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ソニーは29日、2008年度第3四半期(10~12月)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比24.6%減の2兆1,546億円。営業損益は前年同期の2,362億円から赤字に転落し、180億円の赤字。税引前利益は80.2%減の665億円、当期純利益は94.8%減の104億円となった。
営業利益の減少のうち、円高の影響がマイナス1,270億円、ソニー・エリクソンを中心とした持分法適用会社の損失の影響でマイナス577億円、日本の株式相場下落の影響により、金融分野におけるマイナスが332億円などとした。 エレクトロニクス部門の売上は、前年同期比29.3%減の1兆4,621億円。営業損益は前年同期の2,006億円から、159億円の赤字に転落した。 営業損益の減収要因としては、為替の影響でマイナス942億円、売り上げ減でマイナス639億円、持分法による投資利益の悪化でマイナス453億円、販売費・一般管理費の増加でマイナス40億円、価格下落などを背景にした原価率の悪化でマイナス91億円としている。
また、9月中旬以降の景気の減速に伴い、生産調整などに取り組んできたものの在庫の増加は避けられず、引き続き在庫調整、生産調整が必要であることを示したほか、値下げによってスムーズに在庫を減らすといった販売価格の調整などに取り組むとした。
■ テレビ事業の損失が響くエレクトロニクス事業 エレクトロニクス事業の業績悪化のなかでも、テレビ事業の損失が大きく影響している。第3四半期のテレビ事業の売上高は前年同期比27%減の3,700億円。営業損益は500億円悪化し、430億円の赤字となった。全世界向けの出荷台数では、100万台増加し、500万台を出荷したというが、計画に比べて約100万台少なかったという。 主力のテレビ事業が赤字から脱却できないままの事態では、エレクトロニクス事業全体の業績回復にも暗雲が立ちこめざるを得ないのは事実だ。 同社では、これまでにテレビ事業の黒字回復を目指してきたが、「(黒字計画を赤字に修正し)何度も言い訳をし、狼少年と呼ばれるほど。今年も最終的に予想よりも悪くなる」とソニーの大根田伸行執行役EVP兼CFOは語る。 予想に反する結果となっていることに対して、大根田執行役EVP兼CFOは次のように説明する。「ひとつは考えていた以上に価格下落が大きいこと。大型テレビは年率25%程度で下がると考えていたが、いまは30%程度下がっている。小型は20~22%程度とみていたが、これが25%以上下がっている。平均すると、想定よりも5%程度下がっている。5%は4,000円から5,000円程度となり、これが千数百万台の出荷から逆算すると600億円程度のインパクトになる」。 「また、為替の影響では、パネルはドル建てで購入しているため、ドル安という動きでの影響は少ないが、欧州市場向けのユーロ安での影響が想定以上に出ている。コストダウンの未達というよりも、この2つの要因が影響している。さらに、需要増加を想定して、パネルを戦略的に早い時期に押さえたが、その後、パネルの需給バランスが崩れ、不足気味だったものが過剰になり、想定以上にパネル価格が下がったというインパクトも若干ある」。 さらに、「来期はどうかといえば、リストラへの取り組みや、いままでよりも突っ込んだ手を打つこと、サプライチェーンも短縮すること、エコやデザイン、ネット対応といった製品の競争力強化もある」としたものの、通期のテレビ事業の見通しや来年度の計画など、具体的な数値については「年度末の決算発表で触れたい」と明言を避けた。 先頃発表した経営体質強化施策で触れた、ODM/OEMを活用した外部生産委託への取り組みについては、「すべて一斉にやるというのではなく、機種ごと、地域ごと、時期ごとにやっていくことになる。新興国市場の伸張が見込まれるなか、すべてを自前の工場で生産するのではなく、効率的に生産に結びつけるために、外の力を使っていく考え」(原直史業務執行役員SVP)とした。 また、米国におけるデジタル放送の完全移行時期が延期したことについては、「液晶テレビの価格下落が進展しており、延期が需要減少に結びつくとは思っていない。むしろ景気の影響の方が、成長を緩やかなものにするだろう」(同)とした。 そのほか、エレクトロニクス部門で減益に影響したのは、価格下落が激しいPC「VAIO」およびコンパクトデジカメの「サイバーショット」。価格下落の影響、為替の影響、市場成長の鈍化、販売台数の減少が収益を圧迫した。コンパクトデジカメは、計画に比べて百数十万台下回っているという。 利益に貢献したのはビデオカメラとシステムLSI。オーディオ事業およびデジカメ事業は利益を計上。VAIOの利益はほぼブレイクイーブンだという。 なお、大阪・堺での大型液晶パネル工場の合弁会社を、シャープと設立することで協議していた案件については、世界経済の影響を受けて会社設立時期を1年間延期し、2010年3月までとすると発表した。 これに関しては、「昨年から市場環境が大きく変化し、どの段階で、どのような形で、どの程度資本を入れるか、金額をどうするかといったことを、いまの状況をベースに話し合おうということで合意したもの。出資比率を変える予定はなく、パネルの引き取り枚数に応じて、出資金額を決定する」(ソニーの原直史業務執行役員SVP)などとした。
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■ ゲーム部門は好調
一方、ゲーム部門は、売上高が32.2%減の3,938億円、営業利益は97.0%減の4億円。為替の影響に加えて、プレイステーション2(PS2)、プレイステーションポータブル(PSP)、PLAYSTATION 3(PS3)の販売数量が減少したのが影響した。ハードの販売台数は、PS2が53%減の252万台、PSPが12%減の508万台、PS3が9%減の446万台。 だが、「第1四半期からの累計では、PS3は850万台に達し、前年の690万台を上回っている。年間1,000万台の達成に向けて順調に推移している。PSPも1,600万台から期初計画の1,500万台へと戻したが、これまでに1,200万台を出荷し、前年の1,050万台を上回っている」と9か月累計での好調ぶりを訴えた。
映画部門は、売上高が21.8%減の1,751億円、営業利益は8.3%減の129億円。「007/慰めの報酬」の劇場興行収入は好調だったものの、前年同期に全世界でスパイダーマン3のDVDソフトが発売されていたことで、その反動で減収となった。 金融部門はビジネス収入が24.1%減の1,031億円、営業損失は前年同期の42億円の赤字から374億円の赤字に拡大。ソニー生命において、日本の株式相場の下落幅が大きかったことを背景に、特別勘定における運用損失、一般勘定における株式の減損が増加したのが要因。
その他部門の売上高は、ソニーBMG(2009年1月1日からソニー・ミュージックエンタテイメントに社名変更)が連結子会社化したことが影響し、106.8%増の1,986億円、営業利益は10.0%増の245億円となった。
一方、ソニーでは、通期の連結営業損益見通しとして、2,600億円の赤字になることを発表している。 第3四半期の連結業績では180億円の赤字となったものの、4~12月までの9か月累計では665億円の黒字となっており、逆算すれば第4四半期の営業損失は3,265億円もの赤字を計上する計算となる。
これに関して、大根田伸行執行役EVP兼CFOは「それぐらいの赤字が出ると見ている」と前置きし、「第3四半期の売り上げが減少しており、この傾向は第4四半期になっても続くと見ており、エレクトロニクス部門だけでも5,000億円以上は落ちるだろう。また、売り上げ減少やそれに伴う限界利益の減少、価格競争による低価格化の影響、為替の影響がある。為替は150~160億円の影響があるだろう。また、リストラの費用で500~600億円が必要であり、これも影響する」などとした。
□ソニーのホームページ
(2009年1月29日) [Reported by 大河原克行]
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