDレコーダ部が故障しても、ユニット交換で対応できるようになっているという。 スタンダードモデルと比べると、価格差は約5万円。シンプルな操作性とBD再生という付加価値で、どこまで消費者にヒットするかがポイントといえるだろう。AQUOS DXの販売計画は「下期で40~50万台」。さらに、「2012年には構成比で半分をBD内蔵とし、付加価値というよりは基本機能にしていきたい」とする。同社では、リビングのメインテレビとしてだけでなく、寝室やダイニングなどの「2台目」としても訴求。レコーダで録画したBDディスクをAQUOS DXで見るといった利用方法も提案している。 新しいユーザー層を薄型テレビ/レコーダに取り込むことで、市場拡大を目指す「AQUOS DX」が、狙い通りテレビの裾野の広がりを象徴するような製品になるのか? 年末商戦のシャープに注目したい。
□シャープのホームページ ( 2008年11月12日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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