小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。金曜ランチビュッフェの購読はこちら(協力:夜間飛行)

「50GBプラン」にして、5G時代のことを考えてみた

スマートフォンの通信量には、誰もが悩まされている。筆者は、ソフトバンクの月間20GBのプランをメインで使っていたため、まあ、通信量不足に困っていたわけではない。実家への帰省と国内出張が重なり、結果的にかなり自宅をあけることになった月にだけ20GBを超えたが、それ以外で超えたことは一度もない。まあ、そのために20GBのプランに入っているわけだが。出費は毎月、ちょっと痛いが。

そこに、ソフトバンクはさらに無茶な容量のプランを用意してきた。9月22日から提供が開始された、月間50GBで7000円の「ウルトラギガモンスター」だ。

50GBって。そりゃどう考えても余るでしょ……。

そう思いながら、一方で、ふとこんなことも思ったのだ。

現状自分は、月間20GBのプランを使いつつも、やっぱりスマホ内の設定は「パケット通信量をある程度節約する」ものになっている。その設定をすべて止め、一切の節約を止めて使ったら、今のスマホはどのくらい通信量を食うのだろうか?と。

2020年、通信回線が5Gになると、今よりも通信速度とレイテンシーは改善する。当然、いまよりももっとWAN上で通信を使うようになるだろう。

今、自分の中にある「通信量を節約する」という意識をカットすると、「5Gのように通信がジャブジャブ使える時代」を少しだけ先回りできるのでは……と思ったのだ。

というわけで、10月1日付けで50GBのプランに切り換え、一切の節約を止めてみた。
自分の中でのルールは以下の通りだ。

  • アプリはいつでもアップデート。ダウンロードもいつでも。Wi-Fiか否かは一切気にしない。
  • YouTubeを含め、動画再生に一切躊躇しない。当然Wi-Fiかどうかは気にしない。画質設定は落とさない。
  • iCloudやGoogle Photoなどの同期も、常に行う設定に変える。やっぱりWi-Fiかどうかは気にしない。
  • ストリーミングミュージック(Apple Music)の利用も躊躇しない。ローカルに保存した曲かどうかは、再生時に一切確認しない。好きに聴く。設定は、高音質なハイビットレートに固定。
  • 仕事用のファイルはOneDriveとDropboxに同期。こちらも、自宅・オフィス以外でも制約はかけない。
  • Macのテザリングにも必要な時は躊躇なく使う。
  • 自宅やオフィスでは、WAN限定にしない。Wi-Fiも使う。

最後のレギュレーションは「全部LTEでいいのでは」と思う人もいそうだ。だが、自宅にある回線を切るのが今回の意図ではないので、そこはあえてこうしている。5Gになっても家庭やオフィスの固定網がなくなるわけではない。併存は当面存在するから、そこで無理に変える必要もないのでは……と思ったわけだ。「昼間、自分がスマホを多く使う時間帯の行動がどうなるか」を見たかった、と考えてもらいたい。

10月中に撮影した写真・製作した画像は1996枚。原稿を含む、製作した文書の量は約50本。これを全部iCloudとGoogle Photoに同期し、音楽は毎日数時間聴いた。動画やSNSも普通に使った。要は「移動中でも一切制約をかけずに通信した」と思ってもらいたい。

常に同期されていて、必要なデータにはどのデバイスからも確実かつすぐにアクセスできたし、見たいもの・聴きたいものも制約なく楽しめたので、精神衛生上は非常に良かった。やっぱり我々は、無意識に、自宅やオフィスなどの「拠点でデータを同期する」「動画は自宅などで見る」クセがあるが、その制約がなくなることは大きなプラスだった。

ではどのくらいのデータ量だったのか? 使用量は28.54GB。確かに20GBでは足りなかったが、50GBでは全然余ってしまった。平時にもそれなりに通信はする方だと思うが、それでもだいたい10GB程度だったから、3倍弱にはなった計算だ。逆にいえば、モバイル回線では同期しない設定にすることで、月に20GBくらいは節約できていた、ということなのだろう。正直、もっとデータを使うかと思っていたのだが、意外なほど消費量は伸びなかった。

10月末日付のデータ通信量。実は自分の予想よりは少なかった

通信の使い方は人によって色々だ。自宅に回線がなく、動画などを余暇にLTE回線をつかって見るような使い方をすれば、私の例より、もっともっと使用量は増えただろう。

おそらくは、「今のiPhone+Macで、機器やクラウド側の要件として、制約をほとんどかけずに移動中に通信を、普通に使う」という条件だと、こんなところなのではないか。そう考えると、大手3キャリアが設定している「20GBプラン」というのは、なかなかうまい通信量設定だったのだな……と思えてくる。クラウドをガンガン使って普通にスマホとPCで仕事をすると「月に30GBくらいデータを使う」という今回見えた値は、それなりに参考になる数字ではないだろうか。

2020年になり、5Gの時代が来ると、機器やコンテンツも進化するので、さらに容量は増えるだろう。しかし、通信のビット単価は下がるため、今回のようなイメージの使い方が、月に7000円も払うような無茶な料金でなくても普通にできるようになる可能性は高い。

全体の通信量のイメージが湧き、そのことがなんとなく見えてきただけでも、2ヶ月分の追加通信量、約2000円を払った甲斐があったというものだ。

だが、現状では、50GBはいかにもバランスが悪い。「いくらつかっても減らない感」があるのは心強いのだが、別の機器でもパケットをシェアできないと完全に割高だ。タブレット(筆者の場合はiPadを常に使っている)用のSIMをシェアプランにしようにも、今の料金体系だと、なんとMVNOでデータ専用SIMを用意した方がずっと安い……という計算になる。ソフトバンクも、その辺もう少し考えて欲しい。まあ、本来50GBのプランは家族でシェアすることが前提なので、この使い方が想定外なのだろうが。

だから、12月には料金プランを元に戻す予定だ。さすがに今の料金では割高過ぎる。だいたい、多くの人の常識から考えれば、30GB弱というのは十分「ギガ死」している値のはずだ。私もきちんと設定を元にもどしておかないとエライことになる。忘れないようにしないと……。

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」

本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。

コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。

家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

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2017年11月17日 Vol.150 <やるのかやらないのか、そこが問題号>

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01 論壇【小寺】
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02 余談【西田】
「50GBプラン」にして、5G時代のことを考えてみた
03 対談【小寺・西田】
04 過去記事【小寺】
仕事部屋はなぜいつも散らかっているのか
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西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41