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豊作のポタフェス、iBasso「DC-Tonfa」、ガラス振動板増加、ダイヤモンド振動板qdc「BASALT」佐々木的注目展示

この週末はe☆イヤフォン主催の「ポタフェス 2026 夏 秋葉原」が開催され、多くのヘッドフォン・イヤフォンファンで賑わった。たくさんの製品が展示されたが、その中からいくつか筆者が注目した製品を紹介していこう。

iBasso「DC-Tonfa」

まずMUSINブースから、今回のポタフェスの顔ともいうべきiBasso「DC-Tonfa」を紹介する。これはiBassoがe☆イヤフォンとコラボ開発をしたドングルDAC製品である。7月17日発売で価格は54,450円。会場では先行販売が行なわれていた。

iBasso「DC-Tonfa」

目指したサウンドは「音楽を楽しく、良い音で聴けること。iBassoらしさを残したサウンド」ということだ。また付属のケースも凝ったもので、液晶部分の切り欠きが大きく、ケースをMagSafe対応とすることでMagSafe対応のスマホに直付けすることができる。

代理店のMUSINによると、内部的にはiBasso「DX270」の思想を継承して、ドングルDACに適用したものだそうだ。

iBasso「DX270」

DX270の設計はユニークだ。ディスクリート方式のマルチビットDACを実現するにあたり、20bitのR-2Rラダー形式と4bitのストリング形式を組み合わせることで、両者の良いところ取りをし、デスクトップでも使えるような高精度化と低歪みを目指したものと言える。

一方、DC-Tonfaは音楽を気持ち良く聴くことを目的にしたドングルDACである。そこでモニター的な突き詰めた高精度よりも、マルチビット特有の滑らかさと温もりを重視、そのために4bitのストリングDACを省略し、よりシンプルな24bit R-2R形式にすることで、R-2Rらしい自然で心地よい音質を引き出しているのだろう。

DACはDX270のように8チャンネル形式を採用、アンプ部分も含めてフルバランス設計がなされている。サイズが制限されるドングルDACにしては、かなり本格的な設計だ。

筆者が試聴してみたところ、たしかにR-2R形式のDACらしい温かさ、滑らかさを感じ取ることができた。また、トンファーの名前のように強いパンチがあり、高域のきつさも少ない。ヴォーカルも魅力的で、楽器音は鮮明である。

相性の良い音楽について今回プロデュースを務めたe☆イヤフォンPRスタッフのゆーでぃ氏に聞くと「ロック、アニソン、アイドル、ジャズ、クラシックは一通り聴き、基本なんでも聴ける製品になってますが、特にロック、ポップスとの相性がよい」ということだ。

試聴会場では長蛇の列ができ、試聴してそのまま買われる人も多かったということだ。

販売店ならではの視点でユーザーに寄り添い、音質の良さと操作性の良さを上手にミックスした製品と言えるだろう。

e☆イヤホンにおいて、SNSやYouTubeで製品の魅力を分かりやすく発信、自身も熱狂的なiBasso Audioのファンという二代目イヤホン王子・ゆーでぃ氏が、チューニングとカラー選定の中核を担当した

ガラス振動板採用製品が増加!

次に今回の展示で興味深かったのは「ガラス振動板」を搭載したイヤフォンの展示だ。ガラス振動板は日本電気硝子と台湾のGAITが共同開発したもので、最近「Sonarion(ソナリオン)」と命名されている注目の振動板だ。

Sonarion

ガラス振動板は、音の伝達速度が非常に速く、不要な着色感が少なく、軽量でかつ高い剛性を持つなど優れた特性がある。これらが振動板の特性としてバランスよく組み合わさって、忠実度の高い音が実現できるのである。

まずケンウッドからは完全ワイヤレスイヤフォン「GLASS Core」と上位機種である「GLASS Core Pro」が展示されていた。すでに発売されていて、価格はオープンだが、市場価格はGLASS Core Proが49,940円前後、GLASS Coreが27,830円前後である。

GLASS Core Pro

商品企画部の木村仁氏に、ガラス振動板の採用理由を聞いてみた。それによると、ケンウッドにとって初めての振動板であり、素材の一番良いところに着目したという。開発の際に実際にサンプルの音を聴いてみたところ、ワイドレンジで、音の立ち上がりが早く、着色感が少ないという特性がケンウッドの目指す音に合致するという感触を得られたという。

上位機種である「GLASS Core Pro」ではMEMSドライバーをスーパーツイーター的に併用することで、さらなる音場の広がりを目指したということだ。

「GLASS Core」商品企画部の木村仁氏

試聴してみると、確かに音が速く、素早いアコギのピッキングのキレが良い。またヴォーカルがリアルで、ウッドベースの低音もとても深く感じられた。こうした背反するような音が引き出せている点は新しい振動板ならではと言えるかもしれない。

また、会場ではもう一つガラス振動板を採用した新製品を見つけることができた。Campfire Audio「Chimera」である。

Campfire Audio「Chimera」

7月中旬発売予定で、価格はオープンだが、市場では1,296,000円前後が予想される。堂々たるフラッグシップ機だ。

Chimeraの特徴は、同ブランドとして初めて採用する骨伝導ドライバーや(意外だが)ESTなど、その名の通りキメラ(合成獣)を彷彿とさせる多彩なドライバー構成。それらに加えて、10mmのガラス振動板を採用している。

ドライバーの内部。①は10mm径骨伝導ドライバー(Low)、②10mm True Glass Dynamic Driver(Low/Mid)、③Dual-diaphragm balanced armature(Mid)、④High-frequency balanced armature(High)×2、⑤Electrostatic supertweeters(Ultra-High)×4

今回は残念ながらCEOのKen Ball氏が来日しなかったので、直接詳しい話を聞くことはできなかったが、音を確かめることができた。

まず一聴して驚くのは、音場がとても広く、耳に近く聴こえる圧倒的な迫力だ。またギターサウンドが速く、解像感がとても高い。聴いたことがないほどの独特の低音の深さも興味深い。

広い音場と音の速さは、GLASS Coreと共通の点があり、Chimeraではさらにフラッグシップ有線イヤフォンらしく、ESTドライバーや骨伝導ドライバーを加えてワイドレンジ化したものだろう。

総じてガラス振動板のポテンシャルは高いと言える。またChimeraの音の温かみはCampfire Audioらしいところでもあり、やはりイヤフォンの味付けにはメーカー独自の個性を見つけることができる。

Campfire Audio「Chimera」

ピュア・ダイヤモンド振動板採用のqdc「BASALT」

今回の展示で、振動板という点でもう一つ興味深いのは代理店のアユートとの共同企画で開発したqdc「BASALT」の世界初の展示である。予価は250,000円前後ということだ。

qdc「BASALT」

qdcが独自に製作した、13mmピュア・ダイヤモンド振動板を採用したシングル・ダイナミックドライバーを搭載、シェルはチタン製である。実際に手に取ってみると、金属シェルのユニバーサルイヤフォンながら、とても軽量に感じられる。

実際に聴いてみると、ピュア・ダイヤモンド振動板ということが分かりやすい音で、音がとても速く、ギターの切れ味のシャープさが非常に優れているのが、聴き取りやすい面もある。華やかな音で、高音域もクリアで端正だ。シャープなドライバーを活かしながら、巧みにチューニングした感じで、qdc独自の周波数制御技術も投入されているという。

final A10000は、しばしば究極の自然な音とも評されるほど癖のないサウンドが特徴なのに対して、BASALTは、素材のキャラクターを前面に出した分かりやすい音だと感じられた。似たようにピュア・ダイヤモンド振動板として話題になっても、こうしたまとめ方の違いもメーカーの方向性が感じられて興味深い。

ガラス振動板やピュア・ダイヤモンド振動板といった新しい振動板技術に加え、よりユーザー視点に立ったドングルDAC「DC-Tonfa」の登場など、ポータブルオーディオの広がりを感じさせる展示が目についた。豊作のポタフェスだったと言えるだろう。

佐々木喜洋

テクニカルライター。オーディオライター。得意ジャンルはポータブルオーディオ、ヘッドフォン、イヤフォン、PCオーディオなど。海外情報や技術的な記事を得意とする。 アメリカ居住経験があり、海外との交流が広い。IT分野ではプログラマでもあり、第一種情報処理技術者の国家資格を有する。 ポータブルオーディオやヘッドフォンオーディオの分野では早くから情報発信をしており、HeadFiのメンバーでもある。個人ブログ「Music To Go」主催。http://vaiopocket.seesaa.net