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LGが壁紙型有機ELテレビを披露。IPS液晶TVはNANO CELL技術でRGB LED並の広色域に

 CES 2017のLG Electronicsのプレスカンファレンスは、CES会期前日の8時に開幕。有機EL(OLED)テレビの新製品やNANO CELL技術採用液晶テレビなどの新製品に加え、白物家電やロボティクス、自動車関連など、幅広く同社の方針を説明した。

 登壇したDr.Skott Ahn氏(President and Chief Technology Officer,LG electronics)は、CES 2017の見どころと、LG Electronicsの2017年の新製品ラインナップを解説した。今年もプレミアムブランド「LG SIGNATURE」を推進していくが、その展開先が従来のエアコン、洗濯機、冷蔵庫などの白物家電、テレビやオーディオ機器などのAV家電だけでなく、ロボティックス、自動車分野にまで展開されていく方針を語った。

Dr.Skott Ahn氏(President and Chief Technology Officer,LG electronics)

 その根幹技術になるとされるのが、「DeepThinQ」とブランディングされた機械学習(マシンラーニング)型人工知能(AI)だとした。

白物家電、ロボット、テレビといった製品が目白押し……とアピール
LGは機械学習型AIプラットフォーム「DeepThinQ」を本格運用へ

29インチフルHD液晶搭載の冷蔵庫型スマート端末が登場!?

 まずは白物家電から。2017年のLG SIGNATUREブランドの白物家電の全てがWi-Fi機能に対応し、クラウド×AIによって実践されるDeepThinQ技術の恩恵を享受できることがアピールされた。

LGの上位白物家電の全モデルがWiFi機能搭載へ

 掃除機ロボットは部屋の静的な障害物を認識してマッピングして回避するだけでなく、住人の足などの動的な障害物も認識し、住人から踏まれないような回避運動も行なえるという。

 エアコンの温度設定や風向設定も、時間帯や家族の滞在状況から学習して適切だと予測される設定に自動設定。

 家電1つ1つがスマートなのに留まらず、全ての家電が相互連携してスマートになる事によってシナジー効果として住居環境そのものを賢くしていくのが2017年の白物家電のテーマというわけだ。

住人の足と椅子を区別し、自己学習結果として異なる回避運動を行なうとのこと
住人のライフスタイルを学習してエアコンの設定温度を時間帯や人感センサーに応じて動的制御

 続いてVanderwaal氏は、今年の白物家電の目玉として「LG SMART InstaView Door in Door Refrigerator」を紹介。「LG SMART InstaView Door in Door Refrigerator」は、29インチのフルHD液晶パネル搭載し、OSにWebOSを採用したスマート端末の機能を有している。

WebOS搭載の29インチ液晶ディスプレイ搭載のスマート冷蔵庫

 冷蔵庫に投入した食材の賞味期限管理や存在する食材から作れる料理のレシピ提示機能も搭載。29インチの大画面には、家族向けの伝言メモを貼り付けられるほか、インターネットを見たり天気予報を見ることも可能。足りなくなった食材はここから外に出ている家族に依頼してもいいが、Amazon Alexaを活用し、音声操作でも購入できるという。

 プレゼンテーションを担当したDavid Vanderwaal氏(VP of Marketing,LG Electronics USA)は「もちろん、お気に入りの音楽をキッチンで楽しむことだってできる」とジョークを飛ばして笑いを取っていたが、「LG SMART InstaView Door in Door Refrigerator」は冷蔵庫機能付きの29インチタブレット端末といってもあながちウソにはならないかもしれない。

画面上で足りない食材をオンライン通販することにも対応。注文は音声コマンドに対応

LGもエージェントAIロボットに参入

 ネットワーク家電(IoT家電)を相互連携させる上で、ホストとなる端末が必要になるのではないか、ということは以前から言われていたわけだが、LGは、この1つの解として、エージェントAIロボットを今回「HUB ROBOT」として発表した。

家庭内のIoT家電をAI支援で総合的に稼動させるエージェントAIロボット「HUB ROBOT」

 このHUB ROBOTは、ユーザーが「空調の温度を下げて」「冷凍庫の氷を多めに作って」などと話しかけることで、各該当家電に適切な制御を行なう。またHUB ROBOTの方から「リビングの掃除機掛けが終わりました」「庭の芝刈りを始めます」といった情報を示すこともある。AI部分は当然、DeepThinQ技術が使われることになるわけだ。

芝刈り機も制御対象なのはアメリカならでは

 こうしたホームエージェントロボットはシャープなどもコンセプトモデルを発表していたが、今後、IoT家電が進化浸透する過程で、よく似た製品が各社からどんどん出てきそうだ。

 なお、このロボット技術に関しては、LGは今後さらに力を入れていくとのことで、その第1段階の成果として、インチョン国際空港にLG Electronics製のガイドロボットが正式配備されることを報告した。

 身長1mは超える大きなボディに湾曲型映像パネルを搭載した出で立ちはなかなかの迫力。機能としては道案内はもちろん、航空チケットを見せると搭乗ゲートや搭乗時間などを教えてくれるという。

インチョン国際空港に配備されることになった「AIRBOT」は空港利用者を支援するエージェントAIロボット

「SUPER UHDTV」として進化するLG ElectronicsのIPS液晶テレビ

 続いて、ようやく薄型テレビ。近年、LGは有機ELテレビの成功が多く取り沙汰されたため、そのイメージが色濃くなっているが、依然と液晶テレビ製品もリリースされ続けている。特にLG Electronicsの液晶テレビは、LG Displayが今やIPS液晶パネル製造の総本山となっていることから、IPS液晶パネル採用機が主流だ。

 最近では、そのIPS液晶パネル関連のイノベーションが聞かれなかったが、今回、IPS液晶パネル技術に新技術投入が行なわれたことが報告された。

 それが「NANO CELL」技術だ。

IPS液晶向けの「NANO CELL」技術を発表

 このNANO CELL技術をIPS技術と組み合わせることで、表現色域が拡大し、なおかつ、もともとIPS液晶が得意としていた視野角に依存しない色安定性がさらに堅牢なものになるという。

 プレゼンターのVanderwaal氏の言葉を借りるならば、「NANO CELL技術により、色純度は向上し、総発色数は10億色に到達。正面相対位置から60度傾いた斜めから見ても色一貫性に変化なし」とのことで、相当な自信だ。

IPS液晶の画質性能を各段に向上させるという「NANO CELL」技術

 では、そもそもNANO CELLとはどんな技術なのか。

 実は今回のプレゼンテーションでその肝心な部分の解説は無し。

 液晶パネルの発色を改善する素材としては、ナノサイズの半導体結晶物質を用いて入射光を別波長に変調させるQuantum Dots(量子ドット)技術を連想させる。実際、競合のサムスンは量子ドット技術を活用した広色域液晶テレビ製品を「SUHD TV」として訴求しているわけだが、LGのNANO CELL技術はこれとは違うものだという。

 調べて見ると、LG ElectronicsのNANO CELLとは、波長変換技術ではなく、波長成形技術らしい。具体的には、ナノサイズの微粒子で特定波長の純色光を残し、その前後波長の光を吸収し、その代わり純色のピークを鮮鋭化させるようである。つまり、従来の白色LEDバックライトを用いながらも、RGB-LEDバックライトに近い純色光を得られるメカニズムのようだ。

 そして、LG Electronicsでは、このNANO CELL技術採用のIPS液晶テレビに対し「SUPER UHD TV」というブランド名を与えることとした。

NANO CELL技術が適用されたIPS液晶テレビは「SUPER UHD」と呼称される

 これは、サムスンの「SUHD TV」のブランドに、スペックだけでなく、「字面的」にも競合させる意図が窺える。これを嫌ってか、サムスンは「SUHD TV」というブランドを改め、2017年からは量子ドット技術を適用した液晶テレビは「QLED TV」にリブランディングを行なった。

サムスンの2017年モデルの量子ドット技術適用液晶テレビは全て「QLED TV」という名称に変更されることとなった(サムスンのプレスカンファレンスより)

壁紙になった有機ELテレビ

 有機ELテレビの新製品についてもアナウンス。ブランド名は「LG OLED TV W」だ。

有機ELテレビの2017年ハイエンドモデルは「W」が付く

 Wには「壁紙(Wallpaper)並に薄い」「開いた窓(Windows)越しに風景を見ているみたい」と言ったような意味が込められているのだとか。

 LG Displayが製造する有機ELパネルなので赤緑青+白のRGBWサブピクセル有機ELパネルであることは変わらないが、発光効率を改善して従来パネルよりも25%高輝度化に成功。

 また、ディスプレイ部の薄さは約0.1インチ、2.57mmという圧倒的な薄さを誇る。チューナや映像エンジンは別体型ボックス筐体で提供されるそうで、ディスプレイ部とボックス型筐体とは専用ケーブル1本で接続される。

画面サイズは65型と77型

 スピーカー部は、民生向けテレビ製品としては世界初のDolby Atmosに対応。対応チャンネル形式は5.1.2。「.2」の部分で再現させる上下音像表現はバーチャル音源技術で再現される。

別体型ボックス部は事実上のサウンドバーとして機能する。5.1.2チャンネル再生のDolby Atmosに対応

 テレビ製品に関しては、液晶、有機ELの双方に共通する試みについても発表。

 1つは、色彩監修に映画の色彩設計に100年以上にわたって取り組んできたテクニカラーとの協業だ。

 LGのテレビ製品の2017年モデルには「COLOR By Technicolor」のステッカーなり刻印がなされると言うことだろう。

 そして、2017年モデルのテレビ製品は全て、UHDブルーレイでお馴染みのHDR方式であるHDR10フォーマットに加え、Dolby Vision、HLG(Hybrid Log Gamma)に対応する。

 さらに、従来のSDR映像をHDR拡張する「HDRエフェクト」機能も搭載される。

色彩設計にテクニカラーが協力する
2017年のLGのテレビ製品は4つのHDRフォーマットに対応
UHDブルーレイプレイヤー「UP970」が登場

 今回、プレスカンファレンス内で公開された製品についての価格情報はなかったが、2017年中に北米地域区での発売を予定していると強調された。

 気になる「日本でどのモデルが発売されるか」だが、LG関係者によれば、極薄型有機ELテレビの「LG OLED TV W」シリーズは市場投入される可能性は高い……とのことである。「有機ELテレビはLG」という認知が日本国内でもある程度は進んでいることもあり、是非とも頑張って欲しいところ。

 また、2017年は日本のメーカーからも有機ELテレビがいろいろと出てくる予定なので、それらとの争いも楽しみである