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なぜハイセンスは“RGBミニLEDテレビ推し”なのか。中国本社幹部に聞いた

ハイセンスのRGBミニLED液晶テレビ「116UX」

世界48のナショナルチームが“サッカー世界一”の座をかけて競う「FIFAワールドカップ2026」。その数少ないオフィシャルスポンサーを務めるのが、3年連続100インチ以上テレビ出荷台数で世界1位に君臨する電機大手ハイセンスだ。

5月末、中国・山東省にある同社のテレビ工場と本社を巡るメディアツアーに参加し、工場やR&Dセンターの見学、そして本社幹部らから今後の戦略等の話を聞くことができた。その模様を全2回にわたって取り上げる。

中国・青島にあるハイセンスグループ本社

本稿では、本社幹部に行なったインタビューを掲載する。

なお、テレビ工場とR&Dセンターのレポートは下記の記事を参照されたい。

世界トップクラスの企業を目指し、着実にグローバル化を進める

――グローバル展開における現状について教えてほしい。

方雪玉氏(以下敬称略):私たちハイセンスグループは現在、世界32カ所の研究開発拠点と41の生産拠点、そして65の海外現地法人・事務所を有しており、180国と地域で製品を販売しています。中国以外のエリアを7つに分け、それぞれの地域で運営体制を構築しています。日本は、アジア太平洋地域の重要な市場です。

ハイセンスグローバルマーケティングセンター 社長 方雪玉氏

方雪玉:昨年ハイセンスはグループ全体で、2,244億元の売上高を記録しました。そのうちの49.3%、金額にして1,107億元は海外市場での売上です。

海外市場におけるブランド力も着実に向上しています。中でもテレビや冷蔵庫、洗濯機の事業に関しては、複数の国・地域で販売台数首位を獲得しています。

ハイセンスグループは、世界32カ所の研究開発拠点と41の生産拠点、そして65の海外現地法人・事務所を持つ
テレビや冷蔵庫、洗濯機の事業では、複数の国・地域で販売台数首位を獲得する

方雪玉:私たちが進めているグローバル化は、大きく5つのフェーズで説明することができます。

まず私たちは2006年、「成長の主軸を海外に」という戦略方針を打ち出しました。これを起点に海外地域におけるマーケティング体制を整え、自社ブランドの展開を段階的に進めました。

第3フェーズでは“マルチブランド・フルカテゴリー”を掲げ、様々なブランド、商品ジャンルへと拡大。スポーツを活用したマーケティングを強化しました。第4フェーズでは、中国と世界7地域、つまり“1+7”の地域運営体制を構築し、研究開発・生産・販売の現地化を推進しました。

昨年からは、第5フェーズへと移行しています。このフェーズでは、全事業領域におけるエコシステムを構築し、世界トップクラスの企業を目指し、一歩一歩着実にグローバル化を深めていきます。

ハイセンスグループは、5つのフェーズでグローバル化を進めてきた

――グローバル化を進めるうえで、どのような点に注力しているか。

方雪玉:はい。グローバル化を支える6つの柱があります。

まず1つは「国際化戦略の堅持」です。2006年にグローバル戦略を定めて以来、長期の視点に立った経営を継続することで、グローバル展開への取り組みを一貫して推進しています。

2つ目は「徹底したローカライゼーション」です。ハイセンスは「Local for Local」の理念を掲げています。事業を行なう地域に応じ、研究開発、生産、調達、販売、サービスの体制を整備し、現地の市場と消費者のニーズに応えることを大切にしています。現地の人材や専門家の積極的な登用も進めています。

3つ目は「自社ブランドの育成」。グローバル戦略を打ち出した2006年の頃は、海外売上に占める自社ブランド比率は10%未満でしたが、2025年では87%まで拡大させることができました。

4つ目は「技術開発への継続投資」。ハイセンスは毎年売上高の約5%を研究開発に投資しています。最先端技術を製品開発や製造に積極的に取り入れることが、グローバルでの激しい競争を生き抜く源泉となります。

方雪玉:5つ目は「スポーツマーケティングの推進」です。スポーツは世界共通の言語だと考えています。私たちは2008年より全豪オープン、F1レッドブルレーシング、そしてNASCARなどへの協賛を開始しました。2016年以降は、UEFA欧州選手権やFIFAワールドカップなどの世界的スポーツイベントへ協賛を継続するとともに、NBA、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリードなど、地域・国別のスポーツIPとの連携も積極的に展開しています。

そして、6つ目は「戦略的なM&A」。買収したブランドへの継続的な投資と価値向上を図りながら、企業文化を尊重し、ブランドの独自性を維持・発展させることを重視しています。

顧星宇:グローバル戦略において、特に今年は重要な1年だと捉えています。6月・7月に開催されるFIFAワールドカップは、スポーツマーケティングにおける一大イベントであり、ハイセンスのブランド価値を広める核となるものです。我々の優れた製品、そしてRGBミニLEDテレビをグローバルで訴求していきます。

ハイセンスグローバルマーケティングセンター ブランド&マーケティング本部 海外統合マーケティング部 部長 顧星宇氏

日本市場向けの商品開発を一層強化する

――ハイセンスの日本での取り組みを改めて教えてほしい。

ハイセンスグローバルマーケティングセンター アジア太平洋地域センター 社長
ハイセンスジャパン株式会社 社長 張喜峰氏

張喜峰:日本市場における拠点「ハイセンスジャパン」ができたのは2010年です。翌年にはテレビの販売を開始し、2015年には3年の保証もスタートさせました。

徐々に日本での競争力を高め、2025年は通年でテレビシェア3位を獲得しました。そして、2026年第1四半期のテレビシェアにおいては2位を記録しています。

冷蔵庫や洗濯機、エアコンといったテレビ以外の製品も、順次拡大しています。

張喜峰:ただ優れた商品を売るだけではなく、様々な活動・支援も行なっています。

先ほど申し上げたスポーツマーケティングでは、プロ野球チーム「横浜DeNAベイスターズ」やプロサッカークラブ「サンフレッチェ広島」の応援を通じ、日本の消費者とのつながりを増やす取り組みをしています。

張喜峰:ほかにも、子ども向けサッカー大会「ミニハイセンスカップ」の開催であったり、海の環境教育や海岸清掃に行なう「ブルーフラッグ」活動の応援、ひとり親家庭を支援する「フードバンク」、子どもへ食事を提供する「こども食堂」への支援など、社会貢献活動にも取り組んでいます。

このような現地に密着した様々な取り組みを行なうことで、ハイセンスというブランドに対する認知の向上や、製品への信頼を高めていきたいと考えています。

――日本市場における今後の戦略を教えてほしい。

方雪玉:ハイセンスグループにとって、日本市場はグローバル戦略における重要な中核市場です。

まず、私たちは日本社会に深く根ざした企業を目指しています。現地人材の採用や雇用創出を通じて地域経済の発展に貢献し、日本市場とともに成長していきたいと考えています。

次に、日本市場向けの商品開発を一層強化していきます。

日本の消費者は家電製品に対して高い品質や性能だけでなく、省エネ性、静音性、設置性、収納性など細部まで重視します。今後も日本の生活様式や消費者のニーズを深く研究し、グローバルの技術力を活かしながら、日本市場に適した製品の開発を進めてまいります。

それから、家電は長期間使用される耐久消費財ですから、品質だけでなく、販売・サポート体制の充実にも注力していきます。購入前から購入後まで、安心してご利用いただけるサービス体制の構築を進めていきます

最後に、これは今も既に展開していることですが、販売チャネルの強化とスポーツマーケティングを通じて、日本の消費者との接点を拡大していきます。スポーツマーケティングも、より力を入れたいと考えています。

ハイセンスはRGBミニLEDの“先駆者”であり“先導者”だ

――RGBミニLED技術の優位性はどこにあると考えているか。

明兆亮:RGBミニLED技術に関して、我々は3つの優位性があると考えています。

1つは自然でリアルな色彩。BT.2020色域において100%をカバーしており、米国パントン社の「Pantone 100% Color Gamut」および「Pantone RGB MiniLED」認証を取得しています。

2つ目は優れた省エネ性能です。従来のミニLEDと比べ、エネルギー効率が約40%も向上しました。そして3つ目は、目に優しい設計です。チラツキのないフリッカーフリー技術に対応しており、独の認証機関TÜV(テュフ)による「ハードウェア低ブルーライト認証」も取得しています。

ハイセンスグローバルマーケティングセンター 製品プロモーション&使用シーン運営部 部長 明兆亮氏

明兆亮:我々は、RGBミニLED液晶テレビに関し、「The Origin of RGB MiniLED」というコピーを掲げています。“RGBミニLEDの先駆者”という意味です。

ハイセンスはRGBミニLED技術をいち早く開発するとともに、量産化、そして体系的な製品展開を進めたブランドです。

RGBミニLEDは、単にバックライトに赤・緑・青(RGB)のLEDチップを搭載する技術ではありません。光源、ローカルディミング、光学システム、映像アルゴリズム、最終的な画質チューニングまで、総合的なシステム技術が必要なのです。

我々が競合他社よりもリードできた背景には、画質プロセッサー「信芯(Hi-View)」の存在と、新たにグループの仲間に加わったLEDチップメーカー「Changelight(乾照光電)」のサポートがありました。

従来のミニLEDバックライト(左)と、新しいRGBミニLEDバックライトの違いを模型化したもの

明兆亮:それから、RGBミニLEDという技術に関し、我々は米CTA(Consumer Technology Association)と共に定義の策定に関わりました。「各バックライトユニットには独立して制御可能な赤・緑・青の3色LEDを搭載すること」という要件を定めることで、テレビ業界が概念的なマーケティング表現に依存するのではなく、本来のRGBミニLED技術の価値に立ち返ることを推進する狙いがあったのです。

量子ドットや有機ELにおいては、こうした定義の策定はありません。CTAというCESの主催者組織が、ディスプレイ技術をメーカーと一緒に定義したことも初めてです。

すでに我々のRGBミニLED技術は、初代「116UX」から第二世代「116UXS」へと進化し、4種類のミニLEDを組み込んだ次世代光源技術を見据えています。これはミニLED技術が継続的な進化と継続的な量産が可能であることを示すものです。

我々はRGBミニLEDの先駆者であると同時に、“先導者”でもあると思っています。

RGBミニLED推しは「将来を見据えた戦略的な判断」

――なぜハイセンスはRGBミニLED技術を追求するのか。

明兆亮:我々がRGBミニLEDを継続して推進しているのは、一時的なトレンドや短期的な戦略によるものではありません。長年にわたるユーザーインサイトの分析と技術検証に基づく長期的な判断によるものです。

第一に、ユーザーにとって「自然で正確な色再現」がますます重要な視聴体験になっていることが挙げられます。HDRコンテンツやドキュメンタリー、スポーツ映像の高画質化が進む中、「色がどれだけ正確に再現されているか」への関心は年々高まっています。

RGBバックライトは光源レベルから色彩表現の基盤を構築するため、ソフトウェア処理だけでは補いきれない高い色再現性を実現し、より自然でリアルな映像体験を提供します。

第二に、映像視聴環境そのものが大きく変化していることが挙げられます。ハイセンスは100インチ以上の大画面テレビ市場において、出荷台数世界No.1を継続しています。ユーザーはより明るいリビング空間や大型スクリーンでコンテンツを楽しむようになっており、そのような環境ではRGBミニLEDが持つ高輝度時の色再現性や映像の均一性、安定性といった特徴がより大きな価値を発揮すると考えます。

第三に、RGBミニLEDは継続的な進化と製品化が可能な技術プラットフォームであることです。最新世代のRGBミニLEDは、光源構造、光学設計、映像チューニング技術が大幅に進化しました。さらにフラッグシップモデル「116UXS」のリリースは、この技術が研究開発段階に留まらず、実際の製品として量産・市場展開できる成熟した技術であることを示しています。

ハイセンスは自社のLED開発・製造能力と映像処理チップ開発能力を活かし、RGBミニLEDの技術革新を継続的に製品へ反映しています。

繰り返しになりますが、ハイセンスがRGBミニLEDを長期的な技術戦略として位置付けている理由は、ユーザーニーズの変化、技術的優位性、そして持続可能な製品化能力に対する確かな確信があるためです。これは短期的な選択ではなく、将来を見据えた戦略的な判断なのです。

RGBミニLED技術にはまだまだ伸びしろがある

――液晶テレビを展開するハイセンスに敢えて尋ねたい。有機EL技術について、どう考えているか。

明兆亮:有機ELは、非常に優れたディスプレイ技術だと認識しています。画質が良く、コントラストに優れ、かつ非常に薄く作れるという特徴があります。技術開発も進み、テレビに搭載されるまでに発展しました。

ただ、有機ELテレビは、グローバルでの販売台数を見ますと、近年は成長が鈍化しているように見受けられます。

その理由は、サイズと価格ではないでしょうか。現状、有機ELにおいては、100インチを超えるような大型を作ることが極めて難しいと考えます。また製造コストが高く、手頃な価格で提供することも難しいでしょう。

先ほどもお話ししたように、RGBミニLED技術にはまだまだ伸びしろがあります。是非我々のRGBミニLEDテレビと、技術の進化に期待していただきたいです。

阿部邦弘