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JVC、長年使い込んだ楽器からヒントを得た人工熟成響棒採用ウッドコーンスピーカー

 JVCケンウッドは、JVCブランドのウッドコーンスピーカーの新モデルとして、人工熟成響棒を採用した2機種を12月中旬に発売する。ペアでの価格はオープンプライス。店頭予想価格は、フルレンジの「SX-WD9VNT」が69,800円前後、2ウェイの「SX-WD7VNT」が59,800円前後。なお、ウッドコーンスピーカーはこれまで、主に一体型コンポとのセットで販売していたが、今回のモデルはスピーカー単体での発売となる。限定販売ではないが、ウッドコーンは大量生産が困難であるため初回の提供台数は「SX-WD9VNT」が100台、「SX-WD7VNT」が50台となる。

フルレンジの「SX-WD9VNT」

 ヴァイオリンの「ストラディバリウス」に代表されるように、長年愛用された楽器や、使い込まれた木製スピーカーが音質的に優れた特性を持つ事は知られているが、JVCではこれを「時間とともに木の構成成分が部分的に変質し、異方性が高まる事に起因していると考えられる」とし、スピーカーのエンクロージャー内に設置する響棒の1つに、特定条件下で加熱処理を加える事で、経年効果を付加させた「人工熟成処理」を実施。

 この響棒をユニット(2ウェイではウーファ)の下の空間に配置。音場の拡大、解像度の向上、低音の重厚さの改善、臨場感の向上などを実現したという。

SX-WD9VNTの内部
SX-WD7VNTの内部。ユニット下にあるのが人工熟成処理を施した響棒

 ウッドコーンオーディオの開発者である音質マイスターの今村智氏は、「建築に使われるヒノキの柱など、針葉樹系の木材は切ってから300年、400年経過するにつれて強度が上がっていき、あるところからゆるやかに低下していくという特性がある。これは木の内部のセルロースが結晶化するためだと言われている」と説明。「楽器やスピーカーでは、使い込んでいるあいだの響きも熟成に影響する。愛用したスピーカーを新しいものに替えたら音がまるで変わってしまったという経験をされた事がある方もいるかもしれないが、あれにも熟成が関与してる」という。

ウッドコーンオーディオの開発者である音質マイスターの今村智氏

 そこで、「2015年のイベント(音展)で、スピーカーまるごとを人工熟成処理したものを作ってみたりもしたが、実際に製品化しようとすると(熱処理を行なう)窯に一度に数台しか入らず、不良品も出るのでコストが凄く上がってしまう。そこで、内部に使う響棒に処理を加える事で、まるごと熟成した時の音を超えるようなものを作りたいと挑戦した。最も効果の高い響棒の見極め、人工熟成処理条件の最適化も行なった」という。

2ウェイの「SX-WD7VNT」

 この人工熟成響棒を搭載した事で、それに最適な音のチューニングも再度実施。本体背面にあるスピーカーターミナルの固定用ネジ4本(鉄/ニッケルメッキネジ)の内、左上のネジだけをステンレス素材に変更。「音の輪郭が鮮明になり、より広い音響空間を実現した」という。

 また、内部のメイプル材チップ吸音材を再調整。内部配線の処理方法も変更し、解像度と音楽表現がさらに向上したとする。

SX-WD9VNTの背面
SX-WD7VNTの背面。スピーカーターミナルの固定用のネジを、左だけステンレス素材に変更している

コンポとして提供していたウッドコーンスピーカーがベース

 ユニット構成は、「SX-WD9VNT」が9cm径のフルレンジウッドコーンを1基搭載。「SX-WD7VNT」は、2cmのウッドドームツイータと、11cm径のウッドコーンウーファの2ウェイ2スピーカーとなる。各スピーカーは、小型オーディオとしてコンポとセットで発売された「EX-HR9」、「EX-HR7」のスピーカーをベースとしている。

左からフルレンジの「SX-WD9VNT」、2ウェイの「SX-WD7VNT」

 両モデルのウッドコーンユニットには、音の伝播速度を向上させるため、チェリー材の薄板シートをウッドコーンに最適配置した異方性振動板を採用。

フルレンジの「SX-WD9VNT」

 力強く躍動感のある低域再生を実現するために、大型のメインマグネットを採用するほか、磁気回路の後部に八角形のウッドブロックを装着。装着位置を最適化することで、ダクトから生じる不要な高域成分を制御。低音エネルギーを増強させてている。

 センターキャップ内に発生する音を処理するために、ポールピース上部にメイプル材の吸音材も装着。ひずみを最小限に抑えるために、磁気回路にはアルミショートリング(ウーファ)、銅キャップも使っている。

SX-WD9VNTの内部。響棒のサイズは大幅に大きくなっている
EX-HR9からSX-WD9VNTへ、踏襲している技術

 SX-WD7VNTのツイータは、エッジ素材にシルク繊維を、ボイスコイルには高純度99.9999%のOFCボイスコイルワイヤーを採用。振動板内の音の濁りを軽減するため、ポールピース上部にはスプルース木片を装着している。

EX-HR7からSX-WD7VNTへ、踏襲している技術

 エンクロージャ内には、解像度の向上や重心の低い低域再生、音場表現の拡大を目指して、竹の響板なども配置している。

 定格インピーダンスはどちらのモデルも4Ω。再生周波数帯域はSX-WD9VNTが55Hz~30kHz、SX-WD7VNTが55Hz~50kHzで、クロスオーバー周波数は11kHz。外形寸法と重量は、WD9VNTが120×264×161mm(幅×奥行き×高さ)で、2.2㎏。WD7VNTが149×249×262mm(同)で、4.2kg。

音を聴いてみる

 ベースになったモデルとして、コンポのEX-HR9、EX-HR7に使われているスピーカーと、新製品のSX-WD9VNT、SX-WD7VNTを比較試聴した。

 例えば、サックスの音で比較すると、高域の硬い音が、人工熟成響棒を加えたモデルでは柔らかく、質感豊かに変化する。耳に痛いようなキツさが薄れ、確かに“長年使い込んだスピーカーの音”だと感じる。

 音の余韻が、空間に広がる際の響きも新スピーカーの方がコントラストが深く、より胸に迫る。音場全体のコントラストも深く、SN比が良くなったようにも聴こえるのが面白い。2ウェイモデルでも、人工熟成響棒を加えた方がユニット間の繋がりが良く、まとまりの良い音に聴こえ、スピーカーから音が出ているというよりも、楽器がそこに実在しているという生々しさが強くなる。

 機種ごとの違いとして、フルレンジのSX-WD9VNTは、2ウェイのSX-WD7VNTよりも音場が広く、より点音源に近い方式的な利点を感じさせる。また、音の鮮度の部分でもネットワークを介さないため、SX-WD9VNTの方が生々しさがより強く、ヴォーカルではゾクゾクするような色気を感じさせる。しかし、SX-WD7VNTもウッドコーンらしいトランジェントの良い、シャープかつ響きが豊かな音を実現しており、低音の量感などの面では2ウェイでエンクロージャが大きな利点も発揮していた。

「スピーカーは楽器でありたい」

 ウッドコーンスピーカーは2003年から登場、JVCのコンポ用スピーカーとして主に展開し、スピーカー単体での発売も行なわれていたが、あくまで“コンポのスピーカーを単品でも販売する”というスタンスだった。

 SX-WD9VNTとSX-WD7VNTは、コンポのEX-HR9、EX-HR7に使われているスピーカーをベースとしているが、スピーカー単体での発売を前提に、人工熟成響棒を搭載してブラッシュアップし、内部も再度チューニング。「アンプとのパッケージで音作りしてきたウッドコーンシリーズの基本方針は変わらないが、スピーカーだけ欲しいというお客様からの要望も多く、スピーカー単品モデルとして新たに発売する事にした」という。

 今村氏は、JVCがビクター時代からこだわっている「スピーカーは楽器でありたい」という思いと、「振動板が無垢の木材であればもっといい響きが出る、もっと自然な音、原音に近い音が再生できるはず」という思いからウッドコーンが生まれた経緯を紹介。今回の人工熟成技術を用いた新製品は、その開発テーマに沿いながら、さらに進化したものだとした。