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NECエレクトロニクス株式会社は、地上デジタル12セグチューナの低価格化を実現するシステムLSI「EMMA(エマ) 2TS」を11月14日よりサンプル出荷を開始した。サンプル価格は2,000円で、2009年春から量産を開始、2010年には月産10万個を計画する。
単体地デジチューナなど、セットメーカーからの製品化は2009年度第1四半期以降となる見込み。なお、チューナ製品として実現可能な価格については明らかにしていないが、LSIのBOM(部材コスト)としては「セット仕様によるが、従来品の半分を目指している」という。 用途としては、従来のアナログテレビで地デジを視聴するための単体チューナが中心となるが、そのほかにも小型テレビや、パソコン用ディスプレイ、ポータブル機器への内蔵など幅広いAV機器への搭載を想定している。 2011年7月の地上デジタル放送への完全移行に向けて、総務省と社団法人デジタル放送推進協会(Dpa)が策定した簡易チューナの仕様ガイドラインに準拠したというLSI。7月22日に発表されており、発表時は「2008年秋にサンプル出荷予定」としていた。 MEPGデコーダなどの映像/音声処理回路とOFDMチャンネルデコーダを初めて1チップ化したことが特徴。上記ガイドラインに即し、回路を従来の「EMMA2TH/H」に比べ約半分まで削減。1チップ化による電源やメモリなどの削減で、消費電力をEMMA2TH/Hの1/3~1/4となる1W台まで抑え、ヒートシンクも不要とした。基板面積としては従来の70%まで小型化した。 省かれた主な回路はデータ放送に関わる部分で、BML表示用のアクセラレータを乗せていないため、ハードウェアとしてはデータ放送に対応しない。また、ハイビジョンのデコードを2パスで行なっていたが、シングルパスに変更している。
なお、総務省とDpaのガイドラインでは、周波数変換パススルーへのサポートも含まれているが、同製品にはRFチューナは含まれないため、この機能については別途RFチューナ部品での対応となる。 出力はD4/コンポジットに対応し、ハイビジョン解像度をサポート。字幕表示や副音声にも対応する。メインCPUは300DMIPS(200MHz)。MPEG-2 MP@HL準拠のデコーダと、SPDIF出力対応のオーディオコントローラを搭載する。回路のプロセスは90nm。 新製品は、11月19日から開催される「Embedded Technology 2008」でも展示される予定。 ■ アナログ停波に向け2~4,000万台の需要を見込む
同製品は地デジ完全移行の約3年前に当たる7月に発表され、今回のサンプル出荷発表は約1,000日前に相当する。SoCシステム事業部長の板垣克彦氏は、「低所得者支援、アナログテレビの残存問題への対策から、(テレビなどの)セットメーカーも既存アナログテレビを活用する地デジチューナを販売しているが、部品コスト低減に難航し、EMMA製品群を持つ当社に、簡易なチューナ向けLSI開発への期待が寄せられた」と経緯を説明。 上記のニーズに加え、家庭での2台目、3台目のテレビなどを含めて、2011年までにデジタルチューナが必要となる台数は「約2,000~4,000万台」と見込んでおり、他社に先駆けて低価格チューナを出すことで供給拡大を図る。搭載メーカーについては「数は言えないが、総務省/Dpaの発表を受けて、問い合わせはたくさん来ている」という。 EMMA製品全体としては、はデジタルテレビやBlu-rayプレーヤーなどで12カ国以上に出荷し、2006年~2007年では出荷量を約2倍まで拡大。8月時点で累計8,200万個を出荷している。CPUの拡張やユニット変更の柔軟性を特徴としており、今回の「EMMA 2TS」は、最小限に絞って開発した製品となる。板垣氏は「今後もセットメーカーと協力しながら、アナログ停波への対応と、それ以降のデジタル放送への対応を行ないたい」と述べた。
□NECエレクトロニクスのホームページ ( 2008年11月14日 ) [AV Watch編集部/nakaba-a@impress.co.jp]
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