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「ガンダム サンダーボルト」イベント上映開始。監督らが裏話。BD化は7月29日

 アニメ「機動戦士ガンダム サンダーボルト」の2週間限定イベント上映が、6月25日から全国15館にてスタート。それに先立ち、24日に新宿ピカデリーにて前夜祭が開催され、舞台挨拶に、監督の松尾衡氏、漫画原作の著者・太田垣康男氏、音楽を担当したジャズ・ミュージシャンの菊地成孔氏、プロデューサーの小形尚弘氏が登壇。製作の裏話を披露した。

左から松尾衡監督、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔氏、漫画原作の著者・太田垣康男氏、プロデューサーの小形尚弘氏
機動戦士ガンダム サンダーボルト
※ジャケットとは異なります
(C)創通・サンライズ

 「機動戦士ガンダム サンダーボルト」は、小学館「ビッグコミックスペリオール」にて連載しているコミックが原作。アニメ化は、「ガンダムUC(ユニコーン)」を手掛けたサンライズ第1スタジオが担当。「ローゼンメイデン」や「革命機ヴァルヴレイヴ」の松尾衡監督が手がけている。

 ガンダムシリーズ初の試みとして、視聴期限のないEST(Electronic Sell Through)販売を昨年12月から実施。既報の通り、全4話に、新作カットを加えたディレクターズカット版「機動戦士ガンダム サンダーボルト DECEMBER SKY」が、今年の7月29日にBlu-ray、DVD化もされる。価格はBDが6,800円、DVDが5,800円。イベント上映劇場では、特典を追加した初回生産限定のBD-BOXも10,000円で先行販売されている。

(C) 創通・サンライズ

ジャズと密接に関係しているガンダム

 松尾監督は音楽について、「漫画原作では“コルトレーンで”と言われて、これで戦闘シーンはどうしようとかなり不安だったんですが、菊池さんにいろんな曲を聴かせていただき、これなら戦闘シーンいけるなと思いましたね。音楽にぴったり合わせた編集っていうのは考えてませんでしたが、何となく聴かせてもらった時のテンポ感だけは頭に入れておいて、戦闘の切り替えしだけじゃなくて、爆発やビームを撃つタイミングとか、そのテンポ感みたいなものでカットを切っていくようにしていけば、いくつか合ってくれるんじゃないだろうかと、それを手がかりでやっていました。実際、菊地さんの音楽の収録に立ち会わせて頂いたときに、最初に聴いたイメージとは離れていなかったので、その後の編集とかも非常に助かりましたね」とコメント。

 原作の太田氏は、アニメとして映像化された感想として、「全く想像していなかったですね。想像の域を越えているので、観ていて一人で感動してウルウルしていました。昔から映画ファンだったので、漫画の勉強をするために映画をたくさん観ていて、まさか自分で考えた物語がこんな大きなスクリーンで上映される日が来るなんて、夢にも思ってなかったので、今日は家に帰っていいお酒が飲めますね」と笑う。

 漫画原作の音楽については、「ガンダムの漫画を描くときに、戦闘シーンがメインになりますので、キャラクターの心情とかセリフで言えないので、その代わりに歌詞や曲が流れている雰囲気で心情を表現しようと思ったんですよ。音楽に対しては疎いですが、ジャズとポップスを主人公にあててキャラクターの棲み分けを最初に考えましたね。(音楽と戦争について)菊地さんほど詳しくありませんが、戦争には音楽が欠かせないものだと思いますね。恐らく自分が戦場に行ったときに音楽を聞いてないと、自分の心が持たないだろうなっていう意識はありました」という。

(C) 創通・サンライズ
(C) 創通・サンライズ
(C) 創通・サンライズ

 音楽について、菊池氏は、「英国がEUを離脱して、風雲急を告げる世界情勢ですけども戦争のリアリティは我々がガキの頃に比べたらだいぶ高まっている世の中で、ガンダムを観るっていうのはなかなか変わった気分なんですが、とても今回は楽しく仕事をやらせていただき、本当にスタッフの皆さんにも感謝しておりますし、劇場にいらしてくれた皆さんにも感謝しております。ありがとうございます」とコメント。

 ガンダムの仕事については、「クールジャパンを一切嗜みませんので、アニメ、漫画、ゲーム、SNSもやりませんし、だからと言って、ゴルフもやりませんし、車にも乗りません(笑)。ただ音楽やっている人間なんですよ。以前“ルパン三世”という国民的アニメのスピンオフ作品の話が来たときは、ものすごいびっくりしたんですよね。アニメはテレビで“ど根性ガエル”を観ていた時が最後なので、それ以降全く観ていなかったし、まさかなんで俺にアニメの仕事なんか来るんだろうって思っていたんですが、よくよく考えたらルパン三世ってジャズベースなので、そういうことかと仕事したんですが、それから数年たってガンダムって話がきて、ガンダムはいくらなんでもジャズベースじゃないだろうって思って(笑)。でも驚いたのは一瞬で、おそらく作品の設定でジャズが必要だから指名が来たのだろうと、それで先生の漫画を読ませていただき、なるほどなと引き受けさせていただきました」と振り返った。

 さらに菊池氏は「ジャズ業界は本当にクールジャパンと触れる機会が少なくて、普通にジャズのアルバムを作った時と比べて200倍くらいの取材が入るんですよ(笑)。色んな取材で同じ話をしているので、すでに皆さんは読んだりしているかもしれませんが、実際に太田垣先生が描かれている通り、漫画は音がしないので、ちゃんと実在の曲を使うことでリアリティを生んでいるんだなと思いました。ただ、その激しい戦闘に優しいジャズは似合わないじゃないのかなと思って、打ち合わせの時にポップスはこのまま生かして、ジャズは漫画原作にある曲はやめて、フリージャズっていう戦闘に合う凶暴なジャズで行きましょうと提案させていただきました。なので、ここで演奏されている曲はジャズファンの中では、ピンとくる5、50年代のフリージャズのギミックになっていますね」と説明。

 音楽と戦争については、「実際の戦争などでも兵隊たちが耳にイヤフォンして音楽聴いて戦っている。すべての兵隊は音楽を聴いてないと戦争なんかやってられないし、その音楽っていうのは場合によっては、アメリカみたいな強国ですら敗戦か戦勝かを分ける力をもったものだということをサンダーボルトは描いていると思いましたね。最初は漠然としたイメージですけど、素敵な主人公が出てきて、いい感じに戦って、マニアじゃないとわからない人間関係があって終わっていくと思っていたんですけど(笑) サンダーボルトに関しては、私が昔から思っていた戦争と音楽の問題にガッツリ触れていたので、モチベーションが全然違いましたね。オリジナルサウンドトラックはジャズとポップスになっているんですけど、ガンダムを知らない私のファンの方が買ってくださって、自分で言うのは何ですが、OSTは“やばい”、“やばい”の大合唱で完成度が非常に高くなっておりますので、我々音楽家にとってCD を買っていただくというのは生命線になりますので、どうかOSTもよろしくお願いします」とアピール。

 最後に太田氏は、「これで続きがないのは絶対おかしいですよね(笑)。そうは言ってもファンの皆様の後押しがなければ我々が作りたくても実現しません。ですのでみんなでこの祭りを、さらに広げていくために、応援よろしくお願い致します。本日はありがとうございました」とコメント。

 松尾監督も、「夜遅い時間に本当にありがとうございます。雨がぽつぽつと降っていますので皆さんお気をつけて帰ってくださいね。僕は飲んでから帰りますが、皆さんはまっすぐ帰ってください(笑) 僕は音楽よりもタバコとお酒が必要です(笑) 第一スタジオでは今でも、ベランダでタバコを吸っております。なんとか喫煙室を作って頂くためにも、皆さんの応援が必要です! 今日は本当にありがとうございました」と締めくくった。

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