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ソニーは22日、2008年度の通期連結業績予測を下方修正した。2008年10月発表の予測に対し、売上高は1兆3,000億円減(14%減)の7兆7,000億円、営業利益は4,600億円の損益悪化で、損失2,600億円と赤字となる。純利益も当初予測比で3,000億円のマイナスで、1,500億円の損失に修正した。
世界的な景気後退に伴う事業環境の悪化や、為替市場における円高の進行、日本の株式相場の下落、構造改革費用の増加などにより、売上高と営業利益の見通しが大幅に下回ることとなった。第4四半期の想定為替レートは1ドル90円前後、1ユーロ120円前後(2008年10月発表の下期想定レートは1ドル100円前後、1ユーロ140円前後)。 エレクトロニクス分野では、景気後退にともなう事業環境悪化や価格競争の激化により約2,500億円の損益悪化。加えて円高の影響で400億円、構造改革費用追加で300億円、持分法適用子会社の業績悪化で200億円と、合計約3,400億円想定を下回った。 ゲーム分野では、円高により約150億円、売上減の影響で約150億円の合計300億円の損益悪化。映画分野では、構造改革費用の追加や、売上減、円高を要因とし、想定を130億円下回った。金融分野も当初予測比で650億円の損益悪化で、その他事業でも音楽分野の売上減などで、110億円想定を下回っている。なお、営業外収支については、主にヘッジによる為替差益が発生し、10月時想定に比べて約500億円の改善となった。
エレクトロニクスの売上台数見通しも下方修正。10月時点では、液晶テレビが1,600万台、PC「VAIO」が680万台、BDレコーダが60万台、サイバーショットが2,400万台、ハンディカムが700万台と予測していた。 これをBRAVIAは100万台減の1,500万台、VAIOを100万台減の580万台、BDレコーダを10万台減の50万台、ハンディカムを80万台減の620万台に変更した。なお、ウォークマンは700万台、BDプレーヤーは220万台で変更無し。 ゲームはPLAYSTATION 3が好調で1,000万台と当初見通しからの変更は無いが、PSPについては100万台減の1,500万台とした。 2008年第3四半期の業績暫定値も発表。売上高は前年比25%減の2兆1,500億円、営業利益は180億円の損失、純利益は100億円となっている。
■ 国内テレビ設計/生産は稲沢に集約。代表執行役賞与は全額返上 下方修正にあわせて、ハワード・ストリンガーCEOや中鉢良治社長らによる説明会を17時30分より開催。下方修正の要因のほか、国内液晶テレビ生産を稲沢テックに集約するなどの、エレクトロニクス事業を中心とした経営改善策が発表された。
経営体質強化については、エレクトロニクスの主要カテゴリにおいて、スピードと収益性を主眼において構造改革を行なう。12月に発表した経営改善策の前倒しとあわせて、グループ全体で2009年度に2,500億円の費用削減を目指すとする。 具体的には、液晶テレビ事業において、テレビの国内設計/生産体制を行なっていたソニーエーエムシーエスの一宮テックを6月を目処に終了。国内事業所は、稲沢テックに集約する。なお、一宮テックの正規社員は原則として稲沢に移動。非正規社員は1,000名の減少を見込んでいる。今後の一宮テックの使用については、検討中としている。 液晶テレビでは、新興国の成長による普及価格帯のモデルの比率増加を見据え、OEM/ODM展開を加速、アセットライト化を推進する。さらに、ハードウェア設計やソフトウェアをグローバルに共通化し、設計開発リソースを集約。特にソフトウェア開発については、一部領域をインドなどにアウトソースするなどで固定費削減を図る。また、設計、開発、製造、物流、販売の全てのオペレーションの構造をワールドワイドで見直すとしている。これにより、設計および間接部門の人員を2009年度末までに全世界で約30%削減する。 成長戦略としては、エレクトロニクスとゲームの連携を強化し、ハードウェアとネットワークサービスの融合を加速するという。 なお、2008年度の役員賞与も大幅に減額。代表執行役の3名(ハワード・ストリンガーCEO、中鉢良治社長、井原勝美副社長)は、2008年度役員賞与を全額返上する。その他の役員についても、前年比で70%以上の大幅な減額を行なうほか、定額報酬の減額を予定しており、年収は代表執行役で前年比半分以下に、その他の役員も30%以上の減額となる。また、管理職も大幅減額の見込みで、賞与は前年比30~40%減額し、月次の報酬も減額するため、年収で10~20%の減額となるという。
■ 構造改革とネット強化でイノベーションを ハワード・ストリンガーCEOは、「現在の世界の経済状況は家電業界が経験したことの無い変化。需要が縮小し、為替が大きく変動し、小売店の状況も悪い。しかし、競争は続いている。競合に比べれば、サプライチェーンマネージメントの非効率があり、サイロ(部門間の壁)もまだ残っている。これをイノベーションで超えていく」と語り、「変革により、ソニーは伝統的な日本の電機メーカーではなくなる。SamsungやLGはグローバルな製品ポートフォリオを有している。また、マイクロソフトやApple、Ciscoも、デジタルホームに乗り出している。電機メーカーであろうとなかろうと、この困難に直面している。競合も変化しているが、この中でエレクトロニクス事業で利益を出していかなければならない」と、構造改革の必要性を説明した。 構造改革により、2009年度に2,500億円のコスト削減を達成すると目標設定。各事業の効率化とともに、競争力強化に注力する方針で、全世界で徹底的に取り組む方針を説明。「ソニーの基礎は優れたハードウェアであり、素晴らしいエンジニアの創造性とノウハウ、デザイン能力、ブランドだ」と語るとともに、「若く挑戦的なエンジニア、従業員もいる。ネットワークや新しいデジタルライフの創造に取り組む」とネットワークサービスの強化方針を語り、ソフトウェア開発への強化やアウトソース、半導体などのアセットライト戦略を解説した。 その戦略の一環として、PLAYSTATION 3用ネットワークサービス「PLAYSTATION Network」とソニー製品の連携などについても言及。テレビにネットワーク機能を持たせ、“オープン化”により、ネットワーク、ゲーム、テレビなどのさまざまな機能を実現する方向性を、ソニーの次の姿として語った。 中鉢社長は、エレクトロニクス事業の構造改革について説明。「世界の市場需要の低下と為替変動」を課題に掲げ、10月以降に緊急対応に着手、「あらゆる分野で見直しを図っており、12月に発表した投資計画、販売計画、人員計画の見直しもその一部。目標はキャッシュフローの改善と、損益分岐点改善の2点」と、語った。 固定費の削減については「聖域無き改革を」と徹底して取り組む方針で、研究開発についても「ソニーの柱でああるが、テーマの絞り込みや外部との協力で費用改善に取り組む」とする。 テレビについては、「テレビ事業の復活無くして、エレクトロニクスの復活なし」と語り、かねてから掲げていたテーマを再確認。従来から取り組んできた、差異化技術の取り組み、ハード/ソフト基本設計の統一、生産リードタイム短縮、消費地生産などをさらに進めるほか、生産/調達を全世界規模で見直して、経費削減を図るとする。 設計や間接部門の人員削減のほか、調達面でも競合に比べるとパネルの調達コストなどが高いといった問題を解消するという。「例えば今は液晶パネルに余剰感が高い。こういう時期にきちっと調達できるような体制を早期にやる。中長期的にはソフトを含めた設計の体制を構築し、効率化を図りたい」とする。 なお、2008年2月に発表し、9月までに合弁契約をまとめる予定だった、シャープ堺工場における生産合弁会社については、「両社で協議中。現在のビジネス環境、需要減、価格下落というなかで、どういう形でやるべきか、最良の形を検討しているところだ」とした。 中鉢社長は、「これらの構造改革は商品そのものの魅力が増して、お客様の感動につながることで完了する」とし、2009年には環境対応の製品群を拡大していくほか、ニーズにあわせて、新興国向けの専用モデルなどを積極的に取り組んでいくという。 半導体、コンポーネントについても、「需要減に見舞われている」とし、事業を見直し。アセットライト化をイメージセンサーでも進め、携帯向けのCMOSの一部は外部ファブに生産委託する。独自技術を取り組んだCMOSについては、携帯電話やデジタルカメラ、ビデオカメラに全面展開するなど、強化していく方針。中小型液晶やバッテリは事業部と事業所の一体化を進める。バッテリについては、積極的に投資。家庭用充電池や自動車用バッテリを強化していく。 中鉢社長は、「エレクトロニクスの成長の源泉はイノベーション。いまだかつてない厳しい事業環境にあるが、イノベーションの力を育てていくことも、私のもう一つの責務だと考えている。さまざまな地球規模の課題として、商品を通して、暮らしを豊かにする。ネット化を加速し、新たな顧客体験をやっていくことに全力を注いでいく。厳しい事業環境に打ち勝ち、強いソニーとなって、中期経営方針で掲げた目標の実現に邁進する」と語った。 □ソニーのホームページ ( 2009年1月22日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
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