小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1225回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

アクションカメラを“卒業する”。GoPro「MISSION 1 Pro」の実力を試す

5月末より発売開始された「MISSION 1 PRO」

アクションカメラの苦境

2020年にコロナ禍が始まった際、カメラの売り上げが伸びず多くのメーカーが苦境に立たされたが、その中でもっとも深刻な打撃を受けたのはアクションカメラ勢だった。なにせ外に出られないので、アクションも何もない。

このとき米GoProが受けた影響は深刻で、2020年Q1の売り上げは前年同期比で半減、20%超の人員削減を行なっている。

ただ回復も早かった。2020年も末になるとアウトドアブームが起こり、防塵防滴に優れたアクションカメラが再び注目された。

ただし撮り方が違う。これまでは車やサーフボードに固定して、「撮る」というより「写っちゃう」ものであった。だがアウトドア撮影では、手持ちでアングルを決めて「撮る」ことが多くなった。

GoProが今年5月に日本でローンチした新シリーズ、「GoPro MISSION 1」は、こうしたニーズの変化に応えるカメラとして登場した。GoPro MISSION 1、MISSION 1 PRO、MISSION 1 PRO ILSの3モデルで構成されている。

左からGoPro MISSION 1、MISSION 1 PRO、MISSION 1 PRO ILS

このうちMISSION 1 PRO ILSはマイクロフォーサーズマウントを搭載したモデルだが、これだけ発売が遅れ、秋頃になる見込みだ。今回は「MISSION 1 PRO」をお借りすることができた。

マイクロフォーサーズマウントを搭載した「MISSION 1 PRO ILS」は秋頃発売

1インチセンサーを搭載したという新ラインナップは、これまでのアクションカメラとはどう違うのだろうか。早速試してみよう。

従来GoProよりちょっと大きめ

MISSION 1シリーズ3モデルはどれもほぼ同サイズと言っていいと思うが、ボディは従来型のHeroシリーズよりも若干大きめになっている。センサーの大型化に伴ってレンズも大型化したことで、従来サイズには入らなかったのだろう。従ってハウジングなどのアクセサリーには、互換性がないものもある。

電源ボタンはかなり大きく出っ張っている
シャッターボタンも出っ張りが大きい

まず3モデルの何が違うのかを整理してみる。センサーサイズやバッテリー、写真解像度は共通だが、MISSION 1だけ動画スペックが違っている。具体的には、上位2モデルが8K/4:3のオープンゲート撮影に対応、また8K/16:9/60pまで対応しているのに対し、MISSION 1は8K/16:9/30p止まりで、8K/4:3のオープンゲート撮影には対応しない。

メモリー内にハイスピード撮影を記録するバーストスローモーションも上位2モデルは対応するが、MISSION 1にはその機能がない。価格も上位2モデルは同価格の122,600円だが、MISSION 1は105,400円と、価格差がある。どちらかというとMISSION 1は従来型Heroシリーズの延長線上にあり、上位2モデルがMISSION 1シリーズの本丸で、その違いはレンズ交換できるかどうか、と考えていいだろう。

では改めて、MISSION 1 PROのスペックを確認していこう。レンズは35mm換算で15mm/F2.8だが、リニア補正や水平維持などを入れていくと画角が狭くなっていく。最狭画角は27mmとなっている。

イメージセンサーは4:3の1インチで、ピクセルサイズは1.6µm。なお60FPS以下の4K撮影時で使えるQuad Bayerモードでは、ピクセル融合により原理的に3.2µmピクセルサイズとなる。この時のダイナミックレンジは最大14ストップとなっている。

写真解像度は最大50MP(8,192×6,144ドット)となっており、これが実質的に有効画素数と考えていいだろう。

プロセッサは5nmを採用したGP3で、電力効率に優れるという。8K60Pが処理できるのも、このプロセッサのおかげだ。また従来の4倍の処理能力を持つAIニューラルプロセッサーユニット(NPU)により、被写体の認識と追従が可能になっている。

動画コーデックはH.265で、色深度は8bitか10bitが選択できる。最大ビットレートは240Mbps。よって記録するMicroSDカードは「A2 V30」以上が求められる。「この設定では〜」と表示されるので、ビットレートやビット深度、解像度などを一番下まで下げてみたが、A2 V30以下のカードが使用できる組み合わせは見つけられなかった。

ビット深度は8bitと10bitが切り替えできる
A2 V30以下のカードを挿入した際に表示されるアラート

動画解像度およびフレームレートは以下の通り。

解像度フレームレート(NTSCのみ記載)
8K (16:9)60/30/24fps
8K (4:3)30/24fps
4K (16:9)240/120/60/30/24fps
4K (4:3)120/60/30/24fps
4K (9:16)30fps
1080p (16:9)480/240/120/60/30/24fps
1440p (4:3)480/240/120/60/30/24fps
1080p (9:16)60/30fps

シネマを謳うカメラなので24pが撮れるのは当然として、なぜか縦構図の9:16では24pが撮れない。昨今はマイクロドラマの縦動画も流行しており、24pの需要もあると思うのだが、何の制限で撮れないのかよくわからない。ちなみにカメラを縦に構えた場合はメニューも縦になる機能があるので、24pの縦動画を撮りたければ、カメラを縦にするという方法もある。

オーディオは動画ファイルに記録されるわけだが、カメラマイクのほかに別途BluetoothやUSBでオーディオ入力すると、別トラックに記録できる。つまり動画付属の音声は、ステレオ×2トラックになるわけだ。さらにそれとは別に、24bit LinearPCMか、32bitフロートの非圧縮WAVファイルを別に記録するモードも備えている。

カメラマイク以外にも音声トラックがある
別途WAVファイルでも録音できる

バッテリーは2,150mAh Enduro 2バッテリーで、連続撮影時間は1080p/30p (長時間モード)で最大5時間、4K/30pで3時間以上、8K/30pで最大1.5時間となっている。充電は80%まで約27分、100%まで約60分。ただしPPS(Programmable Power Supply)充電器と対応ケーブルを使った場合に限る。

バッテリーはPPSによる充電に対応

面白いのは、QRコードを使ったタイムコード同期機能があることだ。スマホアプリでリアルタイムに動くQRコードを表示させておき、これをカメラで撮影するとタイムコードが実時間でセットされる。複数台のカメラを使う場合には便利な機能だ。

動くQRコードをカメラで撮影するとタイムコードが伝送される

オープンゲート撮影を試す

MISSION 1 PROとノーマルMISSION 1との差は、8Kオープンゲート撮影ができるかどうかに集約される。オープンゲート撮影は、センサーサイズいっぱいに高解像度で撮影しておき、編集時にトリミングして画角を調整するという制作方法になる。よって元々広角レンズを持つアクションカメラ系では比較的相性が良い方法論だ。

まず画角から見ていくと、8K/4:3(オープンゲート)では広角、リニア、リニア+水平ロックの3つが選択できる。

8Kの16:9も同様に3種類選択できるが、横の画角は変わらず、縦がクロップされるだけなので、どうせ撮るなら4:3のほうがお得である。なお「広角」ではレンズフードが多少ケラレるので、ギリギリを使う可能性があるなら外したほうがいいだろう。

8K/4:3(オープンゲート)広角
8K/4:3(オープンゲート)リニア
8K/4:3(オープンゲート)リニア+水平ロック
8K/16:9広角
8K/16:9リニア
8K/16:9 リニア+水平ロック

なお縦構図の9:16では広角とリニアの2種類で、水平ロックは選べない。画角は変わらず、単にリニア補正されるだけである。

4K/9:16広角
4K/9:16リニア

カラーモードとしては、鮮やか、ナチュラル、シネマティック、フラット、GP-Log2が選択できる。GP-Log2はカラーグレーディング前提なので、浅い色味となるが、モニター補正のような機能はない。

鮮やか
ナチュラル
シネマティック
フラット
GP-Log2

またそのほかのカラーモードも大きく変わるわけではなく、気持ち違うかな程度である。コンシューマユーザーはグレーディングせずにいい感じのシネマトーンが欲しいはずで、多くのシネマ対応カメラはカラートーンをたくさん用意しているが、その点ではかなりおとなしい作りである。

今回は8K/4:3(オープンゲート)のリニア+水平ロック、カラーはナチュラルで撮影したものを、4K解像度でトリミングしてサンプルとした。

8Kオープンゲート撮影したものを編集したサンプル

ラストのネコのカットは、4倍拡大したものだ。最大4倍拡大してもまだ4K解像度を維持するので、HD解像度コンテンツならさらに拡大できることになる。ただ単純拡大したものと、光学ズームして同じ画角にしたものではパース感が異なる。このあたりは、拡大できるからといって、万能ではない。

次はGP-Log2を使って撮影したものを、HDRにグレーディングした。撮影は4K/30p 16:9で、トリミングは行なっていない。あいにくの曇天で持ち前のダイナミックレンジが活かせる撮影はできなかったが、階調性は良好だ。全部手持ち撮影だが、かなり安定したフィックス撮影ができる。

GP-Log2で撮影し、HDRにグレーディングしたもの

一方で気がかりなのは、近距離撮影である。超広角レンズの割には最短撮影距離が長く、おそらく30cm程度離さないと、フォーカスが合わない。撮影中はモニター画面が小さいので、フォーカスが合っているかどうかがわかりにくい。何らかのフォーカスアシスト機能が欲しいところである。

近接撮影はあまり得意ではない

良好な夜間撮影

続いて低照度撮影を試してみた。ISO感度は25~6400で、それほど感度が上げられるわけではないが、高コントラストな映像が撮れる。

低照度撮影では、どこに露出ポイントを置くかでコントラストがずいぶん変わる。画面を長押ししていると露出検知エリアを示す四角い枠が出てくるので、そこで最適なポイントを見つけることになる。

低照度撮影のサンプル

照明の周波数の関係で、フリッカーの警告が出ることがあるが、電源周波数の切り替えはNTSCとPALの切り替えになってしまう。東日本のように、映像方式としてはNTSC圏だが電源周波数が50Hzという地域のことは考慮されていない。PALを選ぶと30pや60pといったフレームレートで撮影ができなくなるのは使いづらいところだ。

マイク性能もテストしてみた。内蔵マイクには標準モードと音声モードがある。実際に切り替えてみると、音声モードは音声の明瞭感が上がるようだ。ただ2ch収録ではあるが、モノラル集音になるようだ。指向性を上げて声を集中的に拾うということだろう。

集音モードは2つ

特殊撮影機能としては、スローモーション内にバーストスローモーションモードがある。これは1080p/960fps/16:9で10秒間のみ撮影できるスーパースローモーションだ。30pで再生すれば32倍スローということになる。

歩きながら撮影してみたが、あまりにも遅すぎてスローであることがほとんどわからないぐらいだ。カメラを放り投げて撮影してみたが、カメラがかなり回転しているにもかかわらず、ちゃんと撮影できている。実験動画のような特殊撮影にも使えそうだ。

バーストスローモーションのサンプル

またAIによる追尾撮影もテストしてみた。すでにDJI等他社では実装済みの機能だが、こちらもかなりうまく追従できている。上下角はそれほど追従マージンがないので、アングル設定には気をつけたいところだ。

自動追尾撮影のサンプル

総論

MISSION 1 PROは、アクションカメラの技術を使ってシネマ撮影クラスまで対応しようという意欲作である。特にオープンゲート撮影は昨今の流行であり、元々超広角レンズを搭載したアクションカメラには馴染みやすい方法論だ。

その一方で、本当にガチのシネマを想定して市場があるのかというところが気になるところだ。Vlogユーザーがちょっとシネマっぽく撮りたいみたいな、もう少しパイが広いところを狙ったほうがよかったのではないか。その場合、現状ではおそらくカラーモードが足りない。

コンテンツの中で、広角の映像は必要になるが、全編の中で使うのはほんの少しである。そこの部分のコストを抑えるカメラ、という点では評価できるが、いくらオープンゲート撮影可能とは言っても、このカメラだけで全部のカットが撮れるわけではない。

そのためにレンズ交換できるMISSION 1 PRO ILSがある、というシナリオかもしれない。マイクロフォーサーズにもシネマレンズは色々あるので、被写界深度表現などは可能だ。

機会があれば、MISSION 1 PRO ILSも試してみたいところだ。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。