ニュース

ソニー、映画事業の減損で第3四半期は営業利益半減。PS VRなどゲームは好調

 ソニーは2日、2016年度第3四半期(2016年10月1日~12月31日)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比7.1%減の2兆3,975億円、営業利益は54.3%減の924億円。税引前利益は65.7%減の662億円。純利益は83.7%減の196億円となった。

第3四半期業績

 減収の主な要因としては、為替の影響によりモバイル・コミュニケーション分野の大幅な売上減があった一方で、ゲーム&ネットワークサービス分野と、半導体分野が大幅に増収。売上高は横ばいとなった。

 営業利益の大幅な減益要因としては、主に映画分野における営業権の減損1,121億円を計上したことを挙げている。1月30日に発表した通り、映画分野のうち、映画製作事業の将来の収益見通しは下方修正。同事業が含まれる「プロダクション・アンド・ディストリビューション」に属する営業権の全額1,121億円を、映画分野の営業損失として計上した。

 第3四半期の構造改革費用(純額)は、前年同期に比べ10億円減少となる51億円。

登壇した代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏

テレビは台数減も収益性向上。PS VRは「長期的に取り組む」

 テレビを含むホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野の売上高は、前年同期比12.1%減少の3,534億円。主に為替の影響と、家庭用オーディオ/ビデオ市場縮小にともなう販売台数の減少によるものだという。

ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野

 営業利益は前年同期比48億円減少の52億円。為替の悪影響や、事業の分社化/本社機能再編の一環として負担する本社費用、ブランド/特許権使用によるロイヤリティなどの算出方法変更による費用の増加、上記の減収の影響があった一方で、高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善もあったという。なお、為替の悪影響は48億円。

 液晶テレビの販売台数は前年同期比10万台減の410万台。通期見通しは、1,200万台で変更はないが、売上高は'16年11月時点に比べ2%上方修正となる1兆300億円、営業利益は60億円上方修正の530億円。代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏はテレビ事業について、為替や主要部材の価格などを注視する必要性を指摘しながらも、「オペレーション力はこれまでよりも大きく向上した」との認識を示した。

 ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野は、売上高が前年同期比5.2%増の6,177億円。ネットワークを通じた販売を含むPlayStation 4(PS4)ソフトウェアの増収や、PlayStation VRの貢献があり、為替の影響やPS4のハードウェア価格改定などの悪影響はあったが、分野全体では増収となった。

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野

 営業利益は前年同期比99億円増の500億円。PS4のハードウェアのコスト削減と、PS4ソフト増収が影響した。為替の好影響は14億円。

 PlayStation VRの販売台数については「想定通りに推移している」とし、今回も具体的な数字は示されなかったが「VRは全く新しいユーザーインターフェイスであり、大事に育てたい事業。一過性のブームでなく、長期的に取り組む。ハードウェア、ソフトウェアともにまだまだこれから進化する領域」とした。

 また、PlayStationのゲームタイトルをモバイルゲーム化して日本やアジアなどで展開する「フォワードワークス」の作品は、今春から順次発売予定で、今後もPSタイトルからモバイルへといった新規IP創出を続けるという。

フォワードワークスによるモバイル向けタイトルも今春登場

 デジタルカメラなどイメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野は、売上高が前年同期比9.6%減少の1,671億円。販売台数の減少はあったものの、主に静止画・動画カメラにおける高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善で、全体でほぼ前年同期並みとなった。

 営業利益は、前年同期比17億円減少の211億円。為替の悪影響や販売台数減が影響した。為替の悪影響は92億円だった。

イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野

 スマートフォンなどのモバイル・コミュニケーション(MC)分野は、前年同期比35.3%減少の2,486億円。欧州を中心としたスマートフォンの販売台数の減少や、前年度に事業縮小を図った不採算地域における販売台数の減少などによるもの。

 営業利益は、前年同期比29億円減少の212億円。構造改革の効果などによる費用削減や為替の好影響、構造改革費用の減少があったが、減収の影響で減益となった。為替の好影響は121億円(為替ヘッジの影響を含む)。

モバイル・コミュニケーション(MC)分野

 半導体分野は、売上高が前年同期比16.9%増の2,339億円。イメージセンサーにおいて、主力のモバイル機器向け販売数量が増加。外部顧客に対する売上高は、前年同期比23.7%増加した。

 営業損益は前年同期から59億円増加の272億円。為替の悪影響があったものの、モバイル機器向けイメージセンサーの販売数量の大幅な増加などによるものだという。吉田氏は、モバイル用イメージセンサーは昨年の落ち込みから回復傾向にあるとの見方を示しつつも、「モバイル市場は動向が激しいため、慎重に見ていく」と述べている。

映画分野

 エレクトロニクス6分野の2016年12月末の棚卸資産合計は、前年同期末比588億円(9.1%)減少の5,859億円。2016年9月末比では1,867億円(24.2%)の減少となっている。

大幅減損の映画分野は、IP活用の強化などで改革へ

 映画分野の売上高は、前年同期比14.1%減少の2,252億円。テレビ番組制作の大幅な増収と、映画製作の大幅な減収が響いた。「007 スペクター」や「モンスター・ホテル2」が全世界で好調だった前年同期に比べ、第3四半期の作品の劇場興行収入は大幅に減少したという。テレビ番組制作は、主に、会員制ビデオ・オン・デマンドからのライセンス収入の増加により大幅な増収となった。

 営業損益は1,068億円の赤字で、前年同期の204億円の黒字から大幅なマイナスとなった営業権の減損1,121億円の計上によるもので、映画製作の減収も影響した。

映画分野

 映画の減損について吉田氏は、「収益改善に取り組んできたものの、分野全体の中期計画や、年間の収益目標の未達が生じたことには、経営として反省している」とし、今後の具体的な取り組みとして「社長の平井が、今月より映画事業の米国拠点に第2オフィスを構え、映画を中心にエンタテインメント事業の経営により深く関わる」としており、1月にソニー・エンタテインメントのCEOを退任したマイケル・リントン氏の後任の人選や、経営体制の強化などを進めるという。なお、報道陣からは事業売却の可能性についても質問があったが、吉田氏は否定した。

映画分野における営業権の減損

 吉田氏は、ソニーにおける映画分野の位置づけを改めて説明するとともに、映画/テレビ番組制作を手掛けるプロダクション・アンド・ディストリビューションの事業を説明。収益改善に向けた施策としては「IPの重視と活用」、「米国外市場の強化」、「財務規律の強化」を挙げた。

プロダクション・アンド・ディストリビューションの事業と主な作品

 IP不足の課題については、「蓄積不足、カタログ不足は、地道にやっていかなければならない」としたほか、米国ヒット作の続編を制作することや、ANIPLEXなどのアニメ作品からのゲーム化といった活用も含んでいるという。また、中国など米国以外で市場が伸びている地域に対し、ソニー・ピクチャーズが持つ海外配給網を活用していく必要性も挙げた。

メディアネットワーク

 音楽分野は、前年同期比1.8%減少の1,785億円。映像メディア・プラットフォームの売上高は増加したものの、円高の影響や音楽制作の売上高が減少したことによるもの。

音楽分野

 音楽制作は、アデルの「25」の記録的なヒットがあった前年同期に対し、減収となった。映像メディア・プラットフォームの増収は、日本でのモバイル機器向けゲームアプリケーション「Fate/Grand Order」の好調によるもの。

「Fate/Grand Order」が好調

 営業利益は、前年同期比7億円増加し、280億円となった。主な要因は、映像メディア・プラットフォームの増収など。音楽制作や、「Fate/Grand Order」の好調などを受けて、通期の営業利益を60億円上方修正し、690億円とした。

第3四半期のセグメント別業績

 '16年度連結業績の通期見通しは、売上高が'16年11月時点から2.7%上方修正となる7兆6,000億円。これは、第4四半期の前提為替レートを円安に見直したことなどによるもの。営業利益は、前回予想から300億円下方修正の2,400億円。主に映画分野における営業権の減損が影響している。構造改革費用は、'16年11月時点の想定から30億円増加し、グループ全体で約450億円を見込む。

連結業績見通し
セグメント別の業績見通し